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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 2.新しい風 03

2010.07.25  *Edit 

いつもの昼休み、クラスメイト達といつものように昼食を摂っていたら、
4年生のクラス委員である、安藤和明がやってきた。
4年が駒場に来るのは珍しい。
「委員の増山理子さん、いるかな?」
 そう言って、見まわした。背が高くスラッとしていて、落ち着いた
雰囲気が大人っぽい。額に掛った、少し長めの前髪を掻き揚げる
仕草が男っぽく魅力的だった。いい男だからか、女子達が色めきだった。
「はい、私です」
 理子は手を挙げて立ち上がった。
「君が、増山理子さんか。初めまして。4年の委員をやってる
安藤和明です。君の事を、先日先輩から聞いたんで、やってきたんだ」
 安藤は、そう言って爽やかな笑みを浮かべた。周囲の女子が
小さく嬌声を上げた。
「じゃぁ、あの件で?」
「そうなんだ」
 あの件とは、新歓コンパの件で田中が言った野球拳の話しの事だ。
 あの日、理子は帰宅した雅春に話したのだった。雅春は理子の
話しを聞いて仰天した。
「なんだ、それは。俺達の時だって、そんなのは無かったぞ」
 雅春は憮然とした態度でそう言った。
「やっぱり、そうなんですか。じゃぁ、何で、そんな事を」
「そいつ、頭がおかしいんじゃないか?明らかに、
君に対する嫌がらせだな」
「私、嫌われてるんでしょうか」
 理子は暗い気持ちになった。まだ入学したばかりなのに、既に先
輩から嫌われてるなんて。しかも、同じクラス委員だけに、
先が心配になる。
「その逆だろう。幼稚な野郎だ」
 雅春は憎々しげにそう言った。
「えっ?」
 雅春は苦虫を潰したような顔をしている。
「君の鈍さには、感心を通り越して感動するよ」
 理子はその言葉に二の句が継げない。
「その件に関しては、心配するな。俺が釘を刺しとくから」
 雅春はそう言った。その釘を刺した結果が、安藤の来訪なのだろう。
 安藤は、少し大きな声で、そこにいる1年達に言った。
「この間、2年の田中が、新歓コンパで欠席者がいたら女子に
野球拳をさせると言った話しだけど、そんな事は無いから。毎年の
伝統行事でも何でもない、あいつが勝手に言った事なんで、
心配しないように。そんな事は絶対にさせないから、安心して下さい」
 安藤の言葉に、みんなは「やっぱりな」と言った。
「じゃぁ、増山さん。委員の方の仕事、よろしく頼むね」
 安藤はそう言って手を挙げると、去って行った。女子はその
後ろ姿をうっとりとしながら見送った。
「安藤先輩って、素敵な人ね~」
 と、一様に言う。確かにいい男だ。雅春と少しタイプが似ている
かもしれない。安藤の方が、少し男臭い感じがするが。
 その日の放課後、トイレに行った志水を待って掲示板の前にいたら
田中がやってきた。渋い顔をして真っすぐ理子の方へ向かってくる。
どうやら、理子に用事らしい。理子は嫌な気持ちになった。
「おい、増山」
 理子の前に来ると、田中は怒り口調で理子を呼んだ。
その勢いに、理子はビクッとした。
「はい・・・」
 思わず、声が小さくなった。
「お前、保護者にチクッたな」
「えっ?」
 田中の言葉に、理子は驚く。意味がよくわからない。
「野球拳の事だ。お前、保護者にチクッただろう。安藤先輩に、
お前の保護者からクレームが来たって聞いたぞ」
 成る程、そういう事か。安藤先輩は、雅春の事を保護者と
言ったのか。確かに、未成年の理子にとっては保護者かもしれない。
「子供じゃあるまいし、親にチクるなんて卑怯だぞ。お陰で俺は
恥をかかされた。お前のせいで」
 凄い剣幕だ。そもそも、身から出た錆ではないか。有りも
しない事を伝統と偽って、女子に恥ずかしい事をさせようとした
破廉恥極りない輩(やから)の癖に、何を言っているんだと、思った。
「おい、何とか言ったらどうだ。先輩に恥をかかせておいて、
謝らないのか」
 その言葉に、理子は腹が立ち、田中を睨んだ。
「何だよ、その目は。生意気だぞ。それが先輩に向かってする態度か」
 何なんだろう、この理不尽さは。体育会系でもあるまいし、
何でこんなに先輩後輩を強調して服従を迫るような態度に出るんだろう。
「先輩、いい加減にして下さいよ」
 その声に振り返ると、志水だった。理子は志水の登場にホッとした。
「なんだ、またお前か」
 志水の姿を見て、田中は少し怯んだ様子を見せた。前回遣り込め
られたものだから、苦手に思っているのだろうか。
「どうしてそんなに、彼女を苛めるんですか?」
「い、苛めてなんかいない。当たり前の事を言ってるだけだ。
この間の事を保護者にチクッた、こいつが悪い」
「学校であった事を家で話すのは、いけない事なんですか?」
「何もかも話す事は無いだろう」
「先輩、それは個人の自由ですよ。それに、話されて困るような
事をする方に問題があるんじゃないですか?」
「なんだと?」
「だって、結局、僕が言った通り、セクハラ行為だったんでしょ?
だから安藤先輩に諭されたんじゃないんですか?」
 志水の言葉に、田中はグウの音も出なかった。
悔しそうな顔をしている。
「それに先輩。そんな事をしても不毛ですよ。嫌われるだけです」
 志水はそう言うと、謎の微笑みを浮かべた。意味深な笑みだ。
 田中は志水にそう言われると、顔を赤くした。そして志水を
睨むと黙って立ち去ったのだった。その姿を見て、
志水は「どうしようもないな」と呟いた。
「志水君、ありがとう。また助けられちゃったね」
「とんでもない。僕がトイレなんかに行ってたから絡まれたんだし」
「トイレなんかって、行かなきゃ困るでしょう」
 理子はそう言って笑った。志水はその笑顔を見て眩しそうな顔をした。
「だけどつくづく、あの先輩には呆れるね。論理的思考を求め
られている東大に受かった人間とは思えない」
 志水の言葉に理子は苦笑する。それには全く同感だったからだ。
 二人は帰り道、歴史の授業に関する事や、色んな書物の話しをした。
志水はとても博学で、理子がまだ読んだことのない本を沢山、
読んでいた。鎌倉時代に関しては、好きだと言うだけあって、
非常に詳しい。理子は鎌倉幕府初期の頃までは、それなりに興味を
持って勉強したので詳しく知ってはいるが、志水の足元には到底
及ばない。それ以外の時代においても、押しなべて詳しい。
 歴史の話しでこんなに手応えのある相手は、雅春以来だ。歴研の
連中とのやり取りも楽しかったが、彼らは大抵が戦国か幕末に
偏っていて、他の時代についてはさっぱりだった。志水の全般に
渡る造詣の深さには感服する。
「じゃぁ、また明日」
 志水は微笑みを湛えた顔で手を挙げると、二子玉の駅で下車して行った。
 何だか不思議な感じがした。一緒に居る事が、とても心地良い。
志水は話し上手でもあり、聞き上手でもあった。議論をしていても、
意見を戦わせているといった感じがしない。こんな考え、変かしら?
と普通なら躊躇(ためら)ってしまうような事でも、すんなりと
言えてしまう。雅春よりも話しやすいかもしれないと思うのだった。
 雅春に対しては、矢張り教師だけあって目上と言う意識が抜け
ないせいか、話す時にもそれなりに遠慮がある。学者のような雅春に、
こんな事を言ったら馬鹿だと思われやしないかと、話すのを躊躇
してしまう事も時にはある。雅春は敏感なので、それに気付くと
誘い水を出して理子から意見を引きだすのだが、矢張り理子から
すると、気安く意見できる相手では無い。
 雅春は理子の事を生意気だと言っているが、歴史の事に関しては
生意気な態度は取れない理子だった。そういう点で、同級生である
志水に対しては、気安く接する事ができるのかもしれない。
そして、その柔らかな雰囲気が、理子の心を安堵させるのだった。

 結婚式を控えた最後の週末、理子と雅春は義姉の紫(ゆかり)に
連れられて式場へと来ていた。最後の打合せである。それぞれに、
予約しておいた衣装を試着し、来賓の数や料理の内容、当日の
段取り等、一通りのチェックをした。
 その後で、一緒にランチを摂っている時に義姉の紫が言った。
「理子、ちょっと顔色が悪くない?」
「えっ?そうですか?」
 紫にそう指摘されて、理子は驚いて雅春の方を見た。
「そう言えば、どことなく、そう感じるかな」
 と、雅春が言った。
「どこか、具合でも悪いのか?」
「いいえ」
 具合は悪くない。食欲も普通である。敢えて言えば、
寝不足で疲れているが。
「ねぇ、マー。あなた、毎日理子と一緒にいて、私に指摘されるまで
気付かなかったの?」
 雅春は姉に言われて、憮然とした。気付かなかったからだ。
「理子、疲れてるんじゃないの?」
 義姉が優しくそう言った。その言葉に理子は明るく笑って、
「大丈夫です」と答えた。紫は不審そうな表情を浮かべた。


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~ Comment ~

Re: NoTitle>OH林檎様 

OH林檎さん♪

先生が絶倫しぎるんですよねー(^_^;)

あとはやっぱり、二人とも男女の関係に関しては
経験不足。理子は若いからしょうがないんですけど、
先生がねぇ。人との適度な距離感が分からないみたいで。
Yes or NO , All or Nothing
みたいな極端なお人だから……。
もうこの二人は何て言うか、作者を離れて勝手にやってる
感じなので、まぁ、なるようになるのではないかと。(←無責任)

トルネコもねぇ。。。。
隣の部屋だから気になるんですよね。
マイハウスになってから、どうぞご勝手に、って感じですもん。
その後も、新しいゲームが出る度に、ひととおり終わるまでは
毎晩深夜までやってますから。

私、長く付き合えない人なので、同棲から結婚ってお方は
尊敬しちゃいます。
だけど、互いに親元にいたから、家電製品全部、先生と理子みたいに
新しく買ったので、駄目になる時も大体一緒なんですよねー。
買い替え時が厳しいです(^_^;)

NoTitle 

不安要素が少しずつ増えていってますねぇ。
新婚時特有の悩みってこともあるんだろうけど、
理子の場合は普通とは違うから…。
narinariさんのトルネコの悩みも普通じゃないかも(笑)
うちは、同棲から始まってるから、そういうのは無かったなぁ。
結婚した時には既に長年連れ添った夫婦状態だった(涙)
結婚して、初めて一緒に住んで…って憧れます。
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