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小説・クロスステッチ第2部 <完>
4.愛の前では ~ 6.噂


クロスステッチ 第二部 4.愛の前では 01

2010.08.10  *Edit 

 結婚式の二次会の後、二人は疲れて泥のように眠った。6時から
始まった二次会だったが、終わったのは10時を過ぎていた。賑やかな
宴会だった。女性陣からは、時々厭味を言われたりしたが、相手が
雅春だから、それも仕方が無い。それでも彼女達にとっては、十分、
控えめだったと言える。
 雅春も、男子達から恨みごとを言われた。歴研・合唱部、共に
男子達の多くは理子に好感を抱いていたので、こんな風に彼女が
結婚してしまった事に、寂しい思いを感じていたのだった。
 特に、歴研での人気は、本人が思っている以上だった。理子は、
みんなはゆきを好いていると思っていたのだが、実際には多くが
理子に気があった。当時、ゆきには小泉がいた事もある。誰もが
理子はフリーだと思っていた。
 だが結局、二人の幸せそうな顔を見ていたら、ちょっと恨みごとを
言うくらいしかできない。誰もが、初めて見る2人の姿だった。
大抵の場合、恋人同士だったとか、結婚するという話しを聞くと、
“やっぱりね”と思う節があるものだが、この二人に限っては、
全くの寝耳に水であり、誰もが考えもしなかった取り合せでもあるので、
ここへ来るまで半信半疑だった者が殆どだった。
 会場へ来て、二人が揃って出て来た時、本当の事だったんだと、
朝霧の元生徒達は思った。再現ドラマを見て、みんなが知らない所で
そんな事があったんだと、驚いた。だが、一番驚いたのは、矢張り、
雅春が理子に惹かれていった事だろう。男子には、どこか共感できる
部分があった。理子には不思議な魅力がある。みんなも、どこがどう
好きなのかと具体的に問われても答えに窮すが、どこか惹かれる。
 だが、女子からすると、確かに顔立ちは整っているし、可愛いと
言えば可愛いかもしれないが、取り立ててどうと言う程のこともない。
彼女より、もっと可愛い子、美人な子は大勢いるのに、と思う。
女子達にとっては、不思議だとしか言いようが無かった。
「先生、理子のどこが好きなの?どうして好きになったの?」
 と、茶道部の一人が訊いた。それに対して雅春は、
「ありきたりだが、全部かな」
 と答えたのだった。
「全部って、本当にありきたりだなぁ」
 と、雅春の友人が言うと、
「顔も性格も、体も」
 と雅春が言ったので、元女子高生達はみんな顔を赤らめて、
雅春の友人達は爆笑した。
「お前、教え子たちの前で、随分と大胆な事を言うんだな」
 と冷やかされた。だが雅春は動じない。
「正直者なもんで。みんな、知ってるだろう?」
 と逆に開き直っていた。理子はと言えば、矢張りほんのりと
顔を赤らめていた。
「それで、どうして好きになったんですか?」
 その突っ込みに、雅春は「う~ん・・・」と考えた後、
「好きになるのに、理由なんて無いな。気付いたら好きに
なっていたんだから」
 と答えたのだった。
「それ、わかるよ。恋ってそんなもんだよな」
 雅春の友人の一人がそう言った。
「お前らは知らないだろうが」と、雅春は元生徒達に向かって言った。
「俺ははっきり言って、恋愛に興味が無い。今まで恋らしい恋を
した事も無かったし。したいと思った事も無かった。だから、
目の前にいる女生徒達にも、全く関心がない。ましてや、教え子だしな。
最初から対象外だ。理子だって同じだよ。だから、いつの間にか
惹かれている事に気付いた時には戸惑ったし、否定した。客観的に
見れば容姿が特別優れてるわけでもないしなぁ。まあ、並より少し
上ってところか。取り立ててどうと言う事も無い。お前らみんな、
そう思ってるんだろう?」
 元女生徒達は同意の様相を示していたが、ゆきが反対の声を上げた。
「先生、それって理子ちゃんに対して失礼じゃないですか?
理子ちゃんはとっても可愛いです」
ゆきの言葉に、多くの元男子生徒達が同意の声を上げた。
 雅春はその反応に笑う。
「わかってるさ。俺だって可愛いと思ってるんだから」
 その言葉に理子が赤くなった。
「客観的に見れば、どうって事無いように見えるが、実は多くの
魅力を持っていて、それが解る人間には、とても可愛く見えるのさ、
理子は」
「先生、上手い事を言いますね」
 と、枝本が言った。理子の魅力は一言では語れない。ぴったりくる
言葉が見つからない。彼女を見て可愛くて魅力的だと思う人間と、
普通に過ぎないと思う人間とに別れるだろう。ただ、普通に
過ぎないとの第一印象も、彼女と接しているとその印象は変化してくる。
だが、女性としての魅力は、同性には量りがたいかもしれない。
「まぁだから、ここにいる男子どもと俺も同じだ。どこが好きかと
問われても、明確には答えられない。どことは言えないが、彼女の
魅力にやられてしまったのさ。たまたま理子が俺を好きになって
くれたから、一緒になれたが、そうで無かったら、この俺が
お前らと同じように片思いの憂き目にあってたかも知れないんだぜ」
 雅春の言葉に、女子は不満の声を上げ、男子からは笑いが起こった。
 女子からすると、矢張り納得がいかない。何故理子がモテるのか。
同じクラスを経験した女子は、休み時間にいつも彼女の周囲には
男子が群がっているのを知っているから尚更だ。しかも、この先生が
理子に片思い?考えられない事だと思うのだった。
「だけど、増山君程の男が、ちょっと情けなく無い?」
 話しを聞いていた、元女子大生の一人が口を挟んで来た。
「同感」との声が上がる。
 雅春は片眉を少し上げて、チラッと視線をやってからニヤリと笑った。
「お前らって、なんでそう、ルックスで決め付けるんだろうな?」
 雅春の言葉に、女性陣は一斉に口を噤(つぐ)んだ。
「俺の事を、顔だけで決め付けないでくれるかな。生徒達はともかく、
お前達は俺がどれだけ偏屈で変わり者か知ってるだろう?本気で
付きあったら、多分、うんざりすると思うけどな」
「そうだ、そうだ」と増山の友人達から声があがった。
「付き合っても、女の方から離れてくじゃないか。結局、増山を
好きだとか言っておきながら、実際に付きあったら嫌になるんだろ」
 と友人の一人が言った。
「だってそれは、増山君がどこまでも冷たいからじゃない」
「そんなの、最初からわかってる事だろう?増山がそういう男だって
事は有名じゃないか。そうと知ってて付き合う方が悪い」
「結局は、抱かれたいだけなんじゃないの?あの冷酷な目で抱かれて
何が嬉しいんだか知らないけどな」
 雅春が冷めた目で女を抱く事は有名だった。抱く時に、雅春が
女の服を脱がせる事は無い。自分はさっさと脱ぎ、女が自分で
脱ぐのをジッと見て待っている。まるで観察者のような冷めた目で見る。
それが嫌で女は服をすぐさま脱いでベッドへ入るのだった。雅春に
ストレスが溜まっている時は激しいが、それ以外の時には非常に淡泊で、
淡々と事が進み、短時間で終わる。抱いている間、雅春は無表情だ。
瞳は異常な程に冷めている。凍った湖の底を覗くような冷たい目である。
とても快楽の世界にいるようには思えない。
 そんな目をした男に抱かれ、女の心も冷めていくのだった。
大抵の女はすぐに耐えられなくなって別れるが、中には積極的な女もいて、
縛って欲しいとか、舐めて欲しいとか、何かと注文してくる場合もある。
雅春は嫌な事や気が乗らない時には注文に応じないが、そうでない
場合には応じてやっている。
 ただ、何回もやる事はないし、時間も短い。しつこくせがまれると、
無視してさっさと服を来て出て行く。そんな訳だから、一緒にいて
楽しいと思う女は誰もいない。そういった事が、別れた女達の口から
広まり、キャンパス内では知らない人間がいないくらいだった。
それでも彼女希望者が後を絶たないのだった。
「まぁまぁみんな、祝いの席なんだからさ」
 古川が仲裁に入った。
「お前ら、驚いただろう?」
 雅春が元女生徒達にそう言った。みんなは小さく頷いた。
「学校じゃぁ、誰も知らない増山先生の過去、なんだろうなぁ。
だけど、花嫁の前で大丈夫なのかぁ?」
「大丈夫。理子は全部知ってる。何と言っても、望と一緒の所を
見られてるからな。望の話しをするには、俺の過去も全て話さない
訳にはいかないだろう?」
 友人達は一斉に望の方を見た。望はフンっと顔を背けるのだった。
「それで理子ちゃんは、どう思ったの?話を聞いて凄く驚いたんじゃ
ないの?汚いとか思わなかった?」
友人の一人が理子に訊いた。みんなの視線が理子に集中する。
「驚くには驚きましたけど、モテるのは当然だし、過去の事だし・・・」
「平気なの?」
 驚いたように訊かれた。
「過去の事ですから・・・」
 理子の言葉に、周囲は驚きの表情を浮かべた。
「だ、だけどさ。酷い男とか、思わなかったの?好きでもないのに、
付き合ってたんだぜ?多くの女と」
「おいおい、お前、強調して言うなよ」
 と、雅春が友人に言った。
「いや、お前を責めてるわけじゃないんだ。ただ、女子高生からしたら、
そういうのって、許せないとか思わないのかなって自然な疑問だよ」
「なら、そこにいる元女子高生達に訊いてみたらどうだ?」
 増山がそう言った。元女子高生達は神妙な顔をしていた。
「君達はどう思う?昔の増山の話しを聞いて驚いただろう?
酷い男だったんだなって、幻滅したかい?」
 その質問に、みんなは互いの顔を見合わせた。
「少しは、思いました・・・」
 と、その中の一人が答えた。
「どうして、好きでもないのに付き合ってたんですか?」
 と、一人が質問してきた。
「誰かと付き合って無いと、大勢に煩く付き纏われるからだ」
「そんなに、付き纏われるのが嫌なんですか?」
「嫌に決まってるだろう。鬱陶しいんだよ。プラベートも何もありは
しない。幾ら冷たく突き放しても寄って来る。彼女がいると、
取り敢えずそれは治まるんだから、それなら彼女がいた方が楽だろうが。
その代り、頼まれれば抱いてやる。勿論、俺の時間がある時だけどな。
鬱陶しい取り巻きから解放させて貰った礼みたいなもんさ。別れた
ければいつでも別れてやる。そういう付き合いだ」
 雅春の言葉に、「酷い」との言葉が女子達の間から上がった。
「ほら、やっぱり、酷いって思うだろう?それが普通だよ」
 と友人の一人が言って理子の方を見た。皆の視線が再び理子の
上に集中した。
「こいつを苛めないでやってくれるかな。困ってるじゃないか。
こんな俺の話しを聞いても、俺の全てを受け入れてくれるヤツなんだよ。
軽蔑もしなければ、汚いとも思わない。嫉妬すらしない。全てを受け入れ、
全てを赦してくれる。偏屈な俺も、我儘な俺も」
 増山の言葉を受けて、友人は「そうなの?」と理子に向かって
問いかけた。その問いかけに理子は「はい」と言って頷いた。
「先生には先生の言い分があると思うんです。そう思う過程に至る
までに、色んな事があって、色んな思いを抱えて来たんじゃないで
しょうか。仕方のない事だったんだと思います。それに、きっと
その度に心もどんどん乾いていってたんじゃないかなって。先生は
本当は優しい人なんです。その気が無いのに優しくしたら相手も
誤解するじゃないですか。相手の想いに応えられないから、冷たく
するんです。それが相手の為だから。冷たくされたら悲しいけど、
全く見込みが無いのに優しくされたら、その先もっと辛くなりますよね。
期待しちゃうし・・・」
 理子の言葉に、その場がしーんと静まりかえったが、元茶道部の
女子が言った。
「それはそうかもしれないけど、それなら、好きでも無いのに何故
付き合うのかな。それが理解できない。結局、相手の愛を利用してる
だけじゃないの?」
 刺すような厳しい目を、理子へ向けて来た。茶道部の仲間として
仲良くしてきた間柄なのに、まるで仇でも見るような目だ。
「利用しているのとは違うと思う。だって、先生がそういう付き合い
しか出来ないって事を承知で付き合ってるわけだし。先生が相手を
騙したわけでもないよね。二股を掛ける事だってしないし。互いに
承知の間柄なのに、先生だけ酷い男扱いするのはフェアじゃ
ないんじゃないかな」
「それは、あなたが彼に選ばれた女だから、そんな事が言えるのよ」
 と、理子の言葉を受けて、元女子大生の一人が言った。
「実際に、彼にそんな目に遭わされて御覧なさいよ。そんな事は
言えない筈よ」
「気を悪くさせるつもりは無いんですけど、選ばれないのをわかって
いて、お願いしてまで付き合って貰おうとは、私は思いません。
愛の無い男性なのに、そうとわかっているのに、何故、付き合いたい、
抱かれたいって思うんですか?自ら願った事なのに、どうして
恨みごとが出て来るんでしょう?」
 理子の言葉に、誰も答えることができ無かった。
 結局は、そういう事なのだ。最初からわかっているのに求める。
何故求めるのか。確かに雅春はイイ男だし、そそる男でもある。
だが実際には、その内面には様々な感情を抱えている。クールで
知的な外見のイメージとはそぐわない、偏屈で奇妙で理屈っぽくて、
幼くて我儘な彼がいる。そんな彼を理解しているのは、男の友人達
だけだ。女性達は外見しか見ようとはしない。
「増山、良かったな。お前が羨ましいよ」
 と、友人の一人が言った。その言葉に雅春はとても嬉しそうに笑った。
「わかっただろう?俺が彼女に惚れた理由(わけ)が。誰もがみんな、
俺を外見でしか判断しない。俺を見た最初から、俺を特別な人間の
ように思う。だが理子は違った。俺をそんな目では見なかった。
だから俺は理子を意識するようになったんだ。理子はどんな時でも、
曇りない目で俺を見た。彼女の自然に生まれて来る感情の発露が、
俺の心に沁みた。付き合うようになって、俺の事を深く知れば知る程、
彼女の俺への想いが深まるのがわかったし、俺の想いも同じように
深まってく。俺は見た目と違って、かなりの変わり者だ。
理屈っぽいし、細かい所にこだわりを持つ。そんな俺を理解し、
受け入れてくれてるのは、友人達と理子だけだ」
雅春の言葉に、女性達は俯いた。返す言葉が無い。
「俺達は、これから先もずっとお前の友達だからな。お前の味方だ」
 友人の一人がそう言って雅春の肩へ手を乗せた。そんな友人を
見上げて、雅春は照れくさそうに微笑んだのだった。



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