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小説・Bye by Blue<完>
4.接近


Bye by Blue 4.接近 03

2010.06.07  *Edit 

 閉店後、ごっそり棚から出されて散らばっている
無地カラーブロードの反物を棚へ入れていたら、左隣に
人が立った。目の前に現れた手は大きな男の手だった。
驚いて隣を見ると結城だった。途端に心臓が騒ぎだす。
 結城は睦子の顔を見て笑った。
 睦子は慌てて顔を前へ向けると、仕事を続けた。
「アユちゃん。考えといてくれた?」
 その言葉に再び結城の方を見ると、乱れを直した反物を
手渡された。睦子はそれを受け取って、目の前の棚へ入れた。
「あ、あの…」
「考えとくって言ったよね?そろそろ返事を聞かせてくれないかな」
 結城の言葉に、カーッと血が上ってくるのを感じた。
 睦子が言った『考えとく』と言う言葉を、断りの言葉とは
受け取らずに、そのままの意味で受け取ったらしい。
 どうしよう?
 まさか返事を催促されるとは思っていなかった。
「俺さ。来週、夏休みに入るんだよね。だからさ。
アユちゃんが休みの日に、どうかな」
 同じ売り場にいると、どうしても休みをずらして取るので、
休みが重なる事が少ない。だから、和子と河嶋の2人は、
折角の休みでも昼間のデートはなかなか出来ないのだった。
それからすると、或る意味チャンスと言える。
 睦子は結城が差し出す反物を受け取っては棚に入れる。
その反物も、残り僅かだ。カラフルなカラーブロードが
整然と並んで行く様を見るのは心地良い。色鉛筆のケースの
中のように、系統別に揃った姿は美しい。最後の白を渡されて
棚に収めた時、「アユちゃん…」と、低くてハスキーな声で
呼ばれた。その声に胸が熱くなる。
「駄目かな…」
 結城の笑顔が消えていた。不安そうな顔をしている。
彼のこんな顔を見るのは初めてだ。睦子の胸は締め付けられた。
 睦子は覚悟を決めて、ニッコリと微笑んだ。そして「いいよ」
と返事をした。途端に結城の顔が明るい笑顔に変わった。
「良かったぁ。アユちゃんの来週の休み、火曜日でしょ。
どう?火曜日で」
 シフト表を見れば、誰がいつ休みなのかすぐに分かる。
事前に確認していたんだと知って、睦子の胸は高鳴った。
「うん。じゃぁ、火曜日で」
 睦子はドキドキしながら返事をしたのだった。
 そして火曜日。
 約束を交わした日から、胸のドキドキは鳴り止まなかった。
 あの日、結城は携帯の番号とメルアドを記したメモ紙を
睦子に渡した。それを受け取った時、心臓が破裂するかと思った。
「ここで赤外線のデータ交換って訳にもいかないかさら」
 はにかむように八重歯をちょこっと見せて、笑いながら
メモを差し出す結城に、睦子は真っ赤になった。メモを
受け取って慌てて周囲を見渡すと、誰にも見られた
様子が無くてほっとした。
 その後、駅のホームで電話番号を記したメールを送ると、
すぐに電話が掛って来た。
「OKしてくれて、ありがとう」
 直接耳に入って来る結城の声に、首から上に血が上って
熱くなってくるのを感じるのだった。
「横浜駅西口の、相鉄線の改札前で待ち合わせよう。
時間は9時半でどうかな?」
「わかった…」
 電話を切った後も、胸は高鳴りっぱなしだ。
 ボーっとしたまま電車に乗った。そして、少し前の
出来事を反芻した。
 ああ、どうしよう?
 一緒に映画を観るんだ…。
 これって、デートなんだよね?
 すごく嬉しいけど…。
 いいのかな、期待しても…。
 だけど…。
 変な事したり言ったりして、嫌われないかな…。
 つまんない女だと思われたら、どうしよう?
 それに…。
 何を着て行こう?
 結城さんは、どんなファッションで来るのかな?
 合わなかったらどうしよう?
 ダサイとかって思われたら…。
 最初は嬉しくて舞い上がりそうだったが、段々と
憂鬱な気持ちに襲われてきた。
 ピンクだった色がブルーに変わっている。
 学生時代から、睦子のファッションはカジュアル系だ。
たまたま学生時代の彼氏もカジュアル系だったから良かった。
楽なスタイルだ。富樫もカジュアル系だった。カジュアルなんて
言っても、悪く言えば普段着の延長みたいなものだった。
 だが、結城はどうなんだろう?
 通勤服はワイシャツとネクタイで、そのまま仕事着になっている。
 プライベートでは、どんな格好をしてるんだろう?
デートには何を着て来るんだろう?
 考えれば考える程不安が募る。
 翌日の朝、売り場で結城と顔を合わせた時、彼は少し
照れたような笑みを見せた。その顔を見て、睦子の胸が反応する。
睦子は微かに笑みを返すと、すぐに結城から離れた。ここでは、
そばにいられない。仕事にならない。
 だが、仕事中も意識は結城の方へと流れて行く。
 そして、火曜のデートで着て行く服を悩む。
 系統が決まらないのだから、選ぶに選べない。
 睦子は思いあまって、遥子に相談した。
 睦子から事情を聞いた遥子は、自分の事のように喜び、
今まで見たことの無い程の明るい笑顔になったのだった。
「良かったじゃない!アユちゃん!」
 睦子は口に人差し指を当てて「シーッ!」と言うと、
慌てて周囲を窺った。誰も居なくてホッとする。
「そう言う訳で、遥子さん。どんな格好で行ったらいいと
思う?あたし、いつもカジュアルばかりでしょう?でも…」
 不安そうに言う睦子の言葉を最後まで聞かずに、
遥子はすぐに分かってくれた。
「そんなにカチッと決めなくてもいいんじゃないのかな。
私の方で、さりげなくリサーチしようか?」
「ええー?リサーチって?」
「それとなく、聞いておいてあげる」
「それとなくって…」
 遥子の言葉に不安になる。
「大丈夫よ。そういうの上手いんだから」
 そして、遥子がさりげなく聞いたと言う話しによると、
普段からアクティブな結城は、いつも動きやすい服装らしい。
女の子とのデートの時にも、ジーンズ中心だと言う。
おまけに遥子は、女の子の服の好みまで聞いていた。
結城が言うには、相手の服装にはあまりこだわらないが、
派手な感じは苦手だと答えたそうだ。
「映画を観るくらいなんだから、普段のアユちゃんの
好みの服装で十分なんじゃない?動きやすい服で、ちょっと
女の子っぽいのは無いの?何なら帰りに一緒に買いに行く?」
 遥子には感謝だった。
 睦子は会社の帰りに遥子と一緒に服を買いに行き、
見立てて貰った。
 その服を着て、今横浜駅で結城を待っている。
 遥子が選んでくれた服は、コットン素材でストンとした
ワンピースだった。膝頭が見えるくらいのスカート丈に、
首は衿無しの広口、肩にすっきりしたリボンが付いていて
袖は肘上の長さで袖口が軽く絞ってあってフンワリしている。
明るく薄いグレーブルー地に、ウエストから下に太いブルーの
ボーダーが2本入っていて、スカート縁のラインだけが
軽い茶がかったグレーだった。
 上品で可愛らしい。だが甘くなり過ぎずにあっさりした
感じだ。衿が無くてすっきりしているので胸元が少々寂しい。
睦子は長さと種類の違う小粒のパールのネックレスを
3つ重ねた。足許は白のサンダル。バックは夏らしく
カゴタイプの持ち手が長めの物にした。
 こんな風に、男性と駅で待ち合わせるのは久しぶりである。
 遅れるのが嫌なので、約束の時間よりも大分早くに
到着してしまった。その辺のコーヒーショップで時間を
潰しても良い程の余裕だったが、そんな気にはなれなくて、
睦子は待ち合わせ場所に立っていた。
 時間的には早いから、まだ来ないのはわかっている。
それでも、ついつい辺りに視線を飛ばしてしまう。
 いつもの火曜日のこの時間なら、人の数はそう多く無い。
だが夏休みの時期だからだろう。睦子の視界の中を多くの
人間が行き来している。若者が多い。その姿を見て、
自分のファッションは流行遅れでおかしく無いだろうかと
不安に思ったりする。
 遥子は可愛いと言ってくれたし、自分でもそう思った。
とても気に入ったから購入した。だけど実際のところは
どうなんだろう?結城はどう思うだろうか。
 時間が気になって、睦子は頻繁に腕時計に目をやるが、
思いのほか時間は経っていない。前回見た時より2分しか
経って無いのを知って、思わず溜息が洩れる。
 心臓の鼓動が激しい。時計の針が進むごとに、その激しさは
増している。耳の奥から聞こえてくるような感じがした。
 どうしよう?
 足が小さく震えている事に気付いた。
 どうしよう?どうしよう??
 何でこんなに緊張するんだろう。
 初めての恋でも無いし、生まれて初めてのデートなわけでも無いのに…。



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~ Comment ~

Re: ド、ドキがムネムネしてきたっっ!!!>OH林檎様 

OH林檎さん♪

私もキドキドです。
いいですよねぇ、デート。遠い昔です……。

飯沼誠司さんですか。
健康的で爽やかでいいですねぇ。
髪、眉、瞳がもっと茶色ぽかったら、似てるかも。
結城君はもう少しだけゴツい感じなんですが、爽やかな
所は似てると思います。

結城君を書いてると、長身で逞しい爽やか系も、いいもんだなぁと、
最近つくづく思うワタクシです…(^_^;)
基本、長身・細身・メガネ好きなので。^^

ド、ドキがムネムネしてきたっっ!!! 

私もデートしたいっす…v-406←アラフォーの叫び

この結城くんを思い浮かべる時、
プロライフセーバーの飯沼誠司さんが浮かぶんですよねぇ。
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