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小説・クロスステッチ第1部 <完>
第16章 二度目の夏~第21章 前夜


クロスステッチ 第1部第16章 二度目の夏 第5回

2010.04.11  *Edit 

 「なんでだよ。みんなに言えないような相手なのか?」
 増山は古川から視線を外した。
 「これまでのような女達とは、違うんだ」
 増山は古川にそう言った。
 「意味がわからないな。・・・そう言えば、望ちゃんと別れた
のって、去年の秋だったな。平安展の前だったか?あの時は知ら
なかったが、後から聞いて驚いた。お前の方から別れたって聞いたから」
 それに対して増山は何も答えなかった。
 「あの時お前、女子高生を連れて来たな。歴研の生徒だとか言って
たか。熱心な子だった。確か、俺が大丈夫なのか?って聞いたら、
大丈夫だが大丈夫じゃない、とか何とかお前言ったろ。随分と
意味深な事を言うと不審に思ったんだ。お前はいつもストレート
だからな。まさか、もしかして・・・?」
 増山は観念した。式の日取りも決まったから、話せれば話そうとは
思っていたからだ。
 「あの子と、付き合ってるんだ。俺の彼女は女子高生。教え子。
そんな事、みんなには言えないだろ」
 それを聞いた古川は、驚きのあまり、まさに開いた口が塞がらない
状態だった。暫く呆然とした後、
 「ぶ、ぶわっか、か、お前」
 と言った。
 「な、何やってんだよ。お前が教師じゃなきゃ、別にいいよ。
だけど、教師だろ?自分の教え子に手を出して、どうするよ。
問題じゃないか」
 「お前って、意外と常識的なんだな」
 古川の反応は至極当たり前なので、増山は驚かない。
 「アホな事を言ってるんじゃないよ。あの子からお前にアプローチ
するとは考えられないから、珍しくお前の方から口説いたと言うことか」
 「驚き慌てふためいている割には、鋭いじゃないか」
 増山は冷静になっていた。
 その言葉に、古川も冷静になってきた。
 「じゃぁ、お前の方から口説いたと言うことは。・・・本気なんだな?」
 だらしない老けオヤジ顔の愛嬌のある目が、鋭くなった。
 「そういう事だ」
 増山はそう言って、ニヤリと笑った。
 「お前・・・、罪な男だな。女子高生が、お前のような男に口説か
れたらイチコロだろうよ」
 「そうだな。高校教師として赴任したら、初日から大騒ぎ。大学の
時よりも凄(すさ)まじくて、凄いストレスが溜まったよ。はっきり
言って、やらせてくれって言ったら、みんなして喜んで捧げますって
感じなんだ。最近の女子高生は凄いよ。もうみんな、バリバリの
ギャルメイク。彼女のようなナチュラルな子は希少価値だよ」
 「へぇ~。それで彼女に惹かれたのか」
 「それだけじゃ無いんだが、ギャル系だったら最初から却下
だったかもな」
 「じゃぁ、あの日はもう、付き合っていたのか?」
 「いや、それが、あの日、あの展示会を見た後に、告白したんだ」
 増山は照れくさそうに言った。古川はそんな増山を初めて
見る気がした。
 「じゃぁ、まだ付き合って無いのに、誘ったって事か。それで
彼女は一緒に来た」
 「俺、女は大勢知ってても、そういうのは初めてだから。
俺だってさ。相手は教え子なんだから、好きになったから告白します、
なんて簡単には考えなかったさ。お前のお陰だよ。お前が送って
来た券を見て、咄嗟に、ほぼ無意識のうちに、彼女を誘ってた。
メールを送信してから、馬鹿な事をしてしまったと、ものすごーく、
後悔した・・・」
 増山のその様子に、古川は思わずプッと噴き出した。
 「いつも冷静なお前なのに、そんな事もあるんだな。まさに
恋は盲目だな」
 「そうなんだよ。しかも、笑えるぜ。平安展の前に修学旅行が
有ったんだが、その時に、彼女には好きな男がいるって聞いてな。
しかも相手は、彼女のいる大人の男だって言うんだ。絶望感に
襲われたよ。そして、嫉妬した。そんな男は止めた方がいいなんて、
彼女に言ったのさ」
 「それで、彼女は?」
 「怒った。当然だよな。だから俺は、完全な片思いだったわけだ。
それにも関わらず、誘ってたんだ」
 「でも、彼女、一緒に来たじゃないか」
 「俺、そういうのは鈍感だから。彼女、物凄く歴史の造詣が
深いんだ。俺から誘いのメールを貰った時、ネットで平安展の事を
調べたらしい。とても興味深い内容だから是非行きたいって返事が
来た。俺は、それをストレートに受け取った。彼女が一緒に来た
のは、純粋に平安展を見たかったからだってな」
 「お前って、馬鹿だな」
 古川の言葉に増山は頷いた。
 「そうなんだ。本当に笑っちゃうぜ。彼女が好きだって言う、
彼女のいる大人の男ってのは、俺の事だったんだからな」
 「それはそうだろう。じゃなきゃ、一緒に来ないだろうに」
 「そうなんだよな。だけど、俺は、彼女がいる大人の男が俺の
事だとは、微塵も思って無かったんだ。望とセックスした後、
あいつに誘われるままウインドーショッピングしている所を、
彼女に見られたんだよ。それであの子は、俺に彼女がいると思ったんだ」
 それを聞いて、古川は手を打って爆笑した。
 「そりゃぁ、彼女には違いないじゃないか」
 「彼女じゃないよ。セフレだよ、セフレ。恋人でも何でも無いんだから」
 増山は憮然と答えた。
 古川の笑いは止まらない。何故なら、こんなに愉快な事は無いからだ。
 女に冷たい男。いつだってクールで、自分からは何もしない男。
自分からアプローチした事が無いからなんだろうが、なんと無様
なんだろう。こんなにイイ男でも、恋の前ではこんなにも愚かしい
姿を晒すのか。面白過ぎる。笑い過ぎて、腹が痛くなってきた。
 増山は、そんな古川を憮然とした表情で見つめていた。まぁ、
笑われても仕方が無い。自分でも馬鹿だったと思っている。だが、
相手は高校生の上に、ポーカーフェイスが得意ときた。理子の
心は全く読めなかった。わかりやすい、これまでの女達とは全く違った。
 「だけど、セフレとのデートを本命に見られるなんて、
ヘマもいいところだな、増山」
 「全くだ。まぁ、その日が望とも最後だったんだけどな。
彼女の事が頭から離れなくなって、もう他の女を抱く気が全く
失せてしまった。だから、自分から別れたんだ」
 「そうか。そんなに好きになったのか。お前が」
 古川は感慨深そうな目をした。
 「そうなんだ。それで、来年の5月に結婚することになった」
 「なんだってぇ?」
 驚いて声がひっくり返った。
 「ら、ら、来年の5月って、・・・じゃぁ、卒業後って事か」
 「そうなんだが、これがちょっと曰(いわ)く付きでな」
 増山は、理子が東大を受験する事、そして、その東大に合格したら
結婚する事や、理子の家の事情などを古川に話した。
 「じゃぁ、もし落ちたらどうするんだ?」
 「延期する事になる。教師と教え子が恋愛に現(うつつ)を抜かして
いたから落ちたんだ、って言われたくないからな。俺は何を言われて
も構わないが、彼女が可哀そうだから」
 「そうか。じゃぁ、全ては彼女の受験にかかっているって事か」
 「簡単に言えば、そうなる。だから、俺は全力でサポートしてる。
何としても合格させてやりたい」
 「それは、やっぱり、結婚したいからなんだろう?」
 「勿論だ。だが、彼女が東大受験を決めたのは、俺と付き合い
出す前だ。彼女自身が、東大へ行きたいと願って勉強に本腰を入れ
出した。恋人では無くても、担任として全力で応援する義務はある。
それに、彼女は本当によく頑張ってる。俺は彼女と付き合うように
なって、日々気持ちが高まっていくのを感じるんだ。初めての
事だから、ついつい、彼女を求め過ぎてしまって、何度も彼女の足を
引っ張って困らせて来た。それなのに、彼女は俺に引っ張られても
自分を見失う事無く、必死に勉強してきたんだ。そんな彼女を俺は
尊敬してる。だからこそ、何としても合格させてやりたいと思うんだ」
 「なんだか、凄い話しだな。お前も凄いが、彼女はもっと凄いよな。
プレッシャーになってるんじゃないのか?」
 「どうなんだろうな。俺が見た所では、プレッシャーとは感じて
いないようだが。彼女にとっては、俺と結婚ができるか否かよりも、
東大へ入れるか否かの方が大きいような気がする。だって、結婚は
延期になったからって、しないわけじゃないからな。だが、東大は
入れなかったら、彼女はもしかしたら大学そのものへ行けなくなる
可能性が高い。彼女のお母さんが、落ちたら就職だって言ってたし」
 「それは、酷いな。彼女のお母さんって言うのは、何だか話しに
聞くと強烈なキャラだな」
 「まぁな。愛情深い人なんだが、極端だ。俺としては、万一
落ちたら他の大学へ行かせてやりたいと思うんだけどな。学費は
俺が出す。そして、成人したら一緒になる。彼女には、とにかく
もっと日本史の勉強をさせてやりたいんだ」
 増山は、古川にそう話しながら、本当に、もし落ちたとしたら、
自分が学費を出して他の大学へ行かそうと思った。それすらも反対
されるだろう。しかしその事がきっかけになって、もしかしたら
母親も考えを変えて理子を他の大学へ行かすかもしれない。
 「お前、本当に本気なんだな」
 「ああ。それでな。予定通りにいけば、5月3日に挙式と披露宴を
する。場所はもう押さえてあるんだ。彼女が万一落ちたらキャンセル
するから、大っぴらにはできない。だが、合格発表を見てから皆に
話すんじゃ、ゴールデンウィークだけに皆に来てもらえるかどうか
わからないだろう?だから、詳しい事情は伏せたままで、取りあえず
その日は開けておいて欲しいと、皆に話そうと思ってたんだ」
 「そうか。なるほど・・・」
 古川はそう言って腕を組んだ。
 「じゃぁ、こうしよう。今日、会場で、お前に彼女ができて、
来年結婚するって公表しよう」
 「なんだってぇ?」
 増山は古川の言葉に驚いた。
 「それは困るって、さっき言ったじゃないか」
 「いやいや。別に彼女の事を話さなければいいだけだろう」
 「だが、」
 「聞かれたって、答えなければいい。それは結婚してから
公表するって言えばいいじゃないか」
 同じ事をさっき彰子に言ったのを思い出した。
 「お前がプライベートの事をあまり話したがらないのは、
みんな知ってるんだから、平気だろう」
 確かにそうなのだが、あまり騒がれるのも好きじゃない。
 「男どもは、みんな喜ぶぞ。光源氏もいよいよ年貢の納め時って
な。ああぁ、彼女はまさに紫の上じゃないか。幼い若紫を手元に
置いて、自分好みの女にって設定がお前達に合ってるぞ」
 「やめてくれ。何度も言うが、俺は光源氏じゃないって。
それに彼女は自分好みの女に染まらない女だから」
 増山の言葉に、古川はニヤけた。
 「そんな事は無いだろう。素直で純粋そうじゃないか。幾らでも
お前の色に染めれそうだがなぁ」
 増山は首を振る。
 「彼女は染まらない女だし、俺はそこが好きなんだ。色で例えれば
玉虫色だ。時によって色んな色に輝く。そこが彼女の最大の魅力なんだ」
 「玉虫色の女か。若いのに不思議な子のようだ。いや、若いから
不思議なのか・・・」
 古川のその言葉に、増山は笑った。
 「お前、いい笑顔を見せるようになったな。いい恋をしている
証拠だぞ。安心した。俺達はなぁ。いつもお前の事を心配して
たんだ。女とやるには困らないが、心はいつだって乾いてるお前に
同情してた。男と女しかいない世界で、女を愛せないなんて不幸極
まりないからな」
 古川はそう言うと、増山の肩を軽く叩いた。そして、「じゃぁ、
みんなに発表しに行くか」と言って意気揚々と歩きだした。
増山は急に不安になった。
 「お、おい、本当に大丈夫かな」
 先を歩く古川を捉まえて、訊ねた。
 「大丈夫だって。俺もフォローするから。結婚するんだ。もう、
ウザイ女どもの相手をしなくて済むぞ」
 古川は笑う。
 古川は会場へ入ると、そのまま真っすぐ司会席に向かった。増山は
益々不安になる。そんな増山を尻目に、司会席へ到着した古川は
司会からマイクを取ると第一声を発した。
 「えぇー、皆さん。ご静粛に。・・・重大発表があります」
 増山は古川の隣で落ち着かない。心臓が破裂しそうな程、
高鳴っている。こんな経験は初めてだ。古川の言葉に、全員の
視線が二人に集中した。
 「ここにいる、増山君の事です。実はとうとう、増山君に、
本当の、ほんとーの、愛する恋人ができました!!」
 ええーーっ!と、物凄い驚きの声が一斉に上がった。その声は
場内に轟いた。
 女性陣の間では、「嘘でしょう?」とか、「信じられない」との
声がたくさん上がった。
 「まま、皆さん、ご静粛に。・・・これは嘘ではありません。
同窓会の余興でも何でもなく、真実なのであります。皆さんも
ご承知の通り、だーれも愛せなかった彼が、とうとう、女性を
愛するようになりました。そして晴れて、来年、結婚することに
なりましたぁー」
 古川は楽しそうに、晴れ晴れとした様子で朗らかに発表した。
だが場内は騒然とした。男性陣からは、おおっ!とどよめきが
上がり、女性陣は発狂に近い叫び声を上げていた。
 そんな中、いつもの仲間達が人込みを押しのけて司会席まで
やってきて増山を囲んだ。
 「おい、お前、本当なのかっ?」
 慌てた様子だ。
 増山は黙って頷いた。なんだか凄く恥ずかしい。
 一人が抱きついて来て、「良かったなぁ・・・、本当に良かった」
と感激している。
 「おい、来年結婚って、いつなんだ?」
 「5月3日なんだが、ちょっと込み入った事情があって、確定して
ないんだ。でも一応、皆にはその日を開けておいて貰いたいんだが」
 「おう、当たり前だよ。なぁ、みんな」
 と、仲間達は頷きあった。
 「増山君、本当なのぉ?」
 女性陣の一部が増山に声をかけた。
 増山は頷くと、古川からマイクを取った。
 「みなさん。今、古川君から発表がありました通り、僕は来年、
結婚します。学生時代は色々ありましたが、僕もこれでやっと落ち
着く事ができます。みんな、どうもありがとう」
 何故、礼を言わねばならないのか自分でもわからなかったが、
自然と口に出ていた。
 男性陣からは、「おめでとう!」と沢山の声が上がった。女性陣は
ショックがひとしおと言った感じだ。
 「彼女って、どんな女性?」
 と、一部から声が上がった。古川が増山からマイクを取って言った。
 「増山君は、みんなが知っている通り、秘密主義者なので、彼女の
事は来年の結婚式までは秘密ですが、僕は一度だけ会った事が
あるので、ちょっとだけ教えちゃいます。ロングヘアーの、
可愛いお姫様のような、年下の女の子です。それ以上は、結婚
までのお楽しみと言うことで」
 古川の言葉に、再び場内はどよめく。女子達の甲高い叫び声が上がった。
「まぁ、このくらいなら、いいだろう?完全にシャットアウトじゃ
風当たりも厳しいからな」
 増山は笑って頷いた。“可愛いお姫様”か。やっぱり姫って
印象なのか。
 「おい、それ以上は教えてくれないのかよ。俺達には、もう少し
いいんじゃないのか?」
と、仲間の一人に言われた。
 「まぁ、色々と訳ありなんだ。来年、本人に会えるんだから、
いいだろう?」
 増山の言葉に不満の色を示す。
 「古川は会ってるのか。狡いなぁ~、お前だけ」
 「まぁまぁ。たまたまなんだよ、たまたま」
 「年下なんて、いいよなぁ~。やっぱり、年下だよ」
 との言葉に、他の者が、
 「そんな事はないだろう。年上だっていいじゃないか。色々教えて
貰えるし、甘えさせて貰えるし」
 仲間達の話題が、女性論に移って行ったので、増山はホッとした。
古川に、皆に発表すると言われた時には、本当にどうなる事かと気を
揉んだが、済んでしまえばサッパリした気分だった。余計な気患いが
一つ減って肩の荷が下りたようだ。式の準備も姉が全部請け負って
くれているし、あとは、理子を合格させる事だけに集中できる。
なんとしても、合格させてやらなければ。増山は強くそう思うのだった。
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~ Comment ~

Re: 持つべきものは友 

misia2009さん♪

先生と理子の直接絡みが無い夏休みの章なので、色々と遊ばせてもらいました。
私も個人的に、古川氏がとても好きだったりします。
いい人ですねぇ~。面白いし。この人の前では、増山先生はかたなしです。

普段とは違う、親しい、信頼している人間の前でしか見せない
増山先生の姿です。理子の前でも、けっこう、子供っぽかったりしますが。
自分でも書いていて楽しい回でした。

ところで、まだ本家は結婚しませんよー。
しないで欲しいと切に願っております・・・。(^_^;)

持つべきものは友 

ははははははは。地味キャラ古川氏に支援×3くらい送っちゃいます。ころころ表情の変わる増山さんを見られて最高に楽しい回でしたー!!
ところで「REGNA」のCMをテレビで見て、
「増山先生お幸せに」と声をかけてしまった自分がいましたよ・・・
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