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小説・Bye by Blue<完>
5.BLUE × ORANGE


Bye by Blue 5.BLUE × ORANGE 06

2010.06.16  *Edit 

 仕事が終わった後、睦子は結城が指定したお洒落な居酒屋へ行った。
 駅で京子や和子と別れた後、2人が改札への階段を上っている姿を
確認して、周囲を窺いながら渡された地図を頼りに行ったのだった。
 外装も内装も、女の子が喜びそうな雰囲気の店だった。中へ入って
店員に結城の名前を告げると、案内してくれた。途中、周囲を窺うと、
小さい個室が多い、カップル向けの店だと気付いた。
「こちらです」と店員は言いながら、「お連れ様がお越しです」と
中に声をかけて、簾のような戸をスライドさせた。
 結城がテーブルの上に腕を乗せて、こちらに笑顔を向けていた。
「良かった。来てくれた」
 嬉しそうな顔でそう言われて、睦子も思わず微笑みを返す。
 座席はコの字の掘り炬燵形式になっていた。テーブルは2人用
よりは大きくて、4人用にしては小さいくらいの大きさだ。
睦子は結城の前に座った。
「まずは、何を飲む?」
 結城はそう言うと、メニューを睦子の方へと差し出した。
結城の目の前には、サワーらしきものが置いてある。
「ビールじゃないんだ…」
 睦子は思わずそう言った。
「だって、むっちゃんはビールが苦手だろ?」
「えっ?どうして?そんなの関係ないんじゃない?」
 不思議に思ってそう言うと、「そんな事はないよ」と結城が答えた。
「嫌いなものを目の前にしてたら、楽しさも半減しない?」
「あの……」
 睦子は何て答えたら良いのか困惑した。
「むっちゃんって、お酒に弱いのに、カクテルが好きなんだな。
この間、カシスで倒れて石川さんに解放されたんだってね」
 歯を見せて楽しそうに笑う結城を前にして、恥ずかしくなってきた。
 それにしても、京子ちゃんはまた喋ったのか。
本当にお喋りで困った子だ。
「つい、いき過ぎちゃっただけ…」
「今日はどうする?もし倒れても、俺がいるから大丈夫だよ。
安心して?」
 笑顔でそう言う結城に、少し躊躇する。だがすぐに思い直す。
 ここで、真面目に受け取っちゃうから、いけないんだ。
 何でも深刻に捉え過ぎるんだ、あたしは。
「じゃぁ、お言葉に甘えて。アプリコット・クーラーにしようかな」
 睦子は余裕ありげに微笑んだ。
 そんな睦子に、結城の方が戸惑いの表情を見せた。
「大丈夫?」
 心配そうな顔だ。
「何が?」
「何がって、強いよ?平気なの?」
 睦子は笑った。
「大丈夫。加減しながら飲むから。いつもそうやって
飲んでるのに、この間はついつい失敗しちゃっただけ」
 注文を取りに来た店員に、結城はアプリコット・クーラーと、
幾つかの料理を睦子に確認しながら注文した。
 店員が出て行って戸が閉まると、結城が真面目な顔をして
睦子を呼んだ。
「この間は、本当にごめん。怒ってるんだろう?だから、
何の連絡もくれないし、職場でも避けてるんだよね?」
 膝の上に手を置いて頭を下げる結城を見ても、睦子の心は晴れない。
 胸がもやもやとしていて、何をどう話したら良いのか分からない。
「むっちゃん…」
 何も言わない睦子に、結城はせつなそうな顔を向けた。
それを見て、睦子の胸は締め付けられる。
「むっちゃん、何か言ってくれないか?怒ってるなら、
そう言ってくれていいんだから」
「どうして、…怒るの?どうして怒ったって思うの?」
 睦子はやっと言葉を発した。
「俺が、…誘ったから、だろ?」
 睦子はまた黙った。その様子を見て、結城が溜息を洩らした。
そして、サワーを1口飲んだのだった。
「お待たせしましたぁ~」
 と、店員の声の後で戸が開き、飲み物と料理が運ばれてきた。
「どうぞ、ごゆっくり~」と言いながら出て行く店員の姿を見送ると、
睦子は目の前のカクテルを手にして口許へ運んだ。
 強いリキュールの匂いが鼻を衝く。
 ああ、やっぱり強いんだな、と思って、ほんの少しだけ飲んだ。
美味しいが舌とノドが少しヒリつく。
「むっちゃん。いきなり誘って悪かったよ。石川さんとの
ラブホ話しにかこつけて、つい口にしちゃったんだ」
 ほんの少し飲んだだけなのに、もう顔が赤くなって来るのを感じた。
だが睦子は再びグラスを手に取って口に含んだ。
アプリコットの甘酸っぱさが好きだった。
「あたしを…、彼氏にフラれたあたしを可哀想に思って、
それで慰めてあげようとか、ってつもりだったの?」
「違うよ!」
 睦子の言葉を遮るように、結城は強くそう言った。
「京子ちゃんから聞いてるんでしょ?あたしが彼に何て言われて
フラれたか。それから、ずっとエッチしてないから枯れちゃうとか、
それから……」
「違うって!」
 睦子の目から涙がこぼれた。
 あたし、本当に馬鹿みたい。
 なんて惨めなんだろう…。
「むっちゃん。俺、君を慰めようとか、そんなつもりじゃないから」
 結城は深く息を吐いて、そう言った。
「…じゃぁ、…からかったの?」
「それも、違う」
 結城は再び、深い息を吐いた。何故そうも息ばかり吐くのか。
 睦子がそっと結城の方を見ると、目が合って、結城の方が
逸らせたのだった。何となく顔が赤く見えるのはアルコールの
せいなのだろうか。
「来週さ…」
 結城が横を向いたまま、話しだした。
「来週さ。富士スピードウェイで、スーパーGTのレースが
あるんだ。チケットが入手できたんで、一緒に行かないか?」
 その言葉に驚いて、睦子は思わず顔を上げた。
 そんな睦子の前に、ハンカチが差し出された。睦子はそれを
断って、バックからハンカチを出して涙を拭った。
「最近…、松本さんとよくお昼、一緒だよね」
 睦子は誘いの返事をせずに、別の事を話しだした。
「同じ便の時に、わざわざ寄ってくんだ。同じ場所へ行くんだから、
一緒になるのも当然だよね」
 それはそうだ。
「この間、河嶋さんや恩田さん達と一緒に、男女6人で
飲みに行ったんだってね」
 ああ、嫌だな…。
 睦子はこんな事を言ってる自分が嫌だった。
 結城が誰と飲みに行こうが、それは結城の勝手だ。
結城の顔色が少し変わったように感じた。
「誰から、聞いたの?」
「この間、京子ちゃん達と3人で飲みに行った時に。夏休み明けに
いきなりそんな話しを聞いて、あたしビックリしちゃった」
 睦子はそう言って笑った。可笑しくもないのに。
「そこでの事。あたしは聞きたくないのに、京子ちゃんが
根掘り葉掘り訊くものだから、恩田さんがみんな聞かせて
くれちゃって…。あたしの事が話題になったんだってね」
 結城は溜息を吐いた。
「むっちゃん…」
「むっちゃんなんて、呼ばないで。何で勝手に、そんな風に呼ぶのよ」
 自分が怒り調子である事に気付いて、睦子は自分自身に戸惑った。
そして結城は、そんな睦子に目を剥いて驚いていた。
「ごめん…。そう呼ばれるの、嫌?」
「京子ちゃん以外は、誰もそう呼ばないじゃない」
「今まで、彼氏とかでも呼ばれ無かったの?」
「鮎川って呼び捨てだったり、みんなと同じアユちゃんだったり、
アユだったり。むっちゃんって呼んだのは一人だけだった。
それだって周囲のみんなに、変な顔されてたし」
「なんで?」
「あたしの柄じゃないからよ。むっちゃんなんて呼ばれる
雰囲気の女の子じゃないでしょ?」
「そんなの、関係ないじゃん。どう呼ぼうと当人同士の問題だろ?」
 睦子は俯いた。
 当惑した。どう受け止めたら良いのかわからない。
「俺は、むっちゃんって呼びたい。アユちゃんって言うのも、
名字とは思えなくて可愛いけど、俺は皆と同じは嫌だ。職場じゃ
恥ずかしくて呼べないけど、2人の時には呼ばせて欲しいんだ」
「どうして…?」
 睦子は震える声でそう訊いた。
 睦子の問いに結城はすぐには答えなかった。
 結城の瞳が忙しなくあちこちを動き回り、どことなくそわそわして、
サワーを手に取ってひと口グイと飲むと、睦子の方を見た。
 互いの視線がカッチリと合わさり、睦子は逸らしたいのに
逸らせなかった。まるでロックオンされてしまったみたいだ。
「むっちゃんが、好きだからだよ」
 一瞬、全てが止まってしまったように感じた。
「あ、あの……」
 睦子は自分の顔がみるみる赤くなっていくのを感じた。
アルコールで赤くなった顔が、更に濃くなっているのではないか?
「あ、あの…、どうして?た、例えば、松本さんとか、他に素敵な
女性、いるじゃない?うちの職場、女の子の宝庫みたいなものだし」
 睦子は手元のおしぼりをいじくり出した。何かしていないと、
落ち着かない。
「あの子が、素敵かな」
 えっ?
 結城の言葉に驚いた。
「入社した時から親しげに話しかけて来られて、早く職場に
馴れる為にもお喋りに付き合ってたけど、あの子を魅力的に
思った事なんて一度も無いよ」
 結城は真面目な顔をしてそう言った。
「他の女の子達は?」
「他も同じ。ぱっと見、綺麗な子や可愛い子はそれなりに
いるけど、それだけ」
「で、でも、いつも楽しそうに笑ってるじゃない?」
「誰が?」
「誰がって結城さんがよ」
 睦子の言葉に結城が笑顔になった。
「そりゃぁ、みんなでワイワイやってれば、それなりに楽しいよ。
でも、その瞬間だけだな。ワッとなって、それで終わり。後には
何も残らない。楽しかったなって感情が全く残らないんだよね」
 そうなのか。
 それだけの事なのか。
「でも、むっちゃんは違うよ?」
 睦子はおしぼりをくるくると丸めながら、結城を見た。
「同じ売り場で一緒に働いてて、むっちゃんを知る程に興味が湧いた」
「あ、あの、それって、どういう事?」
「真面目なのに、面白いよね。人や物事に対する風刺が上手くて、
それが凄い面白い。それに、みんなの話しをよく聞いてて優しいし。
さっぱりしてるし」
 睦子は首を捻る。
 結城の言う事がさっぱり分からない。
「ホントに、あたしの事を言ってる?」
 結城は八重歯を見せて笑った。人懐っこい魅力的な笑顔だ。
「河嶋さんに誘われてさ。松本さんと2ペアだって聞いて、
俺、断るつもりだったんだ。だけど、2ペアが嫌なら他に
2人誘うからって言われた上に、たまには付き会うべきだって
言われたもんだからさ。俺、君に『そんな気無いから』って言われて、
もしかしたら俺の勘違いだったのかもしれないって思った。
だから、つい、OKしちゃったんだ。ごめん」
 睦子は首を振った。
「それでさ。最初はみんなでビールで乾杯したんだよ。それで、
その事が切っ掛けで、河嶋さんが君の事を言い出して。そんな
河嶋さんに同調するように君の噂話を始めたあの2人には、
正直言って不愉快だったんだ。前からタイプじゃないし、
休み時間とか納涼大会の時とかに話してる時にも、好意を
抱いた事は全く無かったけど、あの時程、嫌な女達だなと
思った事は無いよ」
「あたしだって、同じかもよ?」
「君は違う。うちの服地売り場の女性陣はみんな違うかな。
俺達の売り場はみんないい人達ばかりだと思う。石川さんや
恩田さんは、ちょっとお喋りが過ぎるけど、君は口が堅い」
 睦子は恥ずかしくなってきて、アプリコット・クーラーに
口を付けた。いやに甘く感じる。
「君は、他の女の子達とは違って真面目だから、映画にOK
してくれた事で、君も俺に好意を持ってくれてるんだって思った。
1日一緒にいて、凄く楽しかった。次のデートも、あまり
好きじゃない野球なのにOKしてくれた。だから俺は、
てっきり君も、その……」
 結城は真っ赤になっていた。
 馬鹿みたい…。あたしって、本当に馬鹿みたい…。
「君を傷つけるつもりなんて、全く無かったんだよ。
俺、むっちゃんが好きなんだ。だからさ。レース、一緒に観に行こう?
むっちゃんも俺と同じ気持ちなら、OKしてくれないか?」
 あたしが馬鹿だった。
 あたしの完敗だ。
 逃げたあたしを追いかけて、こうして捕まえにきてくれた彼に感謝する。
 睦子はにっこりと微笑んで答えた。
「一緒に行きたい…」
 結城の口許から八重歯が光り、それ見て睦子の胸は
熱い想いで一杯になるのだった。


  (5.BLUE × ORANGE end
           6.サティスファクションへ つづく。。。)



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~ Comment ~

Re: ふぅ~~~~>OH林檎様 

OH林檎さん♪

鋭いですねぇ^^

結城君はちょっと脳天気な所があると言うか、
単純と言うか。
睦子は逆なんですよねー。

暫くは、イイ感じかと思いますが、後半はちょっと
波乱含みです。お楽しみに~(^^)

ふぅ~~~~ 

これ以上、睦子ちゃんが意地を張ったらどうしようかと!
思いが通じてよかったです♪
でも、これからも結城くんが暴走し、
睦子ちゃんが後ずさる…
このパターンありそうですね(笑)
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