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小説・クロスステッチ第2部 <完>
1.それから ~ 3.結婚式


クロスステッチ 第二部 1.それから 07

2010.07.20  *Edit 

「おい、君。ま、まさか、在学中に手籠めにしてしまったと言う事なのか?」
「すみません。そういう事です」
 雅春の言葉に、女性陣はえー?と驚いて互いの顔を見合わせた。
熊田はにやけて俯き、斎藤は唖然としていた。石坂は固まっている。
そして、諸星は目を剥いて理子の方を見た。
「みんな、驚くんです。親友にも、信じられないって言われたし、
男友達はみんな私をヴァージンだと思い続けてましたし」
 理子の言葉に、熊田が爆笑した。この先生が爆笑するのを初めて見た。
普段から大笑いした事が無いから、理子は驚いた。
「熊田先生が爆笑してる・・・」
 理子がそう言うと、
「そりゃぁ、するさ。面白すぎて」
 と、笑いながら言うのだった。
「吉住は本当におかしなヤツだな。増山先生、羨ましいですよ。
彼女と一緒だと、退屈しないんじゃないの?」
 まだ、腹を抱えて笑っていた。雅春は熊田の言葉ににっこりと笑う。
「おっしゃる通りですよ。本当に退屈しません」
「もしかして、こんな変なヤツだから好きになったとか?」
「その通りです。でも、体の方も本当に極上ですよ」
 その言葉に、止まりかけていた笑いが再燃した。諸星と石坂は
ショック未だ覚めやらぬと言った態である。
「ねぇ、理子。あなた、よく平気でいられるわね」
 と、柳沢に言われた。
「私ですか?私はこういう話し、実は全然平気なんです。増山先生も
含めて、みんな私をウブだと思ってるようですけど、私、そうでも
ないんですよ。男友達が多いせいか、中学生の時から猥談には
慣れっこなんです。一緒にしたりもしてますしね。自分は本当は
男なんじゃないかと錯覚する時もあるくらいです」
「そんな事は無いですよ。口ではこう言ってますが。耳年増なだけです。」
 と、雅春が言った。
「き、君は、学校では、少しも変わった素振りが無かったね」
 石坂が、やっとの事で思いを口にした。硬い表情をしている。
「そうですね。学校では努めてそうするようにしてました。それに、
そうしないと流されそうだったし。先生に手籠めにされちゃうと、
自分を取り戻すのに3日くらいかかっちゃうんです。そんな事を
繰り返していたら、勉強なんてできないじゃないですか。だから、
極力、先生を避けてました」
「だから、職員室でも、気にして無いようで気にしてたんだね」
「そうです。どうしても視界に入ってきてしまうので、困りましたね。
石坂先生に指摘された時には、ドキっとしました」
「だけどお前は、ずっと清らかな雰囲気だったぞ。今もだ」
 諸星がそう言った。
「それは、私のせいじゃありません。意図しているわけでは全く
無いですから。私自身、先生を知ってから、自分がそれ以前と全く
雰囲気が変わらない事を不思議に思ってたくらですし。先生は、
私が何にも染まらないからだっておっしゃるんですけど・・・」
 みんなが雅春を見た。
「精神的に影響されにくいんですよ。こんなに若いのに。染まりそうで
染まらない。流されそうで流されない。冷静さを失わないから
なのではないかと、思ってるんですが」
「その、こんな事を本人の前で言うのもなんですが、汚したく
なるような気持ち、一切湧いてきませんか?」
 と、斎藤が遠慮がちに言った。
「君、何を言ってるんだ」
 と、諸星が睨む。
「いえ、いいですよ。わかりますから。そういう気持ち、時々湧いて
きますよ。こうも変わらないと、自分が抱いた事すら夢だったんじゃ
ないかと思う時がありますからね」
 雅春のこの言葉に、理子の表情に僅かながらの変化が生じた。
今日一日、ずっとポーカーフェイスだった彼女の顔に初めて生まれた
変化だった。だがそれも一瞬ですぐに消えた。だからその変化が
どんな感情を現したものだったのか、雅春は読みとる事が出来なかった。
「これから色々と人生経験を積んで行けば、また少しは変わって
くるんじゃないか」
 諸星がそう言った。確かにそうかもしれない。理子はまだ若く
未知数過ぎた。これからどう変化していくかは、本人にすらも
わからない事だ。
「理子君、君の歌声を聴かせてくれないかな」
 と、石坂が言った。
「おお、そうだ。君の歌はいい。是非、聴かせてくれよ」
 諸星の言葉に、みんなが拍手した。
 理子は戸惑い、雅春の方を見ると、彼は笑って頷いた。だが理子は
恥ずかしがり屋で、人前で歌うのが苦手だ。文化祭でもかなり緊張して、
逃げ出したい程だった。そんな理子の心中の葛藤を誰も知らない。
雅春さえも。
 これまで堂々と顔色一つ変えずに大人達との会話を交わしていた
理子が、まさかそんなに恥ずかしがり屋だとは誰も思うまい。
「吉住さん。私が伴奏しましょうか?」
 と、横川が言った。
「いっそ、弾き語りをしたらどうだ?俺もずっと聴いてないから
聴きたいし」
 雅春がそう言う。
「弾き語りって?」
 柳沢が不思議そうに訊ねた。
「合唱部の練習が終わると、彼女はよく一人で残って音楽準備室で
ピアノの弾き語りをしてたんですよ。僕はたまたまその現場にかち
合ってしまって。それが縁と言うか、二人を近づけた要因の一つ
なんですが・・・」
「あら、そうだったんですか。彼女がよく残っているのは知って
ましたけど。増山先生は隣でブラスバンドの指導をされてますものね。
準備室にもよく出入りされてましたし。そういう事だったんですね」
「じゃぁ、音楽準備室で愛を育んでたのか」
「それ程でもありませんよ」
 と、雅春は苦笑した。
「そうですよ。言うほど、あそこでは会ってませんから。弾き語りの
時は偶然です。先生は私が弾き語りを始めた時に入室してきたんです
けど、私は気付かなくて。先生は人が悪いから、ドアを半開きにした
まま完全には入らずに、ずーっと、聴いてたんです。そうとは知らずに
私は何曲も歌って。そうと知った時には、恥ずかしかったです、凄く」
 理子が強い口調で言うと、諸星は笑った。
「歌を聴かれたくらいで、恥ずかしいのかよ、お前が」
「そうだよ。だから、いい機会だし歌ったらどうだ」
 雅春の言葉に、みんなが再び拍手した。
「じゃぁ、一曲だけですよ」
 理子は赤面してそう言うと、ピアノの前に座って、「青春の影」の
弾き語りを始めた。澄んだ声が室内に響いた。声楽曲とは全く違う
理子の別の魅力に、皆驚いていた。雅春も久しぶりに聴く理子の歌声に
聴き入るのだった。澄んで温かい歌声が心に沁みる。
歌い終わり、拍手が湧く。
「素敵だったわ~」との柳沢の言葉に、皆が頷いた。
「私なんかより、先生の方がずっと歌が上手ですよ」
 と、理子は笑って言ったので雅春は理子を睨んだ。
「ほぉ~。それは是非聴いてみたいな」
「いえいえ、人様に聴かせるようなものじゃないですよ」
「そんな、恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。上手なのに」
と、理子が笑う。自分がかつて言われた言葉だ。そもそも、雅春が
恥ずかしがるなんて、柄じゃないではないか。
 理子は雅春の部屋からギターを持ってきた。渡されて雅春は閉口する。
「覚えてろよ」と、理子に言うと、仕方なくチューニングを始めた。
女性陣がその姿を見て浮足立った。
 考えてみると、理子以外の人前で歌うのは学生時代以来だった。
当時は別段、恥ずかしいとも思わなかったが、職場の人達の前で
歌うと言うのは、矢張り緊張するものだと改めて思うのだった。
「先生、『サボテンの花』をやりましょうよ。あの時みたいに」
 理子が笑ってそう言った。その顔を見て、雅春は微笑んで頷いた。
 雅春がカウントを取り、ギターのイントロを始めた。それに理子が
ピアノを合わせる。雅春が歌いだした時、女性教師達は溜息を洩らした。
男性陣も驚きの表情だ。普段から低い美声ではあるが、歌うとその声が
艶っぽくなり、とても魅力的だ。歌自体も上手い。理子とのハーモニー
が綺麗で、歌い終わった時、大きな拍手が起こった。
「凄いじゃないか、二人とも。いっそ、夫婦デュオでデビュー
したらどうだ?」
 と、諸星が言った。その言葉に二人は苦笑する。
「増山先生は、本当に素敵な歌声ですね。ルックスも素敵だし。
スカウトとか、された経験がおありなんじゃありませんか?」
 と、横川が言う。
「そうですよー。スカウト、結構されてるんじゃないですか?」
 斎藤も言う。
 みんなが、それを問うような目で雅春の事を見た。
「あるには、ありますが・・・」
 雅春の言葉に、「おおぉ~、やっぱり」と、一同、どよめいた。
「今ここにいるって事は、やっぱり断ったって事なんですよね?」
 と、斎藤が言った。
「そういう事です」
「なんだよ、勿体ないな~」
 と、諸星が言った。
「音楽は好きですが、騒がれるのは好きじゃないですし、日本史の
研究の方がもっと好きなので」
「両方やっても良かったんじゃ?最近は、そういうアーティストも
増えてきてますよね」
 小松が言った。
「二股かけるのは苦手なんですよ」
 雅春はそう言って笑った。小松はその笑顔に赤面した。学校では
滅多に笑わない。笑いかけられたのは初めてである。
「小松先生、赤くなってる」
 と、斎藤が冷やかすように言った。柳沢もからかうように、
「本当だ」と言った。
「だって・・・・」
 と、二の句を継げずに赤くなっている小松に熊田が言った。
「増山先生の笑顔にやられたんでしょう?普段、笑ってるのを
見た事ないものだから」
「そう言えば、増山先生は学校ではあまり笑わないよな。今日はここで、
普段あまり見ない増山先生の表情を見せてもらってるような気がするな」
 と、諸星が感心したように言うのだった。
「お二人とも、鋭いですね。先生って、学校ではいつもクールですよね。
授業中もそうだし。女生徒達のアプローチには超冷たいし。
笑う事なんて殆ど無くて、冷たい顔してる」
「理子君は、そういうクールな男性が好みなのかい?」
 石坂の言葉に、理子は首を振った。
「そんな事は無いです」
「じゃぁ、どうして好きになったんだ?」
 理子の言葉に熊田が訊いてきた。


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