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小説・月と星の間<完>
11.天使(最終章)


月と星の間 11.天使 最終回

2015.03.20  *Edit 

「墓参りついでにさ。最後の墓参り。母の、ね……。でもって、阿部の人間がさ。
叔母を中心として、君に逢いたいって言って来たんだ。あの人達にとってみれば、
今度の事は寝耳に水だからね。メディアで大々的に個展の事が紹介されただろ?
その時に、妻がって言ってるからさ。いつの間に?って仰天したらしい。
連れて来て紹介しろって。基本的には喜びムードだから、心配いらないよ。
君に逢えばきっと喜んでくれると思う」
 元々疎遠だった阿部の実家。母親と二人で東京に住んでいた時も
疎遠だったと言う。それなのに、里美との件を知った時、大慌てで
上京してきた叔母。里美が死んで、生きる屍のようになってしまった晴明に、
何の手も差し伸べてはくれなかった親戚達。それでも、こうして有名になれば、
態度がガラリと変わる。これでまた晴明の身に良くない事が降りかかりでもすれば、
掌を返すのだろう。
「あなたは、いいの?それで……」
 蕗子は訊いた。この人のこれまでの孤独な人生を思うと、蕗子自身も
彼の親戚達に対して複雑な思いを抱くのだった。
「僕はさ。あの人達にとって、最初から異邦人で、僕にとっても、あの人達は
異邦人だって思ってた。それでもさ。親戚には変わりない。あの人達のお陰で、
母も僕も暮らしに困る事無く生きることができたんだし。それに、何より
母のお墓があるから。母に君を紹介したいんだ。親戚はそのついでだよ。
でもきっと、みんな喜んでくれる筈。今度こそ、僕は本当の幸せを掴んだんだから。
あの絵の実物に逢えるって皆、胸を躍らせて待ってるよ」
「あら……」
 そんな風に言われて、蕗子は頬を染めた。
「君の事は僕が守る。誰にも何も言わせない。君は僕の大事な天使なんだ。
天使が傷ついたら、僕も傷つく。だから、大丈夫。心配いらないよ」
「わかった。晴明さんがそれでいいなら、私もそれでいいから。
あなたの事を信じてる。だから……」
 蕗子は微笑んだ。
「ありがとう……。あとね、蘇芳からメールがきた」
「えっ?蘇芳から?」
 蕗子はドキリとした。
「報道で僕の個展の成功を知ったって。でもって、君を描いた僕の絵も、
ネットのニュース映像で見たそうだ。凄く驚いてたよ。まさか、僕たちが
一緒になるとは思ってなかったって。お父さんからは何も聞かされて
なかったらしい。でもって、おめでとうってさ。個展の成功と、僕たちの
結婚に対して。絵を見て分かったって。ただ、君には直接言えないから
伝えておいてくれってね」
「そうなの……。良かった。祝って貰えて。蘇芳は蘇芳なりに、あなたの事が
好きだったのよ。いずれ別れがきたとしても、こんなに早くは無かったろうし」
 晴明は首を振った。
「そうかもしれないけど、長く続いたとも思えない。蘇芳は激しいから、
結局僕の淡泊さにジレンマを起こす事になったと思う。
冷たい夫婦生活が目の前にあったようなものだ。蘇芳も感じてたから、
一層ダンスに夢中になったんだよ」
「私だって、あなたと一緒になってから、前より一層、仕事に夢中だけど?」
 蕗子は小首を傾げるように、笑みを浮かべて言った。
 晴明はむくれ顔になった。
「いい物あげようって思ってたのに、そんな事を言うならやめようかな」
「え?なんなの?いい物?それって、もしかして、クリスマスプレゼントとか?」
 二人で初めて迎えるクリスマスイブだ。未だかつて、蕗子は男性と
クリスマスの夜を過ごした事が無かった。それだけに新鮮だったし、
ロマンティック度が違うと思っていた。
「まぁ、そうとも言えるけど……。君はクリスマスプレゼント、
用意してくれてあるのかい?」
「あ……」
「まさか、無い、とか……」
 怖い顔をして蕗子を見る。
「や、やだわぁ。あなたが、そういう物を要求する人だとは思ってなかった」
 本音である。そういう物質的なものには拘らない人だと思っていた。
だが、結婚と言う形には拘った。だから、一応、念のために、用意はしておいた。
 もぞもぞとバックから包みを出した。それを見た途端、
晴明は満面に笑みを浮かべた。
「全く君って人は、勿体つけて……。無いような振りなんてするもんじゃないぞ」
「だって……」
「いいから」
 観念して、差し出した。受け取った晴明は、嬉しそうに包みを見つめている。
少しの間見つめてから、そっとテーブルの上に置いて、自分もカバンの中から
包みを出した。
「はい。これが僕からのクリスマスプレゼント」
 渡された包みは、B4くらいの大きさの箱包みだった。
「じゃぁ、一緒に開けようか」
 頷いて、包みを開けた。中から出て来た箱を開けたら……。
「あ……、ネグリジェ?」
 またネグリジェなのか、と思ったが。
「どうだい?それ、いいだろう?シルクシフォンなんだ。凄くロマンティックだと
思うよ。それを着たら、天使度、大幅アップ」
 嬉しそうに表情を緩め、白い顔に薄らと赤みが差している。
 晴明の言う通り、凄く素敵でロマンティクなデザインだった。これなら確かに、
お姫様や妖精のようかもしれない。
「マフラーだね。カシミアの。凄く肌触りが良くて気持ちいいよ。ありがとう」
 本当に嬉しそうに首に巻いてるのを見て、蕗子はホッとした。
「あなたに似合うって思ったの。寒くなってきたから、ちょうどいいかなって。
大学の先生だしね。良い物を身につけないと笑われるじゃない?」
「ありがとう。毎日使わせて貰う。こんな風に、愛する女性に選んで貰った物を
身に付けられるなんて、幸せだよ。で……」
 晴明は再びカバンの中をゴソゴソとしだした。
「どうしたの?」
「うん……」
 曖昧な返事をしながら、「実はさ……」と、小さいケースを取り出した。
「もっと早くに渡すつもりだったんだ。だけど事故に遭って、それどころじゃ
なくなってしまって……。注文してからも、予想以上に時間がかかってさ」
 そう言いながら晴明が蕗子の目の前に出したのは指輪だった。
「折角結婚したって言うのに、ごめん。式も挙げて無いのに、指輪まで無いなんてね」
 蕗子はびっくりした。もう、指輪の事なんて忘れていた。
 差し出された指輪は、綺麗なプラチナで、中央がピンクゴールドになっていた。
「一応ね。セミオーダーなんだ。幾つもあるサンプルを元にアレンジして
作って貰ったんだよ。そのピンクゴールドは、運命の赤い糸をモチーフにしてる。
僕たちが、赤い糸で結ばれた運命の相手なんだって証し。
だから、僕たちの愛は終わる事は無いんだ」
「晴明さん……」
 蕗子が晴明を見ると、晴明は大きく頷いた。
「さぁ。手を出して。はめてあげるから」
 言われて蕗子は手を出した。晴明の大きな手が伸びて来て、
そっと蕗子の手を取り、薬指に指輪をはめた。
「ぴったり……」
「良かった……。じゃぁ、今度は君がはめてくれ」
 晴明にもう一つの指輪を渡された。当然ながら、蕗子の物より大きい。
それをまじまじと見た。とても綺麗だ。高級なものだと分かった。
「さぁ」
 出された手を取り、そっと指輪をはめた。
 二人の指に同じ指輪が輝いている。
「先生、指輪しないの?って女生徒達に何度も言われてね。しないのは罪だ、
とも言われたよ。だから、気持ちはずっと焦ってた。渡すタイミングもあるしね。
こうして、個展も無事に開催できて、盛況で終える事ができた。
ちょうどクリスマスイブだし、この日しかないって思ったんだ。
ちょっと遅くはなっちゃったけど、許してくれるよね」
 蕗子は頷いた。言葉が出て来ない。本当に感動した時には、言葉って
出て来ないものなんだなって思った。それでも言いたい。感謝の言葉を。
愛の言葉を。
「ありがとう……。とっても嬉しい。本当に……。愛してる。これからもずっと」
 蕗子は万感の思いを込めて晴明を見た。
 かつての晴明の暗く深かった瞳が、今は愛に満ちていた。
 あの、月と星の間の絵のように、晴明の愛が蕗子を照らし、天使に
してくれているのだ。それなら私は喜んで天使になろう。そしてこの人を
ずっと守っていくんだ。
 蕗子は二人の指に光る指輪に、そう誓うのだった。


                                         The end.


****** あとがき *******

いかがでしたでしょうか?

久しぶりの作品。

「散華」を中断したまま、気持ちばかりが焦ったまま
時間ばかりが過ぎて行き……。

時々思い出したように筆を進めるものの、再び中断。

そんな中、いきなり、この作品が生まれました。

「散華」を中断したまま新しい小説を書くのは、どうなのか?と
迷いがありながらも、自分の中で生まれて来た物をそのままにはできず、
とにかく書きとめたい、との思いで、昨年の10月、一気に約3週間で
書きあげました。

勿論、書きあげた後、何度も推敲を重ね、手直しもしましたが、
こうして時間が経ってみると、まだまだアラが見えますね(^_^;)

基本的な設定とストーリーは最初の段階で殆どできてるんですが、
実際に書くとなると、登場人物の生い立ちや背景などの
人物造詣や、住んでいる場所や仕事、周囲の人達の事など、
色々あって、ストーリーは書きたいのに、それらが足を
引っ張ったりするんです。

「散華」などは、まさにそれで、特に時代が古い事もあり、
時代考証等、煩雑な事が多いほど、筆が進まない……。

まぁ、言い訳なんですが、次回作もそれで遅筆だったりしています。。。

今作も、蕗子が建築家で晴明が画家と言う職業、
随分と考えて決めました。
建築に関しては多少の知識はあるものの、絵に関しては
鑑賞は大好きだけど実技はボロボロなワタクシにとっては、
ハラハラ描写でございました。

あと、量的には、ちょっと悩みました。
「クロスステッチ」は長いですが、あまり長い作品には
したくなかったので。
最初は、里美との出来ごとに関して、過去に時間を遡って
書こうかなとの思いもあったのですが、そうなると凄く長くなってしまうし、
ドロドロしてくるのもイヤだったので、やめました。

読み物としては、このくらいの方が読みやすいかなと
自分的には思うのですが、どうでしょうか。

まぁ、何はともあれ、無事に完成して、連載を終了できたのが
嬉しいです。


次回作は、色々悩んでいます。

「散華」はもう少し置いといて、また新しいお話しでいきたいと思います。

ストーリーは大体、大まかに出来ているものの、それを
物語として組み立てる作業がなかなか大変で、書き始めてはいるものの、
遅々とした感じなので、掲載できるまでに暫くかかりそうです。

あと、「クロスステッチ」の第三部が、自分の中でムクムクと
起きあがりつつあります。
書きたい衝動も湧いて来てるので、もしかしたら、年内には
連載が開催するかもしれません。

とりあえず、次回作まで暫くお待ちくださいませ。。。


                              2015.Spring        narinari



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~ Comment ~

Re: 遅くなってすみません>limeさま 

limeさん、ありがとうございます。

お忙しい中、嬉しいです。

まぁ、色々ありましたが、最後は幸せに終われてよかったです。
もう少し、イジメても良かったんでしょうかね?
どうも、ドロドロしたのが苦手でして。
書いているうちに、しんどくなると言うか、辛くなっちゃうので。
自分的に楽しんで書けないと、趣味で書いてる意味が無いのかなぁ~って。
ドロドロ好きな方には、私の小説は物足りないかもしれませんね、全体的に……。

自分的には、短編でサスペンスコメディタッチのシリーズ物を
書いてみたいな~って思うんですが、なかなか……(^_^;)

次回作もノンビリ読んで貰えたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。

遅くなってすみません 

早くから読み始めていたのに、今頃で、ごめんなさい。
この二人がどうなるのかとしんぱいだったのですが、こんなに幸せそうなラストだったのですね。
恋愛ものを読んだことがないので、何か最後に蘇芳とか父が・・・なんて思っていましたが。
これ以上のハプニングはやっぱり、蕗子がかわいそうですもんね。
でも、清明さんとネグリジェという組み合わせが意外だったので驚きました。やっぱり男の人ってそれぞれに、憧れというか、独自のエロティシズムを持ってるんでしょうね。
蕗子の、戸惑いながらも受け入れる清純さがかわいかったです。
蕗子の方は、このあと自分の家族や清明の家族とのぎくしゃくがあるかもしれませんが、この二人の愛があれば、だいじょうぶですね。
このあともまた次作の更新が始まるのですね。
またゆっくりペースになると思いますが、お邪魔させていただきます。
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