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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 4.愛の前では 02

2010.08.11  *Edit 

 夜は更け、やがてお開きになり、二人はホテルへと戻った。
 理子はとても疲れていた。朝早いのはいつもの事だが、ずっと
緊張の連続だった。自分自身ではそれ程緊張した自覚は無かったが、
それでも一日中だけに、自分で思っているよりも緊張していたようだ。
そして、雅春も同じように疲れていた。
 まず理子がシャワーを浴び、その後で雅春がシャワーを浴びたが、
雅春が寝室へ入ると、理子は既にベッドの中で眠りに落ちていた。
可愛い寝顔だった。その寝顔を見て雅春は少し残念に思ったが、
自身もとても疲れていた。理子の頬に優しくキスをして、雅春も
深い眠りへと落ちて行ったのだった。
 そうして特別な一日が終わり、新しい朝がやってきた。理子は
いつも通りの時間に目覚めた。隣に雅春の寝顔がある。一緒に
住み始めてからの、見慣れた光景だ。毎朝、その寝顔を見るたびに
胸が高鳴り、幸せな気持ちになる。雅春の朝を理子一人で独占している。
 新しい一日をスタートさせるべく起床する前の寝顔。毎朝、
最初に見る顔が雅春の顔だ。そして、雅春が毎朝最初に見るのも
理子なのだ。そう思うと、胸が一杯になる。
 今朝は、朝食の支度をする必要は無い。だからこのまま、ずっと
雅春の寝顔を見ていたい。そう思う理子だった。理子は暫くの間、
ジッと雅春の寝顔を見つめていた。それから起きて身支度を整えると、
隣室へと移動した。窓辺に寄り、外を見る。港が見えた。
朝日の照り返しを受けて、水面(みなも)が輝いていて美しかった。
 理子は鍵を持って、部屋を出た。朝食の支度も、家事もする必要の
ない朝は、手持無沙汰だ。だからホテルの外を散歩した。5月の
朝の空気は清々しくて気持ちが良い。昨日と同じように天気も良く、
晴れ晴れとした気持ちになってくる。
 横浜の街は好きだ。古さと新しさが融合した街だと思う。それに、
海がある。綺麗な砂浜を持つ海も、荒い波が寄せてくる磯の海も、
そして港を持つ海も、みんな好きだった。水が怖い癖に、何故
こんなに海が好きなんだろう。河川にはそれ程ときめかないのに。
 連休中の早朝だからだろうか。人の姿が少ない。ジョギングを
している人間が僅かにいる程度だった。もう少し時間が経てば、
観光客で賑わうだろう。
 腕時計を見ると、そろそろ6時になろうとしていた。雅春が
起きてくるだろうと思い、理子はホテルの部屋へと戻った。
鍵を開けて部屋へ入ると、雅春が立っていた。
「理子!」
 雅春はそう叫ぶと、理子に抱きついてきた。
「どこへ行ってたんだ」
 強く抱きしめて、怒鳴るようにそう言う雅春に、理子は驚いた。
「散歩に・・・」
 理子はそう言ったが、雅春は理子を強く抱きしめたままでいた。
 雅春は、いつもよりも少し早くに目が覚めた。隣に理子の姿が無い。
それはいつもの朝と同じ光景だ。また今朝も、いつも通りの時間に
目が覚めたのかと思った。早く目覚めても、やる事が無くて
退屈しているに違いない。それに、早く理子の顔が見たい。
そう思って、雅春は起きて身支度を整えると、隣の部屋へと移動した。
だが、そこには理子の姿が無い。
 トイレなのだろうかと様子を窺ったが、気配が無い。部屋中の
あちこちを、理子の姿を求めて探し回ったが、どこにもいない。
そして、鍵が無い事に気付いた。それで、理子が外へ出た事を
悟ったのだった。そしたら急に不安になった。何故、黙って出て
行ったのか?寝ていたから仕方ないとしても、書き置きくらい
していっても良い筈だ。
 窓の外へ目をやると、とても良い天気だった。だから、外の空気を
吸いに行ったのかもしれない、とは思った。思いはしたが、
どういう訳か酷く不安な気持ちが押し寄せてくる。
 昨日は、色々な事があった。深く考えると、雅春にとって不安要素は
多かった。再現ドラマ然り、昔の女の出現然り、学友たちとの
やり取り然り。理子にとっては、どれも愉快では無かった筈だ。
彼女の愛を疑ってはいない。だが、へそを曲げると言う可能性はある。
彼女は怒ると、出て行く習性がある。考えれば考える程、不安になった。
 どうしようかと思っていた矢先、理子が入って来た。
感情が一気に昂った。
「先生?どうしたの?心配したの?」
 いつまでも離さない雅春に、理子が言った。その言葉に、
雅春は理子を離した。
「心配した。とても。目が覚めたら、君がいなかった。
凄く不安になった」
 雅春は、拗ねて怒った子供のような顔をしていた。
理子はその顔を見て微かに微笑む。
「ごめんなさい。先生が起き出す前に戻るつもりだったから、
書き置きもしなかったの」
 目が覚めたら、母親の姿が無くて、不安で泣いている小さい
子供のようだ。母性本能がくすぐられる。あやしてあげたく
なってくるのだった。雅春は再び理子を抱きしめて、
「何も言わずに、俺の前から姿を消すのはもう止めてくれ。
とても不安になってくる。俺は、君がそばにいてくれないと駄目だ」
 切なげに言うその言葉に、理子は胸が熱くなった。頭を雅春の
胸に凭(もた)せ掛けて、理子は目を瞑(つむ)る。こんなにも愛され、
求められているのかと思うと、胸が締め付けられる。
 雅春は、理子をそっと離すと、唇を寄せて来た。理子は目を瞑って
それを受け止めた。柔らかい唇が心地良い。舌がそっと侵入してきて、
躊躇いがちに絡み合う。
 唇を離した後、雅春は理子を抱きあげて言った。
「君を抱きたい」
 男の顔をしている雅春に、理子の胸は疼いた。返事の代わりに
雅春の胸に顔を埋める。雅春はそのまま隣の寝室へと入ると、
ベッドの上に理子を横たえて、上に乗って来た。朝陽が射しこむ
明るい部屋で、理子は脱がされた。理子は恥ずかしくて頬を染めた。
 雅春の、長い指を持った大きな手が、理子の体を行き来する。
その指先が触れる度に、痺れ、疼く。理子の真っ白い体が、
雅春の愛を受けてピンク色に染まってゆく。
「理子。凄く綺麗だよ・・・」
 低くて甘い声でそう言われ、理子は恥ずかしくて首から耳まで
真っ赤になった。
「君の全てを、愛してる」
 雅春はそう言いながら理子の中へと入って来た。自分の中に、
雅春の硬く熱いものを感じる。繋がっているのを感じる。自分の
上で恍惚としている雅春の顔を見て、理子は自分自身も昂って
いくのを感じた。
 理子を綺麗だと言った雅春自身も、とても綺麗だ。まるで
ミケランジェロのダビデ像のように、均整のとれた美しい体を
している。その美しい人が、理子と一体と化し、快楽の中で
身を悶えている。理子は彼の全てを全身で受け止めたいと強く願った。
 やがて雅春が絶頂を迎えて、外へ出す為に抜こうとした時、
理子はそれを止めた。
「駄目、抜かないで。そのまま、私の中に出して」
 雅春は理子の言葉に驚愕した。
「駄目だよ、理子。中へは出せない」
「お願い。あなたの全てを受け止めたいの。だから・・・」
 理子に懇願され、戸惑っているうちに、雅春は理子の中に放
出してしまった。止めどなく理子の中へと流れ込んでゆくのを感じる。
 理子はそれを感じて、愉悦に満たされてゆく。雅春の全てを
受け止める事ができて、幸せだった。ずっと、そうしたかったのだ。
 二人は体を密着させた。
「先生・・・、先生が好き。とっても・・・」
 理子は、幸福に満ちた顔でそう言った。そして、雅春の体を
ギュッと抱きしめた。
 この人を離したくない。永遠に。そう強く思う。
 雅春は、そんな理子を無性に愛おしく思った。こんな理子は
初めてだった。理子を初めて抱いた時、いつか理子の中へ全てを
放出したいと思った。それが、今こうして叶った。至上の歓びであり、
感動だった。
 自分の腕の中で歓びに打ち震える理子が、狂おしい程愛おしい。
ずっとこうしていたい。雅春は何度も何度も、理子に口づけるのだった。

「二日間、逢えなくて寂しく無かったか?」
 雅春が理子の肩から背中へかけて唇を這わせながら、そう言った。
「寂しかったです。とっても・・・」
 理子は声を洩らしながら答えた。
 雅春の薄くて柔らかい唇の感触が、理子の体の奥まで疼かせる。
喋るたびに吹きかかる熱い吐息が、理子の全身を震わす。
「先生は?」
 理子の問いかけに、雅春は理子の体を自分の方へ向けさせると、
その小さな桜色の蕾を口に含んだ。理子の口から嗚咽が洩れる。
「俺も寂しかったよ。とても」
 そう言うと、理子の唇に唇を重ねた。
 二人は朝陽の中で交わった後、シャワーを浴び、朝食を摂り、
ホテルをチェックアウトして自宅へと戻って来た。戻ってきて、
着替える為に服を脱いでいる時に、雅春は再び理子が欲しくなって、
そのままベッドへと押し倒し、交わった。
 そうして今、事後の余韻を楽しんでいる。
 理子の口へ、唾液を送り込む。理子はそれを、何の躊躇いも無く
呑み込む。理子のぷっくりとした弾力のある唇が、雅春の欲情を
そそって来る。この唇に自分の唇を重ね合わすと、欲しい気持ちに
拍車をかける。やるせない気持ちになってくる。
 長い時間、その唇を貪った後、雅春は理子の顔を見つめた。
そっと開いたその瞳は、妖しく潤んでいた。小さく瞳を揺らしながら、
雅春を見つめている。まるで夢の中を漂っているような、そんな瞳を
していた。
 雅春は、理子が女になりつつあるのを感じた。初めての時は、
まさに硬い果実だった。心も体も少女だった。その少女が、
雅春の熱いものを受け入れて、徐々に変化しだした。交わるたびに、
理子の落ちる淵が深くなっていくのを雅春自身も感じていた。
 在学中は、受験と言う壁があった。求めてやまない雅春ではあったが、
それでも行き過ぎないように抑制していた。だが今は、そういう
箍(たが)は無くなった。どこまでも連れて行く事ができる。
理子自身も、快楽の波の中を気持ち良さそうに漂っている。
その様は、とても悩ましい。
 雅春は、ふと彰子の事を思い出した。彼女が自分と出会ったのは、
ちょうど今の理子と同じ時期だ。だが彰子は既に、熟れた果実だった。
体も女性として出来あがっていた。在学中に恋愛していた教師に、
全てを教え込まれたのだろう。自分が彼女から教わった事を思うと、
容易に想像がつく。あれだけの事を高校生のうちに体験し、
心も体も全て相手に捧げていたのに、彼女は裏切られた。まさに
弄ばれたと言っても過言ではないだろう。
 諸星は、理子の事を、手籠めにしたくなるような魅力を持って
いると言った。石坂は、卒業後ではあるが、彼女と結ばれる事を
望んでいた。女性経験が豊富な渕田は、彼女を強引に自分のものに
しようとした。
 もし自分が妻帯者として理子と出会っていたら、どうしていただろう。
それでも理子に惹かれ、自分のものにせずにはいられない思いに
駆られたら?彰子の相手のように、自分のものにしただろうか?
そうして、彼女の体を散々好きなようにした後、いざ卒業と言う
時になって、怖くなって逃げ出すのだろうか?

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