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小説・目覚めのセレナーデ
第二章・秋は戯れ


目覚めのセレナーデ 2-09

2015.08.12  *Edit 


 学内のクリスマスコンサートに参加する依頼を受けていた事を思い出した。
返事は保留にしてある。この瞬間に、芹歌と共に参加しようと決めた。
 自分は何の為に帰ってきたのだ。それを忘れる所だった。
 終了後、生徒達と挨拶を交わしている芹歌を横目で見ながら、渡良瀬に話すと当然ながら
大賛成してくれた。
 渡良瀬が芹歌の将来を心配している事は知っている。担当教授だったんだし、今でも
可愛い教え子だ。当然の感情だろう。だからこそ、真田の日本公演の時にチケットを
手配してくれていたのだ。真田との縁を途切れさせないようにと。
「だけど、お母さんの方、大丈夫かしら。反対しなきゃいいんだけれど」
 心配げに芹歌のそばにいる母親の方へ視線を飛ばした。芹歌の母はと言えば、芹歌の横で
にこやかに娘と共に挨拶している。
「あのお母さんのあんな姿、あの事故以来、私初めて見るわ。だから、多分大丈夫なんじゃ
ないかとは思うけど……」
「そう言えば、あのお母さんの車椅子を押してた若い男子生徒がいましたね」
 気になったので話を振ってみた。
「ああ、神永君ね。彼、いい演奏してたわね。リハの時より良くてビックリしたわ」
「そうだったんですか」
「なんか、とてもお母さんと親しそうですよね。仲良し感みたいなのを感じたな、僕」
 片倉の指摘に、渡良瀬は頷いた。
「そうよね。私もそれは同感よ。なんでも、彼、ピアノのレッスンの後、芹歌ちゃんの家で
夕飯を食べて帰ってるんだそうよ」
「ええ?」
 真田と片倉は互いの顔を見合わせた。
「それって、他の生徒さんも、そういう事があるとか?」
「純ちゃんはどう?」
「え?僕は無いですよ。生徒を夕飯に、なんて。大体、一人暮らしですから、そんな事を
したら大問題になっちゃう」
「そうよね。私の所では、たまにあるけど、でもそうねぇ。芹歌ちゃんくらいの年代の
時には、無かったわね。ましてや、自分と幾つも違わない若い男性だもの」
「彼は、幾つなんですか?先生ご存じですか?」
 渡良瀬は「えーとねぇ……」と考える風に首を傾げて、「確か、芹歌ちゃんより3つ
下とか聞いた気が。だから……25くらいかしら?」
「おおっと~。もっと若いのかと思った~」
 片倉が小さく口笛を吹く。
「じゃぁ、社会人ですね?」
 真田は確認するように問うた。
「ええ。この春に転職して、定期的に休みが取れるようになったからって事で、
芹歌ちゃんの教室へ通い出したんですって。何でも、彼女が伴奏を務める合唱団の
団員さんで、それがご縁らしいわ」
 真田は渡良瀬の言った“ご縁”と言う言葉が気に入らなかった。微かに顔が歪む。
それを察したように片倉が話題を進めた。
「それで、どうして食事していくようになったんだろう?」
「そうねぇ。何でも、お母さんの方で誘ってきたって」
(なんだ、それは)
 全く不可解な話だ。更に顔が歪んで来る。見かねたように片倉が軽く肘を当てて来た。
こいつも全く敏感な男だ。すぐに真田の感情を悟る。
「芹歌ちゃんも、びっくりしてたわ。でも、そのお陰でお母さん、大分良い方向に
変わりつつあるらしくて。芹歌ちゃんも大分仕事がしやすくなってきたって言ってたわよ」
「それは良かったじゃないですか。それなら、幸也の提案もスンナリ行くんじゃないの?」
 大丈夫と言うように、片倉は笑顔で頷いている。彼のように楽天的に生きられたらなと、
改めて真田は思った。そうしたら、もっと人生を楽しめる気がする。
 一通りの挨拶が済んだ所を見計らって、三人は浅葱親子の元へ移動した。自分達の方へ
やってくる三人の姿を見て、母親の方はにこやかなままだが芹歌の方は俄かに顔を固くした。


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