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小説・目覚めのセレナーデ
第三章・冬は峻烈


目覚めのセレナーデ 3-03

2015.09.20  *Edit 


 真田は水曜日の昼前に退院した。継続して薬を飲み続け、定期的に通院するよう
医者から申し渡されたそうだ。
 結局芹歌は、あれから一度も見舞いには行かなかった。土日はリサイタルの仕事が
あったからだが、それ以後は行こうと思えば行けた。だが、何となく行きにくかった。
迷っていたら真田からメールが来た。水曜日に退院するから木曜日のレッスンで逢える。
だから、見舞いには来なくて良いと。コンサートまで日も少ないから、その分、練習
していて欲しいとあって、ここは素直に従う事にした。
 日曜日のリサイタルの時、神永が来ていた。チケットがまだ残っていたらしく買えたと
喜んでいた。
「芹歌さんが仕事で伴奏している所、全然知らないから、嬉しいです」
 そう言って喜んでいる姿が可愛らしかった。終了後、ハネるまで待っていて、一緒に
食事をしてから帰った。家まで送ってきて、別れ際に抱きしめられてキスをされた。
あれから、特にデートらしいデートもしていないせいか、やけに濃厚だった。彼は
レッスンで来ている時は、そういう事は一切しない。だが、交わす言葉の端々には
思いがこもっていた。
「神永君ったら。誰かに見られたらどうするのよ」
 額を付けたまま、神永は口の端を上げて微笑む。
「大丈夫ですよ。遅い時間だし、誰も見てません。暗いし、見えないですよ」
 そう言って、強く抱きしめる。
「忙しいのは分かってるけど、ちゃんとデートしたいな、僕……」
「そうね……」
「クリスマスは……、やっぱり無理かな」
 学内コンサートは天皇誕生日の日だ。クリスマスイヴとクリスマスの晩は、
ディナーショーの仕事が入っている。
「男の癖に、そういうの拘るのね」
「いけませんか?男も女も関係ないですよ。それに世間が楽しそうにしてる中、
ずっと一人だったから尚更なんです。やっと僕にもステキな人ができたって言うのに」
 可愛い事を言うな、と思う。芹歌にとっては何もかもが初めてで新鮮だった。
「次の日曜日は、空いてないですか?」
「うーん……、一応、空いてはいるけれど……」
「じゃぁ、デートしましょう。ね?」
 体が離れて、顔を覗きこんで来た。薄暗闇の中で白い顔が浮かんで見える。
吐息が白かった。顔が近くて胸がドキドキする。このままOKしたい所だが、
芹歌は躊躇った。学内コンサートまで時間がない。木曜日の練習だけだったら、
あと2回しかない。とても足りない。だが、断りたくない気持ちもある。
折角こうやって誘ってくれてるのに。芹歌だって、デートしたい気持ちはあるのだ。
「芹歌さん。頷いて下さい」
 優しく言われて、芹歌は決断した。コクリと頷く。
「やったー!約束ですよ?キャンセルしちゃ駄目ですからね。ドタキャンなんかしたら、
僕、一生恨みますから」
 ぷぷぷと笑う。
「やぁね、神永君。大袈裟」
「いえいえ。本気ですから。大体、クリスマスのデートが出来ないんですから、
このくらい当然ですよ」
「そっか。そうだよね。うんうん」
「どこか、行きたい所、ありますか?」
 夜の帳(とばり)の中で、瞳が輝いて見えた。
「うーん……。分からない」
「え?何ですか、分からないって。行きたい所、無いんですか?」
「ごめんなさい。思い浮かばないの。そういうの考えた事もないし。だから、神永君の
行きたい所でいいから。面白そうな所に、連れてって?」
 神永は嬉しそうにニッコリした。
「分かりました。じゃぁ、僕が考えて決めておきます。そのかわり、何処へ連れて
行かれても文句言わないで下さいよ?」
「そうね。なるべくそうする」
「なんですか、なるべくって……」
 不服そうにブツブツ言ってる様が見てて面白かった。異性とこんな風にやりとり
した事が無い。こいうのって楽しいんだな、と新しい発見をしたように感じる。
過去に何度か交際を申し込まれた事はあるが、一度もまともに付き合った事は無かった。
それどころじゃ無かったからだ。恋愛に興味も無かった。
「じゃぁ、また水曜日に来ます」
 軽く口づけをして、「おやすみなさい」と去って行った。その姿を見送っていると、
少し離れた所で妙な気配を感じた。周囲を見渡すが特に変わった所はない。
誰かがいるようでも無かった。神永が去った事で急に寒くなってきた。一緒にいる時は
感じなかったのに。芹歌は急いで家の中へ入った。

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