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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 4.愛の前では 06

2010.08.15  *Edit 

 思わぬ展開で、予定より早くに一緒に住むようになって以来、
理子はずっと雅春に気を使って来ていたんだと、改めて思った。
高校を卒業したばかりの女の子が、自分の事よりも雅春の事ばかりに
気を使っている。既に、よく行き届いた、良く出来た妻をしっかりと
こなしている感じだ。
 自分と言えば、やっと一緒に過ごせる事に舞い上がり、理子を得た
歓びに有頂天になり、他の事は何も見えてなかった。理子の変化に
姉の紫が最初に気付き、指摘されて改めて考え直したが、それでも
まだ気付いてなかった事が多々あるようだ。
「俺、理子の気遣いは凄く嬉しいよ。だけど、あまり頑張り
過ぎないでくれ。前にも言ったけど、先は長いんだ。俺の為に
君が疲れるような事はしないでくれ。君にだって、自分の為に
やらなきゃならない事がたくさん有る筈だ。それを犠牲にして
欲しくはないんだ」
「わかってますって。なるべく、無理はしないようにしますから、
ご心配なく」
 理子の明るい微笑みを見て、雅春はホッとした。
「ところで先生、明後日(あさって)と明々後日(しあさって)は中
間テストですよね?準備の方は大丈夫ですか?」
 理子の心配そうな顔を見て、雅春は相好を崩した。
「実家に帰った時に、全部準備した。理子と逢えない寂しさを、
それで紛らわしたのさ」
それを聞いて理子も笑った。
「じゃぁ、ちょうど良かったんですね。私がそばに居ては、
却って邪魔ですよね」
「それはそうかも知れないな。これからは、テストの前は実家へ
帰ろうかな。その方が仕事が捗(はかど)りそうだ」
「それって、もしかして意地悪でおっしゃってるんですか?」
理子が軽く睨んだ。
「まぁ、そうだ。大丈夫。本気じゃないから」
楽しそうに雅春が笑う。
「なら、いいです。だけど先生。妹の家庭教師の件なんですけど、
本当にいいんですか?」
「いいも悪いもないよ。受けるしかないだろう。結婚の事で、
こちらにも少なからず負い目もあるし、親孝行と思うしかないじゃ
ないか。それに、君もこれから先、家庭教師のバイトをするのに、
ちょうど良い予行演習になるんじゃないのかな」
「家庭教師のバイトですか・・・」
「嫌なの?まぁ俺は、別にバイトしろとは言わないけど」
 雅春としては、言った通り、別に理子にアルバイトをして
欲しいとは思っていない。これまでは家庭環境のせいで小遣いも
少なかったが、自分と結婚してからは理子にお金の不自由は
させないつもりでいる。
 ただ、そうは言っても、理子からしてみれば、多少なりとも
肩身の狭さを感じるかもしれない。アルバイトをすれば、自分の
働いた分くらいは気兼ねなく使えるだろう。それに、社会へ
出るまでにバイトの経験くらいしていても良いだろうと思う。
 そして、アルバイトをするならば、東大生なんだし、女の子でも
あるのだから家庭教師が妥当だろうと考える。将来、教職の道を
進むかもしれないとの話しだから、尚更、今から教える事に
馴れておいても不都合は無い。
 その辺りの雅春の考えを理子に伝えた。
「俺としてはさ。もしバイトするなら家庭教師が一番妥当だと
思うんだ。でもって、できれば近場で、相手は女の子。君のお母さんが、
優子ちゃんの家庭教師に男は駄目って言ってるのと同じ理由だ」
「心配って事ですか?」
「そういう事。考えてみると、俺と君のお母さんって価値観とか
似てるよな」
 雅春のその言葉に、理子は少し嫌そうな顔をした。
「なんだよ。君こそ前に言って無かったか?俺とお母さんが似てるって」
「言いましたよ。そしたら先生は『君のお母さんと一緒にしないでくれ』
とおっしゃったような気がするんですけど」
「そうだな。確かにそう言った。それは今でも変わらない。
似ているからと言って、一緒にしてはいけない。似て非なる者
だからな、俺達は」
「俺達って・・・・」
 理子は半ば呆れ顔である。
「兎に角、可愛い妹の為でもある。親孝行にもなる。ちょうど
いいじゃないか。君があまり実家に出入りしたくないのはわかってる。
だけど、お母さんも寂しいんだよ」
 雅春の優しい言葉に、理子の心は感謝の気持ちで満たされてくる。
散々な言葉を浴びせられたのに、そんな事はまるで意に介して
いないようだ。
「先生、ありがとう。だけど、夕飯付きって言ってたけど、何を
食べさせられるかわからないですよ。それに、ちゃんとした物が
出るのは最初のうちだけかも。終いには結局、私が作らされる
ハメになるかも・・・」
「俺は何を食べさせられも大丈夫。君が作る事になったら、
変わりに俺が作るよ」
 と、雅春が陽気に笑いながら言う。
「それは無理ですよ。補習クラスの方で帰りが遅くなるんですから」
「まぁ、いいじゃないか。その時はその時で。どうにかなるさ」
 何の心配もいらないと、雅春の笑顔は言っているようだ。その
笑顔を見て、理子は心が軽くなってくる。この人のそばに居れば、
安心だ。そう思える笑顔だった。

 翌日の連休最終日に、ゆきや枝本ら、いつもの友人達が遊びに
やってきた。式から間もないから最初は遠慮していたが、これ以降は
みんな其々に忙しくなりそうだし、当人達が是非来てくれと言ったので、
彼らもやってきたのだった。
 彼らは昼前に呼ばれ、昼食に雅春手作りのピザを出されて感激した。
「先生が料理されるなんて、驚きですね」
「先生、料理上手いのよ。私、去年のゴールデンウィークの時に
色々と御馳走になったんだけど、あまりに上手なんで気後れしちゃった」
 理子の言葉に、へぇ~、と一同は驚きの目を雅春に向けた。
「そう言えば、去年のゴールデンウィークは、ずっと先生の家で
二人で過ごしてたんだよな~」
 と、茂木が冷やかすような目つきで言った。
 再現ビデオの制作にこのメンバーは関わっているので、かなり色んな
事を知ってしまっている。そう思うと、なんだか恥ずかしくなってくる。
「お、お、俺は・・・、せ、先生の行動に、お、驚いたよ。まさか、
・・・て、手まで出してるとは思わなかった」
 耕介が真っ赤になってどもりながらそう言った。
「そうですよ。しかも、かなり早い時期に」
 枝本が睨むように言う。
 その枝本に雅春は笑って言った。
「このゴールデンウィークの時だったよな。お前が理子とファミレスで
会ったのは。話した内容、しっかり聞かせてもらったぞ」
「おい、何だよ、どういう事だよ?」
 茂木が目の色を変えて枝本を見た。
「先生、結構、意地悪なんですね」
「まぁな。俺もお前には特別な思いがあるし。簡単に許すと簡単に
捨てられるから気を付けろとか言ったんだったよな。お陰で理子は
随分とショックを受けてたし、俺は疑われたんだからな」
「どういう事なの?」
 と、ゆきが理子に問いかけた。
 考えてみると、事の発端はゆきと小泉の事だ。だから本人に
詳細は語れない。
「ゆきちゃんと小泉君の件で、枝本君と話す為にファミレスで
会ったのよ。その時に、私の付き合ってる相手は大人だから、
もしかして遊ばれてるんじゃないか、って枝本君が心配したの。
大の大人が女子高生をまともに相手にするとは信じられないから、
簡単に許さない方がいいって」
 理子はゆきと小泉との関係ではなく、飽くまでも自分の問題として
枝本が言った事を強調するように気を付けて言った。理子のその返答に、
雅春もやっと気付いた。そもそも、ゆきが小泉に簡単に許したから
飽きられたんだと言う話しの発展から、理子の事に類が及んだ
二人の会話だったからだ。
「なんだ、そういう事だったんだ。でも、枝本君は相手が先生だとは
知らなかったんだから、しょうがないよね」
 ゆきは明るくそう言ったので、3人はほっとした。
「でも、理子からしてみれば、ショックを受けるのも当たり前だよね。
相手が先生だからこそ、余計に不安に思ったんじゃないの?」
 岩崎がそう言った。
「女の子の気持ちがお前にわかるのか?」
 茂木が憮然とした感じで言う。
「女の子の気持ちって言うか、理子の立場に立って考えてみたら、
そうなんじゃないかなって思っただけだよ。だって、相手は、
この先生だよ?大人だしさ。大人の男の思考回路なんて、女子高生
からしたらわからない所だらけじゃないのかな。好きだから
信じてはいるけど、同じ男の枝本からそう言われたら、もしかして
そういう部分もあるんじゃないかって気持ちが多少なりとも
浮かんできても不思議じゃないじゃない」
 岩崎の言葉に、ゆきが同意した。
「あたし、わかる~。岩崎君の言う通りだと思う。再現ドラマを
やってて思ったもん。この先生から求められたら、強く拒否なんて
できないよ。好きだから尚更だし。でも、先生は大人の男の人だし。
真剣度は伝わってくるから、その気持ちは信じられるけど、先の
事まではわからないもの。自分はただの女子高生だし、もっと
可愛い子や綺麗な子は沢山いるし。だから、枝本君の言葉に
ショックを受けるのは当然だよ」
「ごめん。俺、余計な事を言っちゃったみたいだな。理子を傷つける
つもりは無かったんだけど」
 枝本は恐縮したように言った。実際、傷つけるつもりは毛頭無かった。
何故なら、理子はまだ未経験だと思っていたからだ。だから
自分的には忠告のつもりだった。
「枝本は悪くないよ。だって、相手が先生とは知らなかったのも有るし、
第一、まさか理子が既に経験済みだなんて全く思って無かったんだ
ろうからな。俺達だって、理子はずっと知らないままだと思ってたし。
悪いのは先生さ。相手は女子高生なのに、好きになっただけでなく、
卒業前に、それもあんなに早い時期に手を出したんだから」
 と、茂木が怒ったような顔で言った。
 思わぬ展開に、雅春は少々たじろいだ。生徒達が言う事も尤もだからだ。
「はいはい、わかりました。私が全て悪うございました」
 と、雅春は膝の上に手を置いて頭を下げた。
 雅春のその行動に、一同は顔を見合わせた。
「俺さ。教師なんかやってるが、本当は常識とかに縛られない
タイプなんだ。勿論良識くらいは持ち合わせているつもりだが、
この世の中の常識には、不条理な事や理屈に合わない事も多々ある」
 雅春は一体何を言おうとしているのか。
「例えば、お前らは好きな相手とセックスしてるじゃないか」
 雅春の直截的な表現に、一同は唖然とした。
「耕介と岩崎はまだ童貞だろうが、枝本と茂木は違うだろう?」
 枝本の事は理子から聞いて知っているのは当然だろうが、何故
茂木の事までわかるのか、理子は不思議に思った。当の茂木は
少し顔を染めていて否定しない。
「最近は中学生で既に経験している者もいる。昔のモラルからしたら、
とんでも無い事だ。だが今じゃ、とんでも無い事でもなんでもなく、
むしろ当たり前になってきている。興味本位な場合も多いだろうが、
好き合っているなら当たり前的な感覚だろう。そしてそれは、年齢に
関係ない。俺だって、好きな相手とそういう関係になりたいと思っても、
可笑しくは無いだろう?だが、彼女が高校生で俺が教師だと言うだけで、
批難されてしまう。俺からしてみれば、こんな理不尽な事は無いさ。
遊びなわけじゃない。本気なんだから。妻帯者ではなく、独身だし、
結婚まで考えているのに」
「そ、それはそうかもしれませんが、でも・・・」
「ああ。俺だって、これでも随分我慢したのさ。こんな俺でも、
最初は卒業まで待つつもりだったんだ。理不尽だとは思っても、
やっぱり相手はピュアな女子高生だからな。しかも、これから
東大を受験しようと言う状況だ。そのままで合格できるような
ポジションにいるわけじゃない。だから見守るつもりだったんだ。
なのに結局、どうにも我慢できなくなってしまった。お前達から
見たら俺は大人だが、そうは言っても、俺もまだまだ青いガキなんだよ」
 雅春はそう言って、苦笑いを浮かべた。



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