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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 2.新しい風 08

2010.07.30  *Edit 

 雅春の学校での話しを聞いて、理子は雅春の大変さを改めて知った。
去年の補習クラスの話しを聞いた時、その負担を随分と
慮(おもんぱか)ったものだったが、今年度も引き続き、その仕事を
しなければならない。通常業務だけでも大変だし、3年生の担任と
言うだけでも大変だ。前年度の大変さを知っている。その上、
女生徒達の執拗なまでのアプローチ。去年は少し落ち着いてきたかと
思った理子だったが、次々に入学してくる若い子たちのエネルギーは
衰えを知らないのかもしれない。
「先生も大変ですね。教師と言う立場上、無下に冷
たくもできませんものね」
「そうなんだ。そこが悩みの種だ。余計な情けをかけてその気に
させたくは無いし、かと言って、全てにおいて冷たくもできないし・・・。
去年は、2年目で慣れてきた感があったんだが、今年はまた、
違って来たな。持ち上がりじゃないってのがあるのかもな」
「それでストレスが溜まって、私を毎日抱くんですか?」
 その言葉に雅春は笑って、理子の肩を抱いた。
「そうだって言ったら、怒るだろう?言葉ってつまらないな。
言葉にすると、真実とは遠い所へ行ってしまう気がするよ。君は、
俺にとっては最大の癒しなんだ。それによって、ストレス発散に
なっている事は事実だ。だが、ストレスを発散するのが目的じゃない。
最初から、君を抱くのはストレス発散の為でも、欲望を満たす為
でもない。君とひとつになりたいだけだ。君を感じ、君の中の
自分を感じ、時間と空間を超越したものを感じたいが為だ。
心が欲するんだ。君を」
 雅春の言葉を聞いて、理子の胸は熱くなった。
 初めて求められた時、『こんなにも自分から繋がりたいと思った
のは初めてだ』と言われた事を思い出した。求めずにはいられない
強い思いは、その時からずっと変わっていないんだな、
と思うと嬉しくなった。
 マンションに到着した。二人のスイートホームだ。
「ずっと歩いて、喉が渇いただろう?お茶を淹れてあげるから、
座ってて」
「私が淹れます」
 と言ったが、雅春は理子をソファに座らせた。
「いいから。俺に淹れさせてくれ。結婚したからって、いっつも
君がお茶を淹れる必要なんて無いんだよ。俺にだって、君の為に
少しは奉仕させてくれ」
 雅春はそう言って笑うと、キッチンへ向かった。理子は仕方なく
ソファに座る。座り心地の良い、丁度良い硬さの皮張りのソファだった。
 これから、どうなっていくのだろう。この時間の足りなさを、
どうにかできないのだろうか?雅春にとって自分が癒しの存在で
あるのと同じように、理子にとっても雅春は癒しの存在だ。だから、
早く帰宅して雅春の顔を見たいし、その胸に抱きしめられて
ぬくもりを感じたいし、共に歓びを得たい。
 ただ、理子の場合、ぬくもりは感じたいが、快楽の方は毎日
無くても平気だった。求めてくる雅春を、できれば満足させて
あげたいという気持ちはある。だが、雅春ほど、繋がりたい欲求は
強くない。そこは、矢張り男と女の違いからくるのだろうか。
 雅春が、お茶を持ってやってきた。ほうじ茶だった。とても
良い香りがする。一口飲んで、「美味しい」と言って雅春の方を見ると、
嬉しそうな顔をした。
「君がさ。外へ出てから、俺も頭を冷やして色々と考えたんだ」
 平日の時間の少なさを思うと、理子が疲れるのも当然だ。人間は、
睡眠への欲求が一番強い。最高に眠たい時は、お腹が空いていても
寝ている方を選択する。だから、性欲なんて、更に選択の余地は
無いだろう。まずは寝たい。休みたい。その欲求が理子にとっては
一番なんだと、気付いたのだった。
 事が終わると、事切れたように理子は眠りに入る。事後の余韻を
味わう暇も無い程だ。その、眠りに入る速度は日々増していると
言えた。このまま続けていたら、セックスの途中で寝て
しまうかもしれない。
「だから、もう、無理するのは止めよう。もっと、ゆったりした
ペースでいこう」
「ゆったりしたペースって?」
「君が言うように、何も毎日必ずしなくてもいいって事さ。
平日は余裕のある時にしよう。休みの日だって、それぞれの都合も
あるだろうし。その辺は臨機応変に」
「先生はそれで平気なの?」
「平気になるように、努力するさ。と言うか、慣れれば平気に
なるんじゃないかな」
「でも・・・」
「そもそも、去年から今年にかけて、半年も我慢できたんだぜ。
それを思えば、どうって事はないだろう」
「それは確かにそうかもしれませんけど、先生は極端だから。
しないから触れないとかっていうのは、止めて下さいね」
 理子が一番心配なのは、それだった。触れればしたくなる。
だから触れない。そんな日々が、思い返される。
「大丈夫。そこまでは出来ない。君と共に暮らしていながら、
触れないでいるなんて、できないよ。ただ、濃いキスは無理かもなぁ~。
それをしちゃったら、もう、その気になって止まらなく
なっちゃいそうだから」
 そう言って笑った雅春に、理子は抱きついた。
「毎日必ずするとは、限らないって、だけなんだからな。平日は
しないって決めたわけじゃない。それは、わかってるよな?」
 雅春は理子の耳元でそう囁いた。その言葉に、理子は頷くと、
顔を起して、雅春の唇に自分の唇を重ね合わせたのだった。

 三日後。新歓コンパの日がやってきた。田中はあれ以来、無頼とした
態度で、理子のそばには近寄っては来なかった。いつも傍に志水が
いるからかもしれない。新入生は全員出席だった。田中の脅しは
はったりだったが、矢張り欠席者がいなくて、理子も林もホッとした。
 コンパには、教授を始めとする教師陣が何人か顔を連ねた。生徒の
飲み会に先生方が参加するのは新歓コンパだけで、先生方もそれなりに
気を抜いて参加するとの事だったが、そうは言っても新入生の方は
気が抜けないだろう。
 田中の音頭で乾杯をし、1年生が順番に立って自己紹介をする
ように言われた。出身地、出身高校、趣味などを言わされた。
 1年生の全員が自己紹介を終え、先輩達が飲み物を持って、
1年の所へ注ぎに来た。
「今年の1年の女子は、可愛い子ばっかりだな」
 と、上級生たちは口ぐちに言いながら、女子に注いで回る。
「君、彼氏いるの?可愛いのに、残念だなぁ」
 と、注ぎに来た先輩男子に言われた。そんな事を言われたのは初めて
なので、驚いた。先輩達は、次々に、引っ切り無しにやってきては、
1年の女子を口説く。愛理は一番人気だった。色白でおしとやかな美
人の美香も人気者である。そして、理子の所にも、何故か集まって来る。
「理子ちゃんって言ったっけ?綺麗なロングヘアーだね。お姫様みたいだ」
 と言って、男の先輩の一人が理子の髪を触った。驚いて振り向くと
にんまり笑っている。初対面の女性の髪を触るとは、失礼な男だと思う。
理子はいつの間にか2年の男子に周囲を囲まれていて、
何かと話しかけられた。
「すみません。ちょっと、トイレ行って来ます」
 理子は赤くなってそう言うと、席を立った。
 何だかわからないが、お酒が入って来たからなのか、妙な盛り上がりだ。
何せ人数は多いし、初対面なのに多くの人達が絡んでくるし、戸惑う
ばかりだった。先輩達に対して、どう対応したら良いのかわからない。
それは、他の一年も同じなのかもしれないが、愛理などは妙に場馴れ
した感じがする。先輩男子達を手玉に取ってるように見えた。
普段からもてる女は矢張り違うんだな、と感心する。
「おい、増山」
 声を掛けられて、驚いて振り向くと田中が立っていた。突然の事に
ビクリとする。田中は理子の目の前まで距離を詰めて来た。
理子は思わず後ずさるが、壁に阻まれた。
「お前、いい気になってるんじゃないぞ」
 田中は怒った顔でそう言った。
「どういう意味ですか?」
 一体、何を言っているのだろうと思う。
「先輩達にチヤホヤされて、いい気になってるんじゃないって
言ってるんだ。お前なんかのレベルがチヤホヤされるのは、うちの
大学に女子が少ないからだ。他の大学へ行ってみろ。お前なんか、
誰も見向きもしないんだからな」
 何て、失礼な男なんだろう?腹が立つ。
「そもそもな。こうやってチヤホヤされてるのだって、酒が入ってる
からさ。酔いが醒めてみろ。お前の存在なんて、誰も覚えてやしないさ」
 そう言って、意地の悪い笑みを浮かべるのだった。
「先輩のおっしゃりたい事は、それだけですか?」
「なんだと?」
「それだけなら、もうどいて欲しいんですけど」
「生意気言ってるんじゃない。お前なんて、誰も相手にしないんだぞ。
だからこうして俺が相手をしてやってるんだ。有難く思え」
 そう言って、詰め寄って来た。
「理子」
 呼びかけられて、声の方へ顔を向けたら志水が立っていた。
「志水君・・・」
 理子はほっとした。田中は慌てている。
「先輩、またなんですか?いい加減、彼女に絡むのをやめたらどうですか」
「俺は別に絡んでいたわけじゃ・・・」
 志水は珍しく厳しい顔をしていた。
「理子、行こう」
 志水はそう言うと理子の手を取って会場の方へ歩き出した。理子は
志水のその行為に戸惑った。助けてくれたのは嬉しいが、手を
引かれる事に抵抗が生じた。
「あの先輩のしつこさには、うんざりだな」
 宴会場の近くまで来て理子の手を離した志水がそう言った。
「ありがとう・・・」
 理子はホッとしながら、志水に言った。
「いいんだよ。あの人には、全く呆れる。君の後を追うように部屋を出
て行ったから気になって来てみたんだ。全く困った人だ」
 志水は理子を労わるように言った。謎の微笑がいつもよりも
優しい感じがする。
 二人で宴会場へと戻ると、中は宴もたけなわと言った感じで盛り
上がっていた。自分達の席へ戻る。二人が去ったので、そこは
静かな場所になっていた。
「どこへ行ってたの?二人で」
 戻って来た二人に気付いた愛理が、周囲の男子どもを置いてやってきた。
「トイレよ。別に二人で行ってたわけじゃなくて、戻って来る時に
一緒になっただけ」
 嘘では無い。
「ねぇねぇ、理子ちゃんだっけ?君って、もしかして結婚してるの?」
 愛理の後を追いかけてやってきた2年の男子がそう言った。
その言葉に理子はドキリとした。愛理も驚いている。



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