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小説・Bye by Blue<完>
4.接近


Bye by Blue 4.接近 02

2010.06.06  *Edit 

 毎日家へ帰るのは7時半過ぎになる。
 夕飯を済ませて少し休んだ後、入浴する。長湯嫌いなので、
出るのは早い。
 髪をさっさと乾かすと、後は翌朝まで自室だ。
 自室へ入るとベッドの上のプーさんに目が行った。結城に
貰ったものだ。それを見て彼を思い出し、そして机の引き出しを
開ける。そのまま、そこにある結城の写真を見る。手には取らない。
 笑っている結城に胸がときめく。そして、そんな風にしている
自分を馬鹿みたいだと思う。何で昨日、OKしなかったんだろう。
 机の引き出しを閉めると、ベッドの上に座ってプーさんを抱いた。
肌触りが気持ちいい。壁に背をもたせかけ、膝を立てる。何となく
部屋の電気を見た。目に優しい淡いオレンジが、結城の笑顔を連想させた。
 そうだ。
 彼はオレンジだ。
 明るい太陽のような笑顔に、綺麗な小麦色の肌。
 夏の青空が白く見える程、明るく周囲を照らす。
 そばにいると暖かい。
 そう。暖かいのだ。
 太陽のような人なのに、こんな夏でも一緒にいると暖かくて心地良い。
 そんな人から誘われたのに…。
 彼はどうして誘ったんだろう?
 ゲーセンでの彼の笑顔を思い出す。
  あの時の自分は、とても楽しかった。彼も同じように感じて
くれていたのだろうか?だから映画に誘ってくれたのか。
 誰に対しても明るくて優しい結城涼。
 島谷は彼の事を『八方美人』だと言った。浜田もそれに同意した。
 矢張り誰もが同じように思うのか。
 花火大会の日。
 本当は席を移動したく無かったと言った。
 それなら断れば良かったのに。
 いくら副主任とは言っても、河嶋は結城より2つ年下だ。
 でも断ったら、河嶋さんなら腹をたてるかな、やっぱり…。
  今日は忙しくて、互いに顔を合わせる事も無く1日が終わって
しまった。それが何だか寂しく感じる。昨日の今日だから、顔を
合わせるのが気まずい思いもあったけれど。
 翌日出勤すると、結城は休みだった。
 休日体系は月休8日だ。同じ売り場だから、大体が休みは
合わない。だから週に3、4日は顔を合わせない事もある。
これまでは、物足りないと思う程度だったのに、あんな事が
あったせいだからだろう。今までよりも寂しい思いがする。
「アユちゃん、一昨日はごめんね、付き合わせちゃって…」
「ううん。それより、どうだった?会えた?」
 気になっていたのだが、和子が昨日は休みだったので
聞けなかったのだ。
 睦子の問いかけに、和子は首を振った。
 開店間もない時間で、まだ客足も少なめである。レジ担当の
睦子のそばに和子がやってきたのだった。
 睦子は思わずフロアを見渡した。河嶋の姿は見えない。
バックヤードにでもいるのだろうか。
「何度電話しても出なくてさ。あれから30分くらい待ったん
だけど、来ないし連絡もつかないしで、諦めて帰ったの」
 和子は力なく笑っている。
「それで、その後は?」
「夜遅くに電話かかってきて。あまりに遅いから待ちくたびれて
先に帰ったって」
 確かに和子は遅かった。とても彼氏を外で待たせているとは
思えない程、動作も雰囲気ものろかった。でもだからと言って、
何も連絡もしないまま帰るなんて。電話で催促するなり、メールで
伝言するなり、何かしらのコンタクトは取っても良い筈である。
「なんか、酷くない?どうして何も言わないで帰っちゃうのかな」
 睦子の怒り口調に、和子は申し訳なさそうな顔をして言った。
「河嶋さん、短気だから…」
「だからって…」
「あたしが悪かったんだよ。待たせてるのにノンビリしてたから」
 溜息が出た。
 どっちもどっちと言う気がするが、それでも何も言わずに帰って
しまった事だけは納得がいかない。
「河嶋さんには、何も言わないで?彼、あたしが喋ったと知ったら、
また不機嫌になるかもしれないから」
「わかった。言わないから」
 睦子は本当は河嶋を責めたい気分だったのだが、当事者でも
ないのにあれこれ口を出して、事を荒立て、結果事態を悪くでも
したら大変だと思い、何も言わない事にした。
「ねぇ…。こんな事を言うのも何だけど、河嶋さんをどうして
好きになったの?」
 綺麗な顔立ちをしていて、悪い奴でも無いが、何かに付けて
不愉快に感じる事が多い。睦子の質問に和子は頬を染めた。
「凄く優しい人なんだ。あたし、トロいでしょ?口ではトロ臭い
とか言いながら、何かと優しく世話を焼いてくれてさ。
そういう所に惹かれたと言うか…」
 そうなんだ。
 頬を染めて嬉しそうに語る和子が可愛らしい。
 おっとりしていて、どこか放っておけない。ついつい世話を
焼いてやりたくなる。
 そんな所に河嶋も惹かれたのだろう。
 それでも時には短気を起こして、待てきれずに先へ帰って
しまったりするのか。
 何も連絡もしなかったのは、短気を起こして怒っていたから
なのかもしれない。
 ほとぼりが過ぎた頃、謝りの電話を入れたのだろう。
 それなら尚更、睦子は何も言わない方がいいと思った。
 その後2人の様子を見ていても、これまでと変わった様子は
無い。それを見て、やっぱり男女の仲は当事者にしか分からない
ものなんだな、と思った。
 姉のように慕っている上村遥子も、寂しそうに微笑み
ながら彼を突っぱねる事ができずに、あれからも変わらず
関係を続けている。
 他人の恋のことばかり考えてないで、少しは自分の事を
考えるべきだろう。
 休みが明けて結城と顔を合わせたが、結城はいつもの通りの
笑顔だった。その笑顔を見てホッとする一方で、どこか
物足りなさも感じる。何故なのだろう。
 久しぶりに昼休みが一緒になった。今日のメニューは
結城の苦手なモノでは無かったようで、窓を背にした真ん中の
席に座っていた。睦子は壁際の席に着いた。互いの顔が見えるので、
離れているにも関わらず、睦子はドキドキするのだった。
 結城の周囲は他の売り場の女子社員で埋まっていた。色々と
話しかけられては笑顔で答えている。楽しそうだ。そんな様子を
間近で見て、睦子の胸は騒ぐ。いい気持ちがしない。そして、
自分自身を湿っぽくて嫌な女だと思う。
 本当は自分もあの輪の中に入りたいのではないのか。
彼女たちと競わなくても、ああして大した意味の無い話しをして
笑顔を向けて貰うだけでも嬉しいのではないのか。
 そばに座っている、他の売り場の年配者の人達からあれこれと
話しかけられて、睦子は適当に相槌を打つ。
 睦子は普段から、何故か年長者との方が気が合う。
 以前のスーパーでも、同世代や年の近い若い従業員よりも、
パートで来ている年配の人達との方が話しが合って楽しかった。
 だから余計に、若い彼女達の輪の中へ入って行きにくい。
 あたしって、もしかしたらオバサンくさいのかな?
 そう言えば納涼大会の時に浜田さんが、鮎川さんは
大人っぽいって言ってたっけ。
 言葉を変えればオバサンぽいって事になる。
 だから富樫にも、『一緒にいて楽しく無い』 なんて
言われちゃったんだ。
 何だか、気が滅入って来た。
「どうしたの?アユちゃん、元気ないんじゃないの?」
 向かいに座る、寝具の山口芳子がそう言った。
「えっ?そんな事ないですよ?」
「若いんだからさ。もっと溌剌としないと駄目よ」
 その言葉が胸に突き刺さった。
 よりにもよって、タイミングが良過ぎないかぁ?
「落ち着き過ぎてるのよ。もっとハメを外すくらいじゃないと」
 そんな事を言われても…。
 ハメを外すなんて、一番苦手な事だ。
「どう?いっそ、ウチの兄貴と会ってみない?大人っぽい
アユちゃんなら合うかもよ?」
 げぇ~、止めて欲しい。
「あはは…、親子ほど違うじゃないですか。勘弁して下さいよ」
 睦子はそう言うと、急いでトレイを持って立ち上がると、
返却口へ置いて食堂を後にした。
 背後から、結城を囲む女子達の賑やかな笑い声を浴びながら。


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