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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 1.それから 09

2010.07.22  *Edit 

 理子の手がそこに触れた瞬間、理子は手を握りしめて引いた。
だが、雅春はそれを許さなかった。
「先生・・・」
 理子は切なげに、雅春を見上げた。そんな理子の顔を、雅春は
強い意志を持って見つめた。避ける事を許さないという思いを
込めた。だが、理子は固まったままだ。雅春はそんな理子に
口づけると、優しく言った。
「君にも、俺の全てを知って欲しいんだ。君は、俺を知るのが嫌なのか?」
 雅春の言葉に理子は首を振ると、手の力を抜いた。その手を雅春は
自分のものへ当てた。理子は瞬間ビクっと震えた。
「そっと、握って、優しく撫でてくれないか」
 理子は雅春に言われた通りにした。雅春は興奮した。ぎこちない
手つきで、恐る恐る雅春のものを触っている理子を愛しく思った。
理子の手はぷっくりとしていて、柔らかくて気持ちがいい。長年、
洗い物を毎日してきた手とは思えない程、すべすべとした綺麗な手指だった。
その手が、今自分のものを触っている。それだけでも、高まって来るのだった。
「理子、・・・気持ちいいよ・・・」
 雅春がとても切ない声で言うと、理子は首まで赤くなった。
 雅春はたまらなくなって、理子を壁へ押しつけると、シャワーを
浴びて石鹸を落とし、立ったまま理子の中に入った。理子は頭を雅春の
肩にもたせかけてしがみつくと、震えながら喘ぎ声をあげた。
 理子の昂りと共に中が締まってきて、雅春を高揚へといざなう。
一体感が増す。理子の細くて高い艶っぽい声が、浴室に響いた。
 切ない声が、室内にこだまして、水滴と共に雅春の体に纏わり
着いてくるような、そんな感覚を覚える。体中に響き渡り、
興奮を高めていくのを感じた。
 やがて絶頂を迎え、雅春は果てた。理子は自分の腕の中で
まだ喘いでいた。
今にもくずおれそうである。雅春はそんな理子に優しく何度も口づけた。
 少し落ち着いてきた理子を伴って、バスタブに浸かった。理子を
自分の足の上に後ろ向きに乗せて、背後から軽く抱きしめる。
そっとうなじにキスをすると、理子の口から微かな溜息が洩れた。
 理子の体はほんのりと色づき、とても色っぽく、その肌に唇を
這わさずにはいられなくなる。
「先生・・・、のぼせちゃう・・・」
 理子が震えながら、そう言った。そんな理子を雅春は抱きしめた。
「ごめんな、いつまでも。じゃぁ、そろそろ出よう」
 そう言って、雅春は先に出た。残された理子は、ホッとした。
余りにも濃密な時間だった。理子にとっては、恥ずかし過ぎる時間でも
あった。その恥ずかしさが、興奮に拍車をかけて、耐えるのが辛かった。
やっと解放されて脱力である。
 バスタブのへりに顔をつけて、溜息を吐く。だが、いつまでも
このままでいたら、本当にのぼせてしまう。
 後始末をして風呂を出て、髪を乾かしてからリビングへ行くと、
雅春はそこにはいなかった。水分補給をして寝室へ入ると、雅春は
ベッドの上で本を読んでいた。眼鏡をかけた、知的で真剣な横顔を
見て理子はときめいた。一番好きな顔だ。
 雅春は理子の方を向くと、笑顔になった。その笑顔が爽やかで、
胸が高鳴る。さっきまで浴室で見せていた、色っぽい表情とは対極に
あるような顔で、まるで別人のようだ。
「こっちにおいで」
 雅春は読んでいた本を置くと、優しくそう言った。
 理子は静々と雅春の隣へと入った。雅春が先にベッドに入っている
所へ入るのは、これが初めてだった。何だかとても緊張する。
「顔が赤いな。まだ醒めてないのかな」
 雅春は理子の顎に手をやると、自分の方へと向けさせた。目の前に、
理子の好きな眼鏡の雅春の顔がある。その顔が近づいてきて、
理子の唇を塞いだ。冷たい眼鏡の感触が、理子の頬に軽く当たる。
「君は・・・、職員室に居る時、ずっと俺の方を見なかったね」
 唇を離した雅春が、理子の顔を見つめながらそう言った。
「すみません。多分、これまでの習慣だと思います。職員室へ入った
途端、自然とポーカーフェイスになっちゃいました。入る直前まで、
凄くドキドキしてたんですけど、いざ入ってしまったら、以前の
自分に戻ってしまったと言うか」
 雅春はふっと笑った。
「俺も、君の態度に、卒業前に戻ったような錯覚を覚えたよ。だけど、
物怖じもせず、堂々としてたんで感心した」
「先生、私の事で学校での風当たりが厳しくないですか?」
 理子が不安げにそう訊ねると、雅春は優しく笑った。
「大丈夫さ。校長に聞いたよ。君、俺の事を校長に頼んだんだってな。
若い君の気遣いを、校長は感心してた。俺もそれを聞いて、驚いたし、
嬉しかったよ。ありがとう。だけど、そんなに心配はいらないよ。
俺は大丈夫だから」
 雅春の優しく落ち着いた笑顔に、理子の心は癒された。
「先生が、そうおっしゃるなら、きっと大丈夫なんでしょうね。だけど、
川上先生には驚きました」
「そうだな。元々あの先生とはいまひとつ反りが合わない感じは
あったんだけど、君にああいう風に突っ込んでくるとは思わなかったな。
だけど、君の受け答えにも驚いたぞ。個人授業の事だ。それと、
諸星先生の君の味についても」
 雅春の言葉に、理子は笑った。
「曖昧な表現を、厭らしそうにするからですよ。だから、敢えて
突っ込んだんです。一体、どういう答えを期待されてたのか知り
ませんけど、二人ともタジタジだったじゃないですか。女性に、
ああいう事をあんな風に質問するのって、中高年の男性ならでは
ですよね。顔を赤らめて恥ずかしそうな態度を取るとでも思って
たのかな。それにしても、先生の『極上』って答えにも笑えましたよ」
「君が言わせたんじゃないか」
「私、言わせてませんよ。先生が口を滑らしただけでしょう」
「君が、まずいのかって言ったからだろう。酷い女だな」
「あら、私のせいにするなんて、大人げないですよ」
「君は、俺に喧嘩を売ってるのか?」
 雅春が理子を睨んだ。
「争いごとが嫌いな私がですか?」
 その言葉に雅春は笑った。
「そうさ。君がさ。争いごとが嫌いと言いながら、俺をいつも
おちょくって、楽しんでるのさ。それに、人の事をすぐ怒ると
言いながら、自分だってよく怒る」
「それは、先生が怒らすような事をなさるからじゃないですか」
「おっ、人のせいにするんだな。大人げないぞ」
「私は先生と違って、まだ子供です」
「結婚したら成人とみなされると言っていたのは誰だったかな?
都合のいい時だけ、子供ヅラするんじゃない。お調子者め」
 理子は赤くなって、そっぽを向いた。軽口から始まった会話が、
思わぬ所へ落ちてしまった。こんな風に遣り込められるとは
思っていなかった。
「理子、むくれるなよ」
 雅春がそう言って、理子の肩に手を回してきた。優しい声音である。
「むくれてなんか、いません」
「言っとくが、俺は全然、怒ってないからな。俺が怒るのは嫉妬しか
ないから。わかってるとは思うが」
理子は雅春を振り返った。
「本当なんですか?」
「何が?」
「嫉妬以外では、怒らないんですか?」
「多分・・・。まぁ、怒る事もあるかもしれないが、大した事は無い。
君が不安になる程、怒る事は無いと思う」
「ごめんなさい。信じられません。これまでの事を思い返してみると、
ちょっと・・・」
「わかったよ。俺だって普通に人間なんだから、怒る事くらいあるさ。
だけど、怒るにはそれなりの原因があるだろう?訳も無く怒る事は無い。
それも信じてくれないなら、仕方が無い。別れよう」
 雅春の言葉に、理子は軽くショックを受けた。『別れよう』なんて
言葉を、初めて聞いた。去年の京成バラ園の帰りの気まずさから、
別れ話をされるのではないかと不安に思った時の事を思い出した。
あの時、不安に思った一方で、そういう選択をする事も可能であると
思った自分がいた。そして、そんな自分に自己嫌悪を抱いたのだった。
「何故、黙ってるんだ?」
 雅春の言葉に、理子は雅春の顔を見た。少しだけ、怒っているように
感じられた。理子の言葉に気を悪くしたのだろう。
「ごめんなさい。先生を怒らすのは、いつも私が悪いからなのに」
 雅春は溜息を吐いた。
「理子、くだらない事で言い争うのは止めよう。君の減らず口や
生意気さには、慣れてる。君のそんな所が好きでもあるんだ。だから、
俺はそんな事で怒る事は無い。信じてくれよ」
雅春はそう言うと、理子を抱きしめた。
「ごめんなさい。信じられない、なんて言って。先生の事は信じてます。
何もかも全て。だから、別れるなんて言わないで」
 雅春の、理子を抱く手に力が入った。
「すまなかった。もう二度と口にしない」
「本気じゃないわよね?」
「ああ。本気じゃない。単なる言葉のあやだ。でも、これからは言わないよ」
 理子はホッとした。本気でない事は最初からわかっていた。それでも、
そんな言葉を口に出された事に少し傷ついたのだった。本気でなくても、
言って欲しくなかった。
 雅春は理子の髪を優しく撫でた。理子はそれに恍惚とする。撫でら
れるのが好きだった。とても落ち着く。心が温まる。子供の時から、
ずっとそうして欲しかったのに、して貰えなかったからなのかもしれない。
 理子が雅春の腕の中で静かな寝息をたて始めた。雅春は暫く
そのままでいた。理子の滑らかな髪を撫でながら、言わなくても
いい事を言って傷つけてしまったと反省した。雅春自身も、理子に
『信じられません』と言われて、傷ついたのだった。
 確かに何度も怒っては彼女を傷つけて来た。彼女は怒られる事に
敏感過ぎる。だが自分は理不尽に彼女を怒った覚えは無い。くだらない
嫉妬が殆どではあったが、彼女が怯える程、本気で怒った事など一度も
無い。それなのに信じられないと言われては、雅春自身、立つ瀬が
無いではないか。だからつい、あんな事を言ってしまった。
 冷静になってみれば、馬鹿な事だったと思う。彼女がこれまで、
どれだけの愛情を雅春に与えてくれたかを思えば、彼女が雅春を信じて
全てを委ねてくれている事がわかる筈だ。
 雅春は眠っている理子を、そっとベッドに横たえると、
その寝顔にキスをした。
「ごめん、理子・・・」
 頬にそっと触れた後、雅春も眠りについたのだった。


         (1.それから 了  2.新しい風 へつづく)


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