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小説・Bye by Blue<完>
2.鼓動


Bye by Blue 2.鼓動 03

2010.05.25  *Edit 

 薄日が射す、蒸し暑い曇り空の日。
 睦子は遥子のアパートに居た。
 休日が被ったので、一緒に買い物をし、その足で遥子の
アパートにお邪魔した。
 2Kの小さなアパートの1階だった。
「ねぇ、1階って、危険じゃないの?」
 窓の外の景色を見ながら、思った事を言った。
遥子は「わからない」と答えた。
「どっちも、たいして変わらないんじゃないのかな、
って思うんだけど」
「でも、下の方が泥棒に入りやすいものじゃない?」
 窓にはブルーのシンプルなカーテンがぶら下がっていた。
 玄関には男物の靴が置いてある。防犯用だろうか。
「できれば上の方が良かったのは確かなんだけど、
結局空いて無かったの。引っ越すのもお金かかるし、億劫だし」
 遥子はアイスコーヒーをグラスに注ぐと、折り畳み式の
小さいテーブルの上に置いた。
「この間のゲーセン、楽しかった?」
 遥子はにっこりしている。
「うん。まぁね。ああいうゲームは男の子は強いから予想は
してたけど、逆転勝利できて嬉しかったかな」
 遥子はコーヒーの中にガムシロップだけを入れて掻きまわすと、
そっと口を付けて吸った。ふっくらした唇が、どこか色っぽい。
 遥子には、全体的にしっとりとした色気を感じる。水商売の
女性のようなものではなく、清潔感のある色気とでも言ったら良いのか。
「この間は、はっきり答えを聞かせてくれなかったわね」
 ストローから口を外し、遥子がそう言った。
「遥子さんは、どうしてそう思ったの?」
 この間からの疑問である。誰にも言われた事は無いのに。
 睦子の質問に、遥子は優しく微笑んだ。
「何となく、かな。アユちゃんの彼を見る目がね。何となく
気持ちを語ってるように感じたと言うか・・・」
 その言葉に、頬が熱くなるのを感じた。
「やっぱり、当たりか」
 睦子は首を振った。
「自分ではまだ、よくわからないの。結城さんが入社して来た時、
普通にカッコイイ人だなって思ったけど、何ていうか、自分とは
住む世界の違う人だって思ったのよね。だから、異性としての
縁は無いって思ったし」
 睦子は俯き加減で、そう言った。
「そっか。住む世界が違うって思ったのは、何となくだけど
わかるかな」
 遥子の言葉に、睦子は顔を上げて彼女を見た。
「本当に?」
「本当よ。そういうの、あるわよね。でも、相手を知るうちに、
変わって来る事もあるでしょ?」
「結城さんの場合は、まだわからない・・・」
「でも、惹かれてるんでしょう?」
 睦子は頷いた。
「夢を見たの。凄く不思議な夢。その夢に結城さんが
出て来て・・・。詳細は覚えていないんだけど、目が覚めた時、
物凄くドキドキしてた。それからかな。彼をとても
意識するようになったのは」
 遥子に言った通り、あの夢を見てからだ。
 あんな夢を見たから、意識するようになったのか。
それとも、知らずに意識していたから、あんな夢を見たのか。
 結城の夢はあれから一度も見ていない。
「でも結城さんって、女子社員から人気あるし。好きに
なったところで、駄目だってわかってるし。だからこれ以上は
好きになりたくないな、って思ってるんだ」
「確かに、人気者よね」
 遥子は全売り場のポップを描いているから、全社員とそれなりに
繋がりがある。女子社員が遥子の所へポップの依頼に来ている時に、
結城が用事でやってきたり、傍を通りかかったりすると、
大抵の女子社員は目を輝かせ、積極的な子は嬉しげに
話しかけたりしている。
 この店舗では結城の人気はダントツだ。結城が入社してくる
前までは、河嶋がダントツだった。だが最近、河嶋が恩田和子と
付き合っている事が知れ渡って以来、人気は少し落ちた。
 他に、婦人服売り場を担当している、田中と言う細身で
背の高い男子社員も人気があるが、結城には及ばない。
 主任達は皆中年で既婚者だが、それ以外の若い独身男子社員は
全部で5人いる。人気ベスト3以外の二人の男子社員は全く
パッとしないタイプだったが、それでも狙っている女子は
少なく無い。
 男女比がこんなに極端な職場で無かったら、見向きも
されないような男でも、ここへ来るとそれなりにチヤホヤ
されるから、勘違いする男も多い。
 だが、結城は何処へ行っても、人気者だろう。おまけに、
誰に対しても愛想が良く親切だ。プレイボーイには見えないが、
硬派にも見えない。だから、睦子が躊躇する気持ちもわかるのだった。
「だけどアユちゃん。彼氏と別れたんでしょ?いい機会じゃない」
 遥子の言葉に、睦子は深く息を吐いた。
「そうは言われても、あたし、自分に自信無いし。元々自信
無いところへ持ってきて、『お前と居ても楽しく無い』とかって
言われちゃったからね。益々自信喪失。だから、結城さん相手じゃ、
最初からね。戦意喪失って感じなの」
「アユちゃん・・・」
 遥子は優しく呼びかけた。
「人間は、みんな違うものよ。前彼とは、たまたま相性が
合わなかっただけ。それに、幾ら別れ際とは言え、そんな
失礼な事を言う男の方がおかしいよ。その彼は、アユちゃんと
一緒にて楽しいと思わなかったのかもしれないけど、
みんながみんな、同じ訳じゃないからね?アユちゃんと一緒にいて、
楽しいと思う男の子だっている筈よ。だから、自信持ちなさい。
少なくとも私は、アユちゃんと一緒にいて楽しいし、大好きよ」
「遥子さん・・・」
 睦子は、遥子の言葉を凄く嬉しく思った。こんな風に
言ってくれる遥子が、睦子も大好きだった。
「ありがとう、遥子さん。だけど、遥子さんの方は?
その後どうなの?」
 睦子の言葉に、「相変わらず」と言って、遥子は
寂しそうな笑顔を見せた。
 睦子は遥子に彼氏がいる事は知っているものの、
相手がどんな人なのかは、まだ全く知らなかった。
「結婚、しないの?」
 これまで言うのをずっと躊躇っていた言葉を、思い切って
言ってみた。遥子もそろそろ30歳になる。
「結婚かぁ・・・。無理な話しかな」
 遥子はそう言うと、睦子を見た。瞳が暗いと感じた。
「ねぇ、遥子さん。相手の人って、どんな人なの?
まだ教えてくれないの?」
 遥子は優しく微笑んで言った。
「私の彼はね。既婚者なの」


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