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小説・Bye by Blue<完>
6.サティスファクション


Bye by Blue 6.サティスファクション 05

2010.06.21  *Edit 

 逞しい胸の上で、睦子はまどろんでいた。
 温泉にでも浸かっているような心地良さだ。
 大きくて熱い手が、睦子の肩を優しく抱いていた。
 夢の中にいるような気がする。
とても温かくて幸せで、居心地の良い場所。
 彼の力強い心臓の鼓動が聞こえる。ドックンドックンと血液の
流れる音がする。一定のリズムを保って悠々と走っているような、
そんな感じだ。
 結城の唇を額に感じた。
 まるで、唇製のハンコを押されたような気がした。
 君は俺のもの。これはその印。
 胸が熱くなる。
 こんなに満ち足りた思いをするのは初めてかもしれない。
 「睦子…」
 結城は睦子の名前を呼んで、両手で抱きしめてきた。
 太くて逞しい腕に包みこまれる。
 優しい顔を寄せて来た。
 額がくっつく。
「俺、どうだった?良かったかな…」
「ん…」
 頷いた。体が中から熱くなってくる。
「睦子も、凄く良かったよ」
「本当に?」
 呟くように聞いた。声が震える。
「本当に。今日は最高の1日だ。ずっと睦子と一緒に過ごせて、
こうして結ばれて」
「あたしも……」
「ホント?」
「本当よ」
 唇が合わさった。
 甘いと感じるのは気持ちのせいか。
 優しい指が、そっと敏感な場所に触れた。ゆっくりとした動きに
体が疼く。胸の先端を口に含まれ、思わず喘ぎ声が洩れる。
唇で食(は)まれ、軽く吸われた。
「結城さん…」
「涼って、呼んでくれないか」
 低い掠れ声がそう言った。
「…涼」
 睦子の中で、色とりどりの花が咲いている。
 そして、はじけ飛び、漂っている。
 前よりも一層深い歓びを感じて、睦子は結城と共に光の中へと旅立った。

 翌日出勤すると、「なんかちょっと焼けた?」と京子に言われた。
「あ、やっぱり?」
「うん。なんかいつもより少し赤いよ。また、何で?」
「ちょっと、雑草が目立ったから草むしりを…」
 こういう嘘がすぐに出て来る自分が可笑しい。
 今朝、何となくソワソワしながら出勤した。
 結城と顔を合わすのが、何となく照れ臭い。
 夜遅くに家まで送ってもらい、別れ際も名残惜しそうに
抱きしめられて熱い口づけを受けた。
「大好きだよ、むっちゃん」
 と耳元で囁かれ、「あたしも…」と答えた。
 そんな事を思い出すだけでも、顔が熱くなって来る。
「おはよう」
 と声を掛けられた。結城だ。
 京子と2人で「おはよう」と返す。
 結城は少しはにかんだような笑みを浮かべると離れて行った。
 睦子はその後ろ姿をずっと見つめていたい気持ちを抑えて、
仕事に入った。
 日曜日は開店直後から混雑が激しい。
 特に9月に入ってからは、周辺の高校の文化祭が近づいて来た為、
生地の大量買いが目立つ。普段、それ程の需要の無いサテン地や、
ナイロンの裏地、帆布、接着芯などがドッと買われていく。
 それに、睦子が担当している小物の、パイピング類やリボンは
あっと言う間に無くなった。いつもなら週に1度の頻度で注文するが、
とても間に合いそうになく、週に2度、しかも売れそうな色を
見越して多めに注文するのだった。
 そんな大忙しの日曜日だったが、睦子の心は軽かった。
 精力的に働いている結城の姿を見ると、胸がときめき、
幸福感に満ちて来る。
 昨日一日、暑い中で過ごした上に、夜遅く帰ったので睡眠時間は
いつもよりも短い。本来ならドップリと疲れていてもいいものなのに、
朝の目覚めはスッキリしていた。
 起き上がって、隣のプーさんを見て、思わず手に取ってキスをした。
そして抱きしめる。そのまま立ちあがって机の引き出しを開けると、
今度は結城の写真を手に取って、キスをした。
 写真を仕舞い、プーさんを置いて、机の上の携帯を手に取って開いた。
データファイルを開けて、昨日貰った写真を見る。
 そこに写る、恋人同士の自分達の姿を見て、夢で無かった事を再認識した。
 そうして始まった朝だった。
 睦子は元々、忙しい方が好きだ。
 前の職場にいた時は、平日は客が少なくて、品出しや商品整理を
しても暇を持て余す事が多かった。そういう時、時間の流れを
酷く遅く感じる。終業時間が待ち遠しくなる。
 だが、忙しいと、あっと言う間に一日が終わる。終わった時には、
疲労しながらも充実感があって、それが好きだった。
 そうは言っても、ここの職場は度を超えている。
 ただ忙しいだけじゃなく、重労働だ。それが辛い。
 けれども、そんな辛さも、今日は感じない。
 気持ちひとつでこうも変わるのかと自分でも驚く。
「アユちゃん、焼けたよね?」
 共に1便の和子に、食堂の席へ着いた時に言われた。
 指摘される程、焼けてしまったのか。
「そんなに、焼けてる?」
 心配そうに言う睦子に、和子は笑った。
「大丈夫、大丈夫。それくらいじゃ、大したことないよ。すぐに戻るよ」
 本当に、大丈夫かな?
「ところでさ。来週の日曜日の夜、みんなでテニスをしようって
事になったんだけど、アユちゃん、どうする?」
「ええっ?みんなでテニスって?」
 提案者は河嶋だった。
 店には定休日が無いので、全員が同日に休む事が無い。だから、
なかなか全員で親睦を深める機会が無い。河嶋は、年長者はともかく、
若い者達だけでも、もっと親交を深めたいと考えていたようで、
そこで、ほぼ全員が出勤する日曜日の終業後に、みんなでテニスでも
しようと言い出したと言う。
「飲み会って案も他から出たらしいんだけど、翌日は仕事だし、
飲めない人間もいるから、健康的にスポーツがいいんじゃないかって」
 ふぅ~ん。なるほどね。面白い事を考えるんだな、と睦子は思った。
 だけど、この忙しい日曜日の後で、テニスはちょっとなぁ~。
 よく、こんな平日よりもハードな仕事の後で、スポーツを
やろうと思うよな……。
「恩田さんは、どうするの?」
 多分、そうなんだろうとは思っていたが、案の定、
「あたしは出席する」との答えが返って来た。
「だけど、日曜日は凄くハードじゃない。平気なの?」
「大丈夫だよ。若いんだし」
 そう言って笑う和子は、とてものほほんとしている。
 翌日の月曜日、テニスの回覧が回って来た。
 若い社員を対象としている事は表面上出さず、全社員回覧になっていた。
 場所は、職場から近いテニスコートだった。
「むっちゃん、どうする?」
「うーん…。どうしようかな。あまり気が進まないんだけど…」
 気が進まない理由は2つ。
 1つは、スポーツが苦手な事。
 大学の体育の授業でテニスを取っていたので、出来ない訳ではない。
だが、上手いとは言い難い。
 そして2つめの理由は、ここの若い人たちと、
あまり親しく無いと言う事。
 親交を深めるのが目的なのだから、この機会を利用して
仲良くなればいい訳だが、そういう気になれない。
 親交を深めるのが目的とは言っているが、本当はみんなで
ワイワイと楽しみたいだけなのだと、睦子は思っている。
だから余計に気が進まない。
「京子ちゃんは、どうするの?参加する?」
 睦子の言葉に、京子は少し首を傾けた後、
「むっちゃんが行くなら、行く」
 と言った。
「なんで、あたし次第なのよ」
「だって、むっちゃんが一緒じゃなかったら、面白くないし」
「そんな事、無いでしょ?恩田さんもいるし、洵子ちゃんだって
行くんじゃないの?」
「そうだけど……」
 子供がおねだりするような、そんな目で睦子を見るので溜息が出た。


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