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小説・Bye by Blue<完>
3.血圧上昇


Bye by Blue 3.血圧上昇 05

2010.06.02  *Edit 

 店の閉店時間は18時半である。
 食料品を扱っていない為なのか、今時早い閉店時間だ。
 だが、これだけ毎日忙しいのだから、これ以上の時間は
耐えられそうも無い。
 後始末が終わってロッカーへ入る前に目の前のトイレへ
寄ったら、松本あかりと木村洵子が鏡の前で化粧を直していた。
2人とも既に私服である。軽く挨拶を交わして個室で用を足して
出て来ても、まだ入念に化粧を直している。
 レディースはいいな。早く上がれて。
 服地はいつも混雑していて、閉店の音楽が流れてもまだ
ゆっくりと買い物をしている客が少なくない。店の出入り口が
閉まっても、急ぐ気配が無く、最初にここへ来た時には、
そんな客に驚いたものだった。
 こういう店に勤めていると、お客に驚かされる事が多い。
 前の職場のメンズ売り場にいた時も、明らかに何度も使ったと
思われる品を、「一度洗濯しただけで破れた」と文句を言いに来て、
強引に新品と交換していった客がいた。
 寝具売り場の店員からも、贈答品の綿毛布が気に入らないからと
言って、返品しに来た客もいたと聞いた時には、そんな事ができる
厚顔無恥な客にも驚いたし、またそれがまかり通る事にはもっと
驚いたのだった。
 売り場の主任は、そんなクレームに対応しなければならない
のだから、大変だろう。正直な所、これではクレームと言うよりも、
いちゃもんである。
 いつまでも帰らない客を、失礼にならないように急かし、やっと
レジを終えた客は従業員の誘導で従業員専用の出口から帰ってゆく。
申し訳無い素振りなど微塵も無く、悠々と出て行く姿を見るにつけ、
その図々しさには感心する。
「服地は今終わったの?」
 松本あかりに急に問われてびっくりした。普段会話をする事は
殆ど無い相手だ。
「そうなの。いつまでも帰らないお客さんがいてね」
「いつも大変よね、服地は」
 そう言いながら、目を大きく見開きながら、目の下に
アイラインを引いていた。
「じゃぁ、京子ちゃんももう終わったんですよね?」
 木村洵子が髪を梳かしながら言った。京子と同期の女の子だ。
「うん。京子ちゃんは先にロッカールームへ行ったわよ」
 同期と言う事で、2人は仲が良く、帰る方向も同じなので
一緒に帰る事が多いようだ。
「あっ、でも、今日は京子ちゃんは彼氏が来てるわよ?」
「えっ?本当ですか?」
 どうやら聞いて無かったようだ。
「結城さんと河嶋さんは?もう上がっちゃったの?」
 手を拭いて外へ出ようとした睦子を引き止めるように、
あかりが言った。
「多分…。男子の方が身軽なせいか、いつも女子より早いみたいよ」
 結城の名前が出たので、睦子はドキドキした。
「やばっ」
 あかりは慌てて化粧道具をポーチに詰め込むと、睦子を
押しのけるようにして外へ出て行った。そんなあかりに驚いて、
茫然としていると、洵子が、
「松本さん、狙ってるんですよ、結城さんの事を」
「えっ?」
 その言葉に驚いて振り向いた。洵子は笑っている。
「狙ってる?」
「結城さんってカッコイイじゃないですか。だから狙ってる女子、
多いんですよね」
 確かにそれはそうだろう。
 今日は外で食べていたが、社員食堂で食べてる時には、必ず
周囲に女子社員が座っている。夕方の休憩時間も同じで、いつも
そばに女子社員がいた。そればかりでなく、就業時間中でも、
休憩時間中の他の売り場の女子がやってきて結城に声をかける。
手が空いている時などはお喋りしている。
 休憩時間中の事は、一緒にならない限りわからないが、売り場へ
しょっちゅう他の女子社員がやってくるのだから、どうしたって
その光景は目に突く。
 結城は誰に対しても、いつも変らぬ明るい笑顔を向けている。
楽しそうに見える。睦子は仕事に励みながらも、そんな結城を
目の端で捉えていた。どうしても気になるのだった。
「それで、何であんなに慌てて出て行ったの?」
「決まってるじゃないですか。結城さんを誘う為ですよ」
「誘う?誘うって何に?」
「これから一緒に飲みに行かないかって」
 これから?
 一緒に飲みに?
 睦子の心が波立った。
「飲みにって、2人で?」
「勿論、そうですよ。実は松本さん、この間から何度か
トライしてるんですよね」
 社内の女子の多くが、何かにつけて結城にアプローチ
している中で、一緒にモデルをしているあかりが、一番
積極的にアプローチしているらしい。
 モデルの仕事が終わる度に、「今度一緒に飲みに行こうよ」と
誘っているらしいが、結城はその度に「今度ね」と言うだけで、
具体的な約束はしないんだと言う。
「もしかして結城さんって、彼女がいるのかな?そういう話しって、
同じ売り場の中で聞いてませんか?」
「ううん。聞いたこと無い…」
 睦子は首を振った。
「そうですよね。京子ちゃんに聞いたけど知らないって言ってたし、
恩田さんも知らないって言ってたし、河嶋さんも知らないって」
「木村さんも、結城さん狙いなの?」
 睦子の言葉に、洵子は目を見開いた。
「まさかっ!あたしは違います。松本さんと親しくしてるから
協力してるだけですよ」
 この子が結城と親しげに話している所を見かけた事は無いから、
多分本当の事なのだろう。だが、結城とのツーショットは見ないが、
河嶋とのツーショットは最近よく見かける。それが少しだけ、
引っかかる。この間の花火大会の時にも、結城の隣に座っていた。
「じゃぁあたし、これで。お先に失礼しまーす」
 洵子はにこやかに挨拶をして出て行った。
 本来なら一番先に出て行く筈だった自分が最後に取り残された。
ちょっとした嵐が過ぎて行ったような気がした。
睦子の中に色んな感情を撒き散らして。



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