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小説・月と星の間<完>
11.天使(最終章)


月と星の間 11.天使 ⑥

2015.03.18  *Edit 

「今回のシリーズはね。コンスタンスに描き続けると思う。ただ、
普通に夜でない風景画も、今後は増えると思う。夜しか描かなかったのは、
里美との事があったから。僕にとって、太陽の光は眩し過ぎたんだ。
今はもう、そんな事はないし、夜だって、以前よりも一層、明るく感じられるように
なったよ。世界が大きく広がった気がする。ただ、普通の風景画に対して、
今度は世間がどう評価するだろうね?やっぱり阿部晴明は夜以外は
駄目だって言われるかな」
 そう蕗子に問いかける晴明の顔は、決して不安や暗さは無く、
まるで他人事のように飄々としている。
「言われたら?」
 蕗子は問い返した。
 晴明はにっこりと笑う。
「全然、構わないかな。僕は自分が描きたいように描く。それが酷評されようが、
売れなかろうが、いいんだ。勿論、評価を受けて売れてくれた方が嬉しいに
決まっているけど、結局、絵を描くって事は、誰かに認めて貰う為に
描くものじゃないんだからね。僕は、喜んでくれる人が一人でもいれば、
それで十分だよ」
 そう言って、蕗子を愛しそうな目で見る。胸が熱くなった。
「一人でもいればって、一人もいなかったら、どうなの?」
「君、わざと、そういう意地悪な事を言ってるでしょう」
「だって……。可能性としてはゼロじゃないじゃない?数学的問題として……」
「愛を数学で計ろうとしないでくれ。確かに可能性としてはゼロじゃない。
だけど僕にとっては、絶対的にイチが存在してるんだ。僕のスタートは
ゼロからじゃなく、イチからなんだ。このイチの存在が、万が一にも無くなったら、
僕の存在も無くなると言っても過言じゃない。だから僕は、自分の存在を守る為にも、
このイチの存在を必死に守らないといけないんだ。死守しないとならない。
だから。……わかったね」
 真剣な目で言われて、ぐうの音も出なかった。いや、出せなかったと言うべきか。
「ごめんなさい……。私が悪かったわ」
「いいんだ。いつもの君の、ちょっとした意地悪だって分かってるからね。
僕だって、時々、好き過ぎて意地悪をしてしまうからね。あいこだね」
 私の場合は好き過ぎての意地悪じゃないんだけどなぁ……と思いつつ、
笑ってやり過ごす事にした。
「じゃぁほら。今夜はこのネグリジェにしてくれるかな」
 晴明に指定された。
「波絵ちゃんも言ってたろ?ドレスだって。みんなそう思うのさ。絵だからね。
モデルが着てるのがネグリジェだとは思わない。これでも僕、ネグリジェに
見えないように気を使って描いたんだよ。君は毎日着てるから、直観的に
すぐ分かっただけなんだ。……だけど、本当に、とってもよく似合う。
すっごく、そそられるんだよ」
 着せて脱がす。その行為に興奮する男を痛ましくも可愛く思える。
 目を輝かせながら、ボタンを一つずつ外している。全てを外し、そっと前を
開く時の、期待感に満ちた瞳。唇を肌に寄せて「綺麗だ」と囁く息が、
そっと肌を撫でて官能を刺激する。大きな手に乳房を包まれて、体が疼く。
吸われてせつなさが募り、声があがる……。
 何度も唇を重ね、互いの存在を確かめ合うように、何度も繋がり、
満たされてその胸の中で眠る。夜明けを共に迎え、朝ごはんを一緒に食べ、
互いに仕事に打ち込んで、再び夜に相見(まみ)える。
 愛する人と共に暮らし共に生きる喜びを、蕗子は感じていた。自分の人生が
別モノのように感じる。しかも特別なものに。
 大盛況のまま、個展は千秋楽を迎えた。
 開期中、テレビでも放送され、晴明はインタビューを受けていた。
 テレビのリポーターに、「君に捧ぐの君とは、具体的な誰かを
指しているんですか」と問われた晴明は、「君とは、僕の人生を
支えてくれている妻の事であり、また、この絵を観てくれる全ての
人の事を指しています」と答えていた。
 この放送は昼間に流れていた為、蕗子は観ていなかったのだが、
家に帰るとしっかり録画されていて、晴明に見せられた。
「リポーターは、こんな風に言われて、奥様が羨ましいですぅって言ってたよ。
この後のスタジオでも、随分とみんな羨ましがってるよねぇ」
 晴明はご満悦な顔をしている。どうやら、こういう自分に酔ってるみたいだ。
でもまぁ、愛され、大事にされている事は確かなのだから、良しとするか。
と思うしかない。
 千秋楽を無事に終え、二人は予約したレストランで食事をした。
本来ならスタッフを交えて打ち上げをする所だったが、この日はク
リスマスイブだったので、皆が気を利かせてくれたのだった。
「君の仕事が休みに入ったら、里美の墓参りに行こう。で、ついでに
隣にあるオヤジの墓参りもして、その足でさ。僕の実家に君を連れて
行きたいんだけど……」
「え?実家?」
 蕗子は突然の事に驚いた。

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