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小説・Bye by Blue<完>
9.進むべき道


Bye by Blue 9.進むべき道 04

2010.07.08  *Edit 

 クリスマスイブの晩、睦子は結城と2人、逗子にいた。
 終業後、2人は其々に別の人間達からの誘いを断って、結城の車に
乗り込んだ。途中で食材を買い、逗子の小さなコテージに向かった。
 結城は知り合いの伝手(つて)を通じて、この日の為に早くに
予約していた。そして睦子の休日も、結城がクリスマスに
変更していたのだった。
「主任に事情を話してさ。頼みこんだんだよ」
 八重歯を見せて人懐っこい笑顔でそう言った結城に、睦子は呆れた。
「じゃぁ、主任は知ってるのね?」
「そう言う事。俺はもう辞めるじゃん。だから特別って言ってた」
「涼は辞めても、あたしはあそこにまだいるのに」
「いいじゃないの。明後日、忘年会を兼ねた俺の送別会の時にさ。
皆に言おうと思ってるんだ。もう俺いなくなるからね」
 ジュージューと肉の焼ける音をBGMにして、結城は目を輝かせて
そう言った。一体、その目の輝きは、焼けてきた肉に対する
ものなのか、みんなに告白する事に対するものなのか。
「残された私への風当たりが強くなるような気がする……」
 売り場の皆はともかく、他の女子社員達から、どんな目で
見られるのだろう。少し怖い。
「ほら、肉が焼けたよ」
 結城は嬉しそうな顔をして、焼けた肉を睦子と自分の皿へと入れた。
 美味しそうに肉を頬張る結城の姿を見て、ほのぼのと胸が
暖かくなる。どうしてこの人のそばにいると、こんなにも
暖かくて満ち足りて来るのだろう。
 あたしは涼から、たくさん暖かいものを貰ってるけど、
涼はどうなんだろう?
 ふと、そんな思いが湧いて来た。
「ねぇ、涼?」
「ん?どうしたの?」
 ホットプレートの上に新しい肉を並べながら、結城は睦子を見た。
優しい顔だ。
「あたしと一緒にいて、楽しい?」
 睦子の言葉に、怒ったような顔つきになって、
「当たり前だろ?」と言った。
「むっちゃん、まだそんな事を気にしてるの?俺と付き合ってるのに、
あいつの言った言葉をまだ気にしてるなんて、俺、嫌だな」
「ごめんなさい。そうじゃないの。アイツの事なんて、もう全く
頭に無いから。あのね。あたしはさ。涼と一緒にいるだけで、
すごくあったかい気持ちになるって言うか、元気を一杯貰ってる
と言うか…。でも涼は、どうなのかな、って思って…」
 結城はにっこりと笑った。白い歯が眩しく光る。
「なんだ、そんな事か。それなら俺も、同じだよ」
「えっ?同じって…。ごめん、理解できない。だってあたし、
涼と違って暗くない?人づきあいだっていい訳じゃないし……」
「俺みたいに、八方美人じゃないもんな」
 結城が笑ってそう言った。
「やだ、そういう意味じゃなくて」
「男に対して、美人、も無いよな。酷いよなぁ」
「あらっ。美女じゃないんだから、女性とは限らないんじゃない?
美しい人なんだから」
「えっ?俺って、美しいの?」
「そうじゃないでしょう。もう茶化すんだから」
 結城は愉快そうに声を出して笑った。
「俺さ。真面目で頭が良くて優しい女の子が好きなんだよ。
むっちゃん、ぴったりじゃん」
「ええーっ?そ、そんな女の子なら、他にもいくらだって
いるんじゃない?」
 月並みと言うか、平凡と言おうか。どこにでもゴロゴロと
いそうな気がする。
「そう?でも、俺にピッタリくるのはむっちゃんしかいないけど」
 そう言って、美味しそうに肉を頬張っている。
 なんだか…。よくわからない人だ…。
「でもあたし、インドアでしょう。スポーツ好きの涼にとっては、
楽しく無いんじゃないかなって思うし…」
「そんなの、関係ないよ。むっちゃんがインドアだろうと何だろうと、
好きなものは好きなんだから、しょうがないじゃん」
 それは…、そうだ…。
 顔が赤くなった。
「あの職場に勤め出した頃さ。俺、君に仕事を教わったでしょ。
親切で丁寧で、教え方が要領を得てて、凄く解り易かった」
「えっ?そうだった?」
 結城がやってきたのは5月だった。
 明るくて爽やかで、いつも笑顔の結城涼。
 取っつきが良くて、感じの良い人だな、と思った。
勿論、ステキな人だとも。
「自分がよく解って無かったら、あんな風に要領良く適切に教えられ
ないよ。だから、頭のいい人なんだなってあの時に思ったんだ」
「なんか、そんな事を言われると照れるかも…。言われた事ないし」
「俺さぁ。頭のいい女性に憧れるんだよなぁ、昔から。
でも俺、馬鹿だから、ふられるんだ、いっつも」
「ええっ?ふられる?涼が?信じられないんだけど…」
 あれだけ会社でも人気者の、このステキな人が?
「最初はさ。悪くないみたい。身に付いた処世術の笑顔でさ。
ウケはいいみたいなんだよね。でも、付き合いだすと、
『デリカシーが無い』とか『頭悪いんじゃないの?』とか言われてさ。
で、大学中退したって話すと、トドメを刺される」
 なんか、力が抜けて来た。
「ねぇ。それってさ。たまたま選んだ女性が悪かっただけじゃない?」
 大卒じゃない事を、しきりに気にしていたのはそのせいなのか。
「そうかもしれない。だけど、自分でもデリカシーが無いとか
頭悪いとかって言うのは自覚してるからさ」
「私は、全然、そう思わないけど?」
 結城は嬉しそうに笑った。その笑顔が心をギュッと掴む。
この人の笑顔を見ると、他の全てがどうでもよく思えてくる。
今までの女性達は、そう思わなかったのだろうか。
そうだとしたら不思議に思う。
「俺もそうだと思ってた。君は優しいから」
「あたし、優しくなんか無いのに」
 睦子の言葉に、結城は首を振った。
「君はさ。人の本質を見抜いてる。例えば、石川さん。彼女の
お喋りな所とかお節介が過ぎる所とかに辟易としながらも、
彼女が優しい子だって事が分かってるから好きだろ?浜田さんの
事だって、冷たそうな外見や態度とは違う浜田さんの良い所を
ちゃんと分かっていて、あの人の事が好きなんだ。恩田さんに
対しても、佐々木さんに対してもそうだ。君は人の見た目とか
些細な態度とか、そう言った事に振りまわされずに、その人の
本質を見抜いて接してる。それが皆にもわかるから、
みんなむっちゃんが好きだし、信頼してるんだ」
「そ、そんなの、買い被りだよ…」
「まぁ、自分の事って、自分じゃよく解らないもんな」
 結城は笑ってそう言うと、焼けた肉を睦子の皿へ入れた。
「ほら、食べなよ。全然食べて無いじゃん。旨いよ、凄く」
 言われて睦子は、肉を口に運んだ。
 本当だ。凄く、美味しい…。
「河嶋さんはさ。むっちゃんの事を協調性が無いとか批判してるけど、
俺はそうは思わないんだ。人に合わせる事も大事だけど、自分を
主張できる事も大事だと思う。人にどう思われようとも、自分が
本当に嫌だと思う事は無理しないむっちゃんを尊敬してる。それに、
君と一緒にいると、ホッとする。自分を無理して飾らなくてもいいから」
「ありがとう…。そう言って貰えて、凄く嬉しいけど…」
 赤くなりながら、睦子はそう言った。
「じゃぁ、ほら。食べよう。沢山食べないと、今夜はもたないよ?」
 睦子は思わず、飲みかけていたウーロン茶を吹きだした。
「や、やだ、涼、何言ってるのよ…」
 あたふたしている睦子を見て、涼は笑った。
「むっちゃんって、本当に可愛いよなぁ。今夜は朝まで離さないから、
覚悟する事」
 結城はそう言って笑いながら、肉をモグモグと食べだした。

 波の音が遠くに聞こえる。
 月が水面を照らしていて、小さな波の白い角がそっと光っている。
 藍色の空には、きっと冬の星座が美しく輝いているのだろうが、
月明かりと街の明かりが眩しくて、部屋の中からは見えないのだった。
 シャワーを浴びた後、睦子は結城に横抱きにされて
二階の部屋まで運ばれた。
 筋肉質の逞しい腕に抱きあげられて、それだけで体が熱くなってくる。
 そっとベッドの上に横たえられた。
「むっちゃん。腰は大丈夫?」
 心配そうな目をして、睦子の瞳を覗きこむ。
「うん。今は平気……」
 結城は自分の着ているものを脱いだ。
 よく日に焼けた小麦色の逞しい体が現れて、ドキドキした。
 睦子も脱がされる。
 恥ずかしくて微かに震えた。
 そんな睦子を、結城は抱きしめた。肌と肌が密着する。
胸や二の腕の筋肉を直に感じて、それが心地良い。
 唇が重なる。
 最初は躊躇いがちに。
 そして優しく。
 そして、激しく…。
「むっちゃん、…俺、君が好きだ。凄く…」
 語る唇と瞳が熱い。
「涼…、あたしも…よ」
「俺…、こんなに好きになったの、君が初めてだ…。
君がそばにいてくれないと、駄目みたいだ…」
 そう言って重なった唇が、激しく睦子の唇を吸ってきた。
 重なった唇から、触れる全身から、想いの全てが流れて来て、
彼の許へも流れて行く。
 2人がひとつに重なった時、睦子は耳元に熱い吐息を感じながら、
「愛してる…」
 の言葉を聞いた。
 耳から入って来たその言葉は、心を直撃し、血液の流れと共に、
一瞬にして全身を駆け巡った。
自分の体が愛で満たされてゆくのを感じる。
「あたしも、…愛してる」
 睦子の言葉を待ってでもいたように、大きなうねりがやってきた。
 全てを呑み込んで、2人は満ち足りた浜辺へと打ち上げられるのを
感じるのだった。

 激しい夜が明けて、清々しい朝を2人で迎えた。
 逗子は三浦半島の西側に位置するから、朝陽が昇るのは見れない。
 季節的にも日の出は遅い。だから7時を少し過ぎた頃になって、
ようやく海の先が陽の光を浴びて少しずつ輝きだしてきた。
 そんな朝の海の様子を、睦子はベッドの中から見ていた。
部屋の中は、まだ薄暗い。
 布団の端から少し出ている肩が冷たい。その冷たい肩先に、
熱い唇を当てられて、睦子はビクリとした。
 太くて長い腕が背後から睦子を抱きしめて来た。
 熱い唇は肩先からうなじへと這った。
 抱きしめている手は、睦子の乳房に当てられていて、
そっと先を摘まむ。
「あっ…!」
 思わず声が洩れるのだった。
「睦子…、愛してる…。夕べは凄く、すてきだった…」
 結城はそう耳元で囁くと、そっと耳たぶを噛んで来た。
「涼…、もう、朝よ?」
 喘ぎながら言う睦子に、「そんなの、関係無いよ」と結城は
熱い声で言うと、背後から睦子の足の間に膝を割り込ませてきて
足を開き、そこへ、手を入れて来た。
 優しく擦られた後、指が中へ入ってきて、睦子は震え、
そして仰け反った。
 自分の中で動く結城の指を感じて、別世界へとトラップしたのを
感じた。研ぎ澄まされた感覚の中で、彼だけを感じる。そして、
睦子の全てが彼を欲していた。
 こんな風に愛される事をずっと待ち望んでいた。
全てを許し全てを預ける事のできる人から、深く愛される事を。
 結城は指を抜くと、背後から睦子の中に入って来た。
 そしてギュッと睦子の体を抱きしめる。
 熱い…。
 背中一面に結城の熱い体が密着し、太い腕は睦子の体に絡みついている。
 そして、繋がっている。

 ずっと……。
 ずっと、あたしをそうやって捕まえていて。
 ずっと、離さずにいて…。

 この人の腕の中にずっといたい…。
 睦子は結城に貫かれながら、自分もこの人を離すまいと強く思うのだった。


      (9.進むべき道 end  10.最終章:明るい未来へ へつづく。。。)


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