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小説・Bye by Blue<完>
9.進むべき道


Bye by Blue 9.進むべき道 03

2010.07.07  *Edit 

 翌日、結城は休みだった。
 睦子はホッとした。
 昨夜、睦子は結城が待ついつもの店へは行かずに帰宅した。
 帰宅途中、メールが入った。結城だったが返事はしなかった。
電話もかかってきた。だが、出なかった。
 ごめんね、と思いながらも、所詮、私達は別世界の人間なんだと
思ってしまう。住む世界が違うのだ。だから、進むべき道も違う。
 違い過ぎるから、互いに惹かれたのかもしれない。
でも、違い過ぎるから、同じ道を歩めない。
 結城がいない職場は味気ない。
 睦子が腰を痛めて休んでいた時も、見舞いに来た彼が
同じような事を言ったっけ。
 でも、寂しいと思うのは最初のうちだけだ。いずれ馴れるだろう。
「鮎川さん、今日は久しぶりに一緒に帰らない?」
 夕方、浜田が言いに来た。
「えっ?私は構いませんけど、いいんですか?」
 浜田はいつも、さっさと着替えて一人で先に帰って行く。
せっかちだから、皆と合わせてのんびり出来ないし、用事が
無い限り待つのもイヤらしい。
「勿論よ。ちょっと、話したい事もあるの」
 話したいこと?一体、なんだろう?まさか、結城さんの
事じゃないよね…?
 多分、2人の様子がおかしい事に気付いているだろう。
 終業後、睦子はいつもよりも手早く着替えた。待つのが
苦手な浜田を待たせては悪いと思ったからだ。
 手早く着替えながら、浜田の様子を窺うと、彼女はテキパキと
着替えていた。動きに無駄が無いように思える。慌てている風でも、
急いでいる風でもなく、まさにテキパキとした動作だった。感心する。
「じゃぁ、行きましょうか」
 着替え終わった睦子に声をかけて、浜田が先にロッカーを出た。
睦子はそれに続く。
「今日も、忙しかったわねぇ。鮎川さん、腰の方は大丈夫?」
「はい。レジだから助かります。でも、その分、みんなに負担を
かけてるから、申し訳無くて…」
 レジの方が、楽だ。その楽な仕事を睦子が一人占めしていると思うと、
本当に皆に申し訳なく思える。今まであの職場で仕事をしていて、
レジ担当の時が息抜きの時であると分かっているから尚更だった。
「仕方ないわよ。だけど、いずれ、他の売り場へ配置換えして
貰う事を考えた方がいいかもしれないわね」
 その言葉に、気持ちが沈む。矢張り、それを考えなければ
ならないのか。
「だけど浜田さん。配置換えを希望しても、受け入れて
貰えるでしょうか?」
「どういう事?」
 そもそも、睦子が簡単に採用されたのは、人手不足の服地売り場
だったからじゃないのか。他の売り場は人手が足りている。
人の入れ替わりは少ない。
「でも、誰かが辞めたら、その後にって事も考えられるじゃない。
配置換え希望を出していれば、そういう時が来たら替えてくれるわよ。
すぐに替えるのは無理でも」
 そういうものだろうか?
「鮎川さんの今回の故障は、会社の責任よ。だから、鮎川さんが
配置転換を求めれば、それを叶える義務があると、私は思う」
 逆に、厄介払いをしたくて、わざとのらくらして要求を
叶えないと言う事も考えられないだろうか。
 店を出ると、浜田は駅とは反対の方向へと足を向けた。
「あれ?浜田さん、どこへ行くんですか?」
「ごめんなさい。ちょっと寄りたい所があるんだけど、いいかしら」
「いいですけど……?」
 寄りたい所って、どこだろう?
 いきなりの事で、睦子は戸惑った。
 駅と逆方向へ200メートルほど歩いた時、ある車が目に付いた。
 カローラ・ルミオン。
 結城の車と同じ車だ。目を凝らして見ると、色も同じようだ。
こんな所で、同じ車を目にするなんて…。
結城を思い出して胸が痛くなる。
「浜田さん、どこへ行くんですか?」
 目的地を知らされないまま200メートルも歩いて来て、
少し不審な感じがした。
「ああ、ごめんなさい。そろそろなんだけど…」
 そう言って、辺りをキョロキョロしている。
 どうしたんだろう?と思っていたら、突然、
カローラ・ルミオンのドアが開いた。
「すみませーん」
 中から男の声が聞こえて、目をやると結城だった。
「ああ、なんだ、そこにいたんだ。早く気づいて
くれなくちゃ駄目じゃない」
 突然の事に睦子はギョッとした。
 えっ?なんなの?一体、どういう事?
 浜田と結城のやり取りに、合点がいかない。
 睦子は2人の顔を見比べた。
 なんで、結城がここにいるのだろう。今日は休みだったのに。
「鮎川さん。驚かせちゃってごめんなさいね。でも、こうでもしないと、
あなた、結城さんと逢わないでしょ」
 浜田の言う事が分からない。何故、そんな事を言うのだろう。
「あなたが会社へ復帰してから、ずっと結城さんを避けてるのには
気付いてたわよ。おかしいと思っていたけど、余計な口出しは
しない方がいいって思ってた。だけど、昨日、結城さんの誘いを
すっぽかしたんですってね。あたしは、どうしてあなたがちゃんと
話し合おうとしないのか、理解できない。今日会社に、
結城さんから電話がかかってきてね。事情を聞いて、協力
することにしたの。そういう訳だから、彼の車に乗りなさい」
 まさか、浜田がこんな事をするとは思っていなかった。
そして、結城が、浜田に助けを求めるとは。
「浜田さん…、でもあたし…」
「何をそんなに躊躇するの?結果を考えるより、まずは話し合う
事じゃないの?どうして、避けるのよ。彼は話したいって言って
るのに。逃げてばかりじゃ、いつまで経っても幸せにはなれないわよ」
 浜田は優しい顔で微笑んでいた。
「さぁ、早く乗りなさい。グズグズしてると、駐禁で捕まっちゃうわよ」
「浜田さん…」
「もう、苛つくわね。乗らないと、絶交するわよ。それでもいいの?」
 浜田は睦子の体を車の方へ押しやった。
 睦子は車のステップに足を掛けると、振り返って浜田に
「ありがとう…」と声を掛けた。
 浜田は溜息をつきながら、「全く世話が焼ける事」と言って、
笑ったのだった。

 車は睦子を乗せて、走り出した。
 睦子は前を見ながら、
「結城涼の、バカ」
 と言った。
「なんでだよ。バカはどっちよ。俺、怒ってるから」
 結城の言葉に、睦子は気持ちが沈む。
「何で昨日は来なかったの」
 睦子は答えずに外を見た。街はどこもクリスマスのイルミネーション
で綺麗だった。なのに自分の心は暗い。
「メールしても返事は来ないし、電話しても出ないし」
 返事をしない睦子に、結城は溜息を洩らした。
 車は県道に出て北上し始めた。睦子の家へ向かっているのだろうか。
「もう、俺の事を嫌いになったのかな。だからなの?」
 胸がギュッゥと収縮したような気がした。
「むっちゃん」
 返事を催促するような声の調子に、睦子は言った。
「そっちこそ、もう嫌いになったんじゃないの?」
 声が震える。
「何言ってんだよ。そんな訳ないじゃないか。それなら、
どうしてこんな事をするよ」
「だって…、ずっと連絡くれなかったじゃない…」
「それは君だって同じだろう?俺は、君から連絡くれるのを
待ってた。例のヤツ、見てくれたの?」
「…見た…」
 睦子は呟くように言った。
「それなら、どうしてそれを教えてくれなかったの?」
「だって…、怒ってたみたいだし、私、嫌われたって思ったし…」
 声が弱弱しくなる。
 結城は再び溜息を洩らすと、ハンドルを脇道へと切った。
「どこ行くの?」
「ちょっとそこに、大きな公園があるから」
 結城はそう言うと、その先にある公園の駐車場へ車を入れた。
他にも数台止まっている。結城はサイドブレーキを引くと、
睦子の方に向き直った。
「確かに怒ったよ。君があまりにも後ろ向きだったから。
でも、だからと言って、そんな事で嫌う訳が無いだろう?それに、
そうだとしたら、俺はハッキリとそう言う。勿論、君の前彼みたいに
傷つけるような言葉は使わないけど」
 睦子は発する言葉が見つからなかった。
 嫌われてはいなかった。愛想を尽かされてもいなかった。
 だけど、睦子自身、このまま結城との関係を続けて行く
自信が無かった。いつか破綻しそうで怖い。
「むっちゃん。君の気持ちを聞かせてくれよ。君はもう、
俺の事が嫌になったの?」
 そんな訳、無いじゃない。
 でも、どうしよう。
 嫌になった事にしておいた方がいいのかな。
 そしたら、これでジ・エンド。終わりに出来る。悲しいけど、
もう思い悩む事もない。目の前からいなくなる人なんだから、
いずれ忘れられる。
深く傷つく前に……。
「あたし達、違い過ぎない?」
 睦子は頷く事も、拒否する言葉も言えなくて、
そんな言葉が口をついて出て来た。
「違う人間なんだから、違って当たり前だろ」
 結城は憮然として答えた。
「そうなんだけど、違い過ぎるって言うか…」
「だから?だから嫌だって言うのか?」
「そうじゃなくて…」
 上手い言葉が出て来なくて逡巡していたら、結城に抱きしめられた。
「なんでそんなに、こねくり回して考えるんだよ。
どうして素直にならないんだよ」
 ハスキーな声に熱がこもっている。
 その熱い吐息が髪にかかって、睦子の心を揺さぶる。
 冷え切った心が暖かくなってゆくのを感じる。
「俺は難しい質問はしてないよ。俺が嫌いなのか好きなのか。
どっちなの?」
 その言葉に、胸が熱くなる。
「好き……」
 それしか言えない。
 嫌いなのか、好きなのかと訊かれたら、それしか言えない。
嫌いだなんて言えるわけがない。
「むっちゃんは、やっぱり馬鹿だ」
 結城は睦子を抱きしめる手を強めて、そう言った。
「好きなら、なんで避けるんだよ。どうして自分の方から
ぶつかってこないんだよ」
「だって、あたし…」
「怖いんだろ。傷つくのが。自分が傷つくのを恐れて、君は逃げたんだ。
でもその事で、俺が傷つくとは思わなかった?」
 結城の言葉に、睦子はショックを受けた。自分の事ばかり考えていて、
結城が傷つくなんて事は微塵も思っていなかった。
「君をずっと待ってた。幾ら連絡しても返事をくれない君を。
職場でもずっと俺を避けてる君を。…俺、もうすぐ辞めるんだぜ?
このまま二度と逢わないつもりなのかと思ったら、絶望的な
気持ちが湧いて来たよ。俺にこんな思いをさせた女は君だけだ」
 結城の言葉が胸を衝く。
「ごめんなさい……。でも涼は、新しい道へ進んで行くんでしょ?
あたしは一緒には行けないから、だから…」
 そう。進む道は別々だ。
 結城は睦子から体を離すと、両手で肩を掴んだ。
「君も一緒だよ。俺と一緒に新しい道に進むんだ」
「涼……」
「案内書、見たんだろう?一緒に頑張ろう。一緒に挑戦しようよ」
 睦子は首を振った。
「無理よ。あたしには、無理。働きながら卒業と採用試験合格の為に
勉強するなんて。それに、水泳が致命的だし」
「俺が教える。俺が絶対に泳げるようにさせる」
 睦子は驚いて結城を見た。その目は真剣で、熱意がこもっていた。
「だってあたし、尋常じゃない程、水が怖いのよ?」
「大丈夫だよ。4年もあるんだ。4年もあれば克服できる。させてやる」
「どうしてなの?どうしてそこまで…」
「君が好きだから。君と同じ道を目指したいんだ。
2人で一緒に挑戦して夢を掴みたいんだ」
 結城の熱い思いが睦子の胸に雪崩れ込んできて、一杯になる。
「もう、逃げるのはやめよう。俺達ふたりで互いの足りない所を
補えば乗り越えて行けると思うんだ。勉強だって、一人じゃ大変だけど、
一緒にやれば頑張れる。水泳だけじゃなくて、体育は俺がちゃんと
出来るように教えるから、君は俺に歌とピアノを教えてくれ。
俺、音痴なんだよ。だから、さ……」
 はにかむような笑みを見て、睦子は自分の中にある不安が
薄れてゆくのを感じた。
そして結城に抱きついた。
「わかった…。一緒に頑張る」
 睦子は決めた。
 心の中の迷いを振り切った。
 この人と一緒に、歩いて行こう。
 この人となら、一緒に頑張れそうだ。
 睦子は水底から浮上していく自分を感じるのだった。


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~ Comment ~

Re: よかったよぉ>OH林檎様 

OH林檎さん♪

全く、素直じゃないですよね。あれやこれやと考え過ぎて
前へ進めない。
結城クンじゃなかったら、この恋は破綻していた事でしょう。

挫折が度重なって、へこたれていた訳なんですが、どうせ諦めるなら、
ぶつかってからの方がいいですよね~。

と言いつつも、自分も睦子タイプだったりして……(^_^;)

よかったよぉ 

睦子は奥手というより素直になれないタイプなんですねぇ。
色々考え過ぎて頭でっかちになってる…私みたい(笑)
結城くんみたいにグイグイひっぱってくれる人がいれば
私の人生も変わってたのかなぁって思います。
がんばれ!むっちゃん!!!
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