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小説・目覚めのセレナーデ
第四章・春は燦めき(最終章)


目覚めのセレナーデ 4-08

2015.11.18  *Edit 


 いつもと変わらない神永との再会に、とてもはしゃいで喜んでいた実花だったが、
その週末、浅葱家にやってきた来客の話しに、目を剥いて驚愕し、頬がヒクヒクと
痙攣していた。その様子は、どう見ても負の感情だ。
 来客者は真田だ。
 芹歌は神永が来た翌日、大学の真田のレッスン室で神永との事の顛末を話した。
レッスン室を訪れた時、既に来ていた真田の顔を見て、芹歌は抱きつかずには
いられなくて、一目散に駆け寄って抱きついたのだった。
「どうした?芹歌?」
 真田は戸惑いながらも、芹歌を抱きしめた。
「昨日、やっと、神永君がレッスンに来て……、それで、話したの……」
「そうか……」
 真田はそれで全てがわかったように、芹歌の頭を優しく撫でた。
「私、彼が好きだった。彼には凄く助けて貰った。だから、絶対に離れたくない、
ずっと私とお母さんと一緒にいたいって言われた時、心が揺れた……。私さえ、
彼を選べば全てが丸く収まるのかもって。だって、生徒達に対しても……申し訳
無さで一杯だから……」
 涙ぐみながら話す芹歌の頭を撫でながら、真田は「うん」と言うだけだ。
「ごめんなさい……」
「いいよ、謝らなくても。気持ちはわかるから」
「本当に?」
「ああ。だって、芹歌はこうして今、俺に抱きついてるじゃないか。それがお前の
答えなんだろう?」
 芹歌は頷いた。
「あなたの顔が浮かんできて、胸が苦しくなるほど、あなたが好きって思った。
神永君を選んだら、お母さんはきっと喜ぶと思う。でも、私はお母さんの為に自分の
気持ちを犠牲にしたくない。あなたと離れたくない。ずっと一緒にいたい。誰よりも、
何よりも、あなたを愛してるの……」
「ああ……。わかってる。全部わかってるよ。だけど、そうやって言ってくれるのが、
凄く嬉しい。なぁ、芹歌。そろそろ話そうか。親達に。あまり遅くなっても大変だからな。
コンクール中に余計な雑音を入れたくは無いが、さっさと済ませてしまった方が、
却って楽になるよな。渡欧の準備も始めないとならないし」
 芹歌は腕を緩めて真田の顔を見た。その顔には優しい笑みが浮かんでいる。
「私……、怖い」
「どうして」
「だって……。きっと反対される。どちらにも……」
「それで?」
「それでって、幸也さんは平気なの?」
「平気だな。反対されても『はいそうですか』と引き下がるつもりは無いからな。
覚悟はできてる。どんなに反対されても、押し通す。だから怖がる必要は無い」
 強い瞳が優しく微笑んで、俺を信じろと言っているようだ。芹歌は心が強くなって
いくのを感じた。
 そうしてまず、真田は芹歌を連れて自分の両親と面会し、結婚と渡欧を報告した。
 それはまさに、報告だった。了解を得るなんて毛頭も考えていないようだ。
「なんですって?あなた、何言ってるの?本気でそんな寝ぼけた事を言ってるわけ?」
 麻貴江は目を吊り上げて、芹歌を睨みつけて来た。思わず竦んだ芹歌の肩を真田が
抱きしめる。
「母さん、前にも言った筈だよ。俺のパートナーは芹歌しかいないって。それは、
音楽だけの事じゃなく、人生のパートナーでも同じなんだ。芹歌がいなかったら、
俺の未来は無いと思って欲しい。だから、俺の未来を案じてくれてるなら、受け入れて
欲しい。まぁ、母さんや父さんが反対した所で、俺達は子どもじゃないんだから
一緒になるけどね。親を無視するのも申し訳無いと思うから、こうして話を通してるんだ。
あくまでも反対を押し通すなら、申し訳無いけど縁を切ってもいいって思ってる」
「幸也っ、何言ってるのよ。親に対して何なの?」
 さすがの芹歌も、麻貴江の言葉に共感する。傲慢な人だけど、親に対してまで
ここまで傲慢になれるとは、呆れるほどだ。
「あなたっ、ちょっと、何とか言ってよ!」
 麻貴江は夫に助けを求めた。父親の真田貴幸は、ずっと黙って息子の言い分を
聞いていたが、妻に求められて口を開いた。
「僕は別にいいと思うよ。幸也の口ぶりはちょっと頂けないが、芹歌ちゃんと
一緒になる事に、何の文句もない。良いカップルだよ。昔からそう思ってたけどね。
色々あって、長い事離れてたが、こうなるのが本来の姿じゃないのかね。二人とも
充実した顔をしている。幸也の音楽にも良い影響が出る事、間違いなしだろう。
君が怒る理由がわからないね」
 麻貴江は夫の言葉に、悔しそうな顔をした。
「母さんが、どうしてそんなにいきり立つのか、俺には解らないな。芹歌のお父さんが
亡くなった時、俺に代わって葬儀に行ってくれたんだろう?その事に、俺も芹歌も、
とても感謝してるんだ。俺がコンクールで優勝した時だって、芹歌と一緒に喜んで
くれたじゃないか。芹歌と俺の今の立場が違い過ぎるって言うのなら、芹歌は
山際国際コンクールで優勝する筈だから、大した問題でもなくなる」
 麻貴江は呆れたような顔をして、溜息をついた。
「全く、あなたには何を言っても通じないのかしらね?こうと思ったら絶対に
引かないんだから。だけど、芹歌ちゃんが優勝するなんて、わからない事でしょうに」
「いや、わかってる。絶対に優勝する。俺がさせる」
 凄い自信だ。自分の事ならいざ知らず、ここまでの自信家は早々居ないだろう。
「芹歌ちゃんは、どうなの?コンクール、優勝できると思ってるの?」
 鋭い目つきで問いかけられた。
 ずっと竦みっぱなしの芹歌だったが、真田の思いに応える為にもと思い、
きっぱりと「優勝します」と答えたのだった。
「ハァっ、本気で思ってるなら、驚きだわ。幸也の自信があなたにも伝染ったのかしらね」
「小母さま。私は幸也さんほどの自信は持ち合わせていませんけど、幸也さんを
信じてます。だから幸也さんの気持ちに応えたいんです。絶対に優勝しますから。
そして、一緒にヨーロッパへ行きます。ずっと幸也さんと一緒に助け合っていきます」
 まるで決意発表みたいだな、と思いながらも、きっぱり言えた自分が嬉しかった。
芹歌の肩を抱く真田の手にも力が入った。
「そう言う訳だから。父さんには感謝します。俺達を信じてくれて、ありがとう」
 真田の言葉に、麻貴江が焦りを見せた。
「ちょっと。何なのよ、私を無視して。それに、芹歌ちゃんのお母さんはどうするの?
あちらだって、きっと反対なさるわよ?足もお悪いし、二人でヨーロッパなんて
聞いたら失神されるんじゃないかしら」
「母さん。人の心配はしなくていいよ。向こうのお母さんには、これから話すけど、
まぁ、反対されるだろうね。だけど、説得する。場合によっては、ヨーロッパへ
一緒に行って貰おうかと思ってる。この件に関しても、母さんが反対しても無駄だから。
無駄な事はしない方が身の為だと思うよ」
 麻貴江は口を尖らせるようにして顔を染めたが、父親の貴幸は大笑いした。
「麻貴江さん。もういい加減にしたら。どうせ君は幸也には敵わないんだから。
それなら、喜んでやった方が、幸也に感謝されるし、嫌われずに済むと言うものだ」
「そうだよ、母さん。俺だって、何も好き好んで母さんと縁を切りたいなんて
思ってやしないんだ。本当は、母さんが喜んでくれるのが何よりなんだよ。
だから、わかって貰えないかな……」
 真田が、縋りつくような懇願の表情を麻貴江に向けた。その顔を見た麻貴江は
微かに頬を染めて、「全く、もう」と言って、諦めたような笑みを浮かべた。
「ほんとに、幸也には敵わないわね……。わかったわ。その代り、二人で幸せにならないと
承知しないわよ?芹歌ちゃん、幸也を不幸にしたら一生、あなたを恨みますからね」
(わぉ、怖いっ)
 そう思いつつ、母親として息子の身を案じるのは当然だとも思う。それだけ
愛していると言う事だ。
「小母さま、ありがとうございます。絶対、幸せになります。幸也さんを不幸に
なんてしませんし、万が一でもそんな事になったなら、小母さまに恨まれても
文句は言いません」
「あはははっ、芹歌ちゃんも言うねぇ。それだけの覚悟なら、大丈夫だろう」
 高々と笑う貴幸の朗らかさに、その場の空気が明るくなった。
「まずは、第一関門突破だな」
 真田の言葉に芹歌は頷いた。


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~ Comment ~

Re: 麻貴江さん・・>千菊丸さま 

千菊丸さん♪

前々から怖そうな人でしたが……。
やっぱり息子の事となると、目の色が変わるんでしょうね。
でもこの方、結局のところ幸也さんには逆らえないので、
まだ良い方ですよ。
それに幸也さん、海外の方が多いし。

お気の毒なのは、弟さんのお嫁さんかもしれません(^_^;)

麻貴江さん・・ 

怖っ!

大事な息子を芹歌に奪われると思ったら、心穏やかではない彼女の心情が理解できますが、怖すぎる。
こういう人が姑になると、大変だろうなぁ。
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