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小説・Bye by Blue<完>
2.鼓動


Bye by Blue 2.鼓動 01

2010.05.23  *Edit 

 4階のバックヤードの中に、ポップルームがある。
 ポップとは、売り場で使う全ての広告表示物の事を言う。
 最近はパソコンなどで作られた物が増えたが、まだまだ手描きも多い。
 睦子が働く店では、専用の人間を一人雇っていた。
見本生地に付ける小さい札は売り場で書いているが、B6以上の
大きさの物は全てポップルームに依頼している。
「これ、お願いします」
 睦子はポップ社員である上村遥子に、主任から預かった原稿を渡した。
「今日中かぁ・・・」
 依頼書を見て、遥子がそう洩らした。10枚もあるのだから、
そう言うのも無理は無いだろう。仕事はこれだけでは無いのだから。 
「すみません、急な上に多くて」
「ううん。アユちゃんが謝る事じゃないわよ」
 遥子は優しく微笑んだ。
 睦子は、彼女が好きだった。
 丸顔で、柔らかい髪をボブカットにしていて、地味だが美人だ。
笑顔が柔らかくて優しいが、どこか寂しげで儚い印象がある。
 睦子が入社した時を同じくして、他店から転勤してきた。
 この店の中では同期みたいな立場だったからか、昼休みに一緒に
なった時に親しく話し、以来仲良しだ。
 一人っ子の睦子にとって、遥子は優しいお姉さんのような
存在だった。睦子より8歳も年上だ。
「この間、売り場のみんなで飲みに行ったんですってね」
「遥子さん、よくご存じですね?」
 睦子の問いに遥子はにっこりと笑った。
「浜田さんから聞いたのよ。お昼が一緒になった時に」
「そうだったんですか。浜田さんは他に何か言ってました?」
「河嶋君と石川さんには困ったもんだって」
 成る程。確かにあの二人が台風の目みたいな飲み会だったと思う。
「それでアユちゃん、ゲーム対戦をする事になったんですって?」
「そんな事まで、言ったんですか、浜田さんは」
「言われたくない事だったの?」
 遥子は意味ありげに笑った。
「そうじゃないですけど、浜田さんも随分とお喋りなんだな、
と思っただけ」
「いいじゃない。アユちゃんがゲームが好きのは、私も既に
知ってるんだし。でも浜田さんは、そこまで好きだとは
知らなかったって驚いてたわよ。ついでに、若い人たちは
いいわよねぇ~、なんて事も言ってた」
 睦子は笑った。
「あたし、人と対戦した事ってあまり無いから、ホントは
気乗りしないの」
「じゃぁ、断れば良かったじゃない」
「あたし、あまりNOと言えないタイプなんですよね」
「わかってるわよ。でも本当に嫌な時には、ちゃんと断れるじゃない」
 遥子の言葉に、睦子は口許で笑った。その通りだからだ。
「満更でも無かったんでしょ?言いだしっぺが結城君だったから」
 口許が笑んだまま、睦子は固まった。
 遥子は周囲を見渡してから、小さい声で言った。
「結城君が好きなんじゃない?」
 睦子が目だけを動かして遥子の方を見ると、
彼女は優しく微笑んでいた。

 その日、3便の昼休みがやっと終わった午後2時半過ぎ。
 いつものように、世の中から突然人が居なくなったような
ポッカリした時間帯に、
「この間のゲーセン、今日行こうぜー」
 と、河嶋が突然言った。
「いいよな?アユちゃん」
 と、最初から睦子の予定を無視しているような発言である。
「えっ?今日?」
 戸惑う睦子に鋭い視線を浴びせて、
「なんか、用事あるの?」
 と言う。なんで、そんな目つきで言われなきゃならないんだ。
「無いけど、結城さんは?」
「大丈夫。さっき、休み時間に確認取った」
「工藤君は?」
「大丈夫じゃねーの?後で聞くよ。まぁ、来るんじゃね?」
 河嶋はそう言うと、他の場所で仕事をしている京子や和子に
声をかけた。二人とも満面に笑みを浮かべて喜んでいた。
そんなに嬉しい事なのかと、睦子は疑問に思う。二人とも
ゲームはしないのに・・・。
「アユちゃん」
 突然後ろから声を掛けられて驚いた。結城だった。
「都合、大丈夫?」
 少し心配そうな表情である。
「うん。大丈夫」
 睦子はドギマギした。
「突然でごめんね。河嶋さんがさ。さっき急に言い出してさ。
俺もちょっとびっくりしてんの」
「結城さんこそ、急で平気なの?」
「うん。仕事終わっても、家帰るだけだしね」
 結城はそう言って、にっこり笑った。
 結城は大抵、笑う時は口を大きく横に開いて白い歯を見せる。
それが大らかな印象を与えるのだった。逞しい体付きと
合致していて、頼もしく見える。
「前彼とも、対戦とかした?」
「えっ?」
「あっ、ごめん。聞いて悪かったかな」
結城はそう言って、申し訳なさそうな顔をした。
 それを見て睦子は笑った。
「彼とは一緒にゲームしたことは無いかな」
「彼はゲームしないの?」
「するけど、対戦した事はないの。一緒の時は大体、
ドライブばっかだったから」
「へぇ~。ドライブって、どこら辺?」
 結城は楽しそうな顔をして質問してくる。
 好奇心が旺盛なのか、他人の事に興味があるのか。
「気の向くまま、足の向くままって感じかな。まぁ、大体、横浜市内」
「目的地は無いの?」
「うん。無かった」
「じゃぁ、ただ車を走らせてるだけ?」
 不思議そうな顔をした。
「そうだね」と睦子が言うと、「ふぅ~ん」と言った後、
「じゃぁ、また後で」と言って睦子の許を去って行った。
 何だか、スッキリしない。
 結城の態度に。
 あれだけ興味深そうに訊いてきてたのに、最後は何だか
尻切れトンボみたいな気がする。
 でも考えてみると、睦子の答えにどう言葉を繋いだら良いのか、
分からなくなったのかもしれない。
 ただ車を走らせてるだけ・・・。
 その言葉を反芻する。
 いつも、そうだった。
 そして、車内で取り留めのない話しをする。だが盛り上がらない。
 お前といても楽しく無い。
 その言葉が頭の中にこだました。

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~ Comment ~

Re: こんにちわ>OH林檎様 

OH林檎さん♪

こんにちは。いつもありがとうございます。

今作は前作と趣を変えて、社会人ドラマとなりました。
ハンドメイド、大好きです。
最近は小説書くかピアノ弾くか、ばかりですが、以前は
かなり手芸には凝ってたんですよ。

働いていた経験は、一応あります。かな~り昔なので、
記憶に薄いんですけど(^_^;)
記憶の断片を辿りながら、舞台背景に一応役立てているつもりですが。
なんとなくでも雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。

こんにちわ 

第2章はじまりましたね。
今回のお話も描写が細かくて感心しきりです。
1年に1時期かなぁ
とりつかれた様にハンドメイドをする時期がありまして
こういうところに通い詰めるんですが、
自分の行ってる店の裏側を見てるようでリアル感がすごい!
もしかして働いてた経験があるんでしょうか?
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