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小説・目覚めのセレナーデ
第二章・秋は戯れ


目覚めのセレナーデ 2-14

2015.08.21  *Edit 


「芹歌ちゃんが辞めるくらいだから、相当だったんじゃないの?芹歌ちゃん、
結構我慢強い方だもんね」
「あれ?先輩、分かるんですか?私の事……」
 顔がニンマリとした。
「分かるよ、それくらい。一緒に組んでみれば特にね。それに、あの幸也の
専属だったんだからさ。我慢強くなきゃ、無理でしょう」
「あ、それは、私も同感。2人のレッスンを見てて、私じゃ絶対無理って昔、思ったもの」
「そうですね。それは言えてる。でも……」
 芹歌は少し遠くを見るような目をした。
「でも、何かな」
「何て言うのかな。あんまり我慢した気がしないって言うか。随分とやり合ったけど、
ついていく事しか頭に無かったから」
「ふぅ~ん。だけど、過去形だねぇ。これからはどうなの?また一緒に組むにあたって」
「分かりません。まだ始まったばかりだし。先輩は、学内コンサートの後も一緒に
組んで欲しいって言ってくれてるけど、実際問題、どうなるのかは」
「芹歌ちゃんは、望んで無いの?」
 純哉の目が珍しく真面目に見える。
「んー、望んで無い、とは言えませんけど、望んでるのかって問われたら、それも
ちょっと分からないって言うか……」
 煮え切らない返事だ。
「あたしには理解できないな。芹歌、もっと素直になるべきよ」
「うんうん、僕も同感だな」
 芹歌は2人の顔を交互に見たあと、純哉の方へ視線を向けた。
「片倉先輩……。真田さんは、これからどうするんでしょう?」
「え?」
「何か、聞いてますか?」
「……、あ、いや……」
 純哉は困惑げに芹歌を見た。
「聞いて無い、んですね?」
「うん。聞いて無い……」
「心配になりませんか?」
 純哉はフゥと小さく息を吐いた。
「心配と言えば心配だけど、でも、あいつ自身の問題だからね。自分で解決する
問題さ。勿論、相談されれば受けるけど、どうなんだろうなぁ。他人からあれこれ
言われるのが嫌いなヤツだし」
「ねぇ、どういう事?一体、何の話をしてるの?」
 久美子には、二人の会話の意図がさっぱり分からない。
 芹歌は口許に薄く笑みを浮かべた。
「真田さん、帰国したけど、今後のスケジュール、あまり入って無いみたいだから」
「ええ?そうなの?」
 久美子は驚いた。帰国早々、リサイタルが開かれたし、引っ張りだこなのかと思っていた。
「演奏会は、学内コンサート以外、予定が無いみたいなのよね」
「うそっ……。信じられない」
 唖然とした。
「多分……。暫く休養するんじゃないのかな」
 驚いて純哉を見る。
「休養って……」
「なんかさ。向こうで色々あったんじゃないのかな。言わないけどね。精神的に
やられてる感じがする。リハビリの為に戻って来たんだよ、きっと」
 純哉の言葉に、芹歌が口許を固くした。
「この間のリサイタル、素晴らしかったのに。全然、そんな事、感じられないのに」
 純哉は久美子の言葉に微かに笑むと、「君は分かるよね?」と芹歌に言った。
芹歌はただ黙ったまま薄く笑った。
 一体どういう事なのだろう。益々わからなくなった。
「だからさ。芹歌ちゃん。あいつの傍にいてやって欲しいんだ」
「それは……。真田さんのリハビリに付き合えって事ですか?」
 なんだか2人とも、いつもの2人と違う。陽気で能天気な筈の純哉は、凄く真面目で
理知的だし、勝気な癖にどこか子どもっぽさが残る芹歌は、まるで先が見通せるような
透徹した瞳で落ち着いている。
 しかも2人とも、私の存在をまるで忘れているような雰囲気だ。
「……嫌かい?」
「……わかりません」
 純哉はここで溜息をついた。
「片倉さん……。あの発表会の日、母が言ってましたよね。私を使い捨てにしたって。
何て失礼な事を言うんだろうって、あの時は憤ったけど……」
 え?何?あのお母さん、そんな酷い事を言ったの?
「やっぱりそうだって、思うようになった?」
「いえ。今でもそうは思いません。ただ……、今の状況から考えると、リハビリに
付き合わされた後で、それこそ使い捨てにされるんじゃないのかなって」
(なんなの、リハビリって。さっぱり分からない)
 久美子は話しの内容に混乱するばかりだった。
「だから、今後の事は分からないって事なのかな?」
「はい」
 2人とも淡々としている。
「ひとつだけ、芹歌ちゃんに訊きたいんだけど」
「はい。何でしょう?」
「幸也と……須山さんとか、他の女の人達との事、知ってる?」
(え?何それ。他の女の人達?)
「はい」
「気にしてる?」
「いいえ。いつもの事じゃないですか」
 芹歌は笑った。その笑顔は、全く気にしていないように見える。
「ねぇ、本当にどういう事なの?」
 久美子は我慢できなくなった。
「須山って、誰?他の女の人達って?もしかして、また、なの?」
 純哉は久美子の方を見て、笑顔になった。
「そう。またなの。まぁ、僕も人の事は言えないけどねー」
 やっと、愛くるしい、いつもの笑顔が戻った。
「じゃぁ、君の伴奏の仕事にも、文句言い出してるとか……」
「いえ、さすがにそれはありません。学生の時とは訳が違います」
「だよねー。少しだけホッとしたかな」
「ねぇ、どういう事?」
「うん……、まぁね。ほら、どんどん食べようよ。美味しいよ」
 純哉はもう何も無かったかのように、どうでも良いような事を喋りながら、料理を
平らげていった。芹歌も同じだ。
 久美子は何だか自分だけが取り残されたような気になった。


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