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小説・Bye by Blue<完>
4.接近


Bye by Blue 4.接近 05

2010.06.09  *Edit 

 映画は思っていたよりも面白かった。
 手に汗握るシーンの連続で、ハラハラドキドキした。
更に、隣をそっと窺って益々ドキドキする。男性と映画を
見るのも久しぶりなのである。
 結城は大きい。だからその分、座っていても近く感じる。
館内は少し涼しかったが、結城の体温が感じられて暖かい
のだった。だから、それだけでもドキドキするのだ。
 映画が終わった後、ハマボールに誘われた。最上階に
ボウリング場があり、その他に温泉スパやレストランなどが
ある。そこで昼食を摂った後、ボウリングをしようと言うのである。
 最初睦子は躊躇した。ボウリングは苦手だからだ。
 いつもガーターが多く、スコアは50台~70台が多い。
これだけ下手だと、やっていても面白くない。
「大丈夫。俺が教えてあげるから」
 自信たっぷりな笑顔でそう言われたので、睦子は了解した。
 下のフロアのカフェレストランで軽く食事をした後で、
2人は7階までエレベーターで移動した後、エスカレーターで
8階へ行った。夏休みの時期だけに、人が多かった。だが幸い、
待つことなくゲームを始める事ができた。
 睦子は結城にソックスを差しだされて驚いた。
「くつ下を履かないとね」
 それはその通りだが、睦子の分まで用意してあった事に驚く。
 ボックスに入って選んだボールを置くと、睦子はくつ下を
履いて、シューズに履き替えた。そして、頭上の電光スコア板に
目をやると、投球者名が1.涼、2.睦子となっていた。
結城と鮎川で無い事に何となく戸惑う。
 何だかカップルみたいだ…。
「まずは、俺から投げるね」
 結城がそう言うと、16ポンドのボールを軽々と持って
投球した。構えからリリースまで、全てが堂に入っていた。
初球からストライクである。
 凄い!上手!
 ガッツポーズをしながら嬉しそうに笑って戻って来た結城が
両手を出したので、睦子は少し躊躇いがちに軽くタッチした。
「次はアユちゃん。まずはちょっと投げてみて」
 結城に言われて、取り敢えず投げた。いつものように真ん中の
ピンを目がけて投げたのだが、何故かボールは右に逸れて
ガーターになってしまった。
 あー、やだー。やっぱりガーダーだ。恥ずかしい…。
 友達の前ならともかく、一応、デート中だ。しかも相手は
スポーツマンで、とっても上手なのだから、恥ずかしさは
倍増である。
 睦子は結城の方は見ずに、俯きがちにボックスへと戻った。
そんな睦子に結城が、
「残念だったね。でも大丈夫」
 と言った。その口調は力強い。
「えっ?大丈夫って?」
「アユちゃんの今の投げ方は、基本的に間違ってる所が何箇所か
あるんだ。それを直せば、凄く上手になるよ」
「本当?」
「本当。まずね。リズムが大事。アユちゃんは、小さい歩幅で
モソモソと歩いて行って、ラインの直前になって思いきり
投げてるでしょ?あれは駄目だね」
 結城はそう言うと、4歩で投げるといいと言った。その為の
立ち位置をまず決められると、今度は、ピンを狙うのではなく、
手前にあるスパットと言う三角のマークに向かって、真っすぐ
ボールを出すと言った。
「アユちゃんはね。投げる時に力が入ってて、腕が右に
振れてるんだよ。おまけに、掌も右に開いてる。だから
ボールが右に行っちゃうんだ。目の前の人と握手をする
ような感じで手を真っすぐ出してごらんよ」
 その後、足と手を出すタイミングとリズムを教わり、
立ち位置と姿勢を直されて、言われた通りに力を入れずに
右から2番目のスパット目がけて自然な感じで投げてみると、
途中まで真っすぐ転がったボールが、後半になって少し左へと
軌道を変え、中央のピンに当たって全部倒れたのだった。
「きゃぁーっ、凄い!嘘みたい!」
 睦子が振り返ると、結城は笑顔で手を叩いていた。
 ボックスに戻って、「イエーイ!」と互いに両手を合わせた。
「アユちゃん、上手じゃなーい」
 褒められて顔が赤くなる。
 凄く嬉しかった。
 その後、スペアの取り方も教わって、今まで出した事のない
スコアが出て、睦子は感激した。思う場所へボールが転がって
行くのが信じられない。
「ねぇ、どうして真っすぐ投げてるのに、ボールがカーブするの?」
 睦子が不思議そうに訊ねると、「いい質問だね」と結城は言った。
「レーンには油が途中まで塗ってあるんだよ。だから、ボールと
板との摩擦が少なくて、油の上を真っすぐ転がるんだ。だけど、
油が無くなると摩擦が生じて真っすぐ転がらなくなる。
だから曲がるんだ」
 塗ってある油は常に変化する。投げれば投げる程、油は
ボールに付着して、塗って無い部分まで伸びて来る。そして、
塗ってある場所や距離も、レーンによって変えてあるし、
またその日の温度や湿度によっても違うし、塗ってある量も
濃かったり薄かったりする。
 その、オイルの微妙な変化によってレーンコンディションも
変わって来るため、プロのボウラーは、そういう変化を常に
早く掴んで対応し、高スコアを出しているのである。
「ボウリングって、奥が深いのね」
「そうだよ。面白いよね」
 2人は3ゲーム投げた。
 これまでの睦子だったら、1ゲームでドロップアウトだ。
恥ずかし過ぎて、1ゲームどころか6フレームくらいで
投げ出したくなってくるのが常だった。
 ボウリングがこんなに楽しいゲームだとは思わなかった。
初めて知った喜びだ。
「楽しかった?」
「うん。とっても。結城さんのお陰だよ。教えてくれて、
ありがとう」
「どういたしまして。でも、アユちゃんは素質あるよ。
教えても駄目な人もいるから」
 そういう結城の顔は、優しかった。
 何だかとてもホノボノとしてくる。
 その後2人は下の7階にある、ダーツレストランでダーツを
楽しんだ後、夕食を共にした。おもちゃのダーツしかやった事の
無い睦子だったが、結城はダーツも上手だった。
「来週はアユちゃんの夏休みだったよね?確か」
 食後のコーヒーを口にしながら結城が言った。
「うん。そうなの」
 言われて考えてみると、こうして会わなかったら、2人は
丸々2週間、全く顔を合わせない事になる。
「俺、来週は水曜日が休みなんだ。良かったら、ナイターを
観に行かない?ベイスターズの試合があるんだけど…」
 ナイター?ベイスターズ?
 そう言われてもピンと来ない。スポーツ観戦と言うこと
だけは分かった。
「何か、用事が入ってるのかな。夏休みだから旅行とかに
行っちゃうとか…」
 ああぁ~。そうだ。野球だ。
 睦子は野球もサッカーも全く興味が無かった。野球に
関しては、一応、セ・パ両方のチーム名くらいは一通り
知っているが、サッカーに関しては頻繁に耳にするチーム
くらいしか知らない。だから、いきなり言われてピンと
来なかったのだ。
「駄目かな?」
「えっ?あ、あの、ごめん。ベイスターズの試合だっけ?」
「そう。来週の水曜日」
 ナイターか…。
 興味が無い事もあって、一度も試合を見に行った事が無い。
 スポーツをするのは苦手な睦子だったが、テレビで観戦するのは
好きな方だった。一番好きなのはアメフトだ。本場アメリカの
NFLが好きで、日本のリーグは見ない。バスケットも同じで、
NBAが好きだった。
 他のスポーツにしても、外国リーグの方が好きだったりする。
テニスも見るのは国際試合ばかりだ。日本のもので好んで見るのは
ゴルフくらいだった。野球とサッカーは全く見ない。
「もしかして、野球は嫌い?」
 結城の言葉にドキリとした。睦子が考え込んでいるのを見て、
敏感に察したのか。
「嫌いなわけじゃないの。ただ、面白さがわからないと言うか…」
「女の子で、テレビの野球中継を夢中になって見てる子は
少ないよね。でも、生の試合を見るのは楽しいと思うよ」
 そういうものなのか。
「じゃぁ、行ってみようかな」
 睦子の言葉を聞いて結城が満面に笑みを浮かべた。
とても嬉しそうな笑顔だ。
 どうして、そんな事で、そんなに嬉しそうな顔をするのだろう。
 外へ出ると、サウナのようだった。
 昼間は陽射しの暑さが肌を刺すように痛く感じるが、
太陽が落ちて来て勢力が弱まると、今度は生ぬるさが力を増す。
 取りとめのない話しをしながら駅まで歩いた。一歩一歩と、
別れの時間が近づいているのを感じる。凄く楽しい1日だった。
こんなに楽しい時間は何年振りだろう。
「今日はありがとう。すっごく楽しかった。色々と
御馳走になっちゃったし…」
 改札を前にして、睦子はそう言った。
「俺の方こそ、凄く楽しかったよ。今週は俺の夏休みで、
来週はアユちゃんの夏休みだから、返事を貰えなかったら
どうしようって、内心ちょっと焦ってたんだ」
 そう言って睦子を見る結城の目に熱い感情を感じた。
 これって……。
これって……?
「今日は、アユちゃんの凄く楽しそうな顔を見れて、良かった。
それに、来週また逢えるのが嬉しい」
 頭に血が上って来た。
 やだ、どうしよう…。
 顔が真っ赤になっているのを感じて恥ずかしくなってきた。
「あ、あの…、じゃぁ、またね」
「うん。気をつけて帰って」
 睦子はコクリと頷くと、バックからSUICAを出して改札の
中へと入った。そっと振り向くと、改札の外で結城が笑顔で手を
振った。睦子はそれに応えて手を振ると、小走りにホームの
方へと走ったのだった。


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