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小説・Bye by Blue<完>
2.鼓動


Bye by Blue 2.鼓動 02

2010.05.24  *Edit 

 外へ出ると雨だった。
 細かい雨だが、サラサラと絶え間なく降っている。
 河嶋が傘を差して和子の方へ差しだした。和子は頬を染めて
嬉しそうに、その傘の中に入ったのだった。
「おう、行くぞー」
 と、河嶋が後を振り向いてそう言うと、先に歩き出した。
「みんなに知れたからって、露骨にベタベタしなくてもいいのにね」
 京子がそう言った。
「まぁまぁ、いいじゃない。変によそよそしくするのも、
どうかと思うし、第一、恩田さんが可哀想じゃない」
「そうだけどさぁー」
 そう言ってる二人に、工藤と結城が差した傘を二人に差しだしてきた。
 睦子の方に差しだしたのは結城だった。見上げると微笑んでいる
結城と目が合った。歯を見せずに微笑んでいる表情がなぜか胸に沁みた。
 入ってもいいのかな・・・。
 戸惑っていたら、京子に腕を引っ張られた。
「結構です!あたし達は二人で相合傘するから。ねぇ~?むっちゃん!」
 ええ~?そんな勝手に・・・。
 睦子は京子に腕を引っ張られながら、結城の方を見た。
彼は苦笑していた。
 なんだか、がっかりだ。
 ドキドキしていた胸に、いきなり冷や水を浴びせられたような気がする。
 先に到着して店先で待っていた河嶋が、睦子と京子の相合傘を見て、
「やっぱりレズダチだな」と言ってニヤけた。
 結城と工藤は小走りに二人を追ってやってきた。
 「じゃぁ、揃ったことだし、入るか」
 河嶋を先頭に、全員が中へ入った。
 中へ入ると、思いのほか空いていた。平日だからだろう。
 休みの日もそうだが、仕事柄遊びに行くのは平日のせいか、
いつも空いている。空いているのは有難いが、空き過ぎているのも
案外面白くないものだ。遊興場所は、閑散としていると、
かえって盛り上がらない。
 薄暗い店内に、ゲーム機のカラフルな電飾が浮き出るように
目立っている。人が少ない割には、音が氾濫していた。煙草の
匂いが鼻につく。睦子の家では誰も吸わないので、煙草の
匂いには敏感だった。
 だが、懐かしい匂いでもある。富樫がヘビースモーカー
だったからだ。一緒に店に入った時には、必ず睦子に煙が
行かないように配慮してくれていたし、車内では窓を開けていた。
無愛想な男だったが、そういう何気ない気遣いを嬉しく思っていた。
大事にされているような気になっていたが、単なるマナーに過ぎず、
睦子の勘違いだったのかもしれない。
 あ~、やだな。
 今日は2回も思い出しちゃった。
 睦子は気を取り直すように、自ら進んでレースゲームの
ピットに座った。
「おっ!やる気満々じゃん」
 河嶋が楽しそうな顔をした。
「俺、先に対戦してもいいすか?」
 工藤が結城に言った。結城が「いいよ」と言うと、工藤は
嬉々とした顔をして、隣のピットに座ったのだった。
「じゃぁ、いきますか」
 工藤が睦子の方を向いて言った。闘争心がありありと浮かんでいる。
睦子も負けん気が湧いてきて、「いいわよ」と、笑顔で答える。
 河嶋がコインを入れて、画面が変わった。
 コース選択は工藤に任せた。睦子はどのコースでも自信がある。
 工藤が選んだのは、比較的中難度のコースだった。
それを見て睦子は鼻で笑う。
 画面がスタート画面に変わり、ランプが点き始めた。アクセルを
踏む足に軽く力を入れて、肩の力は抜く。集中した。
 5・・、4・・、3・・、2・・
 タイミング良くアクセルを踏み込み、すぐに相手の前に出る。
ハンドルを小刻みに揺らしながら、相手が前へ出るのを防ぎ、
コーナーを考えてコース取りをした。そうしてブレーキと
ハンドルを巧みに操作しながらコーナーを曲がってすぐに
ギアをチェンジし、再加速して引き離す。
 睦子はただひたすらに集中した。僅かのミスが命取りになる。
最初にある程度引き離せたら、後は比較的楽である。その調子で
ミスに気をつけて走れば楽勝だ。
 レースは睦子の目論見通りに進み、睦子が勝った。
 おおぉ~!と男子はどよめき、女子はキャァーっと歓声を上げた。
 はっはっは!どんなもんだい。
 との思いで隣の工藤を見ると、工藤はハンドルに突っ伏して
悔しそうにしていた。
 あぁ、勝つって気持ちイイ!
「よし!じゃぁ、今度は俺やるから、工藤君、変わって」
 と、結城がやる気満々な様子でピットに乗り込んで来た。
 もしかして、自信あるのかな。
 好敵手に出会って喜んでいるような、そんな様子である。
 再び、河嶋がコインを入れた。
「コースはアユちゃんが選んでよ」
 結城がそう言ったので、睦子は一番難しいコースを選択した。
その睦子の選択を見て、「おおっ!」と結城は声を上げたが、
顔を見ると嬉しそうだ。
 ランプの点滅が始まった。意識を集中させる。
 スタートした瞬間、“速い!”と睦子は思った。
 危うく抜かれそうになり、スタート直後から緊迫した。
 睦子はレースゲームは好きだから、随分と走り込んでいる。
だから全コース、一応制覇はしている。だが、他人との
対戦はあまり無い。
 ネット対戦をする事はあるが、見ず知らずの人間と対戦する事を
あまり好まないので、場数は少ないのだった。それに対し、
結城は馴れているように感じる。
 ヤバイ・・・。
 最初のコーナーで先に入られた。
 ここで焦るとミスをしかねないので、睦子は自分を落ち着かせた。
 ヘアピンの多い、高難度のコースである。
 チャンスはまだある筈だ。
 幾つもの難所を手堅く押さえたが、差が少しずつ開きつつ
あるのを感じる。
 このレースの状況に、周囲も沸いた。
「むっちゃん、頑張れー!!」
 と、横で京子が興奮した声を出した。
 他車のお尻を見ながら走るのは久しぶりだ。なんだか屈辱的な
気がする。悔しい気持ちのまま、チャンスを窺いながら慎重に
ハンドルを捌(さば)く。
 最後のヘアピンにさしかかった時、異変が起きた。
 結城のブレーキのタイミングが微妙にズレて、内側のボディを
擦り、スピードが落ちたのだ。睦子はそれを外側から抜いた。
焦った結城はハンドル操作をミスし、危うく壁に激突する所を、
何とか回避したのだった。
 睦子は完全に結城を追い越し、悠々とゴールした。
「やったぁー!」と、京子と和子は手を取り合い、両手を
合わせて大喝采した。
 睦子はホッと息を吐く。
 汗をかき、心臓がバクバクしていた。
 ゲーム中、かなり緊張していたのだろう。その緊張から解放されて、
止められていた血液が一気に流れ出したように、ドクンドクンと
音を立てている。
「あ~!失敗した~」
 結城の言葉に顔をそちらへ向けると、ハンドルの上に
突っ伏していた。
「すげーな、アユちゃん」
 河嶋が感嘆の声を上げた。
「本当、すごいっすよ。結城さんも凄かったですねー。
惜しかったですよ。勝ってたのに」
 工藤の言葉に、結城は顔を上げると、笑顔になった。
「しょうがないよ。ホント、勝負は最後までわからないよな。
だけどアユちゃん、凄い!」
 確かに勝負は最後までわからないものだが、実力は結城の方が
上だと思った。
「そんな事無いって。あたしなんて、まだまだだよ。なんか、
凄い疲れちゃった。結城さん、強いんだもん。負けると思ってた」
「でも最後まで諦めずに運転してたじゃん。いつチャンスが
巡ってくるかわからないもんな。諦めなかったから、
アユちゃんが勝ったんだよ」
 そう言って笑う結城の顔に、睦子の胸は高鳴った。
 なんて、人懐っこい笑顔なんだろう。
 けれど睦子は、ドキドキするのは、レースでの興奮が尾を
引いているからなんだと、自分に言い聞かせるのだった。


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