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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 08

2010.08.09  *Edit 

 二次会は関内にあるレストランを貸し切って行われた。
集まった人数の多さに理子は驚いた。雅春の大学時代の友人が
大勢来ていて、女性も多かった。また、理子側も、歴研のメンバー、
茶道部のメンバー、合唱部のメンバーの一部が来ていたのだった。
 彼らは二人の結婚を聞いた時、かなりショックを受けた。そもそも、
この二人の結びつき自体が全く思いも寄らない事だけに、
まさに青天の霹靂だったのだ。
 司会進行役は古川だった。二人はドアの前で待たされて、古川の
呼び声で中へ入った。中へ入った瞬間、多くのクラッカーで歓迎された。
拍手と「おめでとう」の言葉を浴びながら、前の席へと案内された。
 式に参加した少数の人間以外、雅春の関係者にとって理子を
見るのは初めてだった。皆、とても興味津々と言った顔で理子を
見ていて、理子はそれがとても恥ずかしかった。特に女性達の
目が若干痛い。
 乾杯後に、二次会の参加者の為に、披露宴で上映された二人の
再現ドラマが流された。いちいち、馴れ染めを聞かれるよりも、
これを見て貰った方が早いだろうとの古川の考えを伝えられた
二人は、上映を了解した。二人にしても、来た人来た人に同じ事を
何度も聞かれて、何度も話すのは面倒くさい。
「大丈夫?恥ずかしいんじゃないの?」
 と雅春に言われたが、既に理子は開き直った気分だった。
「今まで話したくても誰にも話せなかった先生との事を、みんなに
知って貰うのは嬉しい事でもあるから」
 理子はそう言った。その言葉に、雅春は胸が温かくなった。
「では、ご本人方の了解も得られましたので、結婚式で上映された、
二人のラブストーリーの再現ドラマをこれから上映します。
二人の馴れ染めから、愛し合うようになり、さらに愛を深める過程が、
これを見ればよくわかると思います」
 そう紹介されて始まったビデオを再び見て、矢張り理子は
恥ずかしくなってきた。披露宴では親に対して恥ずかしく思ったが、
今度は同級生達に対して恥ずかしい思いがする。毎日学校で顔を
合わせながら、誰も気付かないでいた二人の時だ。みんな、
どう感じ、どう思うのだろう。特に女子達の反応が気になった。
幸い、演じているのが枝本とゆきだからなのか、微妙にピンとは
来ないのだろう。驚いた表情をしながらも、テレビドラマを
見ているような目で見ていると、理子は思った。
 ドラマが終わると、大きな拍手が湧いた。
「えー、只今見て頂いたようなドラマが二人にあったわけです。
皆さん、今回、二人を演じた、新婦理子さんの高校の友人である、
枝本君と最上さんに、まずは盛大な拍手をお願いします」
 との古川の言葉に、盛大な拍手が送られた。二人は立ちあがって、
軽くお辞儀をした。
「では今度は、矢張り披露宴会場で流されました、午前中に
行われたお二人の挙式の模様を上映したいと思います。
とても熱々ですよぉ~」
 と、言った古川はにやけていた。
 まずは、白のタキシード姿の雅春の登場に、場内から嬌声が湧いた。
理子も思わず見惚れる。本当に、うっとりする程、素敵だ。そして、
父と腕を組んで現れた理子の花嫁姿に、「綺麗・・・」との声が
一斉に上がった。
 式は滞りなく進み、誓いのキスの前の、いつまでも見つめ合って
いるシーンでは、披露宴の時と同じような反応が起こったが、
キスのシーンでは、会場に女性が多くいるせいか、長すぎるキスに
動揺するような声が幾つも上がった。男性達は式の時と同じように
口笛を吹いたりと、歓声を上げたりしてる。
 理子は、こんな感じで普段もキスしてるのかな、と、意外と
醒めた目で見ていた。披露宴で最初に見た時には、本当に
恥ずかしくてたまらなかったが、二度目だから慣れたのか、
今回は平気だった。それに、雅春が理子に覆いかぶさるように
しているので、自分の顔はよく見えない。雅春の美しい横顔が
とても素敵だ。
 この後会場では、希望者のカラオケやビンゴゲームなどが
行われながらの宴会になった。二人の許には代わる代わる、
友人達が訪れては祝いの言葉や冷やかしの言葉を掛けてくる。
「おめでとう」
 村上彰子だった。
「彰子か。来てくれたんだ。ありがとう」
「どういたしまして。理子さん、おめでとう。良かったわね」
 彰子は優しく微笑んだ。その言葉に理子は礼を言った。
「古川とは上手くいってるのか?」
「ええ。今の所ね。彼、面白いけど根は真面目なのね」
「ああ。あいつはいい奴だ。女好きのように見えるが、
本当は一途なヤツさ」
「そうみたいね。増山君も一途よね。今まではそう思わなかったけど」
彰子はそう言うと笑った。その言葉に雅春は微かに頬を赤く染めた。
「俺も、彼女を知るまでは、自分の事を知らなかったよ」
「雅春ぅ~」
 と、その時、甘ったるい声で一人の女性が二人の許へやってきた。
その女性を見て、雅春の表情がやや険しくなった。
「なんだ。お前も来ていたのか」
「なんだとは、何よ。雅春が結婚したって聞いて、驚いちゃった。
どんな相手なのか、興味あるじゃない。みんなの雅春を奪った女の子」
 と言って、理子に敵意を含んだ目を向けた。
「みんなとは何だ。俺は誰のものでもなかった筈だぞ」
 雅春は憮然とした態度でそう言った。
「そうよ~。だから、みんなの、なんじゃない。誰のものでも無かったし、
これからもそうある筈だったのに、誰かのものになっちゃうなんて、
信じられない。そう思わない?彰子は」
 同意を求められた彰子は、呆れた顔をしながらも、頷いた。
「まぁ、私もそう思っていたけど、こればっかりはしょうがないじゃない」
「彰子は理解があるわね。まぁ、あなたは最初の女で、もう大分前の
関係だから、そういう風に割り切れるんでしょうけど、私は最後の
女だから、そうもいかないわ~」
 その言葉に、理子はこの女性が、あの文化祭の振り替え休日で
一緒だった女性なのだと理解した。どこかで見たような顔だとは
思っていたが、すぐには気付かなかった。
「えーと、あなた、何て言ったかしら?」
 と、彼女は理子の方を見て言った。
「はじめまして。増山理子です」
 理子はにこやかに、わざとフルネームを言った。その理子の
態度と言葉に、相手は驚いた顔をした。彰子も驚いている。
「先生。この方は?」
 理子は隣に座る雅春に問いかけた。
「ああ。真下望さん。昔付き合ってた」
 雅春は言いにくそうに言った。
「あの時の方ですよね?振り休の時の・・・」
「ああ。そうだ」
「あなた、私の事を知ってるの?」
 望が理子に鋭い目をして言った。
「真下さんが先生と一緒にいる所を見た事があるので。それに、
先生からも聞いていますし」
 理子の言葉に望は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「そうなの。じゃぁ、私達が深い関係にあった事も、知ってるのね」
「はい。知っています」
 理子は顔色も変えずに平然と言った。
「あの時は、本当に参ったわ。何度、雅春から誘われたか。淡泊で
自分からは誘ってこないって聞いてたから、驚いちゃった。だから、
みんなからも羨ましがられてたのに、突然、別れを言い渡された
時には凄く驚いたし、納得いかなかったわ。だって、それまでは
全部、女の方から別れてたのよ」
「はい。聞いています」
 理子の平然とした言い方に望はうろたえた。
「おい。お前ここに何しに来たんだよ。喧嘩を売りに来たのか?」
 雅春がそう言った。
「雅春は黙ってて。私は彼女と話してるんだから」
 と、望は雅春を睨みつけた。
「再現ドラマを見させて貰ったけど、最近の女子高生は凄いわね。
担任の先生と恋愛だなんて。私達の時だって、そりゃぁ、
憧れたりしたけど、在学中はさすがに無理だったわ」
 そう言われても、理子は怯まない。だから何だと言った風情だ。
「望、やめなさいよ。見苦しいわよ」
 彰子がそう言ったが、望は引っ込まない。
「だって、悔しいじゃない。よりにも寄って、相手が教え子なんて。
雅春のような男の相手なら、もっと相応しい女性はいるでしょうに」
 その言葉に、理子は心の中では同意していた。理子自身も
最初からずっと思っていた事だ。未だに自分が選ばれた事が
半ば信じられない。愛されている自信はある。雅春を信じているからだ。
だが、何故自分?と言う思いは変わらずに心の中に残っているのだった。
「祝いに来てくれたんじゃ無いのなら、帰ってくれないかな」
 雅春は冷たい顔でそう言った。
「雅春・・・」
「その、『雅春』も止めてくれないか。付き合っている時には許してたが、
関係なくなれば、そう呼ばれる謂われは無い。別れてから随分経つのに、
今更泣きごとを言われても困る。お前を度々誘ったのは、ストレスが
溜まり過ぎていたからだ。勘違いしないでくれ。その事は、お前にも
言ってあった筈だぞ。俺が冷たい男なのは十分知ってるだろう。
別れた後まで泣きごとを言う女は、お前が初めてだ。お前はわざわざ、
嫌われる為にやってきたのか?」
 雅春の言葉に、望は涙ぐんだ。
「望、もういいでしょう?行きましょう」
 彰子が望を促した。望はそれを制して理子に向かって言った。
「ひとつだけ、訊きたいわ。あなたは、雅春がこういう男だって、
十分知ってるのね?」
「知っています」
「色んな女を弄んできた男なのよ?」
「はい。全部、本人から聞いています」
「平気なの?」
「はい。平気です」
 理子は自信を持ってそう答えた。
「若いのに、図太い子なのね」
 望はそう言って、去って行った。
「大丈夫?」
 彰子が心配になって、理子にそう問いかけた。だが理子は
平然とした顔で頷いた。
「彰子さん。心配してくださって、ありがとうございます。
でも私は大丈夫です。既に先生の事は全部知ってますから驚きません。
あなたと同じように妬かない女ですし」
 理子はそう言って、彰子に笑いかけた。その笑みに、彰子もつ
られて笑った。彰子は動じない理子に感心していた。
『妬かない女』の意味も、何故妬かないのか、互いによく
わかっている事を示している。
「あなたは、良い意味で図太いわね」
 彰子はそう言って笑うと、二人のそばを離れた。
「おい。図太いって言われたぞ。しかも二人から」
 雅春が理子にそう言った。
「そうですね。自分でもそう思います」
 理子はそう言って雅春に微笑んだ。その笑顔を見て、雅春も、
確かに彼女は図太いのかもしれないと思った。望とのやり取りを
傍で見聞きしていて、雅春は理子の動じない態度に内心、舌を
巻いていた。まだ高校を卒業したばかりの少女が、あんな風に
面と向かって言われたら、普通なら臆するか怒るか泣くかだろう。
だが彼女は冷静だった。
「君の度胸の良さには感心するよ。だが、済まなかった。
あんな風に言ってくるとは思って無かった」
「仕方のない事です。先生は人気者だから。それだけ好かれて
いたって事じゃないですか。でも、人の思いはままならないから」
そう言った理子の顔は少し寂しそうだった。
「何故、そんな顔をする?」
「そんな顔って?」
「寂しそうな顔をしている」
「だって。好きな人から好きになってもらえないのって、
寂しいじゃないですか」
 理子の言葉に、雅春の心が少し痛んだ。思う人から思われない
経験をした事が無い。そもそも、思う事すら無かったのだから。
だが、もし、理子から愛されなかったらと思うと、胸が軋むのだった。
「君は優しいな」
 その言葉に理子は首を振る。
「何度もそういう思いをしてきたらからですよ」
「でももう、これからは、そんな思いをすることは無い。そうだろう?」
 雅春の言葉に、理子は明るい表情で頷くのだった。



        3.結婚式  了   4.愛の前では  へつづく。


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