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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 3.結婚式 01

2010.08.02  *Edit 

 理子は結婚式の二日前である、5月1日の日に実家へ帰って来た。
 入籍済みの二人は既に夫婦として一カ月以上の時間を共に
過ごしているが、世間の前で夫婦の誓いを立てる前に親元で独身に
帰る事になった。両親との最後の別れだ。指輪も、式で交換する為に
外し、義姉の紫に預けた。
 母と喧嘩別れのような形で家を出て、雅春と暮らし初めてから
2カ月近くになる。たった二日の別れなのに、酷く寂しく
感じるのだった。
 左手を翳す。指輪の跡が付いている。再びそこへ指輪が
はまるのが待ち遠しい。
 久しぶりの実家は、僅か2ヶ月留守にしただけなのに、既に
自分の家と言う感じがしない。勝手知ったる元我が家だ。ここで
確かに毎日生活をしていたのに、祖父母の家を訪れた時のような
感覚に似ていると思った。
「大学の方はどうなの?」
 と、母に訊かれた。
「うん。まだ始まったばかりなんで、ちょっと大変だけど、
そのうち慣れてくるかと」
「家事はどうしてるの?学校行ってるんだから大変じゃないの?」
 母からそういう事を言われるとは思って無かったので驚いた。
「二人だけの生活だから、どうって事無いかな。料理だって
洗濯だって量が少ないし」
「でも掃除は大変でしょう?あそこは広いから」
「一週間に一回しかやらない人には大変でしょうけど、毎日
やってれば汚れないから、すぐに済むし」
「ふぅ~ん。まぁ、あんたはやる事が適当だからね」
 やる時には隅々まで徹底してやる母から見ると、理子の仕事は
適当に見えるらしい。とっても失礼だと思ったが、
喧嘩になるので聞き流した。
「先生はどうなの?手伝ってくれたりとかするの?」
「休日にね。平日は仕事が忙しいから」
「そうよね。男の人は仕事が一番よ。仕事の出来る男は家事なんて
してる暇は無いんだから、妻がしっかりやらないとね」
 家事嫌いの癖に、そんな事を言う。本人が言うには、お父さんに
もっと稼ぎがあるなら、家事も完璧にやる、との事だが、何となく
信じられない。詭弁のように聞こえる。
「人のうちの事は心配しなくていいから」
 と、理子が言うと、母の素子は
「子供の事なんだから、心配するのは当たり前でしょ」
 と言った。
「わかりました。でも今のところは、心配するような事は何もないから」
「結婚すると、掌を返したように豹変する男がいるけど、先生はどうなの」
 その質問には仰天する。
「教師ってのは、体面を気にして外面(そとづら)はいいけど、
内面(うちづら)が悪い人が多いんじゃないの?」
 確かに世間にはそういう男もいるだろう。よく聞く話しでもあるが、
雅春に対してそんな事を言われるとは、夢にも思っていなかったし、
なんだか先生に対する侮辱のようにも聞こえるのは理子の考え過ぎだろうか。
「先生はそんな人じゃありません。とっても優しくて親切で、
大切にしてもらってますから、ご心配なく」
 理子が怒り口調でそう言うと、「本当かしら?」と
不信そうな目を向けてくる。
 どこまでも、他人を信じられない母だ。
「あんた、お母さんには意地になって言えないだけなんじゃないの?」
「もう、どうしてそういう事を言うかな。明後日は結婚式だって言うのに」
「思い直すなら早い方がいいと思って」
 こんな母を理子は憎たらしいと思うのだった。
 雅春とは一緒に暮らし始めてから、色々あった。だがそれは
仕方のない事だ。変化には摩擦が生じるのは当たり前の事だし、
それによって戸惑いが生じるのもまた当然だ。だが、互いの気持ちは
変わらない。愛している事には変わりはない。
「ところで理子に頼みがあるんだけど」
 と、母が急にしおらしい態度で言う。
「何?頼みって」
 母は妹の優子の家庭教師をしてやって欲しいと言うのだった。
このままだと、とても県立高校へ入れそうもないと言う。
「見てあげたいのは山々だけど、私も忙しいんだけど」
「それはわかってるけど、妹の為でしょう。誰かいい人と思って
たんだけど、いい人が見つからなくてね。男の先生を付ける
訳にはいかないし」
 母は、金曜日の夜に車で来ればいいと言った。金曜日は雅春も
補習クラスの授業で少し帰りが遅い。だから、実家で合流して
二人で夕飯を食べて、優子の勉強が終わったら、二人で車で帰れば
良いだろうと言うのだった。
「翌日は休みなんだし、それならあまり負担にもならないと思うんだけど」
 母の提案に、理子は考える。
 理子はつい先日、車の免許を取得したばかりだった。まだ、
自宅の車を運転していない。結婚式が終わったら、連休中に
「安全な場所で練習させてあげる」と雅春は言った。車が車である。
雅春がいいと思うまでは、一人での運転はさせてもらえないだろう。
「晩御飯の心配をしなくていいのよ」
 おさんどん嫌いの癖に、そんな事を言う。
「まさか私に作らせる気じゃないでしょうね」
「家庭教師に来るのに、ご飯作ってる時間は無いでしょうに。
それは心配いらないから」
 二人の夕飯付きで授業料もちゃんと払うと言う。
「じゃぁ、先生に相談してみる。だから返事は結婚式が
終わってからで、いいかな」
「先生は、理子の言う事なら何でも聞いてくれるんじゃなかったの?」
「私、そんな事を言った覚えは無いわよ?」
「あら、そうだった?でも、聞いてくれるんでしょ?」
「事と次第によるでしょ。多分、いいって言ってくれるとは思うけど、
車の運転がね。免許を取ったばかりだし、高いスポーツカーだし・・・」
「お金持ちなんだから、気にする必要なんてないじゃない。
ぶつければ直せばいいだけの話しでしょう」
 自分の物に対しては物凄く気にする癖に、人の物にはお構い無しだ。
大切にしている物なのだから、お金の問題ではないだろう。
「お母さんの感覚にはついていけない。とにかく、車は先生の
物なんだし、結婚した以上、世帯主に相談するのは当然の事でしょう?」
「じゃぁ、ちょっと電話かメールをして、訊いてみたらどう?」
「しょうがないなぁ」
 あまりに母がせっつくので、理子は仕方なく、雅春にメールをした。
暫くしてから戻って来た返信には、詳細は後日話し合うとして、
取り敢えず承諾の意向で、との事だった。それを見て理子は溜息を吐いた。
その理子の様を見て母は「駄目だって?」と言った。
「ううん。その反対。いいって」
 理子の言葉を聞いて、母は喜んだ。
「そうよね。断れないわよね」
 と母は言う。その母の言葉には同感だった。家族思いの優しい人だし、
雅春の立場としては断れないのも当然だろう。ただ、理子としては、
あまり気乗りはしない。妹の勉強を見る事が嫌なのではなく、
ここへ来る事が嬉しくないのだった。理由と言えば、面倒くさい、
煩わしい、の言葉に限る。正直なところ、母と関わるのが一番嫌だった。
 何だか急に雅春に逢いたくなった。別れてからまだ丸1日も
経っていないのに、もう恋しい。だが、義姉の紫からは、式まで
逢うのを禁止されていた。結婚式をより感動的にする為にも
逢わない方が良いと言った。雅春は、「二日逢わないくらいで、
効果あるの?」と言ったが、もう既にこの恋しさを思うと、
義姉の言う通り効果がありそうだ。雅春の方はどうなんだろうか。
 遅くに起きて来た妹の優子に、母が理子の家庭教師の件を話した。
「えー?お姉ちゃんがぁ?どうせだったら、先生の方が良かったのに」
 と、不服そうに優子は言った。
「何言ってるの。先生にはそんな時間は無いでしょう。
それに、男は駄目」
 と、母が顔をしかめて言う。
「男って言っても、お姉ちゃんの旦那さんじゃん」
「それでも男は男でしょう。それに、姉から妹に心移りするって
事もあるしね」
 母の言葉を聞いて、理子はげんなりした。世間的には無いとは
言えないだろう。自分の夫に限ってと、誰もが思っている筈だ。
母の用心も仕方のない事なのかもしれない。
「じゃぁ、優ちゃんの学力がどの程度か、一応知っておきたいから、
これからちょこっと勉強しよう。本格的にはゴールデン
ウィーク後って事で」
 理子は優子を促して、2階の優子の部屋へ行った。
母から解放されたかった。


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