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小説・Bye by Blue<完>
3.血圧上昇


Bye by Blue 3.血圧上昇 02

2010.05.30  *Edit 

「京子―」
 京子と二人、昼食の為にロッカーへ向かおうとしたちょうど
その時に、京子を呼ぶ男の声がした。振り向くと、背の高い
若い男が2メートル程離れた所に立っていた。
「あっ、アキラ君」
 京子が嬉しそうな声で彼をそう呼ぶと、睦子の傍から彼の方へと
駆け出して行った。そして彼の腕を取って絡みつく。
 今日の午後、京子の彼がここへ来ると言う事は本人から
聞いていた。夕方来て、京子の仕事ぶりを見た後、近くで
時間を潰して一緒に帰るとの事だった。大学生だから夏休み中
である。彼女がどんな所でどんな風に働いているのか、
この機会に見ておきたいとの話だった。
「ごめん、来るのちょっと早くなっちゃって」
 彼氏の言葉に、「ううん」と頬を染めながら首を振る京子を見て、
「じゃぁね。京子ちゃん」と言って、睦子は一人でロッカーへ
向かおうとした。
「あっ、むっちゃん、待って!」
 呼び止められた。
 振り向くと、二人がこちらへ近寄って来た。
「あたしの彼の、狭川晃君。こちらは、売り場の先輩の
鮎川睦子さん」
「はじめまして。狭川です。鮎川さんの話しはいつも
京子から聞いています」
「いえ、こちらこそ、はじめまして。私もお話しは
兼ねがね伺ってます」
「これからお昼なんでしょう?どうぞ2人で行ってきて
下さい。僕は外で待ってますから。食事が終わったら
一緒にお茶しませんか?」
 狭川の言葉に驚いた。
「えっ?でもお邪魔じゃないんですか?」
 折角逢いに来たのに、部外者がいては迷惑じゃないのか。
「全然。いつも話しに聞いている鮎川さんと、一度
話してみたかったんですよ」
 狭川はそう言うとニッコリと微笑んだ。
「そうしようよ、むっちゃん」
 京子がねだるような甘い声で睦子を誘った。
「じゃぁ、遠慮無く」
 睦子は承諾した。睦子自身も、いつも話しに聞くこの男には、
少しばかり興味があった。
 2人は急いでロッカーから私物を出して社員食堂へ向かい、
さっさと食事を済ますと、狭川が待つ喫茶店へ向かった。
 商店街から細い路地を入った線路際の目立たない場所に、
コテージ風の洒落た喫茶店が有る。富樫が逢いに来た時にも、
ここをよく利用していた。4人掛けのテーブル席が20程ある、
広々とした喫茶店だ。店からは少し離れているので、普段
休憩時間にここを利用する事はあまり無い。
 昔ながらの軽食喫茶と言った感じで、メニューは多く無いが
ここの軽食は美味しいと評判で、常連客も多い。
 ドアを開けると目の前がレジで、入口に背の高い観葉植物が
置いてある為、そこから店内は見渡せない。中へ入り、植物の
先へと足を運んで改めて店内が見渡せる。狭川は窓際の真ん中の
テーブルにいた。
「お待たせ」
 京子は弾む声でそう言うと、狭川の隣へ座った。睦子は京子の
前へと腰かける。注文を取りに来たウエイターに、京子はコーラを、
睦子はアイスティを注文した。
「いつも京子がお世話になってます」
 コップの水をひと口飲んだ時、狭川がそう言った。
「あら…」
 保護者でも無い人間からそう言われても、何だかピンと来ない。
逆に違和感すら覚える。
「そんな、お世話だなんて…」
「彼女から、鮎川さんにはいつも良くして貰ってるって
聞いてるので」
 真っすぐ睦子へ寄越す視線が何故か鋭い。お礼を言っている
人間の目とは思えないように感じた。
 京子の方へ視線をやると、彼女は彼の腕に腕を絡ませて、
その肩に頭をもたせかけていた。うっとりした表情だ。まるで、
2人だけの世界に浸っているように見える。周囲の事など
まるでお構いなしだ。
「そうですか…」
 受け答えに窮して、睦子は早くアイスティが来ないかなと、
カウンターの方へ視線をやった。何だかとても落ち着かない。
「僕達の事、どれくらい京子から聞いてます?」
「えっ?」
 訊かれて狭川へ目をやると、変わらず鋭い視線でこちらを
見ていた。
 一体、この男は何でそんな質問をしてくるのだろう?それに、
この鋭い目つきは何なのか。どうして、こんな視線を受け
なければならないのか。
「どれくらいって言われても…。全部がどの位の量なのか
分からないですから、相対的な量で現すのは無理だと
思いますけど」
 睦子の答えに、京子が声を上げて笑った。
「ねっ?むっちゃんって面白いでしょう?アキラ君みたいに、
ちょっと理系っぽくない?」
 2人の会話をまるで聞いていないかのように、自分の世界に
浸っていたように見えた京子の突然の言葉に、睦子は驚いた。
「ほんとだな。だけど鮎川さんは文系だったんでしょう?
国文科に通っていたとか」
 その言葉に睦子は黙って微笑んだ。
「何か、勿体ないなぁ。折角入ったのに途中でやめちゃうなんて…」
 同じ言葉を京子からも言われた。はたから見ればそう
思うのが自然なのだろう。
 睦子は黙ったまま、やっと運ばれてきたアイスティに
ストローを差すと、おもむろに吸った。ガムシロップも、
ミルクもレモンも、何も入れずに飲む。紅茶の香りが口の中に
充満して鼻に抜け、喉越しにヒンヤリした紅茶独特の酸味を
含んだ苦味を感じて心地良くなる。紅茶はホットよりも
アイスの方が好きだった。
「僕、鮎川さんってどんな人なんだろうってずっと思って
たんですよ」
 ふぅ~ん。だから何なの?
「京子はいつもあなたの事を夢中になって話すんですよ。
まるで恋人の話しをするように」
 狭川を見ると、今度は笑っている。
「だってあたし、むっちゃんの事が大好きなんだもん」
 相変わらず狭川に腕を絡めたまま、京子がそう言った。
 睦子はこの2人を前にして、何だかだんだん不愉快な
感情が湧いてくるのを感じた。
「鮎川さんは最近、彼氏と別れたとか」
 そんな事まで彼氏に話しているのか。京子の方を見ると、
悪びれた風もなく、
「そうなんだよねー?酷い彼氏だったんだよね。むっちゃん、
可哀想でさ」
 何だか胃のそばに痛みを感じる。昔折った肋骨の辺りだ。
「京子から聞きましたよ。酷い男ですよね。立つ鳥跡を濁さず
じゃないですけど、幾ら別れるからって、もう少し気を使って
もいいですよ」
 その言葉、何だか、使用用途が違う気がする。
「俺の先輩に、この間彼女に振られた人がいるんですよ。
良かったら会ってみませんか?」
 はぁ?
 ストローから口を離して、思わず狭川をマジマジと見た。
「京子のヤツが、鮎川さんの事を凄い心配してて。このままじゃ、
むっちゃんが枯れちゃうって…」
 声をひそめて狭川がそう言った。それを聞いて睦子は顔が
カーッとしてくるの感じた。
「京子ちゃん!」
 思わず強い口調になる。
「だってぇ~。あたし本当にむっちゃんが心配なんだもん…」
 京子のしょんぼりした態度に遭遇し、睦子は溜息が洩れた。
「良かったら、どうです?紹介しますよ?」
 睦子の頭の中に結城の笑顔が浮かんだ。
 あの日貰った写真は、机の引出しにしまってある。毎日必ず
1回は見ている。
 どうしてくれたんだろう?そう思いながらも、胸が熱く
なってくるのだった。
 結城本人とは、毎日職場で顔を合わせているが、
いつもと態度は変わらない。
 顔を合わす度に、人懐っこい笑顔を向けて来る。
その度に胸がキュンとする。
「先輩って、理系の人なんでしょ?」
「生物です。蝶の研究を熱心にしてる人で優秀ですよ」
「ごめんなさい。あたし、生物は大の苦手なの。特に蝶は。
じゃぁ、あたし先に行くね」
 睦子はそう言うと、自分のアイスティの代金を置いて、
逃げるように立ち去った。


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~ Comment ~

Re: おはようで~す。。>さらら様 

さららさん♪

狭川、イヤな男ですねぇ~。
京子ちゃんにとっては、いい男なんでしょうが。

姑は、いきなり亡くなってしまいました…。
暫くは、兄姉達やその他親戚と顔を合わす日々です。
地元の人間だけに、妙な所にこだわると言うか。
そばに住んでると辛いものがありますが、なるべく割り切るように
頑張りますね。

おはようで~す。。 

狭川ってなんじゃ~Σ(゚Д゚ノ)ノ おおぉぉぉぉ~!
だから理系は嫌いなのよ…って、そんな問題じゃねぇ!
でも他人の心に土足で入ってくる態度にイラッとくるなあ。
なにか事情があるのかしら?
先に期待(どこをじゃ!)、狭川に…ってか~!

お姑さんのことも大変ね。
でも周りでなんて言われてるなんか気にしないで、自分の家庭を大切にね。。
私も、娘も同様(ちょっと違うけど)の状況にあるんだけど全く無視です。娘には私が生き方を伝授しました。
口さがない人たちなんてゴロゴロいます。そんなの相手にしてちゃ人生の無駄遣いですよ♪o(*^・^*)  さらら
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