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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第22章 卒業~第24章(最終章) 旅立ち


クロスステッチ 第1部第22章 卒業 第2回

2010.05.04  *Edit 

 「何だったの?」
 「うん。テスト、どうだったかって聞かれたの」
 「そっかぁ。直前だったもんな」
 「うん。ところで、耕介は?」
 理子は辺りを見回したが、耕介の姿が見えない。
 「理子が行った後、慌ててトイレへ行ったけど、そのままここへ
戻らずに、どっか行ったみたいだ」
 「あいつ、度胸が無いよな~。隠さなくったって、一目瞭然なのに」
 「そうそう。すぐ顔に出るから、みんなに遊ばれるんだよ」
 みんなの言葉に、理子は驚く。本当にそうなの?そんな目で枝本を
見たら、枝本は頷いた。それで、理子の方も顔を赤らめてしまった。
全然、知らなかった。と言うか、気付かなかった。緊張するとすぐに
赤面してどもるから、それだけなんだと思っていた。
 そうだったのか。じゃぁ私は、もしかしたら耕介にとって酷な事を
言ったりしたりした事も、あったかもしれない。いい奴だけに、申し訳
無かったという気持ちが湧いてきた。
 「何、しょげてるんだよ」
 枝本が理子の隣に座って、そう言った。
 「うん。なんか、耕介に悪かったかな、って思って」 
 「馬鹿だな。そんな気にすることじゃないよ。あいつは、本当は
最後まで自分の気持ちを理子には知られたく無かったんだ。気の合う、
仲の良い友達でいたかったのさ。どう逆立ちしたって、自分には
可能性が無いって最初から思ってたみたいだぜ。それなら、仲の良い
友達でいようって。俺は、そんなあいつを不憫に思ってさ。最後くらい、
ちゃんと気持ちを伝えたっていいんじゃないかと思ったんだ。なんせ、
人一倍の照れ屋だからな。皆の前で言ったのが、悪かったのかな。
でも、君に振られているのは、みんな同じだからさ。何もあいつに
限った事じゃない」
 枝本の話しを聞いて、理子は、哲郎を思っていた頃の自分を思い
出した。何だか、似てる。耕介の気持ちが良くわかるような気がした。
切ない話しだ。
 「ごめん、私、ちょっと耕介を探して来る」
 理子はそう言って、席を立った。
 大勢の人の中を、耕介の姿を求めて捜し歩いた。過去に同じクラス
だった男子や女子達から声が掛り、それに応えながらも、探し回った。
どこにいるのだろう?なかなか見つからない。
 「よぉ!理子」
  声の方に顔を向けると、哲郎だった。
 「あっ、哲郎」
 そばには、彼女がいた。
 「どうだった、受験」
 「うん。まだ結果待ちなの」
 「えっ?じゃぁ、国立?」
 「うん・・・」
 哲郎はびっくりしていた。
 「そっかぁ。理子は国立だったんだ。凄いなぁ。俺とは随分と
差が付いちゃったな」
 「哲郎は?どこの学校に決まったの?」
 「横浜の川本調理学校」
 そこは、有名なシェフがやっている調理学校だった。
 「へぇ、凄いじゃない。良かったね」
 「ああ。お陰さんでな」
 哲郎は満足そうな笑みを浮かべた。
 「和田さんは?」
 と、理子は彼女に振った。
 「私は服飾の専門学校に行く事になったの」
 哲郎には大学を受験しない事を勿体ないと言っていたらしいが、
自分も専門学校へ進むのか。
 「どこにあるの?」
 「横浜よ。だから、一緒に通えるの」
 と、嬉しそうな顔をした。そうなのか。もしかしたら、それが
目的で選んだのかもしれない。
 「こいつ、俺に大学を勧めながら、結局自分も専門学校を選んでやんの」
 「だってぇ・・・。哲郎と同じ大学へ通いたかったのに、
行かないって言うんだもん。そしたら、私、他に行きたい大学なんて
無いし。哲郎が食の道を選ぶなら、じゃぁ、私は服飾にしようって思ったわけ」
 二人の会話を聞いて、「ごちそう様」と言いたい気分になった。
 結局、哲郎は、こういう女の子が好みなんだ、とつくづく思った。
前の彼女も似たようなタイプだった。理子とはまるで違うタイプだ。
 「じゃぁ、ね。頑張ってね、二人とも」
理子はそう言って、その場を離れ、再び耕介を探し始めた。そして、
やっと見つけた。先生方の所にいたのだ。熊田先生とお喋りしていた。
理子が呼ぶと振り返り、理子の顔を見て赤くなった。
 「耕介、ちょっと、来て」
 理子が呼ぶと、渋々と寄って来た。
 「な、なんだよ・・・・」
 と、赤い顔してぶっきら棒に言う。理子は人の少ない所へ耕介を
連れて行ってから、言った。
 「耕介、ごめんね」
 「な、なんで、お前が謝るんだよ」
 「私さ。耕介の事、大好きだから。耕介と知り合えて、友達になれて、
すっごい良かったと思ってるんだ。すっごい、楽しかった。だけど、
全然、気付かなくて、ごめんね」
 そう言う理子を見て、耕介は眩しそうな顔をした。
 「ば、馬鹿っ、謝るなよ。俺、お、お前が・・・す、好きだ。
だ、だけど俺、こんなだからさ。お前の彼氏になりたいとか、
そんな事を思った事は無いんだ。お前と、・・・な、仲良く
で、できた事だけで、じゅ、十分なんだ。だ、だって、お前の言う通り、
俺も、すっごい楽しかったからな。ありがとな」
 耕介の顔は、茹でダコみたいに、真っ赤だった。本当に、いい奴だ。
 「これからもずっと、友達だから。いいよね?友達でいてくれるよね?」
 「ああ、・・・あ、当たり前だろ」
 「良かった。じゃぁ、私、行くね。また、後でね」
 理子はそう言って、その場を後にした。本当に、耕介には感謝の
気持ちで一杯だ。
 元の場所へ戻ると、ゆきが男子に囲まれて写真を撮られていた。
回りを見回すと、枝本も茂木も、女子に囲まれて、矢張り写真を撮って
いる。みんな、人気者だ。ふと、気になって壇上の方に目をやると、
その下で、増山がまだ多くの女生徒達に取り囲まれていた。表情が
いつもと違って柔らかい。
 「理子」
 と、声を掛けられたので振り向くと、岩崎だった。
 「ちょっと、いいかな」
 岩崎に誘われて、皆とは離れた、誰もいない一角へと連れて行かれた。
 「僕さ。色々と迷ったんだけど、今日が最後だし、一つの区切りを
付けておこうと思ってさ」
 岩崎が、白い頬を僅かに赤く染めながら言った。
 「僕、さ。理子の事が、好きなんだ・・・」
 岩崎の告白に、理子の胸は大きくドキリとした。
 「あっ、その、それだけだから。理子に彼氏がいる事はとっくに
知ってるしさ。前の席で、いつもそばに居て、仲良くお喋りできるのが、
凄く嬉しかった。理子が僕に、打ち解けてくれてるだけで、幸せ
だったんだ。何気ない触れ合いの中に、心温まるものを感じてさ。
ほのぼのした気持ちになれたって言うか。だから、卒業して、もう
そういう時間が持てなくなるのが、とても寂しくて・・・」
 そうか。そうだったのか。理子が感じていたのと同じ事を、岩崎も
感じていたのだ。理子の方こそ、岩崎とのふれあいで、どれだけ
ほのぼのとして癒された事か。
 「岩崎君、ありがとう・・・。私もね。岩崎君と一緒にいると、
ほのぼのした気持ちになったんだ。なんか、不思議だね、二人して
同じように感じてたなんて」
 「そうだったんだ。なんだか、余計に嬉しいな。あの、
良かったら、これからも友達でいてくれるかな。これまで
みたいには会えないだろうけど・・・」
 「うん。勿論」
 「僕、理子が東大を受験するって、もっと早くにわかってたら、
自分も受験したのにな。だって、同じ学校へ通いたかったから」
 それを聞いて、理子は微笑んだ。そうだったら、良かったのに、
と思った。岩崎がそばにいると、ホッとする。だが、理子は
これから結婚する。増山の妻となってから、大学へ通う。
そうなったら、そばにいるのが却ってつらくなるかもしれない・・・。
 「じゃぁ、戻ろうか」
 岩崎は頬を染めたままそう言うと、先に歩き出した。理子は
その後に続いた。戻ると、解放されたゆきが一人で立っていた。
 「ゆきちゃん!」 
 「理子ちゃーん」
 ゆきは、理子に抱きついてきた。
 「ねぇ、ねぇ。もう、男子も来ないみたいだし、ちょっとあっちで、
二人でお喋りしない?」
 と、ゆきが言うので、二人で体育館の隅へ行って、座り込んだ。
 「卒業式とは言え、凄かったねー。理子ちゃん、モテモテ」
 「そう言う、ゆきちゃんだって、モテモテだったじゃない」
 「そんな事ないよ。写真だけだもん。理子ちゃんは、
コクられたんでしょう?」
 ゆきの言葉に、理子は照れ笑いを浮かべて俯いた。
 「理子ちゃんは、可愛いもん。モテて当然だよ」
 「何言ってるの。私なんかより、ゆきちゃんの方がずっと可愛いのに」
 理子は本当にそう思っている。つぶらな二重の瞳が愛らしい。
薄い栗色の柔らかい髪、細くて壊れそうな身体。おきゃんで可愛い笑顔。
森の妖精のようだ。
 「あたしなんて、駄目。結局ね。小泉君とは、別れる事になったの・・・」
 ゆきの言葉に、愕然とする。
 「な、なんで?もう、受験も終わったじゃない。合格発表はまだだけど、
小泉君なら多分合格してるだろうし、ゆきちゃんだって、頑張って
合格したじゃない。なのに、どうして?」
 文化祭の時には、二人で回っていた。だから、受験が終われば、
また再スタートするだろうと、理子は思っていたのに。
 「多分・・・、冷めちゃったんじゃないのかな」
 「そんなぁ。酷いじゃない、それって」
 「でもね。あたしもね。小泉君から別れようって言われた時、
そんなにショックじゃなかったの。勿論、全然ショックじゃなかった
わけじゃないよ。でも、やっぱりね、とか、そんな風に思ったの。
あたし、我儘だから、愛想を尽かされても当たり前だって、
去年の夏ごろから思ってたんだ」
 「ゆきちゃん。ごめんね、力になれなくて・・・」
 理子の目から涙が溢れて来た。
 「なんで、理子ちゃんが泣くの・・・」
 「だって。親友が悲しい思いをしてたのに、私ったら・・・」
 「理子ちゃんは、いっつもあたしの事を思ってくれてたよ。いつも、
あたしの為に気を使ってくれてたじゃない。どこへ遊びに行くのだって、
いっつもあたしが喜ぶ所にしてくれたし。あたし、気付いたの。
小泉君とのデートより、理子ちゃんと遊びに行った時の方が、
ずっと楽しかったって」
 「ゆきちゃん・・・」
 胸が詰まって、何も言えない。
 「理子ちゃんだって、辛い思いしてたでしょ。受験勉強と恋愛の
狭間で頑張ってたじゃない。だけど、もう、それも悩む必要無く
なったんでしょ?もう、受験は終わったんだもん。彼氏はどうしてる?
元気?受験が終わって、喜んでるんじゃない?」
 ゆきの言葉に、理子の目から更に涙が溢れて来た。感情が
昂りだしているのを感じた。
 「どうしたの?理子ちゃん。何か、あったの?」
 「ううん・・・。私ね。ずっと、ゆきちゃんに言いたかったんだ。
ずっと、胸の内に秘めたままでいるのが辛かった。どんなに、
全部吐き出してしまいたかったか・・・」
 「彼氏の事なの?」
 ゆきが優しく訊いた。
 理子は頷くと、ゆきに左手のブレスレットを見せた。普段は制服の
袖に隠れて見えない。
 「この間のクリスマスの時に、彼から貰ったの」
 「わぁ~。可愛くて、素敵・・・。これって、ダイヤ?凄いね。
前のペンダントと言い。Mが彼のイニシャルなんだ」
 「そうなの。Mがイニシャルで、実は、ゆきちゃんも知っている人なの」
 「えっ?」
 ゆきは、訳がわからないといった顔をした。
 「だ、だって、理子ちゃん。相手は大人って言ってたよね?そうじゃ無かったの?」
 「大人だよ。でもって、公務員って、言った・・・」
 「そ、それって・・・・。えっ?だって・・・。確か、年が22?23?・・・え、ええー?」
 ゆきは混乱し、困惑し、そして恐る恐るといった感じで言った。
 「ま、ま、まさか、・・・先生?」
 ゆきが、小声でそう言った。その言葉に、理子は頷いた。
 ゆきが知っている大人で、公務員で22,3歳の男性と言ったら、一人しかいない。
 「ま、増山先生なの?」
 「そうなの・・・」
 理子は、はっきりと答えた。
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~ Comment ~

Re: そうかぁ>OH林檎様 

OH林檎さん♪

そうですね。愛の告白は、定番ですよね。

真実の告白は、二人にとっては、やっとって感じでしょうか。
だけど、誰にとってもビックリ仰天の告白なんですよね。

壇上で、全員の前で「僕たち結婚します」なんてコクったら、
どうなるんでしょう?物凄い事になるかなぁ・・・?
しませんけれども、させてみたい気持ちもあったんですよ~(^_^;)

そうかぁ 

卒業=告白なんですよねぇ。(しみじみ…)
愛の告白や真実の告白で驚くばかりの理子や友達達。
お察しします。
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