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小説・月と星の間<完>
10.唯一


月と星の間 10.唯一 ⑥

2015.03.02  *Edit 

「小野さん……、先生……、どうしよう?わ、私……どうしたら……。
は、は、晴明さんが……、いやいや、わたし……」
 蕗子は激しく頭を振った。
 あの人を失いたくない。絶対にイヤだ。
「蕗子さん、気をしっかり持つんだ。彼は今、必死に戦ってるんだよ」
 白川教授の低く優しい声が頭上で諭すように言った。
 手術室のドアが開いて、ストレッチャーに乗った晴明が出て来た。
管がたくさん繋がれていて、酸素マスクが口許を覆っていた。
「晴明さん!」
 蕗子が慌てて駆け寄った。小野と白川もそれに続く。
「このまま、集中治療室に入ります」
 看護師はそう言って、三人を押しのけるようにして移動した。大勢の
スタッフがその後に続いた。三人もその後に続く。
 晴明が集中治療室に入った後、医者に呼ばれた。
「ご家族は?」
 辺りを見回す医者に、「妻です」と蕗子が一歩前に出た。
「他に近親の方は?」
「おりません」
「そうですか。分かりました。とりあえず止血手術は済みました。ですが、
かなり出血した事もあり、大分衰弱しています。それと、肺の機能が
少し低下していますし、術後感染症の危険もありますので、まずは
今夜が最大の山だと思います」
 医者の言葉にふらついた蕗子を、白川と小野が抱きとめた。
「蕗子さん、しっかりっ」
 蕗子は頷きながら、地面を踏みしめるように足に力を入れた。
「家族の方は、中で待機していて下さい。状態がいつ変化するか分かりませんので」
 そう言われて、蕗子は中に入った。消毒をし、ガラス越しに
中が見える小部屋に通された。
「何かあったら、呼んでくれ。すぐに来るから」
 小野と白川はそう言って、引きあげていった。
 まるでテレビドラマでも見ているようだ。あれは忠実に再現されているんだな、
と感心した。蝋人形のように真っ白な晴明を見ていると、怖くなってくる。
(なぜ、こんな事に)
 刺された上に、その傷が原因で転んで轢かれるなんて。
 呪われているとしか言いようが無い。
(呪われている……?)
 父の言葉が蘇る。
 まさかこれは、天罰なのか。
 異母兄妹なのに愛し合った二人は、結局片方の死によって別たれた。
禁断の愛を貫き通した二人への罰だったのか。そして、今度は、妹の夫と
愛し合い結婚した私へ罰が下った?
 そんな風には思いたくない。そんな筈、ある訳が無い。
 私達は何も悪い事はしていない。
 それなら何故、負い目を僅かでも感じているのか。
 だけど……。
 交通事故……。
 里美も交通事故で死んだんだった。
 里美さんは、肺をやられて亡くなったと晴明から聞いた。確かさっき、
医者は肺の機能が低下していると言わなかったか?
(まさか、これは符号?)
 自分の考えを追い出すように、蕗子は頭を振った。
 そんな事ない、そんな事ない。
 蕗子はたくさんの管に繋がれた晴明をジッと見た。そして胸の中で呼びかける。
(晴明さん!頑張って。お願いだから死なないで。私を置いていかないで)
 死ぬ事なんて考えちゃいけない。死んだらどうしよう、なんて思ってはいけない。
負の感情を追い出して、ひたすら生きる事を祈るんだ。
生きて、生きて、生きて!!必死でそう叫ぶ。
「少し休まれてはどうですか?」
 看護師に声を掛けられた。
「でも……」
 蕗子は首を振る。席を外しているうちに何かあったらと思うと席を外せない。
「大丈夫ですよ。今のところは安定してるみたいだし。少しでも変化があったら、
すぐにお知らせします。これを持って出て下さいね」
 院内用のポケベルを渡された。蕗子をそれでやっと休憩する気になった。
 廊下に出ると、帰ったと思われた小野と白川が長椅子に座っていた。
「あの……、帰られたんじゃ?」
「一端帰ったんだけど、心配で戻って来た。何かあった時に
君ひとりじゃ大変だろうしね」
「あ、ありがとうございます……」
 蕗子は二人の優しさに感謝した。心細かったから、お陰で少し気を強く持てそうだ。
「容体はどうなの?」
 三人は連れだって、喫茶室の方へ向かった。部屋は二十四時間利用
できるが、店は営業していない。自販機が置いてあるので、それで三人は
コーヒーを買った。
「今のところは、安定してるようです。変化があったら知らせてくれるからって、
こんな物を持たされました」
 蕗子は渡されたポケベルをテーブルの上に置いて、微かに笑みを作った。
「そうか。確かに君も少し休んだ方がいい」
「お二人には、迷惑ばかりおかけてして申し訳ありません」
「何を言ってるんだ。迷惑だなんて思って無いよ」
「はい。わかってます。だから、凄く、ありがたくて。感謝してます。
すごく、心細かったから。……頼れる人が誰もいないし」
「わかってるよ、俺達は。みんなわかってる。だからさ。遠慮しなくていい。
晴明だって、よくわかってるから、俺達、あんなにあけすけに喋れるんだよ。
本音と建前なんて使い分けないんだ。だから君も、気にする事はないんだよ」
 小野の正直さが身に沁みる。こういう時こそ、この人の正直さが有難い。
「小野さんが、そう言ってくださるんで、私も正直に思った事を話しますね。
……今度の事ですけど、これって……、やっぱり、私達に対して
天罰が下ったんでしょうか?」
「天罰だってぇ?」
 素っ頓狂な声で問い返された。



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