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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 05

2010.08.06  *Edit 

 式の時間が迫って来た。親戚たちは、係の人間に誘導されて、
式場へと向かって行った。理子は一人、取り残された。賑やか
だった部屋がシーンとして、静粛な気持ちになっていく。もう既に、
書類上では結婚しているし、一緒に住んでいる。それでも、
こうしてウェディングドレスに身を包んでいると、これで本当に
結婚するんだなと言う実感が湧いてくるのだった。
「花嫁さん、こちらへ」
 と、暫くしてから呼ばれた。
 案内された場所へ行くと、父が立っていた。共に、式場の扉の
前まで歩き腕を組んだ。
「お父さん。色々ありがとうございました」
 理子は、父の腕を取った後でそう言った。宗次は理子の顔を見ると、
「幸せになるんだぞ」と言った。理子は黙って頷くと、正面を向いた。
 いよいよ入場である。
 この先に先生がいる。二日逢わないだけで、とても恋しくなる男性が。
 ベールを下ろされ、扉が開いた。理子は俯き加減で足もとを見ながら、
父と共にゆっくりと前へ進んだ。ドレスとベールが長く、歩くのに
少し重たい。静かな調べの讃美歌が聞こえる。それを耳にして敬虔な
気持ちになってくるのだった。
 祭壇の前に雅春が立っているのが見えた。ベール越しに俯き加減
なので、雅春の足しか理子には見えない。白い足許がスッキリした感じだ。
 父の腕から解かれ、理子は雅春の隣に立った。牧師の挨拶を受け、
聖書の朗読の後に、宣誓が行われた。言われた通りに復唱する。
雅春の美声が響き渡り、それだけで気持ちが昂って来た。祝福の
言葉を受けて、指輪を交換する。向き合って手袋を外した。
 雅春の胸元が見えた。白一色のタキシード姿のようで、とても
清潔で清廉さを感じるが、まだ顔は見れなかった。互いの指に
指輪をそっとはめる。再び自分の指に戻って来た指輪を見て、
理子は胸が満たされてゆくのを感じた。もう二度と外す事は無いだろう。
「誓いのキスを」
 と牧師に促されて、理子はドキドキした。顔にかかったベールを
持ち上げられて、上を向いた。その瞬間、心臓を射抜かれたような
ときめきを覚えた。伸び掛けていた髪を少し切られて後に流した、
端正な美しい顔がそこにあった。真っ白なタキシードに白のネクタイ。
理子の好きな眼鏡姿が、頭脳明晰でハンサムな若き貴公子のような
雰囲気を醸し出していて、溜息が洩れる程、素敵だった。
 雅春は、ベールに隠れた理子の顔が露わになったのを見て、
その、可憐で美しい姿に見惚れた。既に、ベールに覆われたドレス姿を
見た時から、胸が高鳴っていた。姉が選んだドレスは、まだ十代の
ピュアな理子の雰囲気によくマッチしていて、とても美しかった。
父と共に静かに自分の方へと歩いてくる理子の顔を、早く見たかった。
 この二日間、久しぶりに理子と離れて、これまでに感じて来た
以上の寂しさを味わった。理子は今頃、何をしているんだろう。
またお母さんと喧嘩したりしていないだろうか、と思うばかりだった。
 二人は互いの美しい姿に見惚れたまま、見つめ合った。その時間の
長さに場内に静かなざわめきが起こり、見かねた牧師が再び
「誓いのキスを」と促した。その言葉に、雅春はハッとして、
顔を寄せて来た。理子は雅春とキスをする時、いつも胸が破裂
しそうなほど高鳴る。あの綺麗な顔が自分に近づいてくるだけで、
頭が真っ白になってしまう。
 唇が重なった瞬間に、全てが消え去り、世界は二人だけのものになる。
この世に存在するのは自分と先生だけ。そんな感覚に襲われる。
 雅春の柔らかい唇から甘い吐息が漏れる。理子はその唇を受けて、
小さく震えるのだった。長いキスだった。誓いのキスにしては
長すぎるキスに場内がどよめいた。30秒くらいは続いただろうか。
再び見かねた牧師が、コホンと咳をした。その咳に促されて、
雅春は唇を離した。
 唇を離してから改めて自分の置かれている状況にハッとする。
両親や親族の前で、キスをしていたのだ。急に恥ずかしくなった。
 理子は頬を染めて、雅春を見た。微かに笑みを浮かべたその顔を
見ると、幸福感が湧いてくるのだった。この人に愛されている
喜びを噛みしめる。
 皆に祝福され、フラワーシャワーを浴び、ブーケを投げる。
 式が終わると、写真撮影だ。写真室へと向かい、まずは理子一人で
撮影し、それから二人で撮影する。王子様のような雅春の隣に立つ
だけで、胸がときめいてくる。式からずっと、理子は幸せな気持ちで
満ち足りていた。普段から素敵な先生だが、今日は素敵過ぎる。
ずぅっと傍にいたい。片時も離れていたくない、そう思わずには
いられない。
 二人の撮影の様子を見ている従姉妹達は、熱い溜息を洩らしていた。
理子の結婚相手が、こんなにイイ男だとは思ってもいなかったからだ。
背が高くてスタイルが良い上に、整った目鼻立ち。知的でありながら、
清潔な色気もあり、ついつい見惚れてしまう。
 二人の撮影後、親族での写真撮影をし、一同は披露宴会場へと移動した。
新郎新婦は一端控室へと戻った。
雅春は隣に座る理子の手を握った。手を握られて、理子は頬を染めて
雅春を見る。
「理子。とても綺麗だよ」
「先生も、とても素敵です。素敵過ぎて、私、気絶しちゃいそう」
 理子の言葉に雅春は笑った。
「大袈裟だな。でも俺も、君を見て気絶しそうだった」
「先生こそ、大袈裟ですよ」
 そう言う理子は真っ赤だった。
「いつも君は可愛いが、今日は特別だな。ドレスがとてもよく
似合ってる。ずっと、そのままでいさせたい気持ちと、脱がせたい
気持ちが、俺の心の中で鬩(せめ)ぎ合ってるよ」
 理子は赤くなったまま俯いた。そんな事を言われて、何と返したら
良いのかわからない。だが、このまま雅春の腕の中へ身を任せて
しまいたいような気持が湧いてくる。誰にも邪魔されず、
この素敵な男性の腕の中にずっといたい。
「そろそろ、お時間です」
 係の人間にそう促されて、二人は立ちあがった。

 披露宴は、予定通りに進んで行った。
 一通りの事が済んで食事が始まった。それぞれが料理を楽しみながら、
祝辞を述べに二人の所へやってきた。
「増山、おめでとう!」
 と、大学の仲間達がやってきた。古川もいる。
「若くて可愛いお嫁さんだな。羨ましいぞ」
 と言われた。
 最初の二人の紹介の時、理子が雅春の教え子で、今年の春に高校を
卒業して東大へ入学した話しを聞いて、多くの者が驚いていた。
「去年、同窓会でこいつが結婚するって言うんで、みんな驚いたん
ですよ。どんな相手なのか教えてくれって言っても、当日のお楽し
みって事で教えて貰えなかったんだけど、やっとお会いできて、
嬉しいですよ、僕達」
 と、敬語で言われて理子は恐縮する。
「古川が言った通り、本当にお姫様みたいに可愛い」
 と、別の一人が言った。
「最近の女子高生は凄いけど、理子さんは凄く清純な感じだな。
増山が惚れるのも、わかる気がする。ケバい女子大生に囲まれてた
からなぁ。いいなぁ、教え子なんて」
 雅春の友人達が席に戻った後、結婚式の模様を撮影した映像が
上映された。
 長く見つめ合って、なかなか誓いのキスへ入らない二人に牧師が
キスを促したシーンで軽く笑いが起こった。そして、長いキスを見て
歓声が湧き、終わらないキスに牧師が咳をした所では爆笑だった。
 上映後、雅春の友人達が、「キースッ!キースッ!」とキスを
催促しだした。その声に、会場内の他の者達も便乗して手拍子と
共に声が大きくなる。そんな場内の様子に、雅春は苦笑した。
理子は真っ赤になった。
「理子」
 と、雅春に声を掛けられて、理子が雅春の方を向くと、雅春の顔が
迫って来た。理子は戸惑ったが、理子のそんな様子にお構いなく、
雅春の唇が理子の唇と重なった。カァーッと体の奥から熱くなるのを
感じた。熱くて長いキスだった。理子は恥ずかしくて、身を固くしていた。
 場内から歓声が湧く。この人は、学校の先生達や元教え子達の
前でもあるのに、恥ずかしくはないのか?そう思いながら理子は
雅春の唇を受け止め続ける。そして、やっと雅春の唇が離れて
ホッとしたのも束の間、雅春は名残惜しげに再び唇を重ねた。
場内から大きなどよめきと歓声が上がり、口笛や指笛が飛び交った。
 理子はたまらなくなって、そっと雅春を押しやった。雅春はそれを
素直に受け止めて、理子の唇から離れたのだった。理子は恥ずかしくて、
まともに雅春の顔を見れない。それに、会場内を見渡す事もできず、
暫くの間俯いたままだった。
「ここで、お二人の馴れ染めからゴールインするまでのドラマを、
お二人の学校の生徒さん達が再現ドラマとして演じられた作品を
上映致します」
 司会の言葉に理子は仰天し、雅春を見た。雅春も驚いた顔をしていて、
理子の視線を受けて、「俺も知らない」と言わんばかりに首を振った。
 場内が暗くなり、映像が流れ始めた。場面は、雅春が朝霧高校へ
赴任してきた所から始まった。雅春役を枝本誠一がやっていた。
それを見て雅春は思わずプッと笑う。枝本と雅春では、眼鏡を
かけていて知的と言う共通点以外では雰囲気も違うのだが、上手く
メイクや衣装で雅春の雰囲気を出していた。雅春の特徴である黒子も
自然な感じで描かれていた。
 枝本雅春の登場に、教室内が騒然とした。そんな中で、一人静かに
淡々としている女生徒として、最上ゆき演じる理子がいた。こうして
始まったドラマは、二人が度重なる偶然の中で徐々に気になる
存在から、いつの間にかその心に住みつく存在へと発展して
いく様を上手に描いていた。
 初めてのデートの、平安展のシーンでは、古川自身が出て来たので
学友達から笑いが起こった。そして、初めてのキス。やがて、
クリスマスの初体験、その後の受験と恋愛との狭間での苦悩。
雅春の事故、そして入試・・・。
 理子は見ていて、とても恥ずかしかった。よく、ここまで再現したと
思う。どうやらプロデュースしたのは義姉の紫らしい。だが、もう
結婚したとは言え、在学中、しかも付き合いだしてまだ間もない
高2の時に結ばれた事を、こうして公表してしまって良いのだろうか。
 理子は恐る恐る、盗み見るようにして母の素子の様子を窺った。
婚前交渉なんて絶対に許さないと公言している人だ。二人の関係を、
清いままだと思っていた筈だ。母は、ドラマを食い入るように見ていた。
その表情は硬い。さぞや、腹の中は煮えくり返っている事だろう。
 校長も驚いているに違いない。他の先生方には、新居へ来訪された
時に公表した。諸星や石坂はショックを受けていた。在学中は理子に
手を出していないと信じていたからだ。結果として結婚したから
良いようなものの、そうでなかったら大目玉だ。
 だがドラマからは、二人の真剣な思いが伝わってきていた。
互いに互いが無くてはならない存在であり、互いを大切に思い、
互いを欲し、互いを尊重していた。特に理子にとっては、雅春の
気持ちの流れをこのドラマで改めて知る事ができた。自分の
知らない所での雅春の心の変遷を知る事ができたのは、嬉しい事だった。
 大学の合格発表のシーンは特に感動的だった。共に喜び合い、
雅春が理子を抱き上げて振り回す所まで忠実に再現されていた。
そして、二人で手を繋いで、合格の報告と結婚の許しを貰う為に
理子の家へと向かう所で終わっていた。
 盛大な拍手が巻き起こった。教師と生徒と言う立場を越えて
愛し合う二人が、そこにいた。互いの立場に苦しみながら、
それを乗り越えて絆を深めた恋人同士がそこにいた。理子は、
自分達の歩んで来た道乗りに、改めて感動して涙ぐむのだった。



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~ Comment ~

Re: 不覚にも…>OH林檎様 

OH林檎さん♪

あらまぁまぁ…。泣かれてしまいましたか。
紫さん、きっと喜んでらっしゃいますよ。
二人の苦労も報われましたね(;_;)

だけど、……。

この先……。

…言わないでおきますね^^

不覚にも… 

泣いてしまいました。
まんまと紫姉さんの策略にはまってしまった!(笑)
先生、理子ちゃん、
いつまでのお幸せに…。
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