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小説・Bye by Blue<完>
7.Squall


Bye by Blue 7.Squall 06

2010.06.28  *Edit 

 台風の翌日。
 睦子と結城は別々に店長に呼ばれて、2人が付き合っている事は
店内では公(おおやけ)にしないように言われた。
風紀が乱れると言うのである。
 既に仲を知られている河嶋と和子のカップルにも、あまり皆の
前でベタベタしないように注意してあると言う。
 一緒に居て知ってしまった浜田にも、2人が嵐の中を帰って
行った後で、他言しないように注意しておいたそうだ。
 元々、自分達は付き合ってます、と皆の前で公表するつもりは
毛頭なかった。
 同じ店内で、同じ職場である。周囲との人間関係を考えても、
伏せておく方が望ましいと睦子は思っていた。
 結城の方も、意外と恥ずかしがり屋で、そういうのは苦手な
ようだった。だから2人が結ばれてからも、皆の前では以前と
同じように接している。
 それが功を奏し過ぎてしまったのだろうか。
 結城には恋人がいると言うのに、松本あかりと噂になっている。
 睦子は釈然としない。
 そもそも、以前から気にしているあかりである。
 浜田と一緒に、炭火焼コーヒーの店へ休憩を取りに行った時にも、
2人の噂を聞かされた。
「何か、最近の店内は噂話で持ちきりね」
 浜田と親しい山口芳子は噂好きである。だから自然と浜田の
耳にも噂話が入って来る。
「恩田さんには、同情するわ。河嶋さんが、こんなに酷い
男だとは思わなかった」
 眉間に皺を寄せている。嫌悪感が露わだ。
「それから、結城さん。彼は一体、どうなってるの?」
 責めるように言われて、睦子はたじろいだ。
「どうなってるって、あたしに訊かれても…」
 何だかコーヒーがいつもよりも苦く感じる。
「大体彼、前から松本さんと噂されてたでしょ。だから、
あの時には本当に驚いたわ」
 返事のしようも無い…。
「ねぇ。大丈夫なの?こんな事言うのもなんだけど、彼って
誰にでも愛想がいいじゃない。彼女がいないならともかく、
いるのに、あれはどうなのかしら」
 それは睦子も気にしている事だ。
 できれば、あの笑顔は誰にも向けて欲しく無い。
 あたしだけのものであって欲しい。
 でも、そんな事は言えない。
 嫉妬深い女だと思われたくは無いし。
 上村遥子と昼休みが一緒になった時にも同じような事を言われた。
 ポップルームと撮影場所は、同じ4階のバックヤードである。
だから、ポップルームからは撮影の様子がよく見える。
 2人はとても仲睦まじく見えると言う。
 結城の楽しそうな笑顔を見て、遥子はいつも眉をひそめるらしい。
「あなたたち、どうなってるの?」
 そう問いかけられて困惑した。
 噂が徐々に睦子の心を苛(さいな)みだした。
 あんなにハッピーだったのに、いつの間にかブルーになりかけている。
 それでも、同じ台で生地を切っている時の結城の眼差しは温かい。
 睦子が3つも4つも反物を抱えていると、結城が運んでくれる。
 あれから休日が一緒にならないので、デートはしていない。
 終業後も、秋に入ってから忙しくなって男子は残業を強いられている。
 だから2人の時間を持てないでいるのだった。
「この間さ。服地の男子の残業の帰りを、洵ちゃんと松本さんの
2人が待ってたんだって。それで、一緒に飲みに行ったらしいよ」
 京子から聞いて、ショックだった。
 何だか、追い詰められているような気がして来る。
 何も言わない彼。そして何も訊けない自分。
 そんな中で、とうとう、和子と河嶋が完全に破局した事を聞いた。
 河嶋が直接、和子に別れを告げた。
「俺、洵ちゃんが好きになった。だからもう付き合えない。ごめんな」
 真っ赤な目をして、泣きながら睦子と京子に話してくれた。
瞼が腫れている。相当泣いたのだろう。そしてまだ、泣いている。
 可哀想で仕方が無い。
 社内では、殆どの人間が和子の味方だった。
 だから、河嶋と洵子の2人は、周囲から批判の視線を浴び、
針のむしろ状態だ。
 当然だろう。
 河嶋は二股をかけていた事になるのだから。
 そして、睦子にとっては、別の衝撃的な事件が待っていた。
 遥子が今月一杯で退職すると言うのである。
 原因は、組合委員長との不倫だった。
「遥子さん、どういう事なの?」
 退職するらしいとの噂を聞いて、睦子は驚いた。仲良く
しているのに、何も聞いていなかったからだ。
「アユちゃんには、追々ちゃんと話すつもりだったんだけどね。
アユちゃん自身も色々大変そうだから、なかなか話す機会が無かったの」
 この夏休み、遥子は彼と旅行へ行ったのだと言う。
「あまり、気は進まなかったの。前にアユちゃんにも話したけど、
少しは距離を置きたいと思ってたから。でも、彼の熱意に負けちゃって…」
 だがそれが結果的にはいけなかった。
 彼の素行に疑惑を持ち出した妻が、興信所に頼んだのだ。
「それで奥さんがね。本社の社長の所へ、その結果を報告しに行ったのよ」
 組合の委員長である。組合員の労働条件を少しでも良くする為に、
日ごろ会社と闘っている立場であるのに、寄りにも寄って、その闘って
いる相手に持って行くとは。これでは夫の立場は形なしではないか。
「だからって、どうして遥子さんが辞めなきゃならないの?」
 睦子の中に、得体の知れない感情が湧いてくる。
「うん…。本社は今、大荒れなの。皆ね。薄々気づいてたらしいの。
だから、私に転勤の話しが出たみたい。或る意味、彼に対しての
警告だったんだって」
 遥子の目はどこか虚ろな感じがした。
「でも遥子さんは、今はここにいるじゃない」
「そうなんだけど、このままでいたら、こっちにも飛び火しかねない
感じなの。みんなに迷惑をかけたくないし、いい機会だと思って」
「いい機会って?」
 睦子の問いかけに、遥子は暫く黙っていた。
 遥子はこれから、どうするつもりなんだろう。この年齢で、
このご時世に失職したら、再就職は難しい。
 結局、男の身勝手で女が振り回されている。
 和子も、そして洵子も。
「私ね。実家へ戻ろうと思うの」
 沈黙を破って遥子が話しだした。
「実家へ?じゃぁ、アパートは引き払うの?」
「うん。会社辞めたら、家賃払うの大変でしょ?取り敢えず、
実家へ戻って、これからの事を考えようと思ってる」
「そうなんだ……。いなくなっちゃうんだね…」
 涙が出て来た。
 なんだか無性に悲しい。
 この人の存在が、どれだけ自分を力づけてくれたか計りしれない。
 ただ、ここに居てくれるだけで良かった。
 ポップルームに来て、この人の儚げだけど優しい微笑みに
出会うだけで、心が軽くなった。
「アユちゃん。泣かないで。退職しても、アユちゃんとはずっと
友達だよ?友達でいてくれるよね?」
 睦子は頷いた。
「何かあったら、いつでも連絡して?すぐに会いに行くから。ね?」
 遥子の実家は八王子だ。
 それ程遠いわけではない。それでも、今に比べたら、
随分と遠くへ行ってしまうような気がする。
「遥子さん…。あたし…、凄く、寂しい。ここで一人ぼっちは
寂しいよ…」
「何言ってるの。石川さんも、浜田さんもいるじゃない。
それに結城さんも…」
 そう言われて、一層、胸が痛くなってくる。
 河嶋と洵子の噂で社内が荒れだしてから、睦子は孤独を感じる
ようになった。そして、その孤独感は日を増して強くなっている。
 ついこの間まで満ち足りていたのが嘘のようだ。
 まるで、大学に入学した年の、後期に入ってから色褪せて
行った日々を思い出す。
 そんな睦子の心に、遥子の退職は追い打ちを掛けているような
気がしてならなかった。


      (7.Squall end  8.迷い道 へ つづく。。。)


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