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小説・Bye by Blue<完>
3.血圧上昇


Bye by Blue 3.血圧上昇 04

2010.06.01  *Edit 

 「むっちゃん…、さっきはごめんね?」
 昼休みが終わり、いつもの混雑が引けてきた頃、小物の整理を
している睦子の許に京子がやってきた。
「どうして謝るの?」
「だってぇ…。何か、気に障るような事を言ったかなって
アキラ君も心配してた。途中で帰っちゃったから」
 棚の上にゴチャゴチャに置かれたバイアステープやボタンや
ワッペンを1つずつフックに掛けながら、睦子は少し憮然としていた。
 睦子が機嫌を損ねたらしいから、取り敢えず謝っておこう。
そういう事なのだろうか。話しを聞いていると、何故睦子の
機嫌を損ねたのかは全く分かっていないようだ。
「ねぇ、むっちゃーん…」
 甘え声を出して来る。
 睦子は京子の方を見ないまま言った。
「何かさ。あたしと言う第三者がいながら、京子ちゃんは彼に
夢中って感じだし、彼の方は彼の方で、態度が何だか好意的には
感じられなかったし。二人してあたしを誘っておきながら、
3人で和気あいあいと話しをしようって態度じゃなかったよね?」
「ごめんなさい。そんなつもりは無かったんだけど…」
 京子は項垂(うなだ)れた。
「それからさぁ。彼氏にひとのことを何でもかんでも話さないで
くれるかな。しかも、枯れちゃうって何?失礼もいいところじゃない」
「だってぇ。20代の前半って言ったら、女としては一番
いい時じゃない?なのに、彼氏いないままでいいの?しかも、
前の彼氏とは1回も無かったって事は、もう何年もしてないって事に
なるんじゃないの?そんなの、勿体ないじゃない」
 睦子が思わず京子を睨みつけると、彼女はびっくりした
ように怯(ひる)んだ。
「そう言うのを、失礼だって言うのよ。余計なお世話じゃない。
それに、私が虫嫌いだって知ってるのに、どうして鱗粉マニアを
紹介するの?」
「ごめん、それはアキラ君には言って無かったの。私もいい人が
いるって聞いてただけで」
「もういいよ。わかった。だけど、余計な心配してくれなくていいから」
 睦子は気持ちを落ち着かせるように、ゆったりした動作で
仕事の続きを始めた。実際には、どこかで納得できないでいた。
だが、好意から出た事であるなら、これ以上腹を立てても仕方が無い。
「ねぇ、むっちゃん…。今回の人はむっちゃんの苦手なタイプ
だったけど、今度はもっとむっちゃんの好みの人を探して
くれるように言っとくから」
 京子の言葉に、睦子は頭に血が上って来るのを感じた。
「京子ちゃん。あたし、頼んでないのよ?紹介してくれだなんて」
 それでも、極力声を押さえて言った。
「そうだけど、学生の時と違って、異性と知り合う機会が
少ないじゃん。特に、こんな職場じゃ、ろくな男いないし。
このままじゃ、いつまでも独りでいることになりかねないじゃない」
 睦子は手にした小物達を全部京子へ投げつけたい気持ちを
かろうじて抑えた。京子の言う事も尤もと言えば尤もだ。だが、
頼んでもいないのに、そこまで世話を焼かれると却って
腹立たしくなってくる。
 つい先日も、山口の浜田への執拗さとその理由を知って
怒りに拍車がかかった。おまけに、紹介されたのが山口の兄と
同じ生物好きだ。これは何かの符号なんじゃないか、と
思わずにはいられない。勿論、ただの偶然の一致なんだろうが。
「ねぇ。どうしてそんなに勧めるの?頼んでないんだよ?」
「だってあたし、むっちゃんが好きなんだもん。前彼に酷い事
言われて傷ついたむっちゃんに、早くいい人が見つかって
幸せになって欲しいって思うから……」
 はぁ~っ、と思わず溜息が洩れる。
「京子ちゃん、心配してくれてありがとう。でもあたし、まだ
そんな気無いって言うか。そういう気分になれないの。
だからさ。その件に関しては放っておいてくれないかな」
「むっちゃんの気持ちもわかるけど、新しい人と付き合っちゃえば、
すぐに忘れるし立ち直れると思うよ?」
「あたし、そんなにショボくれてるように見える?」
 確かに富樫から言われた別れの言葉に傷ついたし、ふとした時に
思い出しては憂鬱な気分に襲われるのは確かだ。だが、立ち
直るとか言われる程、落ち込んでるように見えるのだろうか。
「それ程には見えないけど…」
「ね、京子ちゃん。これはあたし自身の問題だから。京子ちゃんが
心配してくれるのは有難いけど、でもそんな気が無いのに、
あれこれ言われるの、嫌なの。だからお願い。放っておいて」
 睦子は真剣な眼差しを京子へ向けた。本当にお願いだから
放っておいて欲しい。
「わかった。ごめんね、余計な事して……。アキラ君も、
早く彼氏を作った方がいいと思うって言ってたから、つい…」
 京子の彼は計り難い。彼が自分へ向ける鋭い目つき。
あれは一体何なのだろう。好意的とは思えない。逆に敵意すら
感じる。それに、睦子が2人の共通の友人なら、先輩を
紹介すると言う行為も理解できるが、今日初めて会ったのである。
「何かさ。京子ちゃんの彼って、あたしに何か良く無い
感情を持って無い?」
「えっ?どうして?」
 京子は、睦子が思う以上に驚いた顔をした。その顔を見ると、
何かあるような気がした。そんな京子を暫く黙って見つめていると、
瞳を忙(せわ)しなく揺らし始めた後、目を伏せた。
「やっぱりね。何かあるんでしょ」
「彼さ…。あたしとむっちゃんの仲を疑ってるのよね…」
 呟くように言ったその言葉に、睦子は仰天した。
「はぁ?何でぇ?」
 想像もしていなかった事だ。職場の先輩後輩で、確かに仲は
良いが女同士である。何を疑うと言うのか。
「あたしがさ。いっつもむっちゃんの話しばかりしてるからだと思う」
「だって、女同士じゃない」
「そうなんだけど、あたし達、胸をさわりっこしたりとか、
結構エッチっぽい事してるじゃない?」
「それって、そういう話しまで彼氏にしてるわけ?」
 京子は頷いた。
 睦子は呆れた。彼氏になんでそこまで話すのか。いくら相手が
女とは言っても、良い気持ちはしないだろう。だから彼は、
鋭い視線を最初から浴びせて来たんだ。そして、私に男を紹介して、
自分の彼女を毒牙から守ろうとでも思ったのだろう。
 一通りの小物の整理が終わったので、睦子は売り場を見渡した。
所々の台で人が並んでいる。反物の片づけをしなければと思った。
「京子ちゃん。もう、あたしの事をあれこれと彼に話すの、
止めてね。あたしに彼との惚気話しを語って聞かすのと同じような
感じで喋ってるんでしょ。それじゃぁ、いい気がしないのも
当然じゃない。あたし、人から誤解されて恨まれたくないから」
 睦子はそう言うと、客が並んでいる台の方へと足早に向かった。


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