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小説・Bye by Blue<完>
1.はじまり


Bye by Blue 1.はじまり 01

2010.05.17  *Edit 

作品紹介 -Bye by Blue-


舞台はとある、ファッションファブリックのチェーン店。
そこに勤める男女の、恋愛ストーリーです。
インドア派タイプの女子と、アウトドア派タイプの男子。
その二人の間に生まれた恋・・・。

女性の多い職場で、数少ない貴重な男子。しかもイケメン。
おまけに軟派っぽい雰囲気なので、自分の対象ではないと、
最初から眼中に無かった主人公・睦子ですが。
そう多くは無い従業員達の中だけで展開していくドラマ。
恋と将来に悩み葛藤する睦子に、お付き合い下さいませ。

更新は短い間隔でいきたいと思っていますが、
毎日は無理かもしれません・・・。<(_ _)>

*****************************************************************


1.はじまり


 睦子(むつこ)は目覚めた時、胸がとても高鳴っている事に驚いた。
 思いも寄らない人物が、夢の中に登場した。
 鬱蒼とした森の中だった。
 木々の間から光が差し込んでいて、そこの部分だけは眩しいくらいに
明るいのに、それ以外の場所は暗い。その光と影のコントラストが幻想的だ。
 自分以外、誰もいない。
 見覚えの無い、幻想的な森の中にただ一人でいながら、何故か何の
不安も恐れも感じないのだった。
 目的も何も無く、ただ森の中を歩いていた。
 どこまで行っても同じ光景だ。光の角度も影の位置も、微塵も変わらない。
その事自体が不思議なのに、夢の中の自分は何も感じず何も考えずに、
ただ歩いている。
 一体、どこへ行くんだろう。いつまで歩いているんだろう。
森の中で歩いている自分とは違う意識の自分を感じた。幽体離脱して
少し離れた所から自分を見ているような、そんな感じだ。
勿論、幽体離脱なんてしていない。
 唐突に、本当に唐突に、目の前に男が現れた。背が高く逞しい若い男だ。
 睦子は驚いて足を止めた。
 その男は、光でも無く、影でも無い場所に立っていた。
 光と影しか無い場所なのに、光に当たってはおらず、かと言って
闇の中に埋もれてもいない。それなのに、その姿ははっきりとしている。
 睦子はその男を知っている。
 何故彼がここにいるんだろう?
 不思議に思い、立ち止まったまま彼を見ていた。
 男は笑った。
 健康的に日焼けした小麦色の肌に、白い歯が眩しく光る。
人懐っこい笑顔だ。
 その笑顔に胸が高鳴った。
 睦子は何も言えず、何も出来ず、ただ立って見ているだけだった。
 やがて、男の逞しい腕が伸びて来た。
 睦子の胸が更に高まる。
 そうして、目が覚めた。

「鮎川さん、バイアステープで足りない色が何色かあるみたいだから、
補充しといた方がいいわよ」
 午前中の、物凄い数のお客さんが捌けて一息吐いている時に、
浜田雪子からそう言われた。目の回るような忙しさの直後だと言うのに、
よく気が付く人だ。
 早口でチャキチャキした物言いが、最初はキツく感じた。
あちこちに目が行き届き、気付くとすぐに担当者に言う。
忙しい時などは、口調が強めで、彼女から何かと指摘される度に
神経に触り、精神的に疲労するのだった。ここへ勤めだした
ばかりの頃は、まるでお姑さんみたいな人だと思った。
 だが今は、彼女の物言いにもすっかり慣れた。
 怖い人だと思っていたが、付き合っていくうちに、そうで無い事が
わかってきた。物言いははっきりしているが、さっぱりした気性で
優しい人だ。だが、はっきり優しいとわかるような態度を示さない
だけだった。或る意味、不器用な人なのか。ベタベタした所が無く、
あっさりし過ぎている所が他人からは冷たく見えるのかもしれない。
 売り場で最年長の佐々木昭子なんかは、
「あれだから結婚できないんだよ」と、陰で言っている。
あれだから、と言うのは女性らしくないと言う意味らしい。
 睦子は手に持っていた反物を所定の位置に戻すと、小物コーナーへ
足を運んだ。確かに随分減っている。無い色が幾つもある。
手にとって商品を見た後、元の場所へ戻さずに適当に引っかける
お客が多いので、かなり乱れている。
 その乱れをまず直してから、無くなっている色のバイアスを下の
在庫保管用の引き出しから出して掛けた。
「すいません、デニム縫いたいんですけど、この針で大丈夫ですか?」
 声を掛けられたので顔を向けると、若い女の子が手にミシン用の
針を持っていた。よく見ると細めの針である。
「デニムだったら、厚地なので、細い針だと折れちゃいますよ。
えーと、この針なら大丈夫です」
 睦子はそう言うと、厚地用の針を手に取って渡した。
 客は嬉しそうに頭を下げてレジの方へと向かった。
「アユちゃーん、そっち終わったら、こっちをちょっと
手伝ってくれないかな」
 太い声に呼ばれた。弓田主任だ。
「はーい、わかりましたー」
 睦子は手早く小物コーナーの整理と補充を終えると、弓田主任がいる
台へと向かった。そこでは主任が、可愛い小花模様のコットン生地を
切っていた。
「1メートル着分(ちゃくぶん)ね」
 言われて睦子は、台の上に幾つも積まれている小花プリントの反物を
手に取ると、そばにあった物差しで1メートル計ってはハサミを入れた。
畳むのは後である。ひたすら、切りまくる。計っては切り、
計っては切りの繰り返しである。単純作業だ。
着分はこの1メートルが一番楽だった。
 黙々と切っていると、昼休みから戻って来た恩田和子がやってきた。
「続き、あたしやるよ。アユちゃん、お昼行ってきたら?」
「じゃぁ、お願いね」
 睦子は和子に後を任せて、同じ時間帯の石川京子を探した。
京子はこの春、高校を卒業して入社してきたばかりだった。
 京子はレジにいた。品物を袋に入れている。レジの担当は
浜田のようだ。袋詰めが終わってお客を見送ると、すぐに睦子に
気付いて手を振りながらそばへやってきた。
「お昼だよね?」
 嬉しそうに笑う。
 色白でそばかすが沢山あるものの、可愛らしい顔立ちをしている。
ちょっと縮れたセミロングの髪が柔らかく肩の上を覆っている。
瞳の色が薄くグレーっぽい。もうちょっと目が大きかったら
西洋人形のようだと睦子は思っていた。
 京子は入社してきた日から、何故か睦子に懐いて、何かと慕って来る。
彼氏がいるのに、いつも睦子の腕に腕を絡めてきたり、手を繋いで来る。
細くて華奢な指をしていて、手の平も薄くて小さめだ。可憐な感じがして、
絡まれても不快に感じない。むしろ嬉しく感じるのだった。今日も、
社員食堂へ向かうべくバックヤードへ入ったら、腕を絡めてきた。
「むっちゃん」
 と言って、ベタベタと甘えて来る。
「おおー、よしよし」
 と、睦子は空いた方の手で京子の頭を撫でてやった。
まるでペットみたいだ。
 連れ立って食堂へ入ると、10人程の男女が思い思いの場所に
座っていた。
 二人は食券を出して食事を受け取ってから、空いている席へと着いた。
「なんか、疲れたよね~。いつもの事だけど」
と、京子が言った。
 全くその通りだ。
 睦子はファッションファブリック専門のチェーン店に勤めている。
スーパーよりは小さいが1つのビルで営業している。1階がレディース、
2階がメンズと子供服、3階が寝具と生活雑貨、そして4階が
服地・手芸売り場となっている。睦子の職場は4階である。
 大学へ入ったものの、やりたい事が見つからず、何の為に
通っているのかがわからなくなり、目的を見失って中退した。
それから職を転々とし、昨年の秋、ここへ就職した。
 ここへ就職する前に、大手スーパーのメンズ売り場で契約社員として
働いていた。だが店は経営困難により閉店する事になり、多くの
パートや契約社員は失業した。睦子もその中の一人だ。
 再び、面倒な就職活動が始まった。
 就職活動は、精神的にかなり疲弊する。断られる度に、自分と言う
人間の全てを否定されたような気になってきて暗い気持ちに陥る。
だが、めげてはいられない。
 ここの求人広告を見て、すぐに応募した。自宅から30分少々で
通勤できるし、給料もまぁまぁだった。電話をすると、すぐに面接に
来て欲しいと言われたので、履歴書を持ってすぐに面接に行った。
 面接官は店長だった。見るからに典型的な、中年の恰幅のいい
管理職と言った感じの人物だった。少々強面(こわもて)である。
気の強そうな感じの人は苦手である。緊張した。
 幾つか質問をされた後、
「採用です。できたら明日から来て欲しいんですが」と言われて
睦子は驚いた。即決である。正社員としての採用である。驚いたが
嬉しかった。ずっと何くれと無く納得のいかない理由を付けては
断られてきたのに、いきなりの即決。夢みたいだ。
 今から思うと、あの時にすぐに採用されたのがわかるような
気がするのだった。
 睦子が配属されたのは、服地・手芸売り場である。大手のスーパーなら、
大抵はある。寝具やカーテンの売り場の近くにこじんまりと存在していて、
あまり人はいない。要するに暇そうな売り場である。
だから睦子は侮ったのである。

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