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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 02

2010.08.03  *Edit 

「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
 部屋へ入った途端、妹がそう言った。
「大丈夫って何が?」
「金曜日の夜に来るなんて、大変じゃん。それに新婚さんなのに」
「まぁね。でも、仕方ない。先生も承諾しなさいってメールしてきたし」
「先生は、断れないのは決まってるじゃん」
「そうだけど、私だって無下には断れない。別に勉強を見るのが
嫌な訳ではないしね。まぁ、できれば極力摩擦は避けたいしさ」
 結局は、雅春も同じ気持ちなのだろう。早すぎる結婚に対する
親への負い目とも言える。だから、親の意向は、出来る限り受け
入れるべきと思っているに違いない。
「それに、金曜が無理なら休日に来いって言われても、それこそ嫌だしさ」
 休みくらいは、全てから解放されて、二人の時間を満喫したい。
休みの日は最高だ。それこそ朝から晩まで、ずっと二人でいられるからだ。
帰宅時間も気にしなくて良い。
 一昨日は祝日だったから、二人で一緒に家の中の事をし、
一緒に勉強をし、お喋りをした。雅春は早速、窓拭きをしてくれた。
大掃除の時くらいしか窓拭きはした事が無いと言うので、要領良く
やるコツを理子が伝授した。体が大きく腕が長いから、呑み込みの
早い雅春は、あっと言う間に仕事を終えてしまった。
「へぇ~。理子は普段、こんな風にしてやってたんだ」
 と、感心していた。
 こんなに早くに済むなら、これからは手の届き難い場所は
雅春にお願いしようと決めた。
 勉強も、久しぶりに見て貰った。大学の勉強での要領も教えてくれた。
理子にとっての雅春は、永遠に先生だと改めて思う。本当に頭の良い人だ。
勉学に関しては、一生、追い越せる事は無いだろうと思う。
それに、一緒に暮らしてみてわかった事は、他人が思うよりも
遥かに努力家だと言う事だ。
 確かに、素養としての頭の良さはある。頭の回転も速い。記憶力も良い。
だが、それらが生きているのも、皆その並々ならぬ努力があるからだと思う。
自分を甘やかすと言う事をしない。常に努力している。そんな雅春を
見ていると、理子自身も、もっと自分に厳しくなければと思えてくる。
「じゃぁ、勉強、しようか」
 理子は優子を促し、優子の勉強を見た。そして驚く。成績表は
ほぼ真ん中の筈なのに、実際の習熟度を見ると、どう見ても平均とは
思えない。基本的な事を習得できていない。数学などは特に顕著だった。
国語の読解も怪しいし、英語の基本文型もわかっていない。これでは、
確かに県立は難しいだろう。
 まずは、基本をしっかり習得させなくては。自分が高校受験の時は
どうだっただろうかと、思い出す。あまり苦労した記憶が無い。
レベルを落とした事もあるが、そこまで積み重ねて来たものが確実に
あったので、その上へ更に積んで行けばいいだけの事だった。
それにしても、何故ここまでできないのか疑問に思う。
 今回の優子の状況を見て、気付いた事があった。一つは、優子の
思考回路はとてもゆっくりだと言う事だ。だが、ゆっくりではあるが、
決して頭が悪いわけではない。時間がかかる事と、頭が悪いと
言うことは比例していない。
 優子のペースに合わせて、丁寧に教えてやる事。どこに躓(つまず)いて
いるのかに気付いてやる事が大事だと思った。躓いている部分が
解消されると、霧が晴れたように、その後の見通しも良くなると
言う事は、自分でも経験している。
 こういう場合、思わぬ所、普通ならサクサクと自然に理解して
いるような部分で躓いている事が多い。だからこそ、そこが解消
されると後は嘘みたいに楽になる。
「優ちゃん、とりあえず1,2年の教科書を用意しておいて。
一旦基本に立ち返った方が良さそうだから」
理子の言葉に優子は不服そうに「えー?」と言った。
「えー?じゃないの。基本をしっかり押さえておかないと、
いつまで経っても、わからないままだよ。それじゃぁ困るでしょ?」
 前途多難な気がしてくる理子だった。
 この日、父は相変わらずの遅い帰宅だったので、夕飯は3人で食べた。
当然の如く、夕飯の支度を手伝わされた。母自身は、実家へ帰った
時には自分は何もせずに理子に手伝いをさせる。なのに、実家へ
帰って来た娘には手伝わさせる。結局のところ、何だかんだと自分に
とって都合の良い理由をつけては、自分は極力やらずに楽をしようとする。
そんな母を見て、理子はずるいと思うのだった。
「お姉ちゃん、もう随分前から、素敵なペンダントをずっとしてるよね。
それに、いつの間にかブレスレットも」
理子は妹の言葉に満面の笑みを浮かべた。
「よく気付いたね」
 理子は、家族にはあまり気付かれないようにしていたのだった。
ブレスレットは去年のクリスマスだから、ずっと長袖の下に
隠していたし、ペンダントはなるべく外に見えないようにしていた。
夏場も衿の付いたものを着る事が多いので、たまにしか見えない。
「あら、そう言えば、そのペンダントは前から時々見るわね。
ブレスレットは初めてだけど」
 と、母が言った。
「これはね。ずっと内緒にしてたんだけど、ペンダントは一昨年の、
ブレスレットは去年のクリスマスに先生から貰った物なの」
 そう言って理子はうふふふ・・・と笑った。
「へぇ~、そうだったんだ。凄い素敵だよね」
「そうでしょう。自分じゃ買えません」
「それって、イミテーション?」
 と母が言った。その言葉にむっとする。
「まさか。本物のダイヤよ。緑の石はツァボライトって言う宝石。
チェーンはプラチナ。ブレスレットだって、白金だし、ここに
付いてるのは、小さいけどやっぱり本物のダイヤ」
「すご~い」
 と、優子は目を大きくして驚いていた。
「いいな~。やっぱり彼氏が大人だと、プレゼントで
くれる物も違うんだね」
「ほら、このブレスレットは先生の名前のMよ。揺れると
ダイヤが光ってね。可愛くて素敵でしょう?本当はもっと
皆に見せびらかしたかったんだ」
「見せびらかしてどうするの。はしたない」
 母がそう言う。
「彼からのプレゼントなんだから、自慢したいに決まってるじゃん」
 と、母の言葉に妹が言った。
「馬鹿みたい」
 母はそう言って横を向いた。
 何故、娘と一緒に喜んでくれないのだろう。問い糺(ただ)したく
なるが、今は止めておく。大事な結婚式の前だ。
ヘソを曲げられてはかなわない。
 翌日も父は仕事だった。
 理子は朝早いので、出勤前の父に会った。
「いよいよ明日だな」
 と、理子の顔を見た父は言った。
 理子は父にトーストとミルクを出した。父はそれを食べる。
「朝食をここで食べるのは、お前がいなくなって以来だな」
 そう言われて、何だか切なくなる。父とは、理子が受験の為に
朝型生活になってから、毎朝コミュニケーションを取るようになった。
父はお喋りな割には、家族とは会話らしい会話はあまりしない。
会話をすると言うよりも、講釈師のように一人で喋るタイプだ。
それでも、毎朝顔を合わせていると、自然と親密になってくるものだった。
「新しい生活はどうだ?大学の方は慣れたか?」
「うん。大分慣れて来たかな。こんな事を言うのもなんだけど、
自分的には、親から解放されて自由になった感じがするけどね」
「そうか。でも一人暮らしをしているわけではないから、それなりに
大変ではあるんだろう?」
「この家が自分の事は自分でやれって家だったお陰で、一通りの事は
できるから、あまり大変とは思わないの。そういう点では、そういう
家で良かったのかなとも思う。ただ、同じ事をするにしても、心持ち
ひとつで違うわよね。これまでは、どちらかと言うと嫌々やらされて
きたって感じだけど、今は楽しんでやれてる。
だから大変だって思わないのかも」
「そうか。それならいい。先生は良くしてくれてるんだな」
「うん」
 理子は頷いた。
「今日はお客さんと商談の日なんだ。明日はちゃんと休みを取って
あるから、心配しなくて大丈夫だぞ」
「わかってるって。家の中ではお父さんは非常識な人だけど、
世間的にはお父さんが一番常識的だよね」
「なんだ、それは。意味がわからないぞ」
 理子は黙って笑った。
 自分の言った事に、自分で感心していた。父はまさにそういう
人だからだ。理子は時々、意図せずに核心を突いた事を言ってしまう
ことがある。そのせいで、相手を傷つけてしまう事も時々あった。
だが今回は名言だと自分で思う。
「お父さんが私達の事をわかってくれて、本当に良かった。私、
最悪の事を考えてたから。そうならなくて済んだのは、お父さんの
お陰だと思ってる」
 最悪の事とは、母・素子が最後まで反対して結婚式を欠席する事だ。
父の宗次まで反対だったら、二人して欠席と言う可能性もあった。
それでも、雅春と一緒になりたかったが、矢張りできるなら
両親の祝福を受けて結婚したい。
「そう思うなら、幸せになってくれないとな」
「うん。ありがとう」
 理子は父を笑顔で見送った。宗次は娘の幸せそうな顔に
満足した顔をして家を後にした。


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~ Comment ~

Re: やっぱり>OH林檎様 

OH林檎さん♪


このお母さんは、究極の自己中ですね。
私もこの人の思考は理解不能です。

まぁ、結婚式を効果的にって目的もありますが、
紫さんとしては、親子和解したんだから、最後の家族らしい
時間を過ごしてね、的な思いもあったかと。

でも、世間の常識から外れたお母さんなので、そんな
周囲の思惑なんのその、なんですよねー。

理子も、これが最後の我慢と思ってるんでしょう。
ここでヘソ曲げられて、「式に出るのは止める!」って事に
なったら、先生の家族に申し訳ないですもの。
不憫な子です。

やっぱり 

理子の母親の思考…理解に苦しみます。
子供は親の為に生きてると?
結婚式を効果的にする目的の里帰りだけど
私だったら、一日で帰ってるかもーーー。
理子は我慢強くて偉いわ―。
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