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小説・Bye by Blue<完>
10.最終章:明るい未来へ


Bye by Blue 10.最終章 04

2010.07.12  *Edit 

 睦子が店を辞めて3カ月程過ぎた頃、浜田がいつものように
店の近くの炭火焼コーヒーの店で一人でコーヒーを飲んでいたら、
突然声を掛けられた。
「最近、ずっとおひとりでいらっしゃいますよね」
 いきなりの男性からの言葉に、浜田は驚いた。両隣りは誰も座っていない。
 あたしなのかしら?と思ってキョロキョロすると、カウンターの
中で目の前に立っている男性が、浜田に微笑みかけていた。
 驚いた目で見つめると、目の前の男はニッコリと笑った。
「時々、一緒にいらっしゃるお客様は、どうされたんですか?」
 この店に通いだして以来、こうして声を掛けられたのは初めてだった。
「あ、あの、あたしに話しかけてらっしゃるの?」
「他にどなたがいらっしゃいます?」
 そう言われて、いきなり緊張したと言う。
「わららないものだなぁ~、男女の間って」
 と、結城が感慨深げに呟いた。
 全く同感だ。そもそも自分達の事が一番不思議に思うのだから。
「だけど、あの人も、随分と思いきったもんだよな」
 あの人、とは、コーヒーショップの店長の事である。
 店長は雇われ店長だった。店は殆ど一人で切り盛りしている。
味とスピードが売りの店で、利用者も長時間そこに居る客は殆ど
いない。だから、お客とのコミュニケーションは必要最低限しか
取らない方針になっていた。
 浜田がこの店に通いだした頃、店長は別の人間だったそうだ。
今の店長は、睦子が勤め出す少し前から着任したらしい。
 客は入れ替わり立ち替わりだが、その中でも常連客はいる。
最初、浜田はただの常連客に過ぎなかった。毎日来るわけでは無いが、
週に2,3回、夕方の時間に一人でやってくる制服姿の浜田に
特別な興味も無かった。
 そのうち、時々人と連れ立ってやってくるようになった。
一緒に来る女性は、その時によって違ったが、2人だけだった。
一人は睦子でもう一人は上村遥子だった。この2人以外の人間と
一緒に来る事は無かった。
 このコーヒーショップに女性の客は少ない。そんな中で、頻繁に
やってくる彼女たちの事が段々と気になるようになったらしい。
 制服から、すぐ近くにあるファッションファブリックの店員だと分かった。
 客の出入りが激しいから、一人で切り盛りしていると忙しい。
だが、彼女達がやって来る時間帯は、大抵空いていた。だから
時々話し声が聞こえるし、何の気なしに様子を見てしまう。
 そのうち、一人が姿を見せなくなった。
 そしてそれから約半年後に、もう一人も姿を見せなくなった。
 多分、辞めたのだろう。
 一緒に来る人間がいなくなっても、一人でやって来る浜田の事が
何故か気になった。気になって気になってしょうがなくなってきて、
ふと声をかけてしまったのだと言う。
 それから、浜田がやって来るたびに、二言三言、言葉を交わす
ようになり、いつの間にか親しくなった。
「俺、浜田さんはもうずっと独身でいるものだと思ってた」
 浜田はあれから、服地売り場で副主任に抜擢された。あの職場で
女性の副主任は初めてなので第一号となったのだ。
 副主任だった河嶋が辞めて、1年程経った頃だった。
 弓田主任の推薦だ。
 元々売り場の中心者のようにテキパキと仕事をこなしていたから、
適役だった。仕事に将来性を見いだせないと言っていたから、
本当に良かったと思う。
 以来、前にも増して仕事に励んでいた。だから結城が独身で
いるのだろうと思っていたのも頷ける。
「なんかね。夏ごろにプロポーズされたらしいんだけど、
ずっと迷ってたんだって」
 店長と親しくなってから、かれこれ4年である。
 浜田も39歳になっている。
 40歳を目の前にして、思いも複雑だったそうだ。
 相手は5歳年下だ。その年齢差がずっと気になって
仕方なかったと言っていた。
「それに、あたしってギスギスしてて女らしくないでしょ?
何であたしなのか、いまだに不明なのよね」
 その気持ち、凄くよくわかる。
 あたしだって、いまだに不明だもん。
 浜田にとっては、久しぶりの恋愛だった。20代半ば以来
なんだと言う。そうすると、10年もずっと一人だった事になる。
「いつまでも一人でいるもんじゃない。だからギスギスして
くるんだよ、って佐々木さんに言われた事があったけど、
今更ながらに本当だって思うわ」
 長い間一人でいたことと、5歳も年下と言う事もあって、
なかなか素直になれないんだとこぼしていた。
「でも、逃げてばかりじゃ、いつまで経っても幸せには
なれないわよって、前に私に言ってくれましたよね?
あたし、同じ言葉を浜田さんに言いたいな」
 睦子の言葉に、浜田は笑顔になった。
「そうよね。あたし、あの時、鮎川さんにそう言ったのよね。
だって、焦れったかったんですもの。結果を恐れていたら、
いつまで経っても前へ進めないわよね」
 そう言った浜田は、幸せそうな顔をしていた。
 仕事も恋愛も充実していて、綺麗になったと感じたのだった。
「むっちゃん。そろそろ、上へ行かない?」
 そう言う結城の瞳は熱く潤んでいた。
 睦子が頬を染めて頷くと、結城は睦子を抱きあげた。
 毎年、こうして彼は抱きあげてベッドまで睦子を運んで行く。
 太くて逞しい首に腕を回し、厚い胸板に顔を寄せ、お姫様の
ように抱っこされて運ばれるのが嬉しい。下から見上げる結城の顔は、
凛々しい王子のようだ。
 彼はいつも優しい。
 優しく丁寧に睦子を愛してくれる。
 激しい時はあっても、乱暴に扱われた事は一度も無かった。
 広く逞しい胸の中にすっぽりと包まれる時、睦子は幸福感に
満たされる。大切にされている事を実感して、深い喜びを感じる。
「むっちゃん…。俺達もそろそろ一緒にならないか?」
 共に深い歓びを味わった後、睦子の髪を優しく撫でながら結城が言った。
 驚いて顔を結城の方へ向けると、優しく潤んだ瞳が睦子を
愛おしげに見つめていた。
「君を愛してる。とっても。君がいてくれたから、俺は頑張って
ここまでこれたんだ。これからも、ずっとそばにいて欲しいんだ。
一緒に頑張って行きたいんだよ。…いいだろう?」
 睦子は震えた。
 涙がこぼれる。
「むっちゃん…」
 結城は心配そうな顔をして、睦子の涙を指で拭った。
「ありが、とう…」
 震える声で、睦子は言うと、頬の上にある結城の手を取った。
「あたしも、愛してる。…とっても。だから、ずっと一緒にいたい…、
ずっとそばに」
 睦子の言葉を聞いて、結城の瞳が赤くなってきた。
「睦子…、ありがとう。…本当に、ありがとう。一生、大事にするよ」
 そう言って睦子を抱きしめた結城の体が、微かに震えているのを
睦子は感じるのだった。


                 (次回で最終回です)

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