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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第22章 卒業~第24章(最終章) 旅立ち


クロスステッチ 第1部第23章 ずっとそばにいて 第5回

2010.05.11  *Edit 

 「ただいまー」
 そう言って増山が玄関に入ったら、リビングから理子が出て来た。
可愛い寝巻姿だった。それを見て、増山は胸が疼いて興奮した。
 「おかえりなさい・・・」
 増山のそばに寄ってきて、恥ずかしそうに小声でそう言う理子を、
増山は抱きしめた。シャンプーの匂いがした。
髪の毛がまだ微かに湿っている。
 「誰も来なかった?」
 増山の問いかけに、理子は頷いた。
 「寂しかった?寂しくなかった?」
 「寂しかった・・・」
 その言葉を聞いて、胸が締め付けられた。このまま濃厚なキスをして、
ベッドまで運んでしまいたい。そして、思いきり愛したい。
だが増山は我慢した。
 抱いていた腕を緩めると、理子の額に軽くキスをして、
リビングへと移動した。
 「何をしてたの?」
 増山は部屋の中を見回した。テレビが点いていた気配は無い。
ピアノの蓋も閉まっている。本が置いてあるわけでもない。
 「外を見てたの。夜景がとっても綺麗だから」
 理子に言われて窓辺に立つと、確かに綺麗な夜景だった。
遠くにランドマークタワーと観覧車の明かりが見える。
 「そうだ。カーテンが無いな。12階だから、外からの視線を
心配する必要は無いけど、まだ寒いし、早く作らないとな」
 「先生、ご自宅の様子はどうでしたか?こんな事になってしまって、
驚かれていらしたのでは?」
 「うん。まぁ、驚いてはいたけど、君が心配する程ではないよ。
土曜日に一緒に行こう。俺の荷物を本格的にまとめて
移動しないとならないし」
 増山の言葉に、理子は頷いた。
 「ところで君、その姿で寒くないの?上に何か羽織ったら?」
 「大丈夫です。暖房が適度に効いてるし」
 「そうか。ならいいけど。・・・俺、家から何冊か本を持ってきた。
君はあまり持って来なかっただろう。読むといいよ」
 増山はそう言うと、鞄の中から持ってきた本を渡した。
 理子はそれを受け取ると、嬉しそうな顔をした。
 「先生、朝はいつも何時に起きて、何時に家を出るんですか?」
 「6時に起きて、7時20分頃、家を出てたんだけど、
ここだと7時かなぁ、出るのは」
 「わかりました。それで、就寝時間は?」
 「大体、11時半から12時。忙しい時は1時になって
しまう事もあるけど、まぁ、12時には寝てる」
 「じゃぁ、私の方が早いんですね」
 「そうなるね。君は10時5時だもんね」
 「奥さんの方が先に寝ちゃって、いいんでしょうか?」
 「別に、いいんじゃない?決まりなんて無いんだし。
でもこれからは、あまり早く寝れないかもな」
 増山はそう言うと、ニヤリと笑った。理子はそれを見て赤くなる。
 増山はソファに座ると、理子を呼んだ。自分の隣を指差した。
 「ここにおいで」
 理子は赤くなりながら、増山の隣に座った。
 「まだ問題は抱えてるけど、取りあえずは、やっと終わったね」
 「終わったって言えるんでしょうか」
 「言えるさ。俺達にとっての最大の山は受験だったんだから。
君は合格した。俺達は結婚できる。それとも、お母さんとの事で
気持ちが萎えたか?」
 理子は首を振った。
 「じゃぁ、もっと嬉しそうな顔をしてくれないか」
 増山にそう言われて、理子は増山を見た。少し切なそうな表情を
しているように見える。
 「ごめんなさい。今日は最高に嬉しい日の筈なのに。母との事は、
いつも私の胸の中にわだかまっていて、何かある度に出て来てしまう。
今日の事は予想できた事だけど、この事で先生やご家族にこれからも
迷惑をかけると思うと胸が痛くて・・・」
 増山は理子の肩に手を回して引き寄せると、頭を撫でた。
 「馬鹿だな。そんな事は気にするな。簡単にいかない事は最初から
覚悟してたんだから。迷惑だなんて思ってやしないから、心配しなくて
いい。俺にとっては、君がそうやって元気が無いのが一番辛いんだ」
 「先生・・・、ありがとう」
 「なんだか、眠そうだな。今日は疲れただろう。
そろそろ寝たらどうだ?」
 増山は理子の肩を抱いたまま立ちあがると、そのまま彼女を
寝室へ連れて行った。
 ベッドを見て、ふと迷う。
 「右と左、どっちがいいんでしょう?」
 「どっちでもいいが・・・・」
 二人は迷う。これまで真ん中以外の選択肢が無かったからだ。
 「まぁ、どっちとも決めなくてもいいんじゃないか?その時の気分で」
 増山はそう言った。
 「そうですね。じゃあ、今日は私、右側で寝ます」
 理子はそう言うと、ベッドの右側へ入った。
 「何でそんなに端っこなの?」
 「えっ?」
 「反対側を見てご覧。すっごい余ってるよ」
 増山に言われて反対側へ目をやると、あと4、5人は寝れるんじゃ
ないかと思うほど、空いていた。
 「ほんとだ。やっぱり大きいんですね、このベッド」
 「感心してないで、もう少し真ん中に寄ったら?俺はまだ寝ないから
遠慮しなくていいよ」
そう言われて、理子はもそもそと中心へと寄って行った。
理子が移動して空いたスペースに、増山は腰かけた。
 「先生・・・」
 「なんだい?」
 「私、・・・もう卒業しましたよ・・・」
 小さな声で理子がそう言った。
 「そうだね」
 増山の言葉に、理子は頬を染めて顔を背けた。そんな理子を見て
増山は微かに笑う。
 「抱いて欲しいの?」
 理子は更に赤くなって、首を左右に振った。
 「君の方から誘うなんて、初めてだね」
 「誘ってませんって!」
 理子はガバッと跳ね起きて、そう言った。顔が真っ赤だ。
増山はそんな理子にそっと口づけた。
 「今日は、疲れてるだろう?心配しなくたって、元気な時に
ウンザリする程、抱いてあげるから」
 増山が笑ってそう言うと、何故か理子の目から涙が零れ落ちた。
 「どうして、泣くんだい?」
 「だって・・・。先生は平気なの?あんなに欲しがってたじゃない。
ずっと我慢してきてるのに。ストレス溜まってるでしょ?
大人の男性が半年もしてないのに・・・」
 何を言い出すのかと思いきや、そんな事か。とは言え、理子は
理子なりに自分の事を心配してくれてるようだ。
 「そんな事を心配しなくたっていいよ。俺の事はわかってるだろ?
堪え性の無い、野獣だからな。やりたい時には、
嫌がってたって無理やり犯すさ」
 「わかってます、先生の事は。普段は堪え性が無いくせに、
いざって時にはとことん我慢する人ですよね。それに、
嫌がる事を無理やりする人でも無いです」
 理子の言葉に溜息を吐く。
 「そこまで言うなら、もう少し我慢させてくれないか?」
 理子は不思議そうに増山を見た。
 「君を欲情の吐けにする気はない。俺は元々性欲が強い方では
無いって言っただろう?君といると高まってくるけど、ストレスは
溜まって無いから大丈夫だ。俺さ、妙な所にこだわるタイプなんだ。
一緒に暮らすのは入籍してからって決めてた。昼間も話したろ?
未入籍なのに一緒に暮らす事に抵抗があるんだ。でも、今回は仕方ない。
君を一人でここに住まわす事はできないから。だから、
その代わりってのも変かもしれないけど、君を抱くのは入籍してからって
思うんだ。ここまで我慢してきたんだから、どうって事はないよ。
あと僅かの事なんだから。君に余計な心配をかけたのなら、
悪かった。ごめんな」
 「結局、私のせいなんですよね。私が家を飛び出して来なかったら、
先生も我慢する事は無かった」
 「理子、いい加減にしてくれ。いい子だから、今夜はもう寝なさい。
君は疲れてるんだ。子守唄が必要なら、歌ってやるぞ」
 理子は切なげな顔をして増山を見ると、言った。
 「じゃぁ先生、明日入籍しましょう。それなら先生も、
もう抵抗がないでしょう?」
 「君には呆れるな。そんなに抱かれたいの?」
 「ち、違いますって・・・」
 「全然、違わない。俺には君が『抱いて~』って言ってるように
聞こえるんだけど」
 「先生の意地悪・・・」
 増山はフッと笑った。
 「入籍に関しては、当初の予定よりは早くなると思う。だけど、
すぐは無理だ。さっき、親父にも言われたんだが、少し様子を
見る事にした。今日はみんな興奮し過ぎだ。時間を置けば、
おかあさんも少し落ち着いてくるだろうし、そうしたらもう少し
冷静に考えてくれるかもしれない。急いで入籍したら、火に油を注ぐ
結果になりかねいと思わないか?これ以上拗(こじ)れるのは避けたいし」
 理子は沈黙した。何かを考えているようだ。
そして、静かに体を横たえた。
 「先生、ごめんなさい」
 増山は腕を伸ばすと、理子の髪をそっと撫で、顔を近づけて
その唇に優しくキスをした。
 「おやすみ・・・」
 そう言って、寝室を出たのだった。

 翌朝目を覚ますと、隣に理子はいなかった。時計を見たら、
いつも通り6時である。増山は目覚まし無しでも、大体毎朝6時に
目が覚める。微かにいい匂いが漂ってくる。朝食の支度をして
いるのだろう。なんだか心が温まってくるのを感じた。
 正直な所、昨日は疲れた。最後の最後になって、理子があんな風に
出てくるとは思っていなかった。多分、一日のうちでめまぐるしく
精神状態が変化し続けたせいなのだろう。抱いてやれば落ち着いたのかも
しれない。初めての二人だけの夜と言う事で、覚悟をしていたのかも
しれないし。そのせいで、気持ちが昂っていた事も考えられる。
 だが、昨日は駄目だ。二人とも疲れ過ぎていた。増山自身、
理子を抱いたら、半年間の鬱積を全てぶつけてしまいそうな予感がした。
きっと、朝まで彼女を抱いていただろう。走り出したら、止まらない。
 着替えて部屋を出ると、理子は食卓の上を整えていた。
 「あっ、おはようございます」
 理子は微かにはにかんで、優しい笑顔を浮かべていた。初めて二人で
迎える朝だ。増山には理子の笑顔が眩しかった。
 「よく寝れた?」
 「はい。バッチリ」
 増山は洗顔と歯磨きを終えて食卓に着く。目に鮮やかでカラフルだった。
どれも簡単にできるものだったが、バランスが整っていて見た目にも綺麗だ。
 分厚いトーストにマーガリンを塗って一口食べたら美味かった。
 「これって、もしかしてアレで作ったやつ?」
 アレとは、昨日買ったホームベイカリーである。粉物は苦手だが、
手作りパンを食べたいから欲しいと言われて買った。
 「そうなんです。イケますよね。前から評判の機種だったから、
きっと美味しいだろうと思ってはいましたけど」
 「なんか、期待以上だな、これは。こんなに美味いの食べた事ない」
 「良かった。これからは、これで、色々とバリエーションをつけて
作りますね。私、野菜の食パンが前から作りたかったんです。
人参とかほうれん草とか。これ、そういうのもできるから嬉しいです」
 増山も、そういうのを食べさせて貰えるのかと思うと、
ちょっとワクワクする。
 「先生、昨夜はごめんなさい。なんか、困らせちゃいましたよね、私・・・」
 「気にしないって。昨日は色々あり過ぎたから、心が乱れていたのさ。
こうやって、二人で一緒に朝を迎えられて、俺、幸せ」
 増山はそう言って笑った。
 「今日も教習所へ行くんだろう?」
 「はい。今日は学科だけなので、午前中で終わりますけどね」
 「車はどう?楽しい?」
 「勿論です。初めて動かした時には感動しました」
 「感動って、大袈裟だなぁ」
 「だって、本当の事だもん。・・・免許取ったら、NSXを
運転できるんですね。今からワクワクする」
 「えー?初心者があれを運転する気ぃ?」
 「だって、あれしか無いじゃないですか」
 「買ってあげるよ。君用のを」
 「いりません。不経済じゃないですか。一台あれば十分ですよ」
 「君さぁ。あれ、幾らすると思ってるの?」
 「高いのは知ってますよ。でも、大丈夫ですって。
教官からセンスいいって言われたし」
 「別に俺はいいけどさぁ。車が可哀そうじゃない?」
 「失礼な。『君が望むことなら何でもする』って、確か、
おっしゃってましたよねぇ?」
 「俺はね。でも、車が・・・」
 そう言うと、理子がぎろりと睨んだ。増山は苦笑する。
 「わかった、わかった。君が運転するまでに、
車にはよく言い聞かせておくよ」
 仕方ない。諦めるか。
 「じゃぁ、そろそろ行くよ」
 と、増山が言うと、理子はキッチンへ駆け込んで、
包みを持って出て来た。
 「はい。お弁当」
 増山は驚く。弁当の事なんて、全く頭に無かった。いつも母に
持たされていたが、ここへ来たから今日は学校で仕出しを
頼むつもりでいたのだ。
 「先生、お弁当箱を持って来なかったようだから、サンドイッチに
しました。今朝焼いたパンだから、美味しいと思いますよ。
コーヒーは自分で淹れて下さいね」
 「ありがとう。まさか、お弁当まで用意してくれてるとは思って
無かったよ。去年、君の手作り弁当を食べたいって言ったけど、
念願が叶ったわけだ」
 「念願だなんて、大袈裟ですね。たかだかサンドイッチなのに」
 そう言う理子の顔が赤い。そんな理子を抱きしめて、唇を重ね合わせた。
理子の柔らかい唇を啄ばむ。舐め、吸った。理子の吐息が増山を刺激する。
これ以上は駄目だと思い、唇を離した。本当はまだ離したくないのだが。
 増山は再び理子を抱きしめて、言った。
 「離れたくない。離したくない。ずっと、そばにいたいよ。
連れて歩きたいくらいだ」
 感情が溢れだしてくるのを感じる。昨夜まで我慢できたのに、
急に堰を切ったようだ。
 二人で初めて迎えた朝。恥じらいに満ちた可愛い笑顔の理子。
愛情のこもった朝食とお弁当。
 ずっと我慢してきた。この日の為にずっと。
 「先生・・・。駄々をこねないで。私は何処にも行かないから。
今日から先生が帰ってくる場所は、ここよ。私の許よ。ここへ
帰ってくれば、私は必ずいる。先生を待ってる。だから、真っすぐ
ここへ帰ってきて。そして私のそばに、ずっといて・・・」
 増山は理子を見つめた。理子は優しい顔で微笑んでいる。
 「昨夜と立場が逆転してしまったな。これからは毎日君と
一緒にいられるのに」
 そうだ。これからは、ずっと一緒だ。ずっとそばにいるんだ。
そう思うと少し落ち着いてきた。
 増山は再び理子に口づけると、部屋を後にし、職場へと向かうのだった。
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~ Comment ~

Re: 旅立ちを読む前にこちらを書いてます>OH林檎様 

OH林檎さん♪

お仕事、お疲れ様です。

あぁ、まだ抱けない・・・e-330

エッチな先生にしては、我慢強いですね(爆)

パン焼き機、使っています。
優れ物ですよ。
焼き立てパンが簡単にできます。でもって、美味しいです。
面倒くさいけど、美味しいパンが食べたい!って方には
是非、お勧めです。色んなパリエーション集なども
あって、いいですよぉ~^^

旅立ちを読む前にこちらを書いてます 

おはようございます。(今起きた。そして出勤…)
理子と先生の潔白な初夜にドキドキしました。
そして、パン焼き機が欲しくなりました(笑)
narinariさんは実際使っておられるのでしょうか?
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