ChaoS

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 2.新しい風 10

2010.08.01  *Edit 

「しかし、高校教師とは本当に勿体ない。研究は在野でもできると
言っていたそうだが、どうなのかねぇ。君、彼はどうしてるのかな。
ちゃんと研究を続けてるのかい?」
 理子は問いかけられて、戸惑った。雅春の勉学面での状況は
よくわからなかった。
「その辺は、私にはよくわかりません。ただ、学校の仕事は
とても忙しそうです」
そう答えるしかない。
「そうだろうねぇ。最近の学校の教師は雑務が多くて大変だと聞くからね」
 間もなく、終了の時間がきて、コンパはお開きとなった。
 教師達が先に会場を出、その後を2年、1年と続いた。
「なんか、凄いわね。理子の旦那さんって、そんなに凄い人なの?」
 と、美香に訊かれた。
「私にそう訊かれても、どう答えていいものやら・・・」
 と苦笑した。
 外へ出てみると、人だかりになっていた。女子達の嬌声が辺りに
響き渡っている。何かあったのだろうか?
「何かあったのかな?あたし達も行ってみない?」
 愛理が人を掻き分けて行くので、理子と美香もそれに従った。
人垣の最前列に来た時、理子は驚いた。何故ならそこに、雅春が
いたからだった。教師達と一緒だった。
「凄い素敵な人~」
 と、愛理が目を輝かせて言った。
 驚いている理子に雅春は気付き、手を挙げて声を掛けて来た。
「よぉ、理子」
 笑っている雅春を見て、理子は頬を染める。いつ見ても、素敵な人だ。
理子はおずおずと近くへ行った。皆の注目を浴びた。
「驚いた?」
 そばに来た理子に、雅春がそう問う。
「勿論です。どうしてここに?」
「迎えに来たんだよ。君が心配だったから」
 雅春はそう言って笑った。いたずらっ子のような笑みだ。そして、
理子の肩を抱き寄せて、教授達に理子を紹介した。
「先生方、僕の妻です」
 周囲に聞こえるように大きな声で言った。雅春の言葉に、周囲を
取り巻いていた者達にどよめきが起こった。
「いや~、さっき本人から聞いて、驚いたよ」
「よくわかりましたね」
「教授から結婚式の招待状を見せて貰ってね。同じ名前だから
気になってたんだよ」
「そうだったんですか。入学前に一言ご挨拶に伺おうかどうしようか、
迷ってたんですが。何かと忙しかったので、申し訳ありません」
「いや、高校教師ともなると、色々と忙しいのは推測がつく。
ところでその、一体、どうやって知り合ったのかな」
「実は彼女は僕の優秀な教え子でして」
 雅春は、何でも無い事のように、さらっと言ったので、聞いた方は
すぐにはピンと来なかった。
「優秀な教え子って、どういう事だい?家庭教師でもしてたのかな?」
「いえ。僕が勤めている高校の生徒だったんです。僕は
担任だったんですよ」
 その言葉に、一同驚いた。
「そ、それは、その、君は教え子と?」
「そうなんです」
 教師達は唖然とした。モテる男だが、プレイボーイなわけではない。
堅物だ。そんな男が、教え子の女子高生と結婚したと言うのだから、
信じられない程の驚きだった。
「驚かれるのも無理はありませんが、僕以上に、彼女へのご指導、
よろしくお願いします。彼女は本当に優秀ですよ。太鼓判を押します。
入試の成績も良かったと思うんですが」
 雅春にそう言われて、教師達は慌てた。
「そう言えば、女子でとても高得点の受験者がいましたね。中でも、
日本史と世界史の答案が非常に優秀で。確か春休み中に
名字が変わって・・・って」
 と、驚いたように理子の方を見た。
「それが、君なのか」
 雅春はにっこりと笑って、
「そうだと思いますよ。その時は吉住だったと思いますが」
 と、言った。
「ああ、それなら覚えがある」
 と、別の教師が言った。
「今日は主事の先生はいらしてないんですか?彼女をクラス委員に
したのも、その辺を鑑(かんが)みての事だと僕は思ったんですが。
なんせ、内申書を書いたのも僕ですし」
 と、歯を見せて笑う。珍しいことだった。
「そうか。なるほど。そう言えば、主事からチラッと聞いたよ。
忘れていた。主事は今日は用事で欠席なんだが、君の奥さんが
優秀だと言う事は聞いてるよ」
「そうですか。なら良かった。今後とも、よろしくお願いします。
勉強熱心な生徒ですから、指導のしがいもあると思います」
 雅春の言葉に、教師達は「そうかそうか」と笑みを浮かべて
頷いていた。理子は顔を赤くしていた。お願いしてくれるのは嬉
しいが、矢張り恥ずかしい。
「しかし、大勢の女性達からのラブコールに冷たかった君が、
いきなり若い女の子と結婚なんて、驚くね。君はずっと独り者で
いると思ってたのに」
 教師の一人がそう言った。
「僕もそう思ってました。自分が結婚するとは全くの予想外です。
そういう相手に巡り逢えて、今は幸せですよ」
 雅春はそう言った。
「ところで、2年のクラス委員の男子、今ここにいるのかな」
 と、雅春が周囲を見回した。理子は雅春の言葉に驚いた。
何故、田中を?
「田中か。さっきその辺にいたように思うが。おい、田中、いるか」
と、教師の一人が大きな声で言った。その声を受けて、人だかりの
中から、小柄な田中がおずおずと出て来た。
「こいつが、2年の委員の田中だが、どうかしたのか?」
 と、雅春に紹介した。
「ふぅーん。君が田中君かい。野球拳の話し、理子から聞いたよ。
随分と、思い切った事をやらせようとしたんだねぇ。一体、そんな伝統、
いつからあるのかな。俺がいた時には無かったし、話しに
聞いた事も無かったが」
 色黒の田中が顔を赤くして縮こまっている。
「何だい、野球拳って?」
 との問いかけに、
「いえ。たいした事じゃないですよ。ちょっとした余興のつもり
だったようですが」
 と、答えた。
「田中君。今後は、後輩から尊敬される先輩として対応してくれ
ないかな。折角委員に抜擢されてるんだ。くだらない事で将来を
棒に振ってもしょうがないだろう?」
「すみませんでした」
 田中はそう言って謝ると、人だかりの中へ戻って行った。
 そんな田中を見て、雅春は安堵したような吐息を吐いた。
 そばで見ていた愛理が、理子の袖を引いてきた。
「ねぇ、紹介してくれない?旦那さんを」
 と、理子に囁く。そんな愛理に雅春は気付いた。
「やぁ。君は理子の友達かな?」
「はい。加藤愛理って言います」
「そうか。理子の事、よろしく頼みます」
「はい。勿論です」
 愛理はとても嬉しそうに頬を染めた。
「あ、先生、こちらは上村美香さん」
 と、理子は美香を紹介した。
「はじめまして。上村美香です。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
 と、雅春は優しく微笑む。それを見て、美香も頬を染めた。
「時々遊びに行ってもいいですか?」
 愛理の言葉に、「勿論、どうぞ」と雅春は愛想よく答えた。
女の子にこんなに愛想が良いなんて滅多にない事だ。
 雅春はふと、自分を熱心に見詰める視線を感じ、そちらへ目をやると、
不思議な微笑みを湛えた若い男が自分をジッと見ているのに気付いた。
視線がかち合ったが、相手は全く動じずに雅春と視線を絡ませる。
「理子。そこにいる、笑っているような顔をしてる男子、
誰か知ってるか?」
 と、理子の耳元へ問いかけた。
「ああ。彼はクラスメイトの志水君です」
「紹介してくれないかな」
 理子は雅春の言葉に驚いて、思わず見上げた。
「どうした?嫌なのか?」
 雅春の言葉を受けて、理子は志水を呼んだ。
 志水は理子に呼ばれてやってきたが、雅春の方は見ずに理子に
「なあに?」と言う。
「あの、志水君。彼が紹介して欲しいって言うので・・・」
 理子にそう言われて、志水は真っすぐに雅春の方を見た。
「やぁ。はじめまして」
 と、雅春の方から志水に声をかけた。
「どうも。志水彰人と言います。理子とは仲良くさせてもらってます」
 理子だと?仲良くさせてもらってるだと?雅春はカチンときた。
だが、顔には出さない。
「志水君と理子は、履修科目が全部同じなんですよ。だから、毎日
ずっと一緒なんで、自然と仲良くなったんですよ」
 と、横から愛理が言った。
「履修科目が全部一緒?」
 愛理の言葉に雅春は驚いた。あの履修科目と全部同じなのか。
「ええ、そうなんです。運良く、ベストの履修ができました。おまけに、
彼女とも同じだったのでラッキーでした」
 志水はそう言って微笑んだ。それがとても癇に障った。
「君は優秀なんだな。あの組み合わせで履修するなんて」
「それって、自分も優秀だとおっしゃってる事になりますよ。
理子の履修は、あなたがやってあげたんでしょう?」
 相変わらず微笑んだままだ。雅春からすると、この絶えない
微笑みを不気味に感じる。それに、人の妻に対して、その夫の前で
「理子」と呼び捨てにする神経が癇に障る。大胆不敵な輩だ。雅春は
志水に危険な匂いを感じた。そしてまた、自分と同じ匂いも感じる。
この男は、明らかに理子に惹かれている。そして、結婚している事など、
全く意に介していない。厄介な存在になりそうだと思った。
「そうだな。だが俺の場合、既に経験者と言う強みがある。君とは違う」
 雅春はそう言って笑った。
「じゃぁ、そろそろ帰ろうか。皆さんへの挨拶も済んだしな」
 雅春はそう言って、理子を促した。車をすぐ近くに停めてある。
「じゃぁ、先生方、今日はこれで失礼します」
 そう言って、お辞儀をした。理子も一緒に頭を下げる。
 そうして挨拶を済まし、雅春はNSXの助手席のドアを開けて、
理子を乗せた。その動作に、一同から大きな溜息が洩れた。
そういうキザな行為が、よく似合っている。
「理子、羨ましい。素敵な王子様にお姫様扱いされてるじゃない」
 と、愛理がため息混じりで言うのだった。


         2.新しい風 了  3.結婚式 へつづく。


blogram投票ボタン ←ヨロシクお願いします。


スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(2)

~ Comment ~

Re: 波乱の予感ーーー>OH林檎様 

OH林檎さん♪


ちょっと、長い章でした。或る意味、ここを一番書きたかったと
言えるんですが、虫よけの為にわざわざ迎えに行った先生なのですが、
この俺様に宣戦布告か!と、内心ピクピクしちゃっていますww

志水くんの存在は、これからムフフな感じですね。
ネタバレになっちゃうから、あまり語れませんが。
まぁネックは、志水くんはメガネじゃない、って事でしょうか(^m^)

次章は二人の結婚式です。
それが終わると、また色々と……。
お楽しみに♪

波乱の予感ーーー 

理子が既婚と告白し、先生が登場し…
と、スッキリ終わるのかと思いきや、志水くんですよぉ問題は!
宴会の席で大人しいから気になってたけど、
やっぱりって感じです。
宣戦布告…なんでしょうねぇ。
先生に惹かれた理子が
先生にどこかにている志水くんに惹かれないわけがないっっ!
なんて、理子に失礼か(笑)
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。