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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 07

2010.08.08  *Edit 

 披露宴は、滞りなく終了し、二人で共に招待客と握手をしながら
見送った。こじんまりした宴をと思っていたのに、予想よりも多くの
人間が参加してくれ、賑やかで華やかな祝いの席となった。ただ
一つだけ残念に思うのは、ごく限られた生徒達以外には教えられ
なかった事だ。3年続けて担任を持っているのだから、生徒達に
知らされてもおかしくない。
 だが、相手は理子だ。その事を知った女生徒達の反応を思うと、
大っぴらにはできないのだった。いずれは知られる事になるだろう。
そう遠からぬうちに。理子に危害が及ばない事を祈るばかりだ。
 帰りの挨拶で校長と顔を合わせた時、雅春も理子も、何だか
バツが悪いような思いがした。特に雅春は尚更だった。だが校長は、
「お幸せに。これからも頑張りたまえ」と言って笑っただけだった。
 この後、雅春の学友達の主催で夕方から2次会が開かれる。
理子の友人達も招待されていて、披露宴に参加出来なかった他の
多くの友人達が参加するらしい。だから、ここでの挨拶は
サッパリしていた。
 全員を送り出した後、二人は元の姿に戻った。再び顔を合わせた時、
雅春は薄いモスグリーンのスーツを着ていて、とても落ち着いた
雰囲気なので、理子はうっとりとした。理子の方は、矢張り
グリーン系の光沢のある可愛らしいワンピース姿で、下ろした髪の
所々が緩い巻き毛になっていて、いつもとは違う少し甘い感じに
雅春の胸は高鳴った。
 二人の衣装は紫のコーディネイトだった。紫は、終了後の、
2次会へ出かける2人の為の衣装まで考えて用意していたのだった。
 新郎新婦と親族一同は、このホテルの最上階にあるスゥィート
ルームへと移動した。雅春の父、雅人が二人の為にこの部屋を
予約した。ここで皆、一端休憩した後に、二人以外は帰る。
二人は夕方、2次会へと出かける。
「お義姉さん、何から何まで、ありがとうございました」
 理子は紫に礼を言った。
「いいのよ。可愛い弟と妹の為だもの。人生最良の日なんだから、
それなりに演出しないとね。本当に、今日は良かったわ」
「だけど姉貴。あの再現ドラマは、ちょっとなぁ」
 と、雅春が少し困ったような顔をして言った。
「あら、何で?みんな感動してたじゃない」
「ドラマ自体は、良かったと思う。生徒達の演技も素朴で良かったし。
ただ、その、二人が結ばれた件は伏せておいて欲しかったかなぁ」
「結ばれたって、エッチした事?」
「そんなの、敢えて言わないでくれよ」
「あら、珍しいわね。恥ずかしいわけ?」
「俺は平気だけど、理子は違うだろう。それに、学校関係者、
特に校長なんかは、理子が在学中に俺は彼女に手を出さずに
我慢していたと信じていたようだし、理子のお母さんなんか、
真っ青な顔してた。あの人は潔癖症で、婚前交渉なんてあり得ないって
人だからさ。ましてや俺は担任だし。在学中に彼女に手を出したと
知って、物凄く怒ってるんじゃないのかな。なんか、
顔を合わせられないよ」
 雅春も気になって母の様子を窺っていたのだと、理子はその時に知った。
「随分と堅苦しいお母さんなのね。でも、もう済んでしまった事じゃない。
こうして幸せに結婚してるんだし、気にする必要無いと思うけど」
 紫の考えは一般的で当然だと思う。誰もが同じように思うだろう。
だが、母の事をよく知っている理子にとっては、そんな風に簡単には
流せない。ただ思うのは、雅春との事も、このドラマも、紫の言う通り、
どちらも済んだ事だ、という事だ。どんなに気にしても、
どうしようも無い。理子は母の方を見た。雅春の両親と、父と一緒に
談笑している。機嫌が悪そうには見えなかった。
「お姉ちゃん。おめでとう。良かったよ、凄く」
 妹の優子がやってきた。そばには従姉妹達もいた。
「理子、驚いたわよ~。こんなに素敵な男性だったなんて。
大恋愛だったんだねぇ」
3姉妹は目を輝かせていた。
「理子ちゃん、いいなぁ~。王子様とお姫様みたいだった。
私もお嫁さんになりたい」
 と、小学生の従姉妹が言う。
「新居は青葉台なんだって?うちから近いじゃない。遊びに
行っちゃおうかな」
 三姉妹の真ん中がそう言った。姉妹の家は、隣の都筑区だった。
「どうぞ、遊びに来て下さい」
 と、雅春が優しくにこやかにそう言った。
 女性に対して、そんな態度をとることは滅多にない。相手が理子の
親族だからだろう。そんな雅春を見て、従姉妹達はうっとりとした
目を向けた。
「さて。じゃぁ皆さん。我々はそろそろ引きあげましょうか」
 と、雅人が言った。それを合図に、親族たちは二人に祝辞と
別れの挨拶をして出て行った。
「お義父さん、お義母さん」
 と、理子は雅春の両親を呼び止めた。
「色々と有難うございました。スゥィートまで用意して頂いて・・・」
「何、遠慮はいらないよ。これは私達からの結婚祝いだ」
「ありがとうございます。お二人には、初めてお会いした時から、
ずっと、何くれとなく良くして頂いて、本当に感謝してるんです。
結婚の事でも色々と骨を折ってくださって。お二人のお力添えが
無かったら、こうして今は無かったと思うんです」
 雅春の母である博子が、理子の手を取って言った。
「理子ちゃん。あなたは私達の娘よ。親が娘の為にするのは
当たり前でしょう?あなたが喜んでくれて、とても嬉しいわ。
だから、そんなに恐縮しないで。あなた達の為になれる事が、
私達親の喜びでもあるんだから。それから、雅春の事で困った事が
有ったら、いつでも私達に相談してちょうだい。遠慮しなくて
いいのよ。私達はいつでも、あなたの味方だから」
 そう言って優しく微笑む博子を見て、理子の胸は熱くなった。
本当に優しい人だ。先生の家族はみんな優しい。
「ああ、それから。ごめんなさいね。再現ドラマを見て、私達も
初めて知ったの。私達の留守をいい事に、あなたにとんでもない
事をしてたのね、うちの息子は」
 と、博子は雅春を睨みつけた。
「いえ・・・」
 と、理子は赤くなった。恥ずかしくて、何と返事をしたら
良いのかわからない。
「理子ちゃんはまだ高校生だし、どう見たって、純粋でしょう?
教え子でもあるんだから、卒業するまでは我慢するものと思って
たのよ、私達。普段から淡泊そうだし、大丈夫だろうって
信用してたのに、見事に裏切ってくれてたのね。全く呆れたわ。
恥ずかしくて、あちらのご両親にも合わせる顔が無くて申し訳
無かったわ。謝っておいたわよ、マー」
「ほら、姉貴―。どうしてくれるんだよー」
 と、雅春が憮然とした顔で姉に言った。
「あら。思わぬ展開になっちゃったわね。でも、自業自得よ。
そう言うのを身から出た錆って言うのよ」
紫は開き直った。
「それはそうだけど、だからって、あそこまでオープンに
しなくたって、良かったじゃないか」
 雅春の言葉に、両親は同意した。
「そうよ。そのあたりは、適当に匂わす程度に留めておけば
良かったんじゃないの?」
「お言葉を返すようですが、あの場面は、二人の愛を語るのに
必要だったのよ。あれがあってこそ、その後の二人の過程が
生きるんじゃない」
「あの・・・」
 と、理子が話しに割って入った。
「ああ、理子。ごめんなさいね。あなたが一番、恥ずかしい
思いをしたわよね」
「そうなんですけど、それよりも、随分と細部まで再現されてた
なって思ったんですけど、お義姉さん、よくご存じですよね、
色々と・・・」
理子の言葉に、雅春と紫が顔を見合わせた。
「やっぱり、先生がお義姉さんに?」
 理子の言葉と視線を受けて、雅春はあらぬ方を見た。紫もである。
「理子ちゃん。この二人には気を付けた方がいいわよ。マーはね。
何でも紫に喋っちゃうの。まぁ、紫が上手い事誘導尋問して、
マーはそれについ乗せられてしまう形で喋っちゃうんだけどね」
「さて。私もそろそろお暇(いとま)しようかな」
 と、紫は言うと、バックを手に取った。
「じゃぁ、お父さん、お母さん、帰りましょう」
 と言って、そそくさと出て行った。それを追うように、両親も帰った。
取り残された雅春は、所在なげにソファに座った。
 バツが悪いのだろう。理子の方を見ようとしない。理子は軽く
吐息を吐くと、周囲を見渡した。ミニキッチンがあるので、そこで
お茶を淹れ、雅春の前に置き、隣に座った。するといきなり雅春は
抱きついて来て、「理子、ごめん」と言った。
「どうして謝るの?」
 理子は敢えて、そう言った。
「姉貴にみんな喋った事さ。まさか、あんな物を作られるとは
思って無かったから」
 理子は抱きしめる雅春を押しやって、その顔を見た。綺麗な顔が
少し不安そうな表情をしていた。その顔を見て理子はクスリと笑った。
「話す事と、ビデオ制作との間には、何の関連性も無いと
思いますけど?」
「俺が話してなきゃ、あそこまでリアルじゃなかったんじゃないかな」
「それはそうでしょうね。でも、ああいう物を作られなければ、
話す事は構わないってわけではないですよね?」
 理子にそう言われて、雅春は横を向いた。
「先生。私、別に怒ってないですから」
 雅春は驚いたように理子を見た。
「本当に?」
 理子は頷く。
「私との事を、人に話されても私は平気です。先生が話したくて
話す事を止めて欲しいとは思って無いですから。私だって、友達に
話したくなって話す事もあると思うし」
 雅春は理子の手を取った。
「本当に、構わないのか?」
「ええ。まぁ、今回の事は、再現ドラマとして公開されちゃって
恥ずかしかったですけど、あれも親がいなければ別に良かったんです。
私はああいうの、恥ずかしくても平気な方なんですよ。ただ、
うちの母は特殊だから、母にだけは知られたく無かったってだけで」
 理子の言葉に雅春は頷いた。理子は恥ずかしがり屋ではあるが、
若い女性にしては案外捌けていると言う事は既に付き合っていて
知っている。
 だが、一番のネックは、矢張りあの母親だ。お嬢様育ちだから
なのだろうか。昔ながらのモラルに凝り固まっている。最近の、
性に乱れた社会にあって、貴重とも言える存在だ。例え結婚相手で
あっても、正式に結婚するまでは、絶対に許さないと
考えている人に、あのドラマは衝撃だったに違いない。雅春も
彼女の反応が気になって、何度も顔色を窺っていたのだった。
「本当に済まない。姉貴はサプライズとして作ったんだろうが、
そうと事前に知っていれば、あの部分だけは入れないとか表現を
変えてもらうとか、何かしらの手は打ったのに」
 今更、こんな事で頭を痛める事になるとは思ってもいなかった。
もう結婚したんだから、全てはチャラだろうと思うのは、甘い
考えだと理子は思った。世間一般的にはそれで通るのかもしれないが、
理子の母には通用しない。だが、頭を痛めたところで、
どうしようもないだろう。既に知られてしまったのだから。
弁解するのも、おかしい。
「まぁ、仕方ないです。見られてしまったんですから。ただ、
これから先、風当たりが強くなるんじゃないのかな、とは思います。
だけど、先生。あの事だけは、お義姉さんに話されなかったんですか?
それとも話したけど、お義姉さんが気を利かせて入れ無かったとか・・・」
「話してないよ、あの事だけは。誰にも」
 雅春はそう言って、理子を見つめた。瞳の奥底に暗い影が
よぎったのを感じた。あの事とは、渕田の事件の事だ。
雅春はそっと理子を抱き寄せた。
「これからは、俺がずっと君を守る」
 雅春の腕の中で、理子は小さく頷いた。


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