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小説・Bye by Blue<完>
2.鼓動


Bye by Blue 2.鼓動 06

2010.05.28  *Edit 

 7月最後の日曜日。
 閉店後に店の屋上で納涼大会が開かれた。
 この日は近くで花火大会が開催される。だからそれに合わせて
屋上で花火を鑑賞しながら宴会をするのだった。毎年恒例の
行事だが、去年の秋に入社した睦子にとっては初めての行事で
胸が躍った。
 男子従業員達がテーブルや照明などを設置し、女子従業員達は
飲食の準備をする。皆で分担して近くの店で飲食物を購入し、
設置されたテーブルの上へ並べるのだった。
 準備の終わったテーブルに、売り場ごとに着席し、店長の音頭で
乾杯した。それから間もなくして花火が上がり、みんなも歓声を上げる。
「ここで働いていて、何が嬉しいかって言ったら、やっぱりこれよね」
 浜田が枝豆を忙(せわ)しなく摘まみながらそう言った。
この人は余程枝豆が好きらしい。飲みに行くと必ずまずは枝豆を
頼むし、ここでも、社員食堂の賄(まかな)いの小母さん達が
用意しておいてくれた枝豆に、真っ先に手を付けている。しかも、
その速さときたら尋常じゃない。普段見ていてもせっかちな人だと
思うが、この枝豆をつまむ様子は凄いと思う。
 そして、そんな浜田とは対照的にゆったりとした動作で枝豆を
食べている佐々木昭子が、
「ホントだよ。こんな特等席ないからね」
 と言うのだった。
 確かにここは特等席だ。外は凄い人出である。そんな中で、
こんな風にゆったりと飲み食いしながら花火を鑑賞できるんだから、
こんな嬉しい事は無い。
「確かに特等席だけど、あたしは彼氏と見たかったなぁ」
 京子がピザを口にしながらそう言った。
「じゃぁ、そうすりゃぁ良かったじゃんか。欠席したって良かったんだぜ」
 京子の言葉に河嶋がそう言った。
「こんな場所で見れる事に不平を言うなんて、とんでもないぞ、お前は」
 不機嫌そうな顔で言う河嶋に、「まぁまぁ」と和子が取り成した。
 この二人は相性が悪いのだろうか?
 だが、河嶋の言う事も尤もだとは思う。皆が楽しんでいるのに、
京子の言葉は水を差すような発言だ。思ってもこの場で言うべきでは
ないと睦子も思う。
「結城さーん!河嶋さーん!ちょっと、こっち来てよー」
 と、向こうのテーブルに座る女子の一団が二人を呼んだ。
 向こう側のテーブルはレディースとメンズの従業員が座って
いるので、若い女子が多い。その彼女らが、社内での人気を
争う二人を呼びつけている。
「何だよ、一体」
 と、面倒くさそうに腰を上げながらも、満更でも無いような
表情をした河嶋が、結城に合図して向こうのテーブルへと移動した。
結城も仕方なさそうにそれに従った。
 二人が向こうのテーブルの席に着くと、こちら側のテーブルにいた
若い女子社員もこぞって向こうへと移動し、向こうのテーブルにいた
主任達はこちらへと追いやられたのだった。
「凄い人気よねぇ」
 目を剥いて驚いている浜田に同感である。人気がある事は既に
承知している事だが、大勢の女子社員達に囲まれてチヤホヤ
されている姿を見るのは初めてである。
「ねぇ。恩田さん、いいの?河嶋さんの隣へ行ったらどうなの?」
 浜田がそう言った。
 和子は「いいの、いいの」と言って、笑っている。のんびりした
雰囲気は、まるで気にしていなように見えるが、実際のところは
どうなんだろう。
「もう、じれったいなぁ」
 京子はそう言うと、和子の手を取り、引きずるようにして向こうの
テーブルへ連れて行くと、河嶋の隣に座る女子を無理やり追いやって、
そこへ和子を座らせた。河嶋はそんな和子に怪訝な顔をしていたが、
和子の方は頬を染めて嬉しそうな顔をしている。
「ほんとに世話が焼けるよね、恩田さんには」
 戻ってきた京子が睦子の隣に座ってそう言った。
「二人はいいの?あっちへ座らなくて」
 浜田の言葉に睦子は首を振った。
「とてもあの輪の中へ入ろうとは思いません」
 完全に、スターとそのファンと言った態(てい)である。
「若いんだから、若い人同士の方が楽しいんじゃないの?」
「とんでもない。私はあの二人のファンじゃないし」
「ホントよねぇ。何も男はあの二人に限らないのに」
 京子が睦子に同意した。
 20代の女子社員の殆どは、向こうのテーブルにいた。
こちらにいるのは、30代以上の女子社員と、主任達ばかりである。
外に彼氏がいる京子はともかく、睦子以外の20代は誰も
こちらにはいなかった。
 若い人ばかりのテーブルは多いに盛り上がっていた。
それに比べると、こちらは静かだ。それぞれに2,3人で固まって、
お喋りしたり、のんびりと花火を見ている。
「アユちゃん達は、向こうへ行かないの?」
 浜田の隣に座った山口芳子が、そう声をかけてきた。彼女は
3階の寝具売り場の従業員で、浜田よりも少し年上の女性だ。
この二人は仲が良い。
「どうも、自分には合わないみたいなんで…」
 睦子はそう言って笑った。
「鮎川さんは、あの子たちみたいにミーハーじゃないのよ。
普段から大人っぽくて落ち着いてるし」
「あら。でもそれじゃぁ、行き遅れちゃうかもよ?浜田さんみたいに」
「ちょっと!失礼な事を言うわね」
 浜田が顔色を変えた。だが山口は、そんな彼女を見て笑っている。
からかって楽しんでいるような顔つきだ。
「だからさぁ。うちの兄貴と会ってみない?」
「それは前に断ったじゃない」
「そうだけど、それならそれで、どうするのよ、この先。
ずっと一人でいる気?」
 二人の会話に睦子と京子が不思議そうな顔をしていると、
山口が言った。
「実はね。私の兄貴が未だに独身なんで、浜田さんに勧めて
るんだけど、気乗りしないみたいでさ。他に好きな人とか
いるならともかく、会うだけでも会ってって言ってるの。
それなのにこの人ったら…。もういい年なんだから、
躊躇してる暇なんて無いでしょうに」
 浜田は睦子よりちょうど一回り年上なので、34歳だ。
世間的に見れば結婚している方が多いだろう。
「本当に、えり好みなんてしてられない年だよ?
会うだけでも会えばいいのに」
 傍で聞いていた佐々木がそう言った。
「そうでしょう?そう思うわよねぇ」
 味方が登場して力を得たように、山口が力強くそう言った。
浜田は嫌そうな顔をしている。
「あの…、山口さんのお兄さんって、どんな人なんですか?」
 何となく気になって睦子は訊ねた。
「年は40歳。高校で生物を教えてるんですって」
 と、浜田がぶっきら棒に答えた。
 高校の生物の先生?
 うっわぁ~。あたしなら、それを聞いただけで嫌だなぁ~。
 睦子が通っていた高校の生物教師は2人いたが、一人は
鱗粉マニアでもう一人は色んな生物を冷蔵庫で保管している
男だった。梅雨が明けて、夏真っ盛りと言う時なのに、
その2人を思い出して背筋が寒くなった。
 視線を感じて浜田を見ると、「わかるでしょう?」と
言っているような表情をしていたので、睦子は思わず頷いた。
「学校の先生なんて、いいじゃないか。安定してるし」
 まるで浜田の気持ちを無視したように佐々木が言った。
「あたし、学校の先生なんて嫌だわ」
 浜田がそう言うと、
「人の兄貴に向かって、それは失礼じゃない?いい人よぉ~」
 と山口が言った。
 それを聞いていて、何だか睦子は浜田に同情した。どうして
40歳まで独身なのかは知らないが、以前から勧めているとは
相当しつこい。その気の無い人間に、どうしてそこまで
勧めるのか理解できない。
「余計なお世話なのよ」
 浜田はつっけんどんにそう言うと、席を立ったのだった。


   (2.鼓動 end 3.血圧上昇 へつづく。。。)


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~ Comment ~

Re: ほ~!!>さらら様 

さららさん♪

ありがとうございます。全然すごくはないのですが…(^_^;)

男性はいいですよね。このくらいの年で、若い女性と結婚
しちゃったりして。
私のママ友なんて、旦那さんが17歳年上って人が二人も
いるんですよ。驚きです。
私は無理だな~、この年の差は。

山口さんのお兄さんは、ただの鱗粉マニアの偏屈者です^^

ほ~!! 

すごいな~!!
こんな複雑な人間模様をラストではどうまとめるんだろうって尊敬だわ!!
実生活でいうと40歳で独身て男性、私の周りには多いから違和感ないよ。職種にもよるしね。
でも山口さんのお兄さんは、なんとなく曰く有り気ですね。ドキドキ♪o(*^・^*) さらら
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