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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 04

2010.08.05  *Edit 


 式場には、雅春の家族の方が先に来ていて、玄関先で紫が迎えて
くれた。雅春は支度中で、両親は新郎控室の方にいると言う。
「本日はおめでとうございます」
 と、紫が両親に丁寧に頭を下げた。
「ありがとうございます」
 両親も丁寧にお辞儀した。
「お母さんと、優子ちゃんは別室で着替えとメイクがありますから、
係の人に付いて行って下さい」
 と、二人を促した。二人とも、式場の方で貸してくれる衣装に
着替え、メイクと髪のセットをして貰う。
「さぁ、理子はこっちよ」
 と、紫が理子を先導する。紫の合図に、担当者がその先に立った。
 今日の紫は、群青色のドレスを着ていて、とても美しかった。
「お義姉さん、とっても綺麗ですね」
「何言ってるの。あなたの方が、もっと綺麗になるのよ。
今日は主役なんだから」
 そう言われて赤くなる。自分が綺麗になるなんて、
ちょっと想像できなかった。
 メイクルームに到着すると、紫は別れを告げた。
「私は、ここまで。あとはこちらに任せてあるから。
また後で逢いましょう」
 紫は優しく微笑んで、その場を後にした。
 理子は、係の人に促されて中へ入る。ドレスは既に試着して
いるからわかっているが、具体的な髪形やメイクを、実は知らない。
 どんな風にするのか、紫の中にイメージがあるらしく、
そのイメージに沿った装いになるらしかった。
 化粧をするのは初めてだった。大学では、同級生はみんな
化粧をしていた。愛理は、理子もこれからはするべきだと言った。
雅春にはまだ言って無いが、話したら何と言うだろう。飾らない
女性が好きな彼が反対しないだろうか。
だが、紫も薄化粧だが、している。
 鏡の中で自分が変わっていく。不思議な感じがした。だが、
出来あがってみると、大きく変わった感じはしない。ナチュラルな
感じだ。髪は結い上げてあるが、幾つも小さな三つ編みが垂れ
下がっていて、何だかとても可愛らしい感じがする。ちょっと、
子供っぽく無いだろうか。
 メイクとヘアが終わり、ドレスに着替える。紫の見立てた
ドレスはとても素敵だった。白のシルクサテンでドレスの下半分から
裾に向かって、綺麗なバラの花々が美しく刺繍されていた。上半身は、
シンプルで、サテン地は肩までだが、肩から胸、そして首元までは、
薄いオーガンジーの布になっていて、素肌が薄らと透けて見える。
 ドレスがきっちりと胸元まである堅苦しいタイプと違って、
上品でエレガントな感じがとても素敵だった。そのドレスを着ると、
ちょっと幼いと思われた髪型が、逆に初々しさを引き立てている
感じがして良かった。
 鏡に映った自分を見て、理子は気持ちが高まった。中心が淡く
緑がかった白薔薇のブーケを持たされた。とてもロマンティックだ。
お姫様になったような気分になる。
 係の者に案内されて、理子は新婦控室へと向かった。部屋へ一歩
入ったら、「わぁ~」っと、歓声が湧いた。恥ずかしくて俯いたまま、
奥の席へと導かれ、ドレスとベールが崩れないように椅子に座らされた。
 座ってから、そっと顔を上げると、久しぶりに会う親戚のみんなが、
嬉々とした表情で理子を見ていた。母も綺麗な着物姿で立っていた。
妹の優子は、可愛いピンクのドレスを着ていている。
「お姉ちゃん、凄く綺麗・・・・」
 妹はそう言うと、カメラを構えて写真を撮った。
「理子、結婚おめでとう」
 母方の祖父母がそばへやって来た。
「おじいちゃん、おばあちゃん・・・。ありがとう」
 祖母は涙ぐんでいた。
「急な話しでびっくりしたよ。まさか、こんなに早く結婚するとはね。
でも、花嫁さん姿を見れて良かった」
 祖母は70歳、祖父は77歳だ。長寿の時代ではあるが、いつ
どうなるかは誰にもわからない。彼らは初孫でもある理子の花嫁姿を
見れて、大いに喜んでいた。
「理子、おめでとう。本当にびっくりしたよ。まだ高校を卒業した
ばかりなのにな。それもお前、東大生になったんだってな。こんなに
驚かされるとは思って無かったよ」
 母の一番下の弟である叔父の満がそう言った。満は兄弟の中で
一番勉強嫌いで、高校を中退しているが、度胸があって、愉快な男だった。
「本当にな。理子が東大生になって、結婚だもんな。しかも相手を
聞いて更に驚きだ。中田製薬の重役の御曹司なんだってな。しかも、
高校の時の担任だって?お前って、大人しそうな顔をして、
結構やるんだな。感心したぞ」
 もう一人の母の弟である叔父の浩志がそう言った。
 母の実家である真壁の祖父は、四国の有名な酒造会社の次男で、
東京に出て来て身を起こし、有名企業の工場長をやっていた。一族も
優秀な人間が多く、母の従兄弟には東大、京大出身者が何人もいる。
そんな中で、お嬢様として母は育ってきたのでプライドが高いし、
高学歴志向だった。それでいながら、高卒でしかない、農家の
次男坊の宗次と恋愛し、結婚したのだった。
 母はお嬢様大学出身だが、すぐ下の弟の浩志は中堅の私立大学
出身だし、その下の弟の満に至っては高校中退なので、一族の中では、
少し肩身の狭い思いをしていた。
理子が中学の時に、理子にもっと優秀になって欲しくて、東大出の
従兄弟がやっている進学塾へ通わそうとした事があったのだが、
理子の実力を知った従兄弟がやんわりと断ってきて、母は酷く
腹を立てたのだった。その娘が東大生になったのだから、母にとっては
鼻高々だし、中堅所出身の叔父にとっても、面目躍如な気分だった。
「理子、おめでとう。いい相手みたいで、良かったな」
 今度は、父方の伯父である正一から声を掛けられた。こちらは、
まさに農家の人の好い小父さんと言った風貌だった。宗次と同じように、
人が好い。
 その娘達である、理子の年上の従姉妹の三姉妹も、来てくれていた。
「私達より先にお嫁に行っちゃうなんて、ずるいぞ~」
 と、一番下の従姉妹が言った。ここの三姉妹は、一番上が一番
しっかりしたお姉さんと言った感じで、いつも親を助けて家を盛り
たてていた。下へ行くほど、くだけてくる。一番下が一番奔放だった。
 母の弟の浩志の娘達二人も、そばへやってきた。
「理子ちゃん、凄い、綺麗・・・」
 この二人は、優子よりも年下で、まだ小学生だった。祖父母と
同居しているので、理子達が祖父母の家へ遊びに行くと、いつも
喜んでくれて、理子と優子を慕ってくれていた。二人とも、目が
ぱっちりとしていて、愛くるしい顔立ちをしている。
 こうやって見ると、理子の周囲は女ばかりだ。男の兄弟や
従兄弟もいない。父も母も、男兄弟なのに。男兄弟しかいない母は、
時々、理子と優子の姉妹を羨ましがる。二人が仲が良いので尚更だ。
だが、これだけ集まると、矢張り女ばかりでかしましい。
「理子ちゃん。おめでとう」
「ゆきちゃん!」
 理子は、親族だけの式に、最上ゆきを招待していた。彼女を身内と
同じように大事に思っているからだ。高校に入学して仲良くなった時に、
互いの結婚式には絶対に呼び合おうね、と約束をしていた。
「凄く、綺麗で素敵だよ。良かったね」
 ゆきはそう言って、涙ぐんでいた。
「ゆきちゃん。ありがとう・・・」
 ゆきの涙を見て、理子も涙ぐむ。
「駄目だよ、泣いちゃ。お化粧が落ちちゃうじゃない」
「だって、ゆきちゃんが泣くから・・・」
 二人は手を取り合い、見つめ合った。万感の思いがそこにはあった。
自分の気持ちを分かち合えるのは、彼女しかいない。母との確執も、
彼女には話してあった。随分と励まして貰った。
「理子ちゃん。幸せになってね。相手が先生だから
大丈夫だと思うけど・・・」
「うん。ありがとう」
 みんなと記念撮影をする。何枚も何枚も一緒に写真を撮らされた。
そんな中、雅春の両親と義姉が挨拶にやってきた。
「この度は、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
 雅春の両親は、理子を見て、「ほぉ~」と感嘆の声を上げた。
「理子ちゃん。凄く綺麗よ。溜息がでちゃうわ」
 と、義母の博子が言った。
「ありがとうございます」
 仄かに頬を染める。
「理子。思った通り、素敵に仕上がったわね」
 紫がそう言って、満面の笑みを浮かべた。
「お義姉さん。ありがとう。素敵にコーディネイトしてくれて」
「どういたしまして。理子のピュアな感じが生きていて、凄くいいわ。
これは、マーも悩殺されちゃうわね」
「あの、先生は?」
「マー?あっちも、素敵に出来あがってるわよ。女生徒達がいたら、
失神するかもね」
「どんな感じなんですか?」
「それは、秘密。逢ってからのお楽しみよ。びっくりするわよ~。
お互いに」
「私も失神しちゃったら、どうしましょう?」
「その時は、マーが介抱するだろうから、大丈夫」
 そう言って笑う紫は、とても愉快そうだ。そういう時の顔が、
雅春とよく似ている。
「では、私達はこれで。また後のお式で」
 挨拶を終えて、3人は出て行った。
「新郎のお姉さんって、凄く綺麗な人ね~。お婿さんは、
一体どんな人なの?」
 年上の従姉妹が言った。
「凄く、カッコ良くて、素敵な人ですよ」
 と、ゆきが答えた。
「ええ~?本当に~?」
 疑わしそうに言う。
「百聞は一見に如かず、です。この後、本物に会えばわかりますよ。
驚きますよ」
 ゆきも、愉快そうに言うのだった。



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