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小説・Bye by Blue<完>
5.BLUE × ORANGE


Bye by Blue 5.BLUE × ORANGE 02

2010.06.12  *Edit 

 水曜日の午前11時、2人は関内の駅で待ち合わせた。
 中華街でお昼を食べて少し遊んでから、ナイターを見る。
 関内駅は人でごった返していた。
 睦子は約束の5分前に到着したが、結城は既に来ていた。
ホームから改札までの下り階段を降りている途中で、駅の出口
付近に背の高い彼が立っているのを見つけた。白いVネックの
シャツを着ている。頭にはチャコールグレーの中折れ帽が乗っていた。
 その姿を一目見て、周囲の雑踏が全て消えた。自分の心臓の
鼓動だけが耳に響く。
 足許に気をつけながら、目はずっと結城の上だ。彼は降りて
来る人の波の中へ、しきりに視線を泳がせている。睦子を探して
いるのだろう。やがてその目が睦子と重なった。途端に笑顔になった。
白い歯が口元からこぼれた。
 手を上げたので、睦子も軽く手を上げて振った。
頬が熱くなる。そして胸も。
 人の波に揉まれながら改札を出て、結城の許に辿り着いた。
「おはよう」
 はにかむような笑顔で結城はそう言った。睦子も照れながら
「おはよう」と返した。
 階段の上からは上半身しか見えなかったが、目の前にした結城は、
白と黒のギンガムチェックのコットンパンツを履いていた。
裾を軽くロールアップしてあって足許は裸足に黒いサンダルだ。
 メンズのファッション誌から出て来たような感じがする。
シンプルだがとてもよく似合っているし、お洒落に見えるのは
着こなしが上手いからなのか。
「むっちゃん…」
「えっ?」
「今日のむっちゃんも、可愛い。よく似合ってる」
 驚いて言葉を返せないでいる睦子に結城は笑顔を見せると、
外へと歩き出した。睦子は慌ててその後に続く。
 今、むっちゃんって言わなかった…?
 睦子は『むっちゃん』と呼ばれた事に戸惑っていた。
 これまで睦子を『むっちゃん』と呼んだ男は1人しかいなかった。
 初めての彼は『鮎川』と呼び捨てだった。その次の彼氏は
『鮎川さん』だった。その次は『アユちゃん』。その次が
大学の時の彼氏で『むっちゃん』だった。睦子は相手の事を
『コウちゃん』と呼んでいた。凄く新鮮だったが、
濃くて短い交際だった。
 今日も陽射しが強い。
 その陽射しを少しでも避けるように、結城は信号を渡ると
横浜スタジアムの敷地内を横切るように、建物の陰へと入った。
木々がザワザワと音を立てている。風が幾らかあるようだ。
風鈴の音を聞くのと同じように、風をより感じるようで
涼しげな気がして来る。
 このコースからすると、玄武門を目指しているのだろう。
 周囲へ目をやると、カップルが多かった。手を繋いだり腕を
組んだり、肩を抱いたりしているのが目につく。
そんな人達を見て、鼓動が速くなってくるのを感じる。
「この休み中は、どこかへ行くの?旅行とか…」
 隣を歩く結城が、訊ねて来た。
「ううん。どこへも」
「どこへもって、本当にどこへも?」
 結城が驚いた顔をして睦子の方を見た。その視線を受けて、
睦子は戸惑った。
「うん……」
「海とかプールとかは?」
 睦子は黙って首を振った。
「何で行かないの?混むから嫌だとか?」
「それもあるけど、…泳げないし」
 結城は笑顔になった。
「それなら、俺が教えてあげるよ」
 その言葉に、睦子は思わず、「えっ?いいよ」と答えた。
「なんでぇ~?」
 結城は不服そうな顔をした。だが目は笑っている。
「あたし…、水が苦手なの。怖いの。だから、いいの。
水泳はとっくに諦めてるから」
 睦子の言葉に、結城の顔から笑顔が消えた。そしてそのまま
顔を前に向けた。そんな結城の姿に、睦子は酷く不安になってきた。
「あ、の……」
 何か話さなきゃ、と思うものの、何も言葉が出て来ない。
「むっちゃん、スポーツは?何かやってる?」
 結城の方から問いかけて来た。ほっとしながらも
「ごめんなさい」と答える。
「あたし、スポーツは苦手で…」
 結城は「そっか」と言ったきり、黙ってしまったので、
睦子の心はブルーに染まった。
 きっと、ガッカリしたんだろうな。
 結城さんはスポーツマンだし。
 私と遊んでも面白くなさそうだって思ったかも…。
 言葉を交わさないうちに、2人は玄武門の前までやってきた。
 そのまま門をくぐって、北門通りを善隣門へ向かって歩く。
この通りは店が少ないが、凄い人出だ。この先は更に多い事が
予想できる。
 結城が手を繋いできた。驚いて心臓がドキリと大きく
音を立てた。見上げると、睦子の視線に気づいた結城が睦子に
向かって、「はぐれると大変だから」と言って笑った。
八重歯が見えて胸がキュンとした。
 繋がれた手が暖かい。大きくて肉厚な掌だった。男臭さを感じる。
 ブルーだった心が、途端に明るくなってくるのが自分でも
可笑しかった。なんて現金な心なんだろう。
 善隣門まで来ると、物凄い人の数だった。どの通りの方角も
人で溢れている。賑わう人々はバラエティに富んでいた。
色とりどりの包み紙に包まれた、キャンディボックスのフタを
開けたみたいである。外国人も多かった。
「むっちゃんは、中華街ってよく来る?」
 結城が少し声を張り上げるようにして言った。
「それ程でもない。たまに来るけれど」
 睦子も少し大声で答えた。
 周囲には音が氾濫し過ぎていて、声を張り上げないと
会話が出来ない程だった。
「お昼なんだけど、俺に任せて貰ってもいいかな?」
「うん。いいです」
 どこか行く当てがあるのだろうか。
 結城は東の方にある地久門の方へ向かって歩き出した。
この通りも店は少ない方だが、人の波は凄い。
 中華街へは、家族で来たり友人と来たりして、睦子も幾らかは
知っている。大きな通りにある有名な店は高い。だが、
細い路地に入ると、綺麗とは言えないが美味しい店が幾つもある。
最近はそういう店も、情報誌などに掲載されて人が多く
詰めかけるようになった。
 どこへ行くんだろうと思いながら結城に従っていると、
路地へと入って行き、ある小さな店の前で立ち止まった。
「ここさ。お洒落な店じゃないけど、結構、美味しいんだ。
前に何度か来た事があるんだよ」
 言われて改めて店構えを見ると、昔ながらの中華屋さんと
言った趣の店だった。
「いいかな?」
 少し心配そうな顔をしている。女の子を連れて来るような
店じゃないと思っているのだろうか。それとも、女の子は
こういう店を嫌がると思っているとか…。
 睦子はにっこりと笑うと、「いいよ。全然平気よ」と言った。
結城は安心したように笑顔になった。
 中へ入ると、街のラーメン屋さん程度の広さで、8割ほど
席が埋まっていた。店の中に油が充満している。そんな感じの
店だ。2人は空いている席へと案内された。
 案内された席に睦子が座ろうとしたら、
「ちょっと待って」と結城に止められた。
 結城は肩から下げたバッグの中からタオルを出して、
椅子の上に敷いたのだった。
「スカートがさ。汚れちゃうと困るから。油っぽいじゃん?ここは」
 そう言って笑う結城を見て、睦子はグッと来た。
 何てよく気が付く人なんだろう。普段はとても大らかな感じなのに。
「ありがとう…」
 真っ赤になって、睦子は礼を言った。
 料理は結城が5品のコースを注文した。どれも家庭料理と
言った感じで、親しみやすくて美味しかった。店の油っぽさに
反比例して、料理はあっさりしていた。値段もリーズナブルだ。
 店を出た後、睦子はバッグから財布を出して、自分の分の
金額を結城にそっと手渡した。
「いいのに。払わなくても」
 結城は手に持ったまま、仕舞おうとしない。
「この間は全部奢って貰って、また奢って貰うのは気が引けるの。
世の中不景気だし、お給料、沢山貰ってる訳じゃないし。
負担になりたくないんだ」
「俺に奢られるのが嫌だとか、借りを作りたくないとか、
そういうのじゃ無いんだよね?」
「違う。そんなんじゃないから」 
 睦子のその言葉に、結城は笑顔になって、やっとお金を仕舞った。


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~ Comment ~

Re: NoTitle>OH林檎様 

OH林檎さん♪

ははははっ。。。見てる方としては
じれったい二人です。

でも、まだ暫くはじれったいですよぉ~~~^^

なんせ睦子がねぇ。

NoTitle 

アユちゃんからむっちゃんに、さりげなくシフトチェンジ…。
やりますな、結城氏。
しかし、初々しいカップルですねぇ。
早く告白しちゃいなよ!
ちゅーーしちゃいなよ!
ベロチューしちゃいなよ!
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