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小説・目覚めのセレナーデ
第二章・秋は戯れ


目覚めのセレナーデ 2-15

2015.08.23  *Edit 


 送って行くと言う純哉を断って、芹歌は一人でタクシーに乗って帰って行った。
「さて。久美ちゃんはどうする?」
 久美子は純哉を睨みつけた。
「決まってるじゃない。私だけ、のけ者にして。今夜は離さないから」
「仕方ないなぁ……」
 純哉は困ったような顔をしたが、久美子を自分の部屋へ連れ帰った。
 純哉は都内でマンションの1室を借りている。勿論、防音完備だ。レッスン専用の
部屋があり、そこでフルート教室も開いている。実家が群馬なので、大学へ入って以来
ここでずっと一人で住んでいた。
「いつも綺麗にしてるわねー」
 久美子は部屋を見まわした。男の一人暮らしとは思えない程、きちんと片付いていて
小奇麗だ。
「まぁ、基本的に綺麗好きだから、散らかさないのでね」
「ねぇ。婚約者の人はどうなの?やっぱり綺麗好きなのかな」
 久美子はソファに腰かけた。純哉は対面キッチンでワインとツマミを用意している。
「う~ん、どうだろうねぇ?綺麗好きじゃない女の人って、いるの?」
「やだ、純哉くん。女だって、だらしのない人、いるわよ?」
「そっか。あ、……そうかも。僕の妹は、どちらかと言えばそっち系かも」
 思い出したように言う様が、妙におどけてて面白い。
「妹さんって、バレエやってるんだっけ?」
「ああ、そうね。やってるけど、もう全然遊びな感じ。彼女、あとクラリネットを
吹くんだよ。市民ブラバンに参加してる。多彩な妹だ」
 話す様子がにこやかで楽しそうだ。自慢の妹なのかもしれない。
「じゃぁ、婚約者さんは?どんな人?」
「そうだねぇ……。よく分からないかなぁ」
「何それ。自分の婚約者なのに?とぼけるつもり?」
 久美子が少し怒り調子で言うと、「ごめん、ごめん」と焦って否定してきた。
「とぼけてないよ、ホントの事だからさ。僕、本当に自分の婚約者の事、よく知らないの」
(え?マジで?)
「どうして?じゃぁ、何で婚約したの?」
「うーん……、ま、平たく言えば、親の言いつけ?」
「はぁ?」
 この人は何を言ってるんだと思う。
「えー、なんか、全然理解できないんだけど……。親の言いつけのまま婚約したって事なの?
自分の意思じゃなくて?」
「そうだね。そういう事かな」
 何なんだ。自分の事なのに、まるで他人事のような言いぶりだ。しかも、婚約して
いながら、相手の事をよく知らないなんて。
「ねぇ。自分の結婚でしょう?一生を共にする人なのに、よく知らないで婚約しちゃって、
いいわけ?後で失敗したって後悔しても遅いよ?」
「あははは。そうだねー。できれば、後悔したくはないかなー」
 何なんだ。能天気もここまで来たら、お終いじゃなかろうか。
「昔の人はさぁ。親や周囲の勧めるままに、相手の顔も見た事無いのに結婚してたよね。
それでもちゃんと家庭は成り立ってたじゃない。そこにはきっと、先人の知恵が
生かされてたんだよ。その人に合ってるって、経験豊富な人達が選んだんだから、
間違いは少ないんじゃないのかな。勿論、間違ってる場合もあるだろうけどね、人間だから」
 この、時代の最先端を行っているような能天気野郎から、こんな話しを聞かされるとは
思ってもいなかったから、久美子は不意打ちにでもあったように驚いた。
「それは……昔は今みたいな自由恋愛の時代じゃなかったし、出逢いだって殆ど
無かったからじゃないの?」
「それも確かに一理あるとは思うけど、今みたいな自由恋愛の時代だからこそ、
結婚相手選びは別なんじゃないのかなって思うんだよね。だって、恋愛と結婚は別でしょ。
結婚は家庭を築いて守るものだよ。恋愛は、言ってみれば遊びに近い」
 なるほど。それもそうなのかもしれないと、少しだけ納得した。恋愛が遊びに近いと
言うのは同感だと思う。いつかは冷める感情だ。冷めたら最後、顔も見たくないような
状況になる場合も少なくない。そういう相手とウッカリ結婚してしまっていたら、
後が辛いだろう。
「久美ちゃんも恋愛気質だから、僕の言う事、わかるでしょ?最初から恋愛感情抜きで、
配偶者としての感情だけで接すればいい相手なら、冷めるって事も早々無いんじゃ
ないのかな。だって、最初から熱く無いんだから。互いに、家庭内での役割を勤めるだけ。
男は稼ぎ、女は家庭を守る。あ、共働きを否定しているわけじゃないからね。
その家庭家庭で、事情は様々だろうから、その家庭に応じてって事。僕の場合は、
子どもを産んで家庭を守ってくれる人。それに相応しい女性を親が選んでくれたんで
従ったんだよ」
 なるほど。ある面、合理的な考えのように思えた。だが人間は機械ではない。
そんなに純哉が思うように上手くいくものだろうか。
「じゃぁさ、純哉くん。純哉くんの恋愛遊戯は、結婚しても続くって事?」
「ははは。当たり前じゃない。結婚と恋愛は別。結婚したからって、趣味や遊びを
止めなきゃならないなんてナンセンスでしょ」
「でも、奥さんが嫌がったら?浮気は止めてって」
「浮気じゃないよ。遊び。女遊びも芸のウチ。両親は理解してくれてる。だから、
そういうのが平気な女性を選んでくれたんだよ。昔堅気の理解がある女性。
ま、唯一の条件は、外に子どもを作らない事。万一出来てしまっても、お金は払っても
認知はしない事。それだけだよ。あとは自由。音楽家は自由でないとね」
 はぁ~っと、思わず大きな溜息がこぼれた。

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