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小説・Bye by Blue<完>
4.接近


Bye by Blue 4.接近 04

2010.06.08  *Edit 

 雑踏の中に結城の姿を見つけた。
 背の高い結城は目立つ。
 横浜駅西口の方からこちらに向かって歩いて来る結城の姿を見て、
睦子の胸の高鳴りは一挙に高まった。破裂寸前だ。顔が赤くなって
いるのが自分でも分かった。そんな自分が恥ずかしい。
 結城はすぐに睦子に気付くと手を上げて笑った。その笑顔が
眩しい。睦子も軽く手を上げる。人の波から出て来た結城の
全身を見て、カッコイイ!と思わず呟く。
 結城は薄いブルージンズにslickの紺のポロシャツを
着ていた。衿が丸く、細い白のラインが入っていて、同じラインが
袖にも入っている。袖の方も袖口が丸い感じでとてもお洒落だ。
そして、LARSの大きめのグレーのウエストポーチをたすき掛けに
して背中にしょっている。足許は裸足にサンダルだ。
「おはよう」
 結城は睦子の目の前に立って、八重歯を見せて笑った。
 うっわぁ~。どうしよう。素敵過ぎる…。
 眩暈がしそうだ。このまま、目の前の逞しい体に雪崩れ込みたい
気分である。
「おはよぅ…」
 眩しい笑顔を正視できなくて、睦子は俯き加減になる。
「なんか、凄い新鮮」
 結城の言葉に、えっ?と睦子は見上げた。
「今日のアユちゃん、可愛い」
 そう言って笑う結城の顔が僅かに赤くなっているような気がした。
日焼けしているからハッキリとはわからないが、少しはにかんで
いるように見える。
「あ、あの…、ありがとう…」
 睦子は真っ赤になった。
「じゃぁ…、行こうか」
 結城は睦子を促して歩き出した。睦子は結城の左隣に半歩
くらい下がって歩いた。並んで歩くのが気恥ずかしい。
 考えてみると、こうして異性と並んで街中を歩くのは学生の
時以来かもしれない。富樫とはドライブばかりだったから、
一緒に街中を歩いた事は無かった。
「アユちゃんは映画、好き?」
「うん。好き」
 相鉄ムービルの方へ歩きながら、結城が問いかけて来た。
「よく観るの?」
「映画館ではあんまり…。だって休みが平日だと、一緒に
観に行く友達がいないんだもの」
「そうだよなぁ。俺は男だから、たまに一人で観に行くけど、
女の子は一人じゃ嫌だよね」
 結城も映画好きと知って、睦子は嬉しくなった。
「今日は、何を観るの?」
 普段ならどんな映画が上映されているのかネットで事前に
調べておく睦子だが、今回はファッションの事ばかりに気を取られ、
何が公開されているのか全く知らなかった。
 結城の口から出たタイトルは、アクション映画だった。
「苦手?」
「ううん。大丈夫よ」
 睦子は取りたててアクション映画が好きな訳でも嫌いな
訳でもない。読む本と同じで、映画もジャンルでの好き嫌いは
あまり無く、内容に興味を覚えるか否かだった。今回の
タイトルは、可も無く不可も無くと言ったところだった。
 映画館へ続く橋を渡り、館内へ入る。
 陽射しが強くて暑い外とは対照的に、中は涼しかった。
 心臓の鼓動は少し落ち着いて来た。このシチュエーションに
馴れたのかもしれない。
 窓口には人が少し並んでいた。その最後尾に結城が立ったので、
睦子も並んで立ち、バッグの口を開いて財布を取り出したら、
結城がそれを遮(さえぎ)った。
「今日はいいよ」
「えっ?」
 今日はいいって、どういう意味?
「今日は全部、俺が持つ」
 睦子は言葉の意味を理解しかねた。
 前の人間が進んだので、2人も前へ進んだ。
「あ、あの…、どういう意味?」
「ここじゃ恥ずかしいから、チケット買ってから話すから。
とにかく、お財布はしまって」
 結城に言われて、睦子は財布をバッグへしまった。
 いいのだろうか。買ってもらっても…。
 順番が回ってきて、チケットを買った後、結城は人が少ない
場所まで行くと睦子の方を振り返り、「はい」とチケットを
差しだした。睦子は「ありがとう」と言って受け取った。
「今日はさ。初めてのデートだからさ。お金は全部俺が払うから」
 睦子はその言葉に驚いた。
「でも…、だって、あの…」
 頭の中に『初めてのデート』と言う言葉がこだまする。
 デート…、なんだ…。
「アユちゃんは今日はお財布を出さない事。いいね?」
 ええーっ?
 でも…。すっごく嬉しいけど、でも…。
「嬉しいけど…、何だか申し訳無い気もするんだけど…」
「どうして?」
「どうしてって…。あまりお金を使わすのも気が引けるって言うか…」
 睦子の言葉に、結城はにっこりと笑った。
「アユちゃん、優しいんだな」
 睦子は首を振った。
「優しいとか、そんなんじゃなくて…」
「奢(おご)られるのが嫌だとか?」
「違うの。そうじゃなくて…」
「最初くらいさ。いい格好、させてくれないかな」
 そう言って優しい笑みを浮かべる結城を見て、心臓をギュッと
掴まれたように感じた。そのせいで酸素が全身に行き渡らなく
なって、窒息しそうに思う程、胸苦しい。
 『最初』と言うからには、2回目以降もあるのだろうか。
そう思うと、一層、胸が苦しくなってくる。ここで自分を
押し通したら、逆に嫌われちゃうのかな。
 睦子は結城の好意を素直に受け入れる事にして、コクリと頷いた。
「わかった。ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね…」
「良かった。じゃあ、入ろう」
 結城は安心したような顔になって、睦子を促した。



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